2025年選抜2回戦予想 花巻東vs二松学舎大付

2025年

2025年選抜1回戦

花巻東vs二松学舎大付

51%  49%

〇10-2  米子松陰  〇3-2  柳ヶ浦

両者とも、まずは大会初日の1戦を無事に勝ち抜いた。奇しくも日本で開幕したメジャーリーグ開幕戦を戦うOBを持つチーム同士の戦いにもなった。

 

二松学舎大付は、河内-及川の二人の右腕の好投で初戦は1点差で逃げ切り勝ち。二人とも、大会前は140キロ台の速球を中心にしたパワーピッチャーの印象だったが、特に河内は変化球の制球に優れ、低めを丁寧に突く安定感が光る。テークバックもやや短いため、タイミングも意外と取りにくいか。終盤、捕まりかけたところで、及川にスイッチするタイミングもばっちりであり、会心の試合運びであった。

ただ、迎え撃つ花巻東打線は強力だ。特に高めに入った変化球に対しては容赦ない。昨秋の中国大会準V右腕の新里を3回まで持たせなかった攻撃力は圧巻である。4番赤間、6番山崎の右打者陣が好調で有り、無理に引っ張らずに逆方向へ流しても、外野の頭を越していくパワーを持つ。昨夏からの主砲・古城の不在の影響を全く感じさせない陣容だ。また、相手の守備のスキをついて、一つ先の塁を奪う「機動力」もお手の物。二松学舎の守備陣は、初戦以上にプレッシャーを受けることは間違いないだろう。

 

一方、花巻東は初戦は長身右腕の金野が好投を見せたが、2回戦は左腕・万谷の先発が考えられそう。ややスリークオーター気味の腕の振りから内外、緩急を活かして打たせて取る。特に、左打者にとっては、背中から入ってくるような角度でスライダーが来るため、簡単に攻略はできないだろう。右腕・金野は球威のある速球と縦に割れる変化球が武器だが、万谷の先発で試合を作って、終盤の短いイニングを金野が走り切る方が勝利の可能性が上がりそうな気がする。

対する二松学舎大付打線は、初戦は7安打3点と昨秋の戦いと比較すると、もう一つ爆発しなかった感はあるが、各打者の戦術理解や打撃技術の高さはさすがと思わせるものがある。右打ちが欲しい場面できっちり右方向に打てる技術や、相手の配球を読み切って決定打を放つ勝負強さなど、上位打線を中心に個々の試合を決める力は大会でも上位だ。花巻東の左右の両投手はそれぞれ有効になる決め球を持つため、二松学舎の打者がこれを捨てるのか、狙うのか、試合の中でも状況判断も含め、その攻防に注目したい。

 

投打の力ではほぼ差はないが、細かいプレーの仔細で少し、花巻東に分があるか。ベスト8最初の椅子を手にするのはどちらのチームか。

主なOB

花巻東…菊池雄星(エンゼルス)、大谷翔平(ドジャース)、西舘勇陽(巨人)、松本遼大(日本ハム)、岸里亮佑(日本ハム)

二松学舎大付…初芝清(ロッテ)、鈴木誠也(カブス)、大江竜聖(巨人)、秋広優人(巨人)、秋山正雲(ロッテ)

 

岩手   東京

春  1勝  2勝

夏  1勝  1勝

計  2勝    3勝

春は東京勢がリード、夏は五分の星だ。

1984年選抜では大船渡が大旋風。左腕エース金野の好投で1回戦から順調に勝ち上がり、準々決勝では明徳打線を完封して1-0で勝利。当時はやまびこ打線の池田など、四国の高校野球全盛の時代であり、そこで岩手のチームが、しかも準々決勝で勝利することは、大快挙であった。

準決勝では神宮王者の岩倉と対戦。山口(阪神)と金野の投げ合いは、1-1の同点で終盤戦に。9回裏に2番菅沢のサヨナラホームランが飛び出し、惜しくも大船渡は準決勝で姿を消したが、この大船渡の快進撃が、地元・岩手を大きく沸かせることとなった。

一方、2013年選抜では安田学園と盛岡大付が対戦。盛岡大付はこの大会まで出場8連敗を喫しており、くじ運の悪さもあったが、なかなか全国の舞台で勝利に縁がなかった。しかし、澤田監督から関口監督に交代し、これまでの経験も着実にチームに落とし込んでいた「モリフ」がついに勝利を手にする。

相手は阿部慎之助(巨人)の母校として有名な安田学園。取っては取られの展開は、3-3の同点で最終回に。前年夏に大谷翔平(ドジャース)対策で鍛え上げてきた打力は、新チームになってからも本物であった。疲れの見える相手エース大金に対し、3安打を集めてサヨナラ勝ち。ついに悲願の甲子園1勝を手にすると、ここから「わんこそば打線」の相性で親しまれる強力打線を武器に、勝利を積み重ねていくこととなる。

熱戦の多い両都県の対戦。今回も名勝負の予感だ。

思い出名勝負

2011年夏1回戦

帝京

1 2 3 4 5 6 7 8 9
2 1 0 2 2 0 1 0 0 8
2 0 0 3 0 2 0 0 0 7

花巻東

 

帝京   伊藤→石倉

花巻東  小原→大谷

日大三が本命視される中、その対抗馬に上がるチームの数が非常に多かったのが、2011年の選手権大会だ。その中でも、投打で話題になる選手を抱え、ネームバリューも抜群のチーム同士が1回戦で顔を合わせた。

帝京は2年ぶりの甲子園出場。2年前に1年生で彗星のごとく甲子園に姿を現した伊藤(DeNA)と松本剛(日本ハム)という投打のスター選手を擁した帝京だったが、前年夏にV候補に挙げられながら、国士館にコールドで敗退。ここからリズムが狂い、秋春と全国はおろか、東京大会でもなかなか勝ち上がれない戦いが続いた。

チームは苦しい状況で、伊藤も不調に陥っていたが、前田監督は1年生捕手の石川(オリックス)を起用するなどカンフル剤を投入。新陳代謝を繰り返しながら強さを取り戻したチームは、東東京大会決勝でライバル関東一を6-3で下し、2年ぶりに聖地へ帰ってきた。

一方、その2年前の2009年に最も甲子園を沸かせたのが花巻東。剛腕・菊池雄星(エンゼルス)を擁し、選抜準優勝・夏4強と岩手勢として初となる快進撃を見せ、一躍全国でも注目のチームとなった。その花巻東に菊池雄星をも上回ると言われた逸材が入学したのが2010年春。後にメジャーリーグを席巻することとなる大谷翔平(ドジャース)である。

しかし、成長痛などでなかなか思うようなパフォーマンスが出せず、2年生の夏は岩手大会で優勝を果たすも、膝の痛みの影響で、歩幅を極端に狭めた投球フォームになっていた。その傍らで、技巧派左腕・小原が台頭。結果的に投手層の厚さは増し、4番杉田を中心に7人の左打者の並んだ打線とかみ合い、聖地へと戻ってきた。

 

花巻東は2年生左腕・小原、帝京は伊藤と、ともに予選をエース格で投げていた投手に先発のマウンドを託した。

小原は制球力が武器の左腕。しかし、立ちあがり、不運な形で帝京打線に捕まる。先頭の1番水上に死球を与えると、2アウト後に4番松本には変化球を右方向へ打ち返され、1,3塁とピンチが広がる。ここで5番木下はインサイドの変化球で詰まらせるも、打球はレフト前へのテキサス性の当たりになり、帝京が1点を先制。さらに、動揺したためか、ここで連続四死球を与え、押し出しで2点目を献上する。

小原の調子は決して悪くはなく、要求したコースにボールは来ていただけに、惜しまれる形での失点。しかし、この年の花巻東打線は2年前以上の迫力を持っていた。1年生で甲子園最速記録の148キロを投じ、熟練味を増していた右腕・伊藤に対し、1番太田の内野安打を足掛かりに、連続四死球でいきなり無死満塁のビッグチャンスとなる。ここで4番、5番を連続三振に取り、難を逃れたかと思われたが、6番高橋が高めの変化球をセンターにきっちり同点に。1回表裏は全く互角のスタートとなる。

同点に追いついた花巻東。ただ、大谷の投球に不安を抱えるため、できるだけ小原にイニング数を投げてもらいたいところなのだが、初回な不運な失点が尾を引いたか、波に乗り切れない。2回表に、伊藤自らのタイムリー3塁打で帝京が勝ち越すと、4回表にも2死球に2番阿部のタイムリー3塁打が絡み、失点。ここで花巻東はついに大谷をマウンドに上げるが、4番松本に犠飛を打たれ、5-2。試合巧者の帝京にリズムを掴ませてもらえない。

ただ、この日の花巻東の反発力はとにかく素晴らしかった。流れを持っていかれたかと思ったら引き寄せていく。初回から毎回ヒットを連ね、帝京・伊藤に対し、まったくひるむ様子はない。

4回裏、1アウトから9番佐々木が右中間突破の3塁打で出塁すると、1番太田の内野ゴロの間に生還して、まず1点。さらに、2番大沢のヒットと3番大谷の死球に重盗を絡めて、一打同点のチャンスを作ると、4番杉田が真ん中寄りの速球をきれいにとらえて1,2塁間を突破!これが大谷の好走塁も呼んで2点タイムリーとなり、再び同点に追いつく。

これでなんとか流れを変えたい花巻東。しかし、2番手で登板した大谷もやはり本調子ではない。本来の歩幅でない投球フォームから最速152キロを記録するあたり、やはり異次元の才能であるが、それでも本人の投げたいボールとはかけ離れていただろう。5回表に2番阿部、3番伊藤に連続で内野安打を許すと、これが走塁妨害を誘発して勝ち越し。さらに1,2塁から飛び出した2塁ランナーを刺そうとした送球がセンターにそれてしまい、もう1点が入る。この日はどうしても守りからリズムを作ることができない。

3たびリードを許した花巻東。しかし、ここで未来のホームラン王が規格外の打撃を見せる。6回裏、先頭の1番太田の3塁打と2番大沢の死球でランナーをためると、3番大谷が打席に立つ。帝京のマウンドには2番手の2年生左腕・石倉。1年生捕手の石川との若いバッテリーがアウトコース主体で攻めてくると読んでいたのか。アウトコースを狙ったボールがやや内寄りに入るのを逃さない。打球は左打者の打球にも関わらず、ラインドライブをほとんどせずに、レフトフェンスまで一直線。高校生の流し打ちでは見たことのないような打球で、走者二人を迎え入れるタイムリーとなった。

強豪・帝京を相手に3度も複数得点のビハインドを追いつくという粘り腰。東北人の粘りとともに、花巻東が強豪の地位まで登ってきたことを改めて感じさせる攻撃であった。ただ、この日の大谷のコンディションはやはり万全ではなく、直後の7回表に帝京の4番松本に勝ち越し打を浴び、7-8に。終盤にも再三ランナーを出して攻め立てた花巻東だったが、最後は守備妨害も絡んで得点を上げるには至らず。奇しくもルーズベルトゲームとなった試合を帝京が制し、2回戦へコマを進めた。

 

帝京はその後、2回戦で八幡商と対戦。2年生左腕の渡邊が8回までわずか2安打の好投を見せ、完封ペースだったが、最終回にまさかの乱調。内野守備の乱れもあり、1点を返されてなお満塁のピンチに。ここで相手の5番遠藤にまさかの逆転グランドスラムを浴び、奇跡的なアップセットで八幡商が3回戦進出を決めた。このあまりにショッキングな敗戦を最後に、帝京の甲子園出場はなく、名将・前田監督のラストゲームになるとは、この時は思いもよらなかった。

一方、花巻東は敗れはしたものの、負けてなお強しの印象を与える好チームであった。大谷翔平という屈指のタレントを擁しながら、それに頼らない守備・走塁の徹底も併せ持ち、花巻東らしいチームカラーをこの代もしっかり引き継いでいた。

翌年の選抜も大谷を中心に出場を果たすが、故障明けの影響もあり、大坂桐蔭に敗戦。高校時代に甲子園で勝利を上げることはできなかったが、その後のプロの世界での活躍を見ると、成功へ向けてのアプローチは大正解だったことは、誰の目にも明らかだろう。今後も花巻東というチームから目が離せない。

帝京対花巻東 第93回 夏 甲子園 平成23(2011)年210分428㎆320×180元原版

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