2025年選抜2回戦
浦和実vs東海大札幌
51% 49%
〇3-0 滋賀学園 〇7-6 日本航空石川
大会前は投手力で優位が予想された東海大札幌。しかし、初戦の内容を見ると、自分たちの野球ができていたのは浦和実のほうであった。
浦和実は、エース左腕・石戸が相手打線に自分のバッティングをさせず、6安打で完封。あのフォームから投じられるキレのある速球と縦に割れるカーブを攻略するのは容易ではない。攻略の糸口があるとすれば、疲労から彼のボール自体が高めに浮いた場合だが、2回戦ではまだスタミナに問題はないだろうし、本来の投球になるだろう。もう一人、力投タイプの左腕・駒木根もいるが、タイプ的には相手にとって嫌なのは石戸のほうだろう。攻略されるまでは彼で行きそうだ。
対する東海大札幌は打線が活発であった。3番太田勝心、4番太田勝馬の兄弟の中軸を中心に、日本航空石川投手陣の速球を鋭い打球でセンター中心に打ち返した。ただ、次戦の石戸は全くタイプが異なるため、また話は変わってくる。特にあの縦割れのカーブに対しては、捨てるのか狙うのか、意識を徹底したい。また、相模出身の遠藤監督が繰り出すアグレッシブな走塁も効果的。塁上からも圧力をかけ、浦和実バッテリーの集中をそぎたい。
一方、東海大札幌は初戦は矢吹、高橋の自慢の左右両輪が打ち込まれる結果に。ボールの走り自体は悪くなかったが、ボールがやや高めに浮いてしまい、勝負所で決定打を許した。乱れ気味だった試合の雰囲気にも左右されたのかもしれない。矢吹は変化球が低めに決まれば、そうそう大量失点はしないであろうし、中1日しかないが、なんとか修正したいところだろう。また、バックは5併殺は奪ったが、5失策とこちらもらしからぬ守りになってしまった。こちらも立て直しは急務だ。
対する浦和実打線は、行うこと、狙いは明白である。とにかくミートに徹して単打を狙い、三島をはじめとして中軸の前にランナーを出して回すこと。1回戦の滋賀学園戦でも中盤の5回に本格派右腕の長崎を攻略したように、相手投手のちょっとした乱れや流れが変わりそうな機微を逃さないようにしたい。石戸の好投が期待できるだけに、先制点の持つ比重はより大きくなる。先手を奪って、なんとか目標の3得点を!次戦も自分たちの野球を貫いていく。
浦和実としては、引き続き3点以内のスコアでの勝負に持ち込みたいだろう。東海大札幌としても、本来は同じような戦い方を目指したいが、次戦までにどこまでディフェンス面の課題を修復できるか。いずれにせよ、浦和実のように、自分たちの本来の野球をすることができないと足元をすくわれることになりそうだ。
主なOB
浦和実…平野将光(西武)、豆田泰志(西武)
東海大札幌…伏見寅威(日本ハム)、今川優馬(日本ハム)、門別啓人(阪神)
埼玉 北海道
春 3勝 1勝
夏 1勝 0勝
計 4勝 1勝
対戦成績は、春夏ともに埼玉勢がリード。
特に、1997年は函館大有斗と春日部共栄が神宮、選抜、夏の甲子園と3度にわたって対戦。いずれも春日部共栄が勝利する結果となった。夏は函館のエース神田が春日部共栄の強力打線に2桁安打を浴びながらも2点でしのいだが、打線が最後まで春日部共栄の長身サイド右腕・長嶺を攻略できず、完封負けを喫した。
函館大有斗からしたら憎たらしいほどの強さを見せた春日部共栄だが、秋の関東王者も春夏の甲子園ではそれぞれ2勝どまり。本多監督曰く、「夏の甲子園で準優勝した4年前より力は上」とのことだったが、特に夏は3点をリードしたにも関わらず、守備が乱れて浦添商に逆転負け。不完全燃焼の結果となった。
一方、2015年の選抜では後述するが、準決勝で東海大四が浦和学院に3-1で逆転勝ち。同校は、全国大会で対関東勢に8連敗中だったが、この大会で健大高崎、浦和学院と関東の強豪2校を破り、準優勝に輝いた。率いていた大脇監督は2000年代初頭にライバル駒大苫小牧にことごとく苦杯をなめ、同世代だった香田監督に大きく水をあけられたが、当時の駒苫野球から学んだエッセンスを落とし込み、およそ10年後にファイナルの舞台まで勝ち上がることとなった。
因縁深い両者の戦い。今大会、勝利を手にするのは…
思い出名勝負
2015年選抜準決勝
浦和学院
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | × | 3 |
東海大四
浦和学院 江口
東海大四 大沢
2015年選抜大会準決勝。第1試合で敦賀気比が6番松本の満塁弾2本で大坂桐蔭に11-0と圧勝し、昨夏のリベンジを果たしていた。あの王者があんな大敗をするのか…、異様な雰囲気と余韻が残る中、第2試合で浦和学院と東海大四が対戦した。この2校は、神宮大会で対戦し、浦和学院が10-0と大勝していたが、第1試合の結果から、再びのリベンジかという期待も持ってみていた。
ただ、そうは言いながらもこの年の浦和学院の充実ぶりは素晴らしかった。左腕エース江口は目の病気があり、失明の危機もあったが、それを乗り越えての成長でチームを秋の関東王者へ導いていた。キレのある速球とチェンジアップの緩急を武器とし、マウンドさばきは冷静そのもの。神宮でも準優勝を飾り、全国屈指の左腕へと上り詰めた。
また、援護する打線も強力であり、3番津田、4番山崎の強打の中軸に加えて、5番幸喜、6番高橋、7番荒木も他校なら4番クラス。荒木は神宮でサイクルヒットを達成し、他校を震え上がらせる層の厚さを見せていた。選抜では初戦で昨年優勝の龍谷大平安と対戦。江口が相手エース左腕・高橋圭(ヤクルト)との投げ合いを制し、延長で2-0で勝利し、V候補対決を制した。その後も、2回戦では大曲工の強打を江口が封じ、準々決勝では県岐阜商の剛腕・高橋(ソフトバンク)を打線が終盤に攻略。初優勝した2年前よりも強いのではと思うほどの勝ち上がり方であった。
その浦和学院に神宮で大敗した東海大四は1回戦最終枠で1,2回戦と連続で21世紀枠との対戦になった。エース大沢は細身の体ながら、ボールに非常にキレがあり、コントロールも抜群。前年夏にスローボールで全国を沸かせた先輩エース西嶋と同様に、マウンド度胸も抜群で、彼も習ったようにスローボールを織り交ぜるしたたかさがあった。
初戦は豊橋工との投手戦になったが、満塁の7回に4番邵の打ち上げた打球が相手の落球を誘い、一挙3点で競り勝つと、2回戦では初戦で二松学舎大付を倒して勢いに乗る松山東を相手に8回に一挙3点の逆転劇を見せ、際どい試合を勝ち上がってきた。しかし、この2試合を通じて大沢の丁寧な投球とバックの堅守は際立っており、準々決勝では健大高崎を1-0でシャットアウト。当時、機動破壊で勢いに乗っていた強豪に対し、両者とも控え投手が先発する中、見事なゲームメイクで難敵を下した。自分たちの戦い方を貫き、いよいよ浦学とのリベンジマッチの舞台が整った。
浦和学院としては昨秋に10得点をたたき出したように、大沢に対して嫌なイメージはなかっただろう。1回表に2番臺がいきなり流し打ちでレフトの頭を超す2塁打を放ち、チャンスメーク。この回は得点ならなかったが、球威はそこまでではない大沢に対し、強いスイングで攻勢をかける。
すると、2回表、下位打線が仕事を果たす。1アウトから怖い7番荒木、8番西野と当たっている二人がいずれもアウトコースのボールを右方向へ連打。技巧派投手が最も嫌な打撃で大沢を追い詰めると、8番江口は変化球を拾う技ありのタイムリーで1点を先制する。この段階では、浦和学院も大沢攻略のイメージをしっかり描けていただろう。
しかし、ここから浦学にとっては予想しない流れとなる。その裏、先頭の4番小川に死球を与えると、犠打と内野ゴロで三進。2アウト後に打席には投手の大沢が入る。先ほどのお返しとばかりに高めに浮いたスライダーをセンターに運び、すぐさま同点に追いつく。まるで先ほどの江口のタイムリーを見るような、鏡写しのような一打であった。
動揺した江口は、続く8番立花、9番渡瀬に連続四死球を与え、満塁のピンチに。制球力の高い江口としては信じられないような投球である。その動揺が伝わったか、続く1番富田の1,2塁間への打球をセカンド臺が捕球しきれず。逆転のランナーがホームを駆け抜け、東海大四が試合をひっくり返す。
追いつきたい浦和学院は、3回表、1年生からレギュラーの3番津田がレフトへの2塁打で出塁。しかし、4番山崎がレフトフライに倒れると、5番幸喜の打球はピッチャー大沢のグラブをはじき、ショート富田がつかんで、飛び出したセカンドランナーは戻り切れず。ツキが浦学から逃げていったような打球に、森監督も嫌な予感がしただろう。
3回まで5安打を放ちながら1点どまり。そうこうしているうちに大沢がいつものリズムを掴みだす。丹念に低めを突き、速球は8分の力でコーナーへ。ヒットを浴びても動揺を見せず、後続を淡々と打ち取っていく。試合後に森監督が、「本当に神宮でコールドで倒した時と同じ投手なのか!?」と目を疑うほどの打たれ強く、完成度の高い投球あった。
すると、6回裏、再び逆転した2回と同じような攻撃で東海大四が追加点を奪う。先頭の4番小川がヒットで塁に出ると、犠打と振り逃げで1アウト1,3塁に。守っている浦学ナインも、どこかいつもと違う試合のリズムに違和感があったのかもしれない。ここで、打席には当たっている7番大沢。初球を3塁線に絶妙な勢いで転がすと、セーフティスクイズ成功で貴重な3点目をGET!大きな大きな1点を奪い、リードを2点に広げた。
投打にタレントが揃う強大なライバルに対し、この日の東海大四ナインは、あの神宮の時とはチームとして別物に変貌していた。最終回も先頭打者の打球をレフト左近が好捕!その後、浦学打線に連打を浴びるも、最後まで大沢の冷静さは崩れなかった。最後は、この大会当たっていた1番諏訪の打球をセンター渡瀬がつかみ取り、ゲームセット。痛快なリベンジを成立させ、東海大四が初の決勝進出を決めた。
東海大四はその後、決勝では敦賀気比のあの松本に8回裏に決勝弾を食らい、1-3と惜敗で準優勝になったが、それでも大会前の下馬評をかわす快進撃であった。神宮の敗戦後、徹底して私生活から見つめなおし、チーム全員で同じ方向を向いて強化した成果が、最高の形で実を結んだ。この大会で東海大四の奪った1試合の最高得点は3点。打撃全盛だった近年の高校野球において、異例の勝ち上がりであったが、全国のチームに可能性を示した準優勝だったと言えるだろう。
一方、負けた浦和学院としては悔しい結果に。一度大勝した相手にこういう形で敗れてしまうのが、野球の難しいところである。その後、春季関東大会も制し、あの小笠原(ナショナルズ)・吉田(ロッテ)という150キロの左右2枚看板のいた東海大相模にも4-0と完勝をおさめていた。
しかし、好事魔多し。夏は、埼玉大会準決勝で伏兵の白岡に1-4とまさかの敗戦であった。そこまで埼玉はおろか関東でも無敗だったチームのあっけない幕切れに当時、呆然とした記憶がある。その白岡を倒して花咲徳栄が甲子園出場すると、3年連続出場を果たし、その3年目には埼玉勢として悲願の夏の全国制覇を果たすこととなる。いろんな意味でエポックメイキングな印象を残した、2015年の埼玉の高校野球であった。
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