2026年選手権準々決勝予想 仙台育英vs智辯和歌山

2026年

2026年選手権準々決勝

仙台育英vs智辯和歌山

49.5%   50.5%

〇3-1  札幌日大  〇2-1  社

〇1-0  花咲徳栄    〇7-3  敦賀気比

〇6-3  拓大紅陵

複数の投手陣を擁し、打線は3回戦で本来の強打の兆しが見えてきたという、似た経路をたどってきたチームの対戦。ハイレベルな攻防が予想される。

智辯和歌山は3回戦では左腕・米原を先発させ、技巧派右腕の久葉に繋ぐという投手リレーで強打の敦賀気比打線を延長11回で3点に封じて見せた。二人の技巧的な投球はもちろん称えられてしかるべきだが、驚きなのは初戦で登板したエース格の和気と長井の両右腕を完全に温存したこと。おそらく終盤はほとんど作らせておらず、今年の中谷監督にはどこか肝が据わった感が漂っている。選手たちにもそれは言える話で、投手陣を中心に危ないと思われる場面でとにかく冷静に守ることができる。3回戦でも無死満塁のチャンスを逃した直後の守りで、落ち着いたブルドッグ守備で犠打を封殺。こうした落ち着きがここ数年見られなかった智辯和歌山だが、今年は簡単に崩れなさそうだ。

対する仙台育英打線は、3回戦に来て打線の状態がかなり上向いてきた様子だ。拓大紅陵の左腕・二宮のボールが高かったこともあるが、軟投派の左腕のボールをしっかり引き付けて打つことで、初回からタイムリー3本で3点を先行した。1,2回戦と本格派右腕を相手に少し苦しい打撃になることもあったが、この試合でどこかつかえが取れた印象はある。打線の中で当たりが出ていない打者がほとんどいないのも好材料であり、下級生主体ながら勢いに乗りつつある。しかし、軸になるのは何といっても主砲の田山だろう。3試合連続で打点をマークしている4番のバットにまずは期待したい。

一方、仙台育英は3回戦では2年生右腕・福井が粘りの投球で6回途中まで3失点と試合を作り、梶井、そして最後は今大会エース格の古川とつないで、勝負強い拓大紅陵打線を相手にしのぎ切った。須江監督としても、今大会はおそらくこの3人で戦う方針にしているであろう。これで全員2試合以上の登板を経ており、さらなる上位進出へ向けて戦う体制は整ったと言えそうだ。いずれも、140キロ台中盤を計測する速球と決め球となる変化球を持っており、力の投球で行けるところまで飛ばす投球をしていくことになるだろう。

対する智辯和歌山は、3回戦で敦賀気比の2年生左腕・辻琉の前に大苦戦。140キロ台の速球と縦に割れるカーブによる緩急の前になかなか得点を挙げられなかった。しかし、8回表に中軸から作ったワンチャンスを生かして同点に追いつくと、タイブレークの11回表に打線が爆発。苦しい展開を乗り越えての、この猛打はチームに手ごたえと自信を残したはずだ。また、初戦はやや変則的な本格派右腕の社・岩井、2戦目は左腕・辻琉が相手だったが、次の仙台育英の投手陣は皆オーソドックスな本格派である。タイプとしては一番得意な部類に入るだろう。カギはここまで2試合で無安打の2番荒井か。四死球は選べており、状態は悪くないはずで、彼のヒットが出れば、チームに勢いがつくはずだ。

両者の投打のポテンシャルにそう大きな差はないが、チームとしての成熟度でわずかに智辯和歌山が上回るか。それだけ正捕手・山田を中心にどっしり構える強さがある。仙台育英は、この夏一度もリードを許しておらず、次も先行逃げ切りの展開に持ち込みたいところだ。

主なOB

仙台育英…山口廉王(オリックス)、山田脩也(阪神)、入江大樹(楽天)、郡司裕也(日本ハム)、梅津晃大(中日)

智辯和歌山…岡田俊哉(中日)、西川遥輝(ヤクルト)、黒原拓未(広島)、黒川史陽(楽天)、細川凌平(日本ハム)

 

宮城  和歌山

春  0勝  0勝

夏  2勝  1勝

計  2勝  1勝

対戦はすべて夏で2勝1敗と宮城勢がリード。意外にも初対戦が1987年であり、そこまでこの両県の対戦が一度もなかったのだ。

このカードにはいずれも智辯和歌山が絡んでおり、1987年は選手権初出場の年。智辯学園で甲子園経験は豊富な高嶋監督も同校を率いては初めての甲子園であった。しかし、結果は常連校の東北に善戦及ばず、1-2と惜敗。ここから智辯和歌山は、春夏通じて初出場以来5連敗という厳しい現実にさらされる。

しかし、ここで高嶋監督は奮起。甲子園の観衆に「おーい、智辯和歌山、また負けに来たんか」と屈辱的な呼びかけをされたのは有名なエピソードであるが、ここから甲子園に出るためではなく、甲子園で勝つためのチーム作りを心掛けた。夏の舞台で打ち負けないための打力、スタミナ負けしないための体力練習、一人当たりの練習量を増やすための少数精鋭制など、高嶋流の方針を編み出していき、チームを強化する。

そして、迎えた1993年夏。相手は、初めての夏に敗れた東北であった。試合は、先発・有木の好投と自らホームランを放つ活躍もあって、1-0と東北をリードしたまま進んでいく。土壇場9回表に同点に追いつかれるが、最後は延長12回裏にリリーフした松野のヒットでサヨナラ勝ち!登板した投手二人の打点で勝つという珍しいケースであったが、とにもかくにも執念で初勝利をつかんで、ついに連敗の記録を止めたのであった。そこから、全国屈指の常連校になったのは周知の事実。しかし、今や通算76勝を挙げている同校の歴史は間違いなくここから始まったのである。

因縁めいた経歴のある両県の対戦。今回は、どんな結末が待っているだろうか。

思い出名勝負

2007年夏1回戦

智辯和歌山

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 0 0 2 0 0 0 2
2 0 0 0 0 0 0 2 0 4

仙台育英

 

智辯和歌山   岡田→芝田

仙台育英    佐藤

予選で、優勝候補の大本命と言われた、中田翔擁する大阪桐蔭が敗退し、本命不在の中で幕を開けた2007年の選手権大会。その1回戦で好投手と強力打線がぶつかる注目のカードが実現することとなった。

仙台育英は前年夏から3季連続の甲子園出場。2001年の不祥事で、ライバルの東北高校に選手が流れて以来、覇権を完全に奪われていたが、前年の2006年の決勝で2年生エース佐藤(ヤクルト)の奮闘で東北との延長引き分け再試合を制し、ついに代表の座を奪い返すことに成功した。しかし、夏の甲子園では初戦の徳島商戦で快投を披露して初戦を突破するも、2回戦で同じ東北の日大山形に敗退。相手の4番常川に浴びた満塁走者一掃打が痛く、追いつくことができなかった。

新チームでは、佐藤が絶対的エースとなり、秋の東北大会を制するも、神宮では初戦で報徳学園に2-10とコールド負け。選抜でも初戦で優勝した常葉菊川に1-2と惜敗し、なかなか全国での1勝が遠い状況だった。佐藤自身の投球にも悔いはあったが、4番高橋を中心とした打線が援護しきれなかった部分もあり、本戦へ向けて正捕手を交代するなど、投攻守でチームの立て直しを図った。その結果、宮城大会では苦しみながらも勝ち続け、準決勝では相手の2年生左腕・荻野に投げ勝って3-2と辛勝。決勝は、仙台商の猛追を振り切り、8-4で3季連続の甲子園をつかんだのであった。

一方、智辯和歌山はこの世代は、いわゆる谷間の世代と言われ、苦しい時期を過ごしていた。前年夏に甲子園を沸かせた橋本、広井、亀田といった主力がほぼ全員3年生であり、経験値があったのはショートの楠本と、秋に橋本から正捕手を奪っていた植芝、夏の準決勝で代打で登場して田中将大からセンター前ヒットを放った芝田くらいであった。秋の大会では主砲・坂口(巨人)を1番に据える攻撃型の打線を組むも、選抜をかけた近畿大会準々決勝では強打の市川に3-10とコールド負け。なかなかチーム編成が見えてこない感があった。

しかし、春を迎え、1年生ながら将来性豊かな左腕・岡田(中日)が入学してくると、2年生の芝田とのリレーを確立。打線は、主将の田村を1番、楠本を2番に置くと、3~6番には勝谷、坂口、芝田、浦田と全員2年生を起用。2か年計画でチームを作ることも多い高嶋監督らしい編成であったが、正捕手の植芝や楠本など3年生がしっかりセンターラインを支えてこそのチームであった。和歌山大会では、例年以上に苦しい戦いとなるが、準々決勝の箕島戦では勝谷のサヨナラ満塁弾で勝利するなど、確実に勝ち上がっていた。決勝では高野山との投手戦を4-1で制し、これで3年連続の出場を達成。なんだかんだで、「和歌山の夏はやはり智辯」という伝統を崩さずに守り抜いたのであった。

 

さて、甲子園で最速記録を狙うと意気込む剛腕・佐藤に対し、智辯和歌山打線がどう立ち向かうのか。昨夏は同じ剛腕タイプの駒大苫小牧・田中(楽天)に敗れたが、この時は真っすぐよりもスライダーに翻弄された感があった。速球で押してくる佐藤と智辯和歌山の、特に才能豊かな2年生軍団が相対した時、どうなるのか、試合前からワクワクが止まらなかった。

試合は、立ち上がり、いきなり仙台育英が主導権を握る。1回表を佐藤が圧巻の投球で3者凡退に打ち取ると、その裏、1年生左腕・岡田に打線が襲い掛かる。やや緊張君のサウスポーに対し、好打者の1番橋本(巨人)が四球を選ぶと、2アウトになりながらも犠打で2塁へ。ここで、主砲・高橋がアウトコースの速球を豪快に右中間ははじき返し、タイムリー3塁打として、まず1点。さらに5番加藤もセンター前タイムリーで続き、いきなり2点を先行する。

これまで、エースになかなか援護を挙げられなかった打線がくれた初回の2点のリード。これは、佐藤の心に火をつけるには十分だっただろう。序盤から凄まじい勢いで飛ばしていく。

ストレートに強いはずの智辯和歌山打線だが、150キロ台を連発する佐藤の投球の前に全く手が出ない。これまでも150キロを計測する投手は、松坂大輔の登場以来、何人かいたが、これだけコンスタントに連発した投手は記憶にないくらいであった。バットにボールが当たりそうな気配がなく、当たったとしてもぼてぼての当たり。マシンで160キロ台に設定していたとしても、やはり生身の人間が投げる150キロ台は別物だ。

智辯和歌山は、3回表にショートと佐藤自身の失策でランナーをだすが、勝負所でコーナーいっぱいに決まる速球が素晴らしく、得点を挙げるには至らない。5回表に7番大島がようやくチーム初ヒットとなる内野安打を放つも、後続は3者連続三振。5回までに8三振を記録したが、その数字以上に圧倒した内容であり、果たして得点は入るのかといった雰囲気が漂う。

ただ、智辯和歌山もチームとしてディフェンス面の成長を見せ、2回以降は、仙台育英打線を封じ込めていく。岡田が2回裏に三者連続三振を奪って立ち直ると、4回裏にピンチを招いたところではいち早く2番手の左腕・芝田にスイッチ。このあたりは、継投に慣れている高嶋監督らしく、思い切りのいい決断であった。

試合は、仙台育英が2-0とリードのまま前半戦を終了。内容は圧倒的に仙台育英が押しているにも関わらず、リードは初回の2点のみ。徐々に仙台育英にも圧力はかかっていたのか。

すると、グランド整備明けの6回表。試合が一気に動く。先頭の2番楠本を三振に打ち取るも、3番の好打者・勝谷を佐藤は四球で出してしまう。ここで、打席には2年生ながら期待を一身に受ける主砲・坂口。速球に狙いを絞っていたが、スライダーが高めに入るところを逃さなかった。打球は、打った瞬間にホームランと分かる完ぺきな当たり!レフトスタンド中段まで届く豪快な一撃で、一気に試合を振り出しに戻す。打たれた佐藤は唖然とするほどの一発。天性の飛距離を誇る若き主砲が、一躍その名を全国にとどろかせた瞬間であった。

2-2の同点となった試合は、その後、緊迫した守り合いに。佐藤は6回表、ホームランを打たれた後にも2安打を浴びてピンチを招くが、代打・森本を三振に打ち取り、ピンチを逃れる。8回表には、先ほどホームランを打たれた坂口に対し、アウトローの真っすぐで見逃し三振を奪ってやり返すなど、渾身の投球でこれ以上の点は与えない。智辯・芝田も毎回ランナーを出しながら、バックの堅守もあってしのぎ、試合は同点のまま8回裏に突入する。

この回、芝田は簡単に2アウトを奪うが、春以降に正捕手となった8番一丸にヒットを許すと、打撃のいい9番佐藤には四球を与える。ここで、打席には2年生のトップバッター橋本。スタメンの中で最も打撃センスの光る、俊足の好打者は芝田の速球がアウトコース高めに入るところを逃さなかった。左打席から流し打った打球は、背走するレフトの頭上を越え、切れることなくレフトフェアゾーンにイン!2者を返す貴重なタイムリー3塁打となり、土壇場で再びエースに援護点をもたらした。

リードをもらった佐藤は、残っていた余力を振り絞るように快速球と高速スライダーを投げこんでいく。最後はチームの屋台骨を支えた3年生の1番田村と2番楠本を三振に打ち取り、3者連続三振でゲームセット!これまでの悔しさを見事に晴らす快投を見せ、笑顔でホームベース付近に仙台育英ナインが集まったのであった。

仙台育英は、その後、2回戦で再び智辯勢である、智辯学園と対戦。この試合で、佐藤は当時の大会最速記録である155キロを計測し、ついに歴史にその名を刻むこととなった。しかし、試合は5回裏に浴びた集中打での5点が致命傷となり、敗退。ボールの質自体は本当に素晴らしく、仙台育英復活の流れを作り出したエースだったが、やはりかくも全国で勝つという事は難しいのだと感じさせられた。

一方、智辯和歌山は若い選手たちが多く出場したことで経験値が残り、翌年は春夏連続で8強入り。夏の3回戦では1イニング3ホームラン、坂口は1イニングで個人2ホームランという凄まじい集中打を見せて、彼らもまた、歴史に名を残したのであった。しかし、常々高嶋監督が言われていたように、やはり「チームを作るのは3年生」である。彼らの活躍の礎にあったのは、前の年の夏に苦しみながらも全国へと連れて行ったくれた3年生の尽力があってこそだったと言えるだろう。派手さはなくとも、きっちり守ることのできる好チームであった。

個人的に鳥肌が立った高校野球のシーン⑦ 智辯和歌山vs仙台育英

 

 

 

 

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