近年まれにみるほど、予選から波乱が続出した2026年の選手権大会。選抜4強の大阪桐蔭、智辯学園、中京大中京、専大松戸はすべて姿を消し、選抜出場校以外でも有力校の早期敗退が相次いだ。聖光学院、明豊といった連続出場校の敗退は、続けて夏を制する難しさを示している。酷暑が年々厳しくなり、不確定要素が多くなっている高校球界において、着実にトーナメントを勝ち上がることは簡単ではないだろう。
そんな中、今年は公立校を中心にフレッシュな顔ぶれがそろった印象だ。そんな中、優勝争いに関しては、昨夏の横浜高校のような1強状態のチームはなく、横並びの展開になっていくだろう。
先頭集団
ただ、そうは言っても、今年の横浜高校の戦力は投手陣を中心に厚いものがある。春夏連覇を狙っていた昨年ほどの完成度はないとはいえ、今年も優勝争いの中心になるのは間違いない。

横浜は、これで4季連続の甲子園出場。県大会では4回戦で東海大相模と対戦するという不運もはねのけ、圧倒的な力で夏の神奈川を制した。
エースは泣く子も黙る球界随一の右腕・織田。下級生時から松坂大輔を超えるのではと言われた右腕は、最速157キロをマークするまでに成長し、アベレージでも150キロ代を記録するという、とんでもない領域に足を踏み入れつつある。これで、制球を乱してくれればまだ付け入る隙もあるのだが、そういうわけでもないため、いよいよもって難攻不落の投手だ。ここに、同じく150キロ台を記録する2年生左腕・小林をはじめとして、本格派投手があと3人控えるのだから、相手校からしたら、たまったものではないだろう。この投手力が横浜の最大の強みである。
一方、攻撃陣もタレントは揃っており、かねてから「この世代は横浜」と言われてきたほどスカウトに成功した代だ。実際、頼れる主将・小野、投手としても150キロ台を記録する強打者・池田、スラッガー川上、昨年の優勝メンバーの江坂とタレントがずらり並ぶ。ただ、今春の選抜では神村学園・龍頭に完封されており、野球のうまさという点では昨年と比べてどうかという節はあった。しかし、夏に向けて機動力もより駆使できるようになったことで得点力は増加。打線が着実に得点を重ねられれば、死角は全くなくなるだろう。
「ハマの王者」を止めるチームは現れるのか、それが今大会の優勝争いの命題である。
しかし、この1年間の戦いぶりを見ても、横浜に対して他県の強豪が全く歯が立たない印象は受けなかった。横浜包囲網を敷く各強豪が打倒する可能性は十分にある。

花巻東は、5季連続の甲子園出場。今大会出場校中でも最も経験値の高いチームと言えるだろう。
エースはこれで4度目の甲子園のマウンドとなる左腕・萬谷。左スリークオーターから繰り出す速球とスライダーのコントロールには定評があり、ボールにキレもあるため、見た目以上に打ちづらい投手だ。また、昨夏は東洋大姫路打線の左打者陣が徹底した流し打ちで攻略したが、今年は球威・スピードともに増したため、そう簡単に打てるボールではないだろう。他にも、野手兼任の赤間ら計算の立つ投手陣が控えており、ディフェンス面で大きな心配はない。
一方、打線も5季連続出場を果たした主砲・古城を中心に強力。木製バットのしなりを活かした打撃で長打を量産する古城、同じく右の長距離砲の赤間、左打席から柔らかい打撃で、どのコース・高さにも対応してくる萬谷と中軸は強力だ。ただ、選抜ではこの3人が智辯学園・杉本に封じ込まれ、3安打完封と成す術もなく敗退。全国トップクラスを知り、3人を中心に打線全体の底上げを図った。特に6番菊地輝、8番斉藤の成長は頼もしい限りだ。
東北勢2校目の全国制覇へ、期待が高まる。
さらに同じ関東地区でしのぎを削ってきた3校も続く。

健大高崎は、3年連続の甲子園出場。県内のハイレベルなライバル対決を制し、一時代を築きつつある。
投手陣はプロ注目投手3人を擁した昨年から一転して、今年は新たな陣容を築かなくてはならなかった。そんな中、今年は2年生右腕の石垣が主戦格として躍動。140キロ台のスピードもさることながら、回転数の多い真っすぐを投じ、相手打者のバットを押し込む。同じ、「石垣姓」でロッテからドラフト一位指名を受けた先輩エースにポテンシャルでは引けを取らないだろう。その他、秋の関東大会で横浜打線を相手に好投した左腕・北田など投手陣ん陣容は豊富。昨年、まさかの6失点を喫したリベンジに燃えている。
一方、看板の打線を引っ張るのは昨年の春夏の甲子園を経験した2番石田雄が引っ張る。巧みなミート力と選球眼で高い出塁率を維持し、塁に出れば巧みな判断力で相手バッテリーをかき回す。1番神崎とのコンビによって、健大高崎の攻撃力が何倍にも増強している。中軸を務める3番石田翔、4番佐藤、5番大岩の長打力は他校の脅威であり、下位打線も巧打者が並ぶ。打線の破壊力は、ここ数年と比較して決して劣らないだろう。
昨年は、秋の関東大会・選抜と2度横浜に敗れた同地区の強豪。今度こそと腕を撫している。

花咲徳栄は、選抜上位校が次々に姿を消す中で、投打に充実した戦いを見せ、再び聖地に帰ってきた。
エースの黒川は選抜ですでにその実力を証明した本格派右腕。角度のある重い速球とフォークボールを武器に、要所で三振が取れるのが強み。県大会では疲労を考慮してイニング数はまだ比較的抑えた方だったが、もともと秋の大会をほとんど一人で投げぬいたように、タフネスさには定評がある。準決勝・決勝は連続完投でチームを優勝へ導いた。ここに、選抜の智辯学園戦の敗北から立ち直った他の投手陣も奮起。左腕・古賀をはじめとして、皆選抜のリベンジに燃えている。
一方、全国屈指の強打を誇る打線は、この夏も威力を発揮。決勝ではハイレベルな浦和学院の投手陣を打ち込み、改めてそのレベルの高さを感じさせた。1番岩井から始まり、3番笹崎、4番佐伯の中軸を中心に、上位から下位まで低く強い打球を返していく。花咲徳栄特有のリスト強化の練習の効果か、打球の質が強く、相手投手の球威にも力負けしない。打線の力で言えば、全国TOP5に入ってもおかしくないだろう。
選抜ではまさかの8点差逆転負けを喫した同校。その借りを倍にして返さんと、夏の舞台に臨む。

関東一は、3年連続の甲子園出場。一昨年が準優勝、昨年がベスト8と、今最も夏の勝ち方を知っているチームと言えるだろう。
投手陣の軸は左腕エース石井。元来、制球力の評価されていた投手だったが、この一年でめきめき球威・スピードともに増してきて、今や東京でも1,2を争う左腕となった。サイドハンドに近い腕の振りから繰り出してくるボールは、独特の球筋であり、そう簡単にアジャストできないだろう。また、2年生右腕の高橋は、うって変わって本格派の剛球投手であり、この二人に継投されると厄介この上ない。伝統の守備力も健在であり、失点は計算できる。
一方、打線は今年も伝統の走力に打力を掛け合わせ、高い攻撃力を誇る。犠打、盗塁ともに数は20を超え、塁に出たら相手の一瞬の隙をついて一つ先の塁を狙っていくため、相手バッテリーからすると息つく暇がないだろう。1番佐宗、2番成合のコンビは、2年前の準優勝時の1,2番にも全く引けを取らない「抜け目なさ」がある。4番井口は、予選で2試合連続のランニングホームランを記録した「走れる4番」。今年も、西部警察のマーチに乗って、東東京の王者が大暴れしそうだ。

神村学園は、3季連続かつ4年連続の甲子園出場。鹿児島では1999年から2003年の樟南以来となる記録であり、南国の強豪の地位を不動のものとしている。
投手陣の中心は不動のエース龍頭。昨秋から内外角に丁寧に投げ分ける制球力に定評があったが、この選抜で横浜打線を完封したことでさらに名を挙げた。終盤に相手の猛追を食らっても、手元を狂わせることのない緻密な制球力があり、相手からすると、いつになっても甘いコースに来ない感じがするだろう。さらに、春から夏にかけて、球威・スピードも増しており、技巧派に加えて本格派の顔も併せ持ちつつある。ここに、左腕・松永も加わり、連戦への不安も解消されそうだ。
援護する打線は、大会でもトップクラスの破壊力を持つ。5点以上のビッグイニングが5度と、一度つながりだすと止まらない破壊力を持つ。攻撃的2番の田中は、選抜で横浜・織田から先制打を放ったように、打って局面を打開できる好打者。ここから3番梶山、4番川崎と右左の屈指の強打者コンビが相手投手を粉砕し、一気に神村ペースへと持っていく。大事な場面ではきっちり送ってくる手堅さもあり、抑えるのが本当に難しい打線だ。
2年連続で4強入りを果たした2,3年前と比べてもそん色ない戦力。何より選抜で横浜を直接下した実績があり、優勝を現実的に狙えるチームと言えるだろう。

沖縄尚学は、夏連覇を狙って4季連続の甲子園出場となる。この一年間、苦しい道のりだったが、最強投手陣が聖地へと帰ってきた。
昨年の優勝を2年生で経験したエース左腕・末吉と右腕・新垣は連戦を勝ち抜いた疲労もあってか、なかなか思うような投球ができない時期があった。特に、末吉は一時期投球フォームを見失うほどのスランプに陥ったが、最後の夏にギリギリ調整を間に合わせ、準決勝・決勝と好投を見せた。そんな中、第三の男である左腕・久高が台頭。チームにとってはうれしい誤算だったが、140キロ台の速球とスライダーで、もはや「第三」と呼べないほどの存在感を放った。新垣も徐々に調子を取り戻しており、この3人が揃えば、大会でも最強の投手陣となる。
一方、打線は昨秋から課題と言われてきたが、最後の夏はチーム打率3割5分を記録するまでに上昇。特に、5番久田、打撃もいい6番末吉のコンビが打率4割台を記録し、3,4番の後に残ったチャンスでランナーを返す役割を果たしたことが大きかった。昨年のチームも最初から最後まで打ち続けるようなチームではなかったが、要所で相手の失投を逃さない集中打を見せ、優勝にまでたどり着いた。今年も昨年と同じような戦いで、駒大苫小牧以来となる夏連覇を目指す。
2番手集団
2番手集団とはいっても、上位校とそう大きな差はない。北から南まで多くの強豪が優勝戦線へ割って入ってくるだろう。

青森山田は、今春選抜8強の八戸学院光星が敗れる中、県内2強の意地を見せて、2年ぶりの夏の出場権を獲得。決勝では昨夏に敗れた弘前学院聖愛にリベンジを果たし、優勝へたどり着いた。
投手陣は、昨年に続いて複数のタイプが異なる投手で賄う。エース川久保は左腕から繰り出す球威十分の速球が自慢。力勝負で相手打者をねじ伏せ、試合を締めくくる。左腕・船橋、右腕・手代森はともにコントロールが良く、左横手の山田は独特の球筋で相手を惑わす。継投策を用いることが多い兜森監督としても、慣れ親しんだ戦い方で挑めそうだ。
一方、援護する打線は非常に強力。秋までは打力不足を指摘されていたが、全員が危機感を持ったことで、夏には上位から下位まで穴のない打線に仕上がった。決勝でサヨナラの犠飛を放った3番田中は非常に勝負強く、下位にも打率4割台の7番木村が控えるなど、相手投手にとっては息つく暇がない。一昨年、昨年のようなスター選手はいないものの、青森山田らしい泥臭く勝つチームに仕上がっている。

仙台育英は、春以降、チーム力が充実し、決勝では永遠のライバルである東北を撃破。勢いに乗って、2度目の全国制覇を狙う。
投手陣は、2年連続で決勝に進んだ2022年・2023年に劣らぬ陣容。140キロ台を投じる投手を5人擁し、分厚い層を見せる。エース古川は抜群の球威を武器に、イニング数と同じ三振を奪取。他にも竹内・加藤・福井といずれも140キロ台を誇る投手が宮城大会を投げぬいたことで、エース格の梶井をほとんど投げさせずに優勝することに成功した。これは、本戦で他校にとって非常に不気味となる。
一方、打線はチーム打率4割1分5厘と今年も強力。春季東北大会では敗れはしたものの、聖光学院を相手に大量得点差をひっくり返し、「仙台育英恐るべし」を印象付けた。特に、4番田山は打率6割を超し、出塁率は実に8割近くに及ぶ大活躍。後ろにも強打者が並んでおり、おいそれと勝負を避けるわけにもいかない打線になっている。また、昨夏の甲子園で「アライバ」を見せた砂-有本の二遊間も健在。強力野手陣が速球派を揃える投手陣をバックアップする。

佐野日大は、春夏連続の甲子園出場を劇的な逆転サヨナラホームランで達成。選抜以降、一回りも二回りも大きくなって帰ってきた。
エース鈴木は、準決勝までを無失点で勝ち上がるという圧巻の投球を披露。もともと内外角に丁寧に投げ分ける投球スタイルで安定感が光るタイプだったが、この夏は相手打者を術中にはめる姿に凄みすら感じさせた。疲労が出た決勝の国学院栃木戦こそ失点したものの、一回り大きくなって帰ってきたエースから点を奪うのは簡単ではないだろう。また、左腕・沖崎も台頭し、鈴木に頼らない投手陣を形成する。
一方、選抜でエースを援護できなかった打線は、決勝の延長10回裏に土壇場で逆転サヨナラ弾を放った6番小島をはじめとして、長打で流れを変えれるようになった。選抜で守り勝つスタイルに限界を覚えたようで、各人は工夫した打撃練習を行い、栃木大会では全試合で5点以上を奪った。今年のチームは手堅さが売りだったが、夏に来て力強さを増しつつある。堅いディフェンスと強打をMIXし、夏は上位進出を狙う。

拓大紅陵は、千葉大会決勝で選抜4強の専大松戸を最終回の逆転3ランで下し、実に24年ぶりとなる甲子園出場。勢いに乗って、全国上位を伺う。
長らく全国の舞台から遠のいていたが、今年の勝因は何といっても投手力の高さだろう。二宮、宮沢の両左腕が安定し、右腕・山辺も計算が立つ。二宮のカーブは左腕投手独特の打ちづらい軌道を描く。千葉大会では7試合すべてを2点以内に抑え、決勝では専大松戸の強力打線を、二宮・宮沢の継投でわずか1点に封じることに。今年の専大松戸打線は非常に評価が高く、あの打線を抑えられたのは大きな自信になるはずだ。
一方、打線の中心は決勝で「劇弾」を放った4番片岡拓。勝負強さと長打力を兼ね備え、専大松戸・門倉のインコース、決して簡単ではないボールを弾丸ライナーでレフトスタンドへ叩き込んだ。古い話だが、1992年夏の池田戦の立川(ロッテ)の逆転ホームランを見るようであった。打撃もいい2番宮沢が攻撃にアクセントをつけてくれるのも心強い。久々の甲子園にはなるが、その実力は全国上位に位置するのは間違いないだろう。

日本文理は、選抜で雨中の中、大差で敗退した悔しさをばねに春夏連続出場を達成。北信越勢で最も期待値の高いチームだろう。
投手陣は春までのエース染谷に加えて、1年生右腕・浅井が加わったことが大きい。縦に大きく割れるカーブを武器に、3試合に先発し、染谷の疲労を軽減。彼の台頭は、チームに大きなプラスをもたらした。染谷は重い速球とスライダーを武器に、試合を壊さない安定感が光る。選抜では守備のミスから崩壊したが、同じ轍を踏まないように鍛えなおし、新潟大会では6試合で3失策に抑えた。
一方、看板の打線はこの夏も威力を発揮。決勝では昨秋に北信越決勝で敗れた帝京長岡の投手陣から8点を奪い、溜飲を下げた。3番秦、4番吉田、5番臼木の3人はいずれも甘く入るとスタンドに放り込む力を持っており、特に吉田はこの夏、7割近い打率を残して手が付けられない状態になっている。選抜で見せきれなかった打ち勝つ野球を体現すべく、再び甲子園に「文理」が帰ってくる。
今年の東海地区は選抜で出場3校がいずれも初戦を突破し、負けた試合も強豪相手に善戦。メンツは変わったものの、全国トップクラスの面々が揃った。

聖隷クリストファーは、大会随一の左腕・高部を擁し、2回戦敗退に終わった昨年を超す成績を狙う。
高部は、昨夏に甲子園に出場を果たしたが、秋の東海大会では三重の強力打線の前に2-10とまさかの大敗を喫した。もう一度自分を見つめなおして鍛え上げた結果、速球の威力は増し、伝家の宝刀・カットボールだけではなく、スライダー・チェンジアップも計算が立つようになった。短いテークバックから威力とキレのあるボールを投じるため、全国クラスの打線でもそう簡単にとらえることはできないだろう。また、右腕・小金沢が台頭したことで、疲労の心配も軽減されつつある。
一方、チーム打率は3割に満たず、強力打線とは言えないが、要所で各打者が渋い働きを見せ、エースを助けた。特に、投手としても活躍する5番小金沢はチームトップの7打点と大事なところでランナーを返すことに成功。決勝では初回にグランドスラムを放ち、優勝へ大きく貢献した。出塁率の高い1番大島、パンチ力のある3番峯田とタレントは居る印象で、繋がれば一気の大量点もありそうな気配がする。

三重は、選抜で王者・大阪桐蔭をあと一歩まで追い込みながらも惜敗。しかし、その高い総合力は誰の目にも明らかだ。
投手陣は、お馴染みの複数投手制で連戦にも不安がない。昨秋からエース格の吉井、選抜で好投した上田の左腕コンビに加えて、快速球を放つ右腕・古川など、いずれもタイプが異なるため、相手打線からすると非常に難渋する。特に、県大会で古川が放った存在感はとてつもないものがあり、終盤に対戦チームに絶望感を与えるほどの球威とスピードを見せた。
一方、昨秋に聖隷クリストファー・高部を打ち込んだ打線は夏に来て、さらにパワーアップ。準決勝では投手陣が捕まって5点を失ったが、がっちり守ろうとした相手に対して、得意の集中打で一気に呑み込んでしまった。左右交互に打者を並べてくる「いやらしさ(誉め言葉)」もあり、捕手からすると実にやりにくい打線と言えるだろう。ポイントゲッターとなる6番に、春までの4番である河口をおけるのだから、その威力たるや、半端ない。現実的に上位を狙える戦力だろう。

享栄は、激戦区の愛知を勝ち抜き、私学4強の意地を見せて出場権を獲得。久々の全国でその舞台を証明しに行く。
久々の復活出場の原動力となったのは強力投手陣。6人全員が140キロ台をマークするというハイレベルぶりだ。右サイドの上江滝は、横手から140キロ台中盤の速球を操り、スライダーとの配合で打者を打ち取る。一般的には、技巧派の投球内容なのだが、上江滝の場合は球威で打ち取る本格派の内容だ。その他にもピンチに強い左腕・近藤をはじめとして、本格派右腕の多賀、岩田など、実に潤沢な布陣になっている。試合や大会が後半になればなるほど、その真価を発揮するだろう。
一方、打線はチーム打率こそ3割に届かなかったが、大会序盤から強豪との対戦が続いたこともあり、数字以上の迫力を秘めている。パンチ力のある1番藤井をはじめとして、ここという場面で長打を打てる選手が揃っており、失投はもれなく得点につながる。5回戦では選抜4強の中京大中京の好投手も攻略しており、全国レベルの相手に対しても臆することなく立ち向かえるだろう。
今年は波乱が多かった近畿地区だが、出そろってみると、ハイレベルなチームが揃った印象。中でも、次にあげる3校は優勝戦線に間違いなく絡んでくるだろう。

社は、兵庫大会7試合で失点わずか3という鉄壁の投手力を武器に勝ち抜いてきた。
総勢5人の投手がマウンドに上がったが、中でも注目はエース番号を背負う岩井だろう。右スリークオーターから繰り出す速球は最速で150キロを超し、抜群の球威で打者をねじ伏せる。アウトコース主体の投球かと思いきや、決勝で対戦した明石商の打者がベース寄りに立つのを見て、インサイドにバンバン投げ込んで抑えるという術も持っている。ややシュート回転する軌道も打者からすると厄介であり、疲れの取れた本戦では快投が期待できる。
一方、打線は犠打主体にそつなく点を取る社らしい野球で勝ち上がってきた。決勝では4番小倉の逆転2ランが飛び出し、勝利をおさめたが、元来はコツコツとセンター中心に単打を重ねて点を取るスタイルだ。そこに犠打以外の機動力も絡め、ヒットが出なくても得点に結びつけられればなお良し。本戦では、相手投手のレベルも上がるだけに、この持ち味を出せるかどうかが命運を握る。

履正社は、3年ぶりの代表権を獲得。選抜王者の大阪桐蔭が敗れる、波乱の大会を制した。
投手陣の軸は本格派右腕の木村。最速147キロの速球と5種類の変化球を持ち、実力は早くから評価されていたが、春の近畿大会で立命館宇治打線を相手にリードを守り切れなかったように、好不調のムラが試合の中で見られるのが課題であった。しかし、最後の夏はエースとして力強くチームを牽引。3回戦では関西創価の好投手との対決を、延長10回1失点完投で制すれば、準々決勝でも強打の近大付打線を封じ込めた。左腕・上山も準決勝の金光大阪戦で好投を見せ、春まで不安視されていた投手陣が安心して見れるようになった。
一方、打線は4番辻を中心に低く強い打球を放ち続け、決勝では24安打で16点を奪取。相手投手からすれば、最もやりづらい「隙の無い打線」に仕上がっている。このコツコツ繋いでいくスタイルの中で、辻という柱がいるのは大きく、センターから逆方向へも伸びる打球を放って、実に15打点をたたき出した。多田監督就任以来、掲げてきた機動力野球も板についてきており、先の塁と狙う意識も高い。攻守に隙の無い布陣で、狙うは7年ぶり2度目の全国制覇だ。

智辯和歌山は、3年連続の甲子園出場。ここ2年は初戦敗退に終わっており、今年こそ本領発揮に燃えている。
彼らの看板はやはり打線であり、昨春の甲子園準優勝メンバーの荒井を攻撃型2番に、捕手としてもチームを引っ張る山田を4番に据え、初回から複数得点を狙う攻撃で相手を呑み込んでいく。特に山田は5割を超す打率を残し、名実ともにチームの要となっている。県大会で、市立和歌山の丹羽など全国区の投手と対戦した経験も大きく、本番ではいつも通りの力を発揮しそうだ。
一方、やや不安があるとすれば投手陣か。今年も複数投手の継投なのは問題ないが、大会序盤にエース格の和気の調子が上がらず、気をもむ結果となった。ただ、そこは他のメンバーでカバーし、長井・久葉の両右腕が好投を見せる結果に。山田が各投手の持ち味をしっかり引き出し、大逆転負けを食らった昨秋の二の舞にはならなかった。今年は扇の要がしっかりしているため、昨年の花巻東戦のように守備から崩れる心配はなさそうだ。
選抜で対戦した以下の2校も、その経験値と総合力に疑いの余地はない。

高川学園は、3季連続の甲子園出場。攻守ががっちりかみ合い、昨夏に続いての出場を決めた。
エースは中国地区屈指の好投手・木下。右腕から繰り出す140キロ台中盤の速球と高速スライダーはともに一級品のボールであり、投球回数を大きく上回る三振を奪った。昨夏は日大三の強打に、今春は英明のうまい攻撃にしたやられたが、最後の夏は本領発揮と行きたい。また、緩急自在の投球が光る右腕・宮崎も成長を見せ、決勝ではエースが捕まるチームの危機を救って見せた。投手力は昨年より上の可能性がある。
一方、打線は4番衛藤がまさかの不振に陥ったが、全体でカバー。2年生の吉田、横山らが好調で、昨年に比べて、結果的にバランスが良くなった感がある。ただ、もともと機動力野球が持ち味のチームだったが、県大会ではあまり動かさずに打って局面を打開するケースが目立った。このあたりを本番に向けて、どうマイナーチェンジしていくかも見ものだ。あとは主砲・衛藤の復調待ちか。当たりが出てくれば、得点力が大いに増しそうだ。
英明は、初の8強入りを果たした今春に続いての出場。決勝では、近年、ライバル関係にある高松商との激闘を制して、勝利をつかみ取った。
エースは四国屈指の左腕・冨岡。キレのある速球にスライダー、チェンジアップを交え、相手打者のタイミングを狂わし、バットを差し込む投球ができる。決勝では高松商打線の粘りに苦しんだが、最後までマウンドを譲らずに投げぬいた。選抜で完投勝利を挙げた右腕・松本倫が先発し、この富岡が救援するパターンが多かったが、決勝では冨岡が初完投。エースの矜持を見せる、執念の投球であった。
一方、打線は秋から春、そして、春から夏と着実に破壊力を増している印象。特に、この夏は2番吉川が5割を超す打率をマークしたことで、複数得点を挙げるケースも多く見られた。3番松原、4番高田の二人は確実性と長打力があり、下位にもしぶとい打者がずらり。何より、選抜で優勝した大阪桐蔭と接戦を演じたことが自信になっているのだろう。今年は、英明というチームが新たなステージに進む一年となりそうだ。

その高い実力に注目が見合っていないかと感じるのが、愛媛代表の新田である。
エースは、本格派右腕の築山。186㎝の長身から繰り出す角度のある速球は威力十分であり、初対戦で捉えるのはなかなか難しい。県大会では準決勝まで無失点投球を続く、まさに無双状態であった。変化球の制球にも優れており、四死球から崩れる心配がないのも強みだ。左腕・木下も三振の取れる好投手であり、築山の負担を軽減する。
援護する打線は、スタメン全員が打率3割以上を記録する好調ぶりを見せた。上位から下位までまるで穴がなく、ホームランこそ1本に終わったものの、2塁打が非常に多い印象だ。1番酒井、3番松田、4番中野と軸になる打順に勝負強い打者が座っており、大事な場面では確実に送ってタイムリーを放つ攻撃を見せた。大会5試合で7ホームランを放って準優勝した、1990年の選抜のように、全国に「新田旋風」を巻き起こしたいところだ。
九州地区の2校も、他校からすると非常に怖い存在だ。

長崎日大は、春夏連続の甲子園出場。決勝は大崎との息詰まる死闘を制し、再び聖地へとたどり着いた。
エースは長身右腕の古賀。角度のある速球と縦に割れるカーブが武器であり、選抜では山梨学院の強力打線を前に、初回に5点を失ったが、2回以降は無失点でしのいで、手ごたえをつかんだ。高低を使った攻めの投球を見せ、調子がいい時は手が付けられない投手だ。現に、決勝の大崎戦では、終盤までノーヒットノーランを継続し、あわやと思わせる快投を見せた。2番手の左腕・中村もキレのあるボールを投げる。
一方、打線の軸は、決勝で大ホームランをかっ飛ばした4番川鍋。昨秋から評判の強打者であったが、しっかりとらえた打球はどこまでも飛んでいく、と感じさせるほどの飛距離を見せる。当たればでかいというだけでなく、確実性もあるのが強みであり、川鍋に繋げば何とかしてくれる期待感がある。7番植木、9番広石と下位打線が当たっているのも心強く、本戦では初戦敗退に終わった借りを、「倍返し以上」で返すつもりだ。

日南学園は、投打にパワフルな野球で宮崎大会を圧倒。隠れ優勝候補の可能性もある好チームだ。
投手陣は、エースで3番の田中と2年生左腕・谷口が軸。田中は140キロ台中盤の速球にスライダー、カットボールを交えて打たせて取り、谷口もキレのあるボールで狙って三振が取れる。二人とも大崩れする心配がなく、バックも堅守で支える。野手間の意思疎通が非常によく取れており、強いチームの特徴である。
また、打ってもチームの中心である田中、谷口はともに中軸で圧巻の強打を見せた。特に、田中のリストの強さは驚異的であり、とらえた打球はもちろんのこと、タイミングを外されても強い打球を放つ。下位打線がやや当たりがなかったが、6番までで勝負を決めてしまうのではないかと感じるほどの、上位陣の迫力である。
スーパーエースを擁し、上位伺う
今年は、投打二刀流で活躍する選手をはじめとして、ポテンシャルの高い投手が多い印象。「野球は投手力」の格言通り、優勝候補を食ってしまう可能性は十分にある。

ハイレベルな東海地区でもう1校残っている中京は、剛腕・鈴木を軸に虎視眈々と上位を伺う。
鈴木は148キロを計測する速球はもちろんのこと、スライダー、チェンジアップのキレも抜群。ストライクゾーンの横幅、高低、奥行きをすべて使い、なおかつ球威でも押せる、好投手だ。大会では体調を崩して本調子でなかったにも関わらず、23回を4失点でまとめており、ここに無失点右腕・西岡も加わるという怖い布陣だ。打線は、打っても3番の鈴木を中心に破壊力十分であり、決勝では大垣日大の好左腕二人から13安打を記録。投打に充実しており、非常に怖い存在だ。
以下の3校はいずれも九州の代表校。全国屈指の実力派投手が、選抜出場校や連続出場を狙う強豪を下し、甲子園へ乗り込んでくる。

東筑は、神宮王者の九州国際大付を逆転で制し、勢いそのままに頂点へ駆け上がった。186㎝の長身右腕・深町と女房役・平山のバッテリーは中学時代から騒がれた存在であり、最後の夏に夢舞台をつかみ取った。打線はここ一番で長打が出るのが特徴で、2番の筋田が打率4割5分と当たっていることも大きかった。数字上は全体で2割9分4厘と目立たないが、大事な局面で突如火を噴く印象がある。好バッテリー中心に旋風を巻き起こすか。

有明は、斎藤・工の強力左腕コンビがチームを牽引。準決勝では選抜出場校である伝統校・熊本工に競り勝ち、念願の甲子園出場をつかんだ。もともと斎藤がエースとして独りで引っ張っていたが、工が成長したことで先発を任せられるようになったのが大きかった。工の緩急で相手を惑わし、終盤に斎藤の速球で突き刺す。この継投が全国でどこまで通用するか見ものである。打線は、1番永田を中心に機動力があり、かき回す野球で活路を見出したい。

大分商は、最速150キロをマークする長身右腕・平田が軸になる。長身ではあるが、どちらかと言えばスリークオーター気味の投げ方。それでも打ちやすいわけでは全くなく、アウトローに決まったボールは高校生の打者ではちょっと手が出ないと感じさせるボールだ。コントロールのいい右腕・米田も安定感があり、投手力は間違いなく出場校中でも上位だ。打線は、打率5割と当たっている3番木村が軸であり、彼の前にどうランナーをためて回せるかがカギ。守り勝つ野球で旋風を巻き起こしたい。
虎視眈々、伝統校・常連校
今大会も多くの常連校・伝統校が顔をそろえた。甲子園をよく知る強豪が、聖地でひと暴れせんと乗り込んでくる。

鶴岡東は、投打ががっちりかみ合って、2年ぶりの出場を達成。菅野、小山の両左腕はともに打たせて取る投球で安定感があり、山形大会では5試合で失点を4にまとめて見せた。2番を打つ押井は、本来なら4番を張れるだけの強打者であり、彼の豪打の前に流れを失った対戦相手は、次々と鶴岡東打線の強打にのまれていった。下位打線も当たっているが、上位陣が特に強力であり、初回から対戦相手は警戒が必要だ。
東海大甲府は、選抜8強の山梨学院が敗れる中、決勝でその山梨学院に勝った帝京三を下し、3年ぶりの出場を決めた。ハイライトはやはり準決勝の甲府工戦か。県内伝統の「甲府対決」は、4点ビハインドで最終回を迎えることとなったが、驚異的な粘りで追いつき、延長でサヨナラ勝ち。この勝利がチームに与えた自信は、ことのほか大きかった。エース村尾をはじめとして投手陣も安定しており、3年前よりも総合力は格段に上回るだろう。上位進出が十分あり得そうな布陣だ。

松商学園は、2年連続の甲子園出場。昨年は、岡山学芸館の前に完封負けを喫したが、今年は打率が3割7分を超すほどに成長し、強打で勝利を目指せるチームに変貌した。それでいて、小技を駆使した細かさは失っておらず、得点力は非常に高い。エース黒岩を中心に投手陣も分厚く、決勝では控え投手だった竹内は完投勝利をマーク。昨年とは一味も二味も違う姿で甲子園に乗り込む。

敦賀気比も2年連続の甲子園出場。例年ほどの強打は感じないが、辻琉・鶴田の左腕コンビの安定感が光り、福井大会では北陸や福井工大福井との接戦を制した。辻琉は打撃でも4番に座るが、福井大会ではもう一つあたりが止まる結果に。投打で彼の重責を取り除くためには、福井大会で14打数8安打と大当たりだった3番長谷川の、引き続きの活躍が求められるだろう。昨年は春は健大高崎、夏は横浜に敗戦。関東の超強豪と対戦して、全国レベルを体感してきた選手たちが、最後の夏に花を咲かせたい。

遊学館は、意外にも11年ぶりの甲子園出場となる。投手陣は好左腕・石坂や2年生右腕・竹中、同じく右腕の閨谷を中心に豊富な陣容を誇り、石坂は、出どころの見にくいフォームから繰り出すカーブを武器に、技巧的な投球を見せる。また、豊富な投手陣を支える捕手・高磯は北信越屈指の好捕手だ。打線は、9番相原が当たっていることが大きく、ここから上位に回り、中軸の谷島・南で捉える攻撃がよく見られた。投打ともに層の厚さがあり、底力を感じさせるチームだ。

天理は、5試合で2失点の鉄壁の守りと強力打線がかみ合い、2年連続の甲子園出場を果たした。右の長尾、左の橋本はいずれも制球力に優れ、特に橋本は春季県大会で無安打無得点を達成するなど、好調時は手が付けられない投球を見せる。打線は、3番永井、4番金本、5番関村の3人がいずれも打率5割以上を記録。決勝では、選抜準優勝の智辯学園を下した奈良大付の剛腕・新城に対し、3人で8安打8打点をたたき出して、攻略して見せた。昨年は春夏連続で初戦敗退に終わっており、まずは全国1勝、そして、そこから上位進出につなげていきたい。

立命館宇治は、1,2年生中心の若いチームが1試合ごとに勢いに乗り、3年ぶりの京都大会を制覇。この8年で3度目の出場と、すっかり常連校の顔になりつつある。2年生ながら主将で捕手と重責をこなす江原を中心に、春までは下級生野手の活躍が光り、3年生の影が少し薄い面は確かにあった。しかし、最後の夏に投手では谷口、野手では打率5割を記録した2番藤川などが奮起。特徴の違う3人でつなぐ投手陣を強打で支え、決勝では終盤に大量7点のビッグイニングをたたき出した。おそらく立命館宇治史上最もスケールの大きなチームであり、本戦へ向けて期待が高まる。

岡山学芸館は、3年連続で夏の甲子園に出場。試合巧者ぶりを発揮し、今年も夏の勝利を狙いに行く。エースは技巧派左腕の田路。昨夏の舞台も経験済みの男は、打たせて取る投球術で、難敵揃いの岡山大会を投げぬいた。また、決勝ではその田路が打たれた後を左腕・的場が抑え、逆転勝利を演出。頼もしい存在になりつつある。一方、打線はチーム打率が出場校中最下位の1割台と記録だけを見ると不安視されるが、放ったヒットのほとんどが得点イニングに集中しているという、際立った勝負強さを見せる。1番繁光を中心に少ないチャンスでしっかりランナーを進めて返すのが彼らのスタイルだ。

鳥取城北は、投打に高いポテンシャルを誇る選手を擁し、3年連続の甲子園に。県勢の連敗を止めるべく、夏の舞台へ挑む。投手陣は、準決勝まで3試合連続完封の離れ業をやってのけたエース下浦が安定し、終盤は速球派の剛腕リリーバー刈谷が控える体制。打線も打率9割という驚異的な数字を記録した4番宮野を中心に、成長著しい2年生秦、ミート力の高い5番為壮と中軸は力のある面々がそろう。下位の山本、小笠原らもしぶい打撃を見せており、攻撃力もかなりのものだ。連敗ストップへ期待が高まる布陣である。

明徳義塾は、2年ぶりの甲子園出場。昨夏の高知大会決勝で敗れた高知中央にリベンジを果たし、代表に返り咲いた。投手陣の軸は、左腕藤本と右腕・田宮が軸。このタイプの違う二人の継投で勝利を呼び込んできた。藤本は力みのないフォームから繰り出すキレのあるボールで打たせて取るため、見た目以上に打ちにくい左腕だ。打線は1年夏から甲子園を経験している4番里山を中心に、小技も絡めたて得点を重ねていく。里山はなかなか調子が上がらなかったが、決勝ではチームの全得点をたたき出す活躍を見せ、復調気配名の心強い。

鳴門渦潮も、2年ぶりの甲子園出場。初戦敗退に終わった前回のリベンジを期す。投手陣の軸はサイド右腕の西村。右サイドハンドから力のある速球をアウトコース低めに集め、打たせて取っていく。やや荒れ球なのがかえって幸いしたか、打たれ強い投球を見せた。打線は、一発長打が出るタイプのではないが、センターから逆方向へ単打を連ねていく。往年の渦潮打線の特徴は、今年のチームにも引き継がれていそうだ。
旋風巻き起こすか、初出場校
今年、最も不確定要素で読みづらいのが、初出場の3校。1つは県内の絶対王者を下し、残り2校は激戦区をあれよあれよと制して甲子園へ乗り込んできた。

東日本大昌平は、聖光学院が絶対王者の状況が続いた中で、ついに風穴を開けて初出場をつかみ取った。大きかったのは、右腕・照沼の成長であり、準決勝では強打を誇った聖光学院をわずか2安打に封じる快投を披露。相手の斎藤監督をうならせるほどの球威があった。もう一人の右腕・白田も本格派であり、この二人でそう多くの失点は考えにくい。打線は、足を使った攻めに定評があり、決勝では10得点と調子を上げてきている。全国に出てもそん色ない総合力を持つチームだ。

八王子実践は、強豪ひしめく西東京をタフネスな野球で勝ち抜いた。大会ではベスト16の日大鶴ケ丘戦が一つの山に。4点ビハインドという絶望的な状況で迎えた9回に驚異的な粘りで6点をたたき出し、会心の逆転勝利を収めた。終盤戦は、塚原、奥山の両右腕が安定。二人とも完投能力があるため、投手起用の幅がぐっと広がった。失策数は多かったが、好捕手・大塚がにらみを利かしており、そう簡単には走らさない構えを見せる。激戦区を勝ち抜いた勢いで、本戦でも勝ち進みたい。

福山は、下馬評には全く上がらなかったところから、快進撃を見せ、激戦の広島大会を制した。大会終盤は連続で逆転勝利を収めたように、試合をトータルで見てどっしり構える不気味さがある。本格派右腕・来山から左腕・岩本へつなぐ継投で守りのリズムを作り、機動力を駆使した野球でひっくり返すのが勝ちパターン。この戦いの前に、市呉・広島商と言った近年の甲子園出場校も涙を飲んだ。初出場の公立校と侮るなかれ、その実力は本物である。
強力打線
夏の甲子園で勝ち進むにはやはり打力は不可欠。打ち勝つ野球で上位進出を狙う。

白樺学園は、2年ぶり5度目の大舞台となる。春までケガで離脱していた3番後藤が戻ったことで一気に攻撃力が増した。下級生の多いチームを象徴する、センスあふれるショートストップであり、決勝でも猛打賞の活躍。彼の前にランナーをためる展開を作りたいところだ。また、小技を駆使した攻撃も光り、時に「剛」、時に「柔」な仕掛けを見せる。投手陣は、エース村端が軸に。先発でもリリーフでもチームを救うエースを、どんな場面で登板させるのか、亀田監督の投手起用も重要となる。

札幌日大は、2年ぶり2度目の甲子園出場。打線は、1番星野、3番川合、攻守の要の4番前田と上位に力のある選手が並ぶ。特に、川合は、重要な局面で決定的な仕事を果たしてきており、本番でも期待がかかる。全体的に選球眼の優れた選手が多く、ボール球に手を出さずに相手を追い詰めていくのが特徴だ。犠打を駆使する手堅さもあり、色んな「顔」を持った攻撃陣と言える。投手陣は、速球派右腕・石川から2年生左腕・前田へつなぐリレーを確立。タイプの違う2投手で相手の目先をかわしていきたい。

霞ヶ浦は、2年ぶりの甲子園出場。前回は、あの智辯和歌山を相手に勝利を挙げており、今回もその再現を狙う。茨城大会で光ったのは下位打線の好調さであり、7番菊地、8番渡辺の二人がいずれも打率4割台を記録。彼らがチャンスを作り、上位に回って返すパターンで、決勝では常総学院から9得点を挙げた。小柄なエース稲山も成長著しく、茨城大会では安定感ある投球でチームを牽引した。しぶとい打線でエースを援護したいところだ。

高岡商は、伝統の強力打線で4年ぶりに甲子園へ返り咲き。強力打線の上位3人はまさかの全員一年生。ダイヤのエースの薬師高校か!と突っ込みたくなる布陣だが、これがどうしてどうして、とても一年生とは思えない強打を発揮し、準決勝では好左腕・前田を擁する高岡第一に対しても、前田が出てくる前に勝負を決めてしまった。投手陣は3人の継投で試合を作るが、球威があるタイプではないだけに、先制して守り切る展開を全国の舞台でも作りたいところだ。
堅い守りで勝利狙う
以下の5チームは投手力を中心に安定したディフェンスを誇り、勝ち上がってきた。本戦でも台風の目になる可能性は十分にある。

横手は、守り勝つ野球で実に57年ぶりとなる甲子園切符をつかんだ。エース佐藤宙が最少失点で踏ん張り、打線が数少ないチャンスをものにする。初戦の金足農戦から見せ続けた必勝パターンで、本命が次々と消した秋田大会を生き残ることができた。佐藤宙は緩急を活かした投球に定評があり、相手を見ながらペース配分のできるクレバーさもある。2018年の金農旋風の再現を、今度は自分たちが果たさんと聖地へ乗り込んでいく。

八幡商は、あの伝説の逆転満塁弾に沸いた2011年以来の甲子園出場。当時と同じく、今年も投手を中心に守りからリズムを作る、伝統のスタイルを受け継いでいる。エース田上は140キロ台中盤の速球に威力があり、技巧派左腕・久保田との継投で、より効果的となっている。打線では3番中村が7打数連続安打と大当たりを見せており、本戦で15年前の5番遠藤のような主役になりたいところだ。「天八魂」の名のもと、今年も快進撃に期待がかかる。

立正大湘南は、エース左腕・川口がほとんどの試合を一人で投げぬき、3年ぶりの出場を達成。抜群のコントロールと緩急を駆使し、見た目以上に打ちづらい投球をする印象だ。捕手・柴垣のリードもさえわたり、バッテリーで試合を支配していく。打線は、決勝で最終回に3点を奪ったように、ここ一番での勝負強さがあり、機動力も駆使して得点を奪う。令和になって好調な島根県勢の勢いをかって、今年も勝利をつかみ取る構えだ。

佐賀商は、8年ぶり17回目の出場。安定感のある東條・溝口の右腕コンビはいずれも試合を壊す心配がなく、変化球をうまく駆使した投球で打たせて取る。バックは5試合で7失策と数字上は目立たないが、内野手を中心に動きが良く(地方球場ではグランドが荒れている側面もある)、佐賀県勢らしい堅守のチームに仕上がっている。選球眼のいい打者が並ぶ打線が、コツコツ援護できれば、再びのがばい旋風もあり得そうだ。


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