2026年選抜準々決勝 智辯学園vs花咲徳栄(9日目第2試合)

2026年

大会9日目第2試合

花咲徳栄

1 2 3 4 5 6 7 8 9
6 2 0 0 0 0 0 0 0 8
0 1 3 2 3 3 0 0 × 12

智辯学園

 

花咲徳栄   古賀→長谷川→石田→黒川

智辯学園   田川→高井→水口→杉本

優勝経験校同士の好カードは、互いにエース投手を後ろに回し、総力戦の構えを見せた。2回までに8-0と花咲徳栄が大量リードを奪うが、智辯打線がじわじわと反撃を開始。エース黒川を登板させても流れを変えることができず、智辯学園がエース杉本の好投も相まって大逆転で4強進出を決めた。

試合

智辯学園はエース杉本がここまで2試合を完投しており、疲労を考慮して、左腕・田川を先発に指名。大会前の練習試合では、好調を維持しており、小阪監督も期待を込めての起用であった。一方の花咲徳栄も、ここまで2試合先発のエース黒川に代わって、2年生左腕・古賀が先発。こちらはエース黒川が2回戦の日本文理戦で雨中投球となっており、球数以上に疲労がたまっていたことだろう。互いに主戦をリリーフに回してのスタートとなった。

1回表、無難に立ち上がりたい智辯・田川だったが、厳しい立ち上がりとなる。1番岩井はショートライナーに打ち取ったものの、2番鈴木・3番笹崎といずれもストレートの四球を与えてしまう。いずれも際どいコースにもいかないボール球であり、制球が明らかに乱れている。続く4番佐伯には痛烈なセンター返しのヒットを浴びると、5番奥野にはストライクを取りに行った速球をライトへはじき返され、まず1点。さらに6番本田には押し出しの四球を出してしまい、2点目を失ったところで無念の降板となった。

智辯は2番手で右腕・高井をマウンドに送るが、一度火のついた徳栄打線は止まらない。右スリークオーターからアウトコース中心の投球で、代わり端、7番谷口を空振り三振に切って取るが、徳栄打線は下位まで切れ目がない。8番中森がアウトコースの速球を、綺麗な流し打ちでライトへはじき返し、2者が生還して4-0。さらに、9番市村、1番岩井もアウトコースへの目付をしてカウント球をはじき返し、3者連続のタイムリーとなって、初回に6点を先行する。

一方、大量リードをもらった徳栄の左腕・古賀は初回を四球のランナー一人のみで無失点に切り抜けると、2回表も打線が追撃の手を緩めない。先頭の3番笹崎が二遊間深い位置への内野安打で出塁すると、暴投でランナーが2塁へ。ここで、智辯学園はたまらず3番手で右腕・水口をマウンドへ送るが、初見の投手に対し、徳栄打線は好球必打で畳みかけていく。犠打で1アウト3塁とすると、5番奥野のタイムリーで7点目。さらに、6番本田もヒットを放つと、下位打線が四球2つを奪取し、押し出しでこの回も2点を追加する。オーソドックスな右投手が続いたこともあって、徳栄打線が対応しやすかったのだろう。2回で8点差と大きくリードを広げた。

思わぬ大量ビハインドを背負った智辯ナイン。普通のチームならあきらめてしまいそうな展開だが、ここから朱色の軍団が不屈の闘志で立ち向かっていく。

2回裏、先頭の5番馬場井が見事な流し打ちでレフトへのヒットを放つと、小阪監督は6番北川に強攻策を指示。点差があいたこともあって、思い切った作戦を取る。カウント2-2から打ち上げた打球はショートとセンターの間に飛ぶテキサスヒットに。今思えば、ここから智辯反攻の流れが始まっただろう。この打球が取られていたら、その後の展開がなかったかもしれない。1アウト後に8番添本が四球でつないで1アウト満塁となると、9番八木が真ん中高めの速球を引っ張ってレフトへの犠飛とし、まずは1点を返す。

この1点が試合の流れを大きく変えることとなる。3回表、智辯学園は小阪監督がついにエース杉本をマウンドへ送ると、大会屈指の左腕は花咲徳栄の上位打線を圧倒。4番佐伯にこそ四球を与えたものの、各打者がストレートには明らかに振り遅れ、曲がりの大きいスライダーにはバットの軌道が合わない。まだ、この段階で3回であったが、しばらく花咲徳栄の攻撃では点が入らないのではと感じさせるほどの内容であった。

エースが反撃の流れを加速させると、智辯打線がつながり始める。3回裏、1アウトから3番太田古賀のカーブをしっかり呼び込んでライト線へ引っ張り、2塁打で出塁。続く4番逢坂が今度はストレートを引っ張ってライト前にはじき返すと、1アウト1,3塁から5番馬場井がきっちり犠飛を打ち上げ、2点目を返す。

花咲徳栄としてはここで終わらせたいところだったが、智辯の重厚な打線がそれを許さない。6番北川がこれも変化球を引っ張った打球でライト線へのタイムリー3塁打とすると、岩井監督古賀をあきらめ、2番手の長谷川にスイッチ。しかし、継投の甲斐なく、7番多井がストレートを逆らわずにライト線へ打ち返し、タイムリー2塁打となって、この回計3点を返す。3回を終わって、スコアは8-4。もはや完全なワンサイドゲームではなくなっていた。

こうなると、完全に試合は智辯ペースとなる。4回表も花咲徳栄の攻撃は杉本の力強い投球の前に3者凡退。ボールに当てるのがやっとといった感じの打撃で、得点はおろか出塁も厳しくなる。その裏、さらなる追撃を見せる智辯打線は、1アウトから1番角谷、2番志村がしぶとく単打でつなぐと、打席には主砲・逢坂。2年生ながら4番にどっかり座る強打者が、長谷川のインコースの速球をとらえると、打球はライト横を凄まじい勢いで破っていく。塁上の2走者が次々ホームを駆け抜け、8-6。智辯サイドには勇気を、徳栄サイドには焦燥を与える大きな2点が入る。

ただ、これまでも追い上げ体勢に入ったものの、点差が迫ってくると最後の1,2点差を詰め切れずに敗れたチームは数多存在した。ここからが勝利に結びつけられるかの分水嶺だったが、智辯学園はその壁も軽々と超えていった。

5回表、杉本が1番岩井を三振ゲッツーにとって無失点とすると、その裏、ついに徳栄の尻尾を捕まえる。1アウトから7番八木の四球と8番添本のヒットでチャンスを作ると、犠打で2アウト2,3塁に。続く1番角谷の打席で石田の投球が暴投となり、1点を返すと、角谷は四球を選んで2アウト1,3塁とさらに得点機は続く。ここで花咲徳栄はついにエース黒川をマウンドへ。岩井監督は勝負をかけにいった。

なんとかリードを保った状態で、継投することには成功した徳栄陣営。しかし、試合の流れは完全に智辯学園に傾いていた。ランナー二人を塁上に置き、打席には巧打の2番志村。カウント0-1から真ん中寄りに入った速球を捉えると、打球は前進守備だったセンター・ライトの間を深々と破るタイムリー2塁打に!2者が生還し、ついに智辯学園が試合をひっくり返した。抗いようのない流れが、史上最大得点差の逆転を呼び込むこととなったのだ。

そうは言ってもまだ点差は1点であり、このまま踏ん張っていれば試合はわからないところであったが、一度変わってしまった流れは、エースをもってしても止めることは困難であった。

6回裏、1アウトから5番馬場井が四球で出塁すると、6番北川のサードゴロがエラーとなって、1アウト2,3塁に。ここで7番多井はインコースの速球でピッチャーゴロに打ち取るが、今度はこの打球を黒川がはじいてしまう。1塁はアウトにしたが、本来ならホームで3塁ランナーを悠々させるタイミングだっただけに非常にもったいなかった。この後、8番添本、9番八木と連続タイムリーが飛び出して、さらに2点を追加。平常心を失った黒川に、本来の制球力・球威は蘇らなかった。

一方、杉本は6回表の4番から始まる攻撃を簡単に3人で抑えると、結局、後半4イニングで許したヒットは内野安打1本、四死球0という完ぺきな投球を展開。関東屈指の強力打線を剛速球と伝家の宝刀・スライダーで完全に抑え込み、智辯学園が記録にも記憶にも残る大逆転劇でベスト4進出を決めることとなった。

まとめ

智辯学園は立ち上がりから非常に苦しい流れになったが、腰を据えた攻撃で着実に得点を返していった。各打者がセンターから逆方向への意識を忘れず、ランナー3塁の場面できっちり犠飛を打てる技術も素晴らしかった。矢継ぎ早に継投してきた徳栄サイドの作戦にも惑わされることなく、反撃していった攻撃は見事の一言であった。また、8点差になっても、ベンチに慌てる様子がなかったところにも強さの一端が垣間見えた。

そして、その反攻の流れを作り出したのは間違いなくエース杉本の好投。全国トップクラスの強力打線に対して、全く自分のスイングをさせない投球には凄みすら感じさせた。速球とスライダーの2球種がほとんどだが、そのいずれも一級品であり、内外・高低と自在に操れるため、いかに徳栄の打者をもってしても如何ともし難かっただろう。選抜の歴史に刻まれた逆転劇は、投打にわたる確かな実力と、大量ビハインドにも慌てないメンタルの強さの両方があって、初めて成しえた賜物であった。

一方、花咲徳栄にとっては、野球の怖さをこれ以上ないくらいに叩きつけられた試合となった。大量リードを奪った中で、エース黒川への交代時期の判断は難しいものになったことは間違いない。試合前にこれくらいの点差までは我慢すると岩井監督も想定していただろうし、その想定を追い上げられていく展開の中で、試合途中に変更するのはなかなかできることではない。初回の攻撃内容を見ても、実力では決して劣っていたわけではなく、2回までは完ぺきな流れであったが、智辯の猛追の前に、気圧される格好となってしまった。

手痛い逆転負けで、選抜初のベスト4入りは露と消えた花咲徳栄。だが、過去には2年連続で優勝校を前に敗退するという悔しい結果をばねに、埼玉県勢初の全国制覇を達成した実績もある。今回、またこの悔しさをばねにどう立ち直ってくるのか、この夏を楽しみに待ちたいと思う。

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