2026年選抜1回戦
中京大中京vs阿南光
51% 49%
春夏計11度の全国制覇を誇る名門・中京大中京と、新野時代から甲子園を沸かせ、新校名になってからもフレッシュな戦いを見せる阿南光の対戦。軍配はどちらに挙がるか。
中京大中京のエースは右腕・安藤。四死球で崩れるタイプの投手ではなく、130キロ台後半の速球にスライダー、スプリットを混ぜ、打たせて取っていく。長身の大須賀も計算が立っており、野手兼任の投手も含めて陣容としては揃っている感がある。ただ、東海大会の終盤からは失点がかさみだし、神宮大会では神戸国際大付に3ホームランを浴びるという屈辱を味わうこととなった。全国レベルになると、一球の失投がヒットではなく長打になるというところを身をもって経験した。一冬を超えて、球威・制球ともにもう一段レベルアップできているのかが上位進出のカギを握る。
対する阿南光打線は、昨年からレギュラーの面々が4人残り、侮れない攻撃力を持つ。出塁率の高い1番前田が出て、3番幸坂、4番山口、5番篠原という勝負強い中軸で返す、野球における鉄板の得点パターンで、秋は勝ち抜いてきた。この3人でチームの6割近い打点をたたき出しており、全員右打者ではあるが、逆方向へも打ち返すしぶとい打撃を見せる。監督をして、「3人とも打ち取られることはほぼない」と自信を見せており、阿南光のストロングポイントと言えるだろう。そのため、50メートル5秒台で走る1番前田の働きがなおさら重要になってくる。中京投手陣の失投を逃さずとらえていきたい。
一方、阿南光のエース小田は昨秋の四国大会で88球での完封勝利を挙げた好投手。変化球でも楽にストライクを取り、スピン量の多い速球と合わせて自在に投げ分けるため、相手打者は気が付けば追い込まれている感じがするだろう。右サイドの貝出、右スリークオーターの岩代と打線と同様に、こちらも「右主体」の投手陣だが、タイプがそれぞれ異なるため、継投にも不安はない。先発は予想される小田は、思い切った勝負にいけるだろう。四国大会終盤は小田に疲れが出て打ち込まれる場面もあったが、スタミナ十分の小田がそうそう崩れることはないか。取られても4-5点までと予想する。
対する中京大中京打線は、相手の四死球を巧みに得点に結びつけるしたたかさが武器。ただ、阿南光の投手陣からはそこまで四死球は期待できないだけに、純粋な打力での勝負になるだろう。中でも4番荻田はチャンスに強い打撃が光り、ここ一番で長打を放つ千両役者ぶりを見せた。巧打の3番神達らの上位打線から連なり、下位の杉原まで含めて打線の重厚さでは阿南光を上回る。待っていても追い込まれることが予想されるだけに、打席の中で「カウントを作っていく意識」で積極的に打ちに行くのが望ましいだろう。
総合力では中京大中京がわずかに上回っている感があるが、やはり、アキレス腱になるとしたら投手力か。ここを阿南光の打線、特に中軸の強打者につかれると、小田が安定しているだけにあるいは逆にワンサイドとなる可能性もはらんでいる。どういう展開になるかはエース安藤を含めた中京投手陣の出来次第だろう。
主なOB
中京大中京…稲葉篤紀(日本ハム)、嶋基宏(楽天)、堂林翔太(広島)、高橋宏斗(中日)、中山礼都(巨人)
阿南光…森山暁生(中日)、吉岡暖(DeNA)、條辺剛(巨人)
愛知 徳島
春 4勝 5勝
夏 1勝 5勝
計 5勝 10勝
対戦成績は春夏ともに徳島勢がリード。特に夏は徳島が圧倒している。
選抜では直近の2024年選抜で豊川と阿南光が激突。豊川のスラッガー、モイセエフ・ニキータ(ヤクルト)と阿南光の剛腕・吉岡(DeNA)の対決が注目されたが、序盤から火を噴いたのは阿南光打線であった。制球面に不安の残る豊川投手陣から着実に四死球を奪って得点につなげ、大量11点を挙げて試合を決めた。ただ、豊川のモイセエフも終盤にライトポール際への痛烈な一発を放ち、新基準バット導入でホームランが減少する中で、破格の存在感を示した。
2024年選抜1回戦 阿南光vs豊川(2日目第1試合) | 世界一の甲子園ブログ
一方、愛知勢の夏唯一の勝利は1987年夏。池田と中京という県内を代表する名門同士の激突が2回戦で実現した。中京は過去2回池田と対戦して敗れており、特に4年前の夏は池田・水野(巨人)、中京・野中(阪神)という絶対的エースを擁したV候補対決で悔しい敗戦を喫していた。何としても倒したい相手である、この年の池田も強打を武器に選抜で4強入りしており、前評判では中京を上回っていた。
試合は、池田が世寧するも、中京の2年生エース木村(巨人)が踏ん張って、0-1のまま最終回へ突入する。すると、9回裏に中京は伝家の宝刀のスクイズを決めて、同点!土壇場で試合を振り出しに戻す。さらに、延長10回裏には、2番手で登板していた左腕・桜間を攻め、1アウト満塁とサヨナラのチャンス。ここで、中京ベンチは再びスクイズを指示すると、投手前に転がった打球を、桜間がはじく間に3塁ランナーがサヨナラのホームイン!豪打の池田を相手にスクイズ二つでうっちゃるという会心の試合運びで、OBも念願の「打倒・池田」を成し遂げたのだった。
思い出名勝負
2019年選抜1回戦
富岡西
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 |
| 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | × | 3 |
東邦
富岡西 浮橋
東邦 石川
本命不在と謳われた2019年の選抜大会。その1回戦で選抜最多優勝校を誇る伝統校と21世紀枠の新鋭のカードが組まれることとなった。
東邦は2年連続の選抜出場。前年から主軸の3番石川(中日)、4番熊田を中心に打力には定評があり、全国トップクラスなのは明らかだった。ただ、前年の選抜に出場したチームは、秋の東海大会決勝まで練習試合も含めて負けなしという前評判の高いチームだったにも関わらず、初戦で花巻東に3-5と惜敗。相手の技巧派左腕に自慢の打線が封じられ、弱点とされた投手陣はそつのない攻めの前に失点を重ねた。夏も愛知大会予選で敗退し、力がありながら思うように結果を残せなかった。
その後、新チームになっても打線のポテンシャルの高さは一目瞭然だったが、投手陣に柱となる存在がなかなか出てこなかった。野手兼任の石川も秋の段階では不安定さが残り、本戦に向けてどんな投手起用になるかは不透明であった。ただ、そんな中でも主将・熊田を中心に守備や走塁の基本は徹底し、ミスが目立った前年と同じ轍は踏むまいとチームは気合を入れなおしていた。平成最初の優勝を狙う強豪が平成最後のVも狙って甲子園へと乗り込んできたのだ。
対する富岡西は野球どころの四国・徳島県からの初出場校。投手陣の柱は昨秋の公式戦を一人で投げ抜いた右腕・浮橋。最速140キロの速球に加え、スライダー・カーブ・チェンジアップ・カットボール・ツーシームと多彩な変化球で狙い球を絞らせない投球が光る好右腕だ。相撲、円盤投げなど多種目を経験してきたことで体の柔軟性も高く、しなやかなフォームからキレのあるボールを投げることができる。
また、打線は、小川監督が掲げるノーサイン野球で活路を見出す。練習で細かい状況設定を行い、選手同士が状況に応じて自らアイコンタクトでサインを出し合う大人の野球を展開する。打撃でも4番を務める浮橋のまわりを高打率の3番坂本、5番吉田が固め、勝負所ではエンドランを仕掛けて得点を奪ってきた。全国の舞台でどこまでこの攻撃が通用するか非常に楽しみであった。
さて、V候補でプレッシャーのかかる東邦としては初戦で不気味な相手を引いた格好となったが、図らずも試合は、一方的にはならず、接戦となっていく。
東邦の先発は、打っても主軸を務める3番石川。投打で負担が大きくなるが、この大会は森田監督が「石川と心中する」と覚悟をもっての起用であった。決して、投手らしい投球フォームとは言えないが、持ち前のセンスで内外角に丁寧にコントロールし、序盤、ヒットを許しながらも得点は与えない。
ただ、過去の甲子園を振り返っても、四国からの初出場校は何度も強豪の足元をすくってきた。その背景には好投手の存在があり、この富岡西のエース浮橋も小気味いい投球を見せる。小柄ながらフォームに躍動感があり、伸びのある速球とスライダーを武器に攻めの投球を見せる。2回裏には連打を浴びるものの、落ち着いて後続を抑え、1,2回と無失点。初めてとは思えない落ち着きぶりを見せる。
昨年は先制点を許してリズムを崩した東邦だけに、今年は何としても先制点が欲しいところ。3回裏、その待望の得点を手にする。先頭の9番山田が右方向への打撃で出塁すると、1番松井はランナーを進められなかったが、2番杉浦の打席でボークが飛び出して思わぬ形で進塁する。この動揺をついて杉浦が絶妙なセーフティバントを決めると、3番石川がきっちり打ち上げて3塁から山田が生還。東邦が1点のリードを奪った。
リードをもらった東邦だが、この試合はここからが苦しかった。選手が自分で考えて動く「ノーサイン野球」の真髄が徐々に発揮され始め、中盤から富岡西の攻撃陣の圧力がかかる。状況に応じて、右方向への打撃でエンドランをかけるなど、一球一球狙いが変わり、それに対応する富岡西の選手たち。投打の能力では劣っても、野球を考える力では引けをとらず、4回表には1アウト満塁と一打逆転の場面まで石川を追い込んだ。また、投げては浮橋が4回、5回と調子を上げていき、無失点。富岡西にムードが傾きつつある中、1-0で試合は後半戦へ入っていった。
すると、6回表、グランド整備明けの大事なイニングでついに富岡西のスコアボードに「0」以外の数字が入る。1アウトから4番𠮷田が四球を選ぶと、ここでも選手自らエンドランを敢行!5番安藤が見事な流し打ちでつなぎ、1アウト1,3塁とチャンスを拡大する。この日2安打の山崎は打ち取られるも、2アウト1,3塁となって打席には7番木村。東邦バッテリーの配球がアウトコースに偏ったところを、逃さず食らいつくと、打球は1塁線を破るタイムリー2塁打に!見事な逆方向への打撃でランナーを迎え入れ、富岡西がついに同点に追いついた。
内容的にやや押され気味で硬さも見られる東邦。先発・石川の調子は悪くはなかったが、判官びいきの甲子園ファンは徐々に波乱を期待し始めていた。
だが、2年連続で初戦敗退するわけにはいかない東邦が、7回裏、それまで封じ込められていた浮橋をついに攻略にかかる。
この回、先頭の8番成沢が幸運な振り逃げで出塁。ここは犠打できっちり2塁へ進めると、1番松井が打席に。ここまで3打数無安打と結果の出ていなかった好打者だが、ここは初球からカウントを取りに来たボールを狙い打つ。アウトコースの速球を理想的な打撃で流し打った打球は、左中間に弾み、成沢が生還!さらに2アウト後、3番石川にもタイムリーが飛び出し、東邦が貴重な勝ち越し点を手にした。
富岡西の攻撃陣に終始手を焼いた石川だったが、8回、9回は相手の走塁死もあって、いずれも3人で攻撃を終了。インコースにも綺麗に糸を引くように制球するコントロールの良さが際立ち、終わってみれば、7安打1失点の完投で初戦を突破。昨年の雪辱を晴らし、甲子園1勝を手にした。
その後、この1回戦で呪縛から解放されたのか、東邦は破竹の快進撃を見せる。打線は1番松井、2番杉浦のコンビから強力な中軸を経て、好調な6番長屋、7番吉納、8番河合まで続き、穴のない布陣を形成。広陵・河野(広島)、明石商・中森(ロッテ)、習志野・飯塚と好投手を次々に攻略した。そして、なんといっても大きかったのはエース石川の覚醒である。コントロールのコツを完全につかんだのか、ストライクゾーンの横幅をいっぱいに使った投球で、決勝は見事に習志野打線を完封。春に強い東邦の復活を高らかに告げる5度目の優勝を成し遂げることとなった。
一方、結果的にその東邦を最も苦しめたのは、この富岡西か準決勝で対戦した明石商のどちらかということだっただろう。東邦に初戦の硬さがあったとはいえ、「thinking baseball」で強豪を慌てさせた戦いぶりは見事だった。時代が自主性を求める中で、富岡西野球が出した答えはあるいは、正解の一つだったと言えたかもしれない。エース浮橋の好投も際立ち、内容では全く引けをとらない好試合であった。やはり、「四国の初出場校」は侮れない!と言えるだろう。


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