2026年選手権2回戦
智辯和歌山vs敦賀気比
51% 49%
〇2-1 社 〇10-0 横手
投打で充実した試合内容を見せた優勝経験校同士の激突。意外にも今大会が初対戦であるが、実力伯仲の好試合になりそうだ。
智辯和歌山は県大会を見る限り、少しエース和気の状態に不安があったが、甲子園ではその心配を払拭。内外角にきっちり投げ分けるコントロールを取り戻しており、2安打無失点と完ぺきな投球を展開した。次戦以降も期待が持てる投球内容だ。また、それ以上に素晴らしかったのが、注目の捕手・山田を中心としたディフェンス陣。内外野が堅い守りを見せ、7回裏の1アウト3塁のピンチでは、相手の作戦を読んでウエストし、空振りで挟殺する冷静さを見せた。元来、強打が注目されるチームだが、智辯が勝ち進むときは、高嶋監督時代から決まって「守れる時」である。絶対的な扇の要がいる今年のチームは、その例に漏れない強さがあると言えそうだ。
対する敦賀気比打線は、初戦で横手の投手陣から13安打10得点を記録。福井大会ではそこまで打撃成績は目立たなかったが、さすがに甲子園に来ると一味違う。甘いボールはことごとくとらえ、低く速い打球を放って、横手のエース佐藤宙を攻略した。また、ただ打つだけでなく盗塁など機動力も絡め、相手のミスにもつけ込むそつのなさがある。このあたりは、近年常に甲子園に出場して全国レベルを体験しているチームの強みだろう。次戦は、相手が好捕手・山田なだけに、そう簡単に次の塁を陥れられるわけではないが、当たっている4番辻琉を中心に積極的な攻めで乱していきたい。
一方、敦賀気比は初戦で計4人の投手が登板して、横手打線を0封。先発の辻琉はまだ2年生ながら最速145キロの速球にカーブ、スライダーを織り交ぜる本格派。ピンチになっても全く動じる様子のない強心臓ぶりが光り、エースで4番としてすでにチームの中心の自覚が芽生えている。後ろには多くの投手が控えているだけに、立ち上がりから飛ばしていけそうだ。こ昨年のチームで一時期主戦格を担った五十子も登板の可能性があり、相手校としては頭を悩ませることになりそう。1試合のトータルマネジメントで、そう多くの点を失う投手陣ではないだろう。
対する智辯和歌山打線は、初戦で社の好投手・岩井に対して内野ゴロと犠飛で2点を挙げるそつのなさを発揮。サイド気味の投法から150キロを計測する剛腕に対し、さすがに苦戦を強いられて6安打2点に終わったが、これは相手の出来が良すぎたためであり、額面通りの数字でとらえずとも良さそうだ。あとは、その初戦で当たりが出なかった2番荒井、4番山田の二人が復調するかどうか。特に荒井の攻撃的2番の要素が今年の智辯打線の強みであり、できれば次は初回からその利点が生かされる試合にしたいところだ。
互いに、初戦はいい形で終えたが、守りの内容を見ると、智辯和歌山に少し分がありそう。敦賀気比としては武器である多彩な投手陣を活かして、相手打線をうまくかわしていきたいところだ。
主なOB
智辯和歌山…岡田俊哉(中日)、西川遥輝(ヤクルト)、黒原拓未(広島)、黒川史陽(楽天)、細川凌平(日本ハム)
敦賀気比…東出輝裕(広島)、内海哲也(巨人)、吉田正尚(レッドソックス)、西川龍馬(オリックス)、平沼翔太(西武)
和歌山 福井
春 1勝 1勝
夏 4勝 0勝
計 5勝 1勝
対戦成績は、春は1勝1敗、夏は和歌山勢が4連勝中とリードしている。
後述するが、1978年の選抜準決勝では福井商と箕島が対戦。選抜連覇を目指す箕島の前に、前橋・松本、南陽工・津田(広島)と好投手を倒してきた強打の福井商がぶつかった。試合は予想に反して、箕島にミスが続出し、福井商が9-3と大勝。この試合で同校最高成績の準優勝を果たし、全国にその名をとどろかせた。
一方、2019年の選抜2回戦では智辯和歌山と啓新が激突。啓新は初出場ながら、前年秋の北信越大尉貝出奥川(ヤクルト)を擁する星稜と引き分け再試合を演じた実力者であり、初戦でも屈指のショート森(横浜)を擁する関東王者の桐蔭学園に競り勝っていた。しかし、試合が始まると、智辯和歌山の強力打線が啓新の2枚看板の長身右腕・安積、サイド右腕の浦松を攻略。二人にたっぷり14安打を浴びせ、得点こそ5点にとどまったが、主導権をたわさず、エース池田陽の力投も相まって、5-2と快勝を収めた。
夏は和歌山勢が全勝しているが、今回はどうなるか。好勝負になりそうな予感がする。
思い出名勝負
1978年選抜準決勝
福井商
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 1 | 3 | 4 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 9 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 | 0 | 3 |
箕島
福井商 板倉
箕島 石井毅→上野
第50回の記念大会となった選抜甲子園は、前橋のエース松本が史上初となる完全試合を達成したり、木暮・阿久沢といった投打の両輪を擁した伝統校・桐生が活躍したりと話題に事欠かない大会であった。そんな中、準決勝の第2試合で相対することとなったのは、前年の選抜優勝校の箕島と強打を誇る福井商という、甲子園ファン垂涎の公立強豪校対決になった。
箕島は、前年にエース左腕東の好投で2度目の選抜優勝を達成。バッテリーを中心とした堅守と手堅い攻めが特色のチーム作りは、春を勝ち抜くのに非常に適していたのだろう。ただ、この年は2年生主体の若い編成で、かつ攻撃的な色合いの強いチームであった。北野、上野など2年生に魅力的な打者が多く、予選の打率は出場校中2位。一方で、石井毅(西武)-嶋田(阪神)の2年生バッテリーと中心としたディフェンス面には不安を抱えており、前年の成熟した3年生バッテリーの時と比べると、やや危うさをはらんでいるようにも見えた。
しかし、大会が始まると、看板の打線は湿りがちで、むしろバッテリーを中心とした守りをベースにする、いつもの「箕島野球」で勝ち上がっていく。1回戦は黒沢尻工を石井毅が完封し、1-0と僅差の勝利を収めると、2回戦では伝統校・小倉に4-1と完勝。若いメンバーが勝ち進むたびに自信をつけているようであった。準々決勝では前年秋の近畿大会で敗れていたPL学園とのリベンジマッチに。これまで印旛・菊池や南宇和・田中(日本ハム)といった好投手を打ち崩してきた打線に対し、石井毅が丁寧な投球で5安打完封。打線も犠打主体の攻撃で手堅く加点し、2-0と完勝で2年連続の4強入りを決めた。
一方、福井商は名将・北野監督が就任して、この年でちょうど10年目であった。福井商も、もともと犠打を主体として手堅い野球が持ち味であったが、この年は歴代でも屈指の攻撃力を誇るチームであった。予選の打率は出場校中1位を記録。打率4割台で、塁に出れば1試合に1つは必ず盗塁を決める1番坂部が切り込んでいき、中軸には岩堀・江守・坪田と強力な打者が並んでいた。特に3番岩堀が6割近い打率を残しており、まるで穴の見つからない強打者である。下位にも油断できない打者が並んでおり、相手からすると息つく暇もない打線だ。
この強力打線に支えられ、アンダーハンドのエース板倉が打たせて取っていくのが勝ちパターン。球威・スピードはなくとも丁寧に低めを突いていくため、相手からすると焦って打たされてしまう。甲子園では1回戦で鹿児島商の追い上げを振り切って5-4と辛勝すると、2回戦では前述した完全試合男、前橋・松本を攻略。17安打で14点を奪い、打線の強さをまざまざと見せつけた。準々決勝では、のちに「炎のストッパー」と呼ばれる津田恒美(広島)がエースの南陽工と対戦。立ち上がりを岩堀、江守の3,4番がとらえ、スクイズも絡めて2点を奪うと、このリードを板倉が守り切り、2-1と僅差で初の4強進出を決めた。
さて、ともにアンダーハンドのエースである石井毅と板倉を、それぞれの打線がどう攻略するかであったが、実はこの試合の前に行われた第1試合でV候補筆頭の桐生が浜魔性に2-3と惜敗していた。球場全体が騒然とする中、両チームのナインが球場入り。この雰囲気は前年王者として受けて立つ側に見られていた箕島によりプレッシャーとなってのしかかっていた。
また、両チームの打線を比較すると、看板通りの破壊力を見せていた福井商に対し、箕島の打線はやや湿りがち。この点でも、少し福井商に分があったのは間違いないだろう。
すると、試合は序盤から意外な展開になっていく。4試合目で疲労もあるのか、調子の上がらない箕島・石井毅を、福井商打線が捕まえる。2回表、6番鰐淵の痛烈なヒットを足掛かりに2アウト1,2塁のチャンスを作ると、打席には注目の1番坂部。インコースのボールを引っ張った打球は、1塁へのゴロになるが、これをファースト北野がトンネルしてしまう。堅守の箕島としたら、なんとも珍しいプレー。この回はこの1点で終わるのだが、この失点が崩壊への序章となってしまった。
3回表、石井毅を福井商の上位打線がとらえ、4番江守がヒットを放った後、5番坪田のエンドランで1,3塁に。ここで、先ほどヒットを放っている6番鰐淵はバントを失敗したものの、直後に打ち直してタイムリーを放つ。流れがいい時はこういうものだ。さらに、7番中村も連続タイムリーを放って,3-0となったところで、尾藤監督は石井毅に代えて上野をマウンドへ。しかし、それでも流れはとまらず、9番板倉の打席で暴投が飛び出し、この回、計3点が刻まれる。
こうなると、両チームの勢いの差は如実に表れていく。4回表も福井商は2安打に死球も絡んで攻め立てると、ここにショートの落球、サード・ファーストの悪送球と内野手のエラーが3つ重なり、あっという間に4点を追加。これまで、この年だけでなく、甲子園登場以来、「堅守」をチームカラーとしていた箕島が、こんな姿を見せるのは、おそらく初めてのことだったろう。それだけ、いつも通りのプレーをするということは難しいことだったのだ。
大量リードをもらった板倉は持ち味の打たせて取る投球で、淡々とイニングを進めていく。箕島は5回裏に犠飛で、8回裏には連続タイムリーで計3点を返すが、反撃もそこまで。13本ものヒットを放ちながら、完投した板倉の投球がわずか78球だったところに、箕島打線がいかに焦っていたかという事を感じさせた。注目の好カードを9-3と大差で制した福井商が、県勢として初の決勝進出を果たすことになった。
福井商はその後、決勝では浜松商・樽井に打線が8安打を放ちながらも完封されて、惜しくも準優勝に終わった。しかし、地に足の着いた戦いぶりに強打を絡めてこの年の戦いは、その後、チームのモデルケースになったことだろう。なかなか勝てない時期もありながらも、1996年夏と2002年の選抜ではそれぞれ4強入りを達成。永年チームを指揮した北野監督のもと、「炎の野球」で何度も甲子園のファンを沸かせてくれたのであった。
一方、守りが乱れてのまさかの敗退に終わった箕島だが、この年の教訓は確実に当時2年生だった選手たちに引き継がれた。翌年の甲子園では石井毅-嶋田のバッテリーを中心に春夏連覇を達成。夏は星稜との延長18回の死闘を制するなど、ドラマチックな戦いを見せたのだが、その基盤になっていたのは、前年春に最後に乱れてしまった「堅守」の徹底であった。泥臭い試合展開でも、終わった時に1点差で勝っている、そんな箕島の強さが、のちの時代を戦う者たちの道しるべになったことは間違いないだろう。


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