2026年選抜1回戦
沖縄尚学vs帝京
51% 49%
開幕戦からいきなりBIGカードが実現。ともに、春夏計3度の全国制覇経験を誇る強豪同士の対戦だが、昨夏の優勝校の沖縄尚学に対して、帝京は2011年以来15年ぶりの聖地となる。
沖縄尚学の末吉・新垣の左右両エースは、もはや説明不要なほどの実力者である。ともに150キロ近い速球と切れ味抜群のスライダーを持ち、特にストレートの質は全国でもトップクラスだ。しかし、昨夏の甲子園をフルで戦い抜き、そして、末吉はU-18も経験したため、疲労困憊の中で秋はなかなかそに実力を発揮できなかった。ただ、一冬を超えて、末吉は投球フォームの見直しを行い、新垣も復調気配だ。ここに新戦力の右腕・田場も加わり、さらなる充足を図っている。万全であれば、出場校中でもトップクラスの投手陣だ。
対する帝京打線は、パワフルさを全面に出し、長打力が持ち味だ。もともと15年遠ざかっていたとはいえ、その間も攻撃力のいいチームはいくつもあり、伝統は着実に引き継がれている。3番安藤、4番目代は秋の公式戦で複数のホームランを放っており、狙い球を絞って自分たちのスイングを貫く。彼らの前に、俊足で長打もある1番唐津、なんでもできる2番島末が入り、チャンスで回していければビッグイニングもありうる。また、木村・鈴木の下位打線も結果を残しており、7番までは強打者が並ぶ破壊力抜群の打線を形成する。あとは、試合の中で沖尚の2枚看板の速球とスライダーのどちらに的を絞るかの意思統一が重要になってきそうだ。
一方、帝京投手陣は、技巧派右腕・安藤と長身左腕・仁禮の二人でまかなう。二人とも制球力に優れ、四死球から崩れないのが安心材料だ。タイプの違う二人の継投によって、1試合トータルをマネジメントできれば、勝利が見えてくる。ただ、ともにスピードは130キロ台と球威で圧倒するタイプではないぶん、捕手・鈴木のインサイドワークと内外野の堅守が必要だ。秋は日大三とのV候補対決を無失策で乗り切っており、開幕戦のプレッシャーがかかる中でいつもの守備ができるかが重要になる。
対する沖縄尚学打線は、昨年のスタメンがほとんど3年生だったこともあり、秋は経験不足が露呈した格好となった。九州大会では2試合で2得点と苦しみ、準々決勝では神村学園のエース龍頭のインサイドのボールに苦しんだ。ただ、タレントがいないわけではなく、特に4番の秋江は「彼に回せばなんとかなる」と感じさせる勝負強さと確実性を持つ。周りを固める3番玉那覇、5番仲間、6番慶留間も高打率をマークしたが、秋はまだ全体的にミート力に乏しかった様子。冬場は竹バットで確実性を磨いてきたそうで、打たせて取る帝京投手陣に対し、失投をきっちり仕留める打撃をしたい。
沖縄尚学の投手陣がその実力をフルで発揮できれば、いかに帝京の強力打線といえど、取れて3点前後であろう。カギを握るのはやはり沖尚打線の成長度合い。帝京投手陣に打たされる格好になると苦しい。「投」で沖縄尚学、「打」で帝京が優位だが、沖縄尚学の「投」での突き抜け具合が少し上回るか。経験値という意味でも沖尚に少しアドバンテージはありそうだ。
主なOB
沖縄尚学…岡留英貴(阪神)、與座海人(西武)、砂川リチャード(巨人)、嶺井博希(DeNA)、東浜巨(ソフトバンク)
帝京…吉岡雄二(近鉄)、中村晃(ソフトバンク)、杉谷拳士(日本ハム)、松本剛(巨人)、山崎康晃(DeNA)
沖縄 東京
春 2勝 3勝
夏 4勝 3勝
計 6勝 6勝
春は東京勢が、夏は沖縄勢がリードし、トータルで五分の星だ。
2023年の選抜3回戦では沖縄尚学と東海大菅生が3回戦で激突。沖縄尚学は全体的エースの東恩納を温存し、右腕・儀部をマウンドへ。儀部は好投を見せたが、4回裏に先取点を奪われると、これが焦りを呼んだか、中盤から終盤にかけて再三のチャンスを活かせない。東海大菅生はチャンスの数では沖縄尚学より少なかったが、エース日當の粘投で1点のリードを守り切り、2年ぶりの8強進出を果たした。
2023年選抜3回戦 東海大菅生vs沖縄尚学(9日目第2試合) | 世界一の甲子園ブログ
一方、2002年夏の開幕戦では帝京と中京商が対戦。1番松本(広島)を筆頭に笹沢、坪木、吉田(広島)と強打者の並ぶ帝京打線が、中部商の2年生右腕・玉寄の制球難につけ込み、序盤から大量リードを奪う。しかし、9-1で迎えた7回表、中部商打線が爆発!4番下地の満塁走者一掃打などで一気に7点を奪い、1点差まで迫る粘り強さを見せた。最後はレフト吉田のファインプレーに阻まれる格好になったが、強豪を相手に最後まで食らいついた戦いは多くのファンを魅了した。
昨夏の「沖縄尚学vs日大三」の決勝カードに続き、約半年の時を超えて実現した両都県の対戦。東京のリベンジか、沖縄の返り討ちか、楽しみなカードで2026年選抜が幕を開ける。
思い出名勝負
2014年選抜1回戦
美里工
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | × | 4 |
関東一
美里工 伊波
関東一 羽毛田→阿部
終盤までもつれる白熱した試合が多かった2014年の選抜大会。初戦から数多くの好カードが誕生したが、中でも実力校同士の対決として注目されたのが、東京王者・関東一と沖縄から初出場の美里工の試合であった。
関東一は、若き指揮官・米沢監督が指揮を取り、2000年代後半から台頭。2008年は江川・広瀬の中軸コンビ、2010年も山下(DeNA)・宮下らの強打者でそれぞれベスト16、ベスト8と甲子園で結果を残すと、2012年選抜では2年生エース中村(広島)の好投で4強入りを果たす。投打でタレントを擁して勝ち上がり、帝京の天下だった東東京の勢力図を塗り替えつつあった。
ただ、この2014年度のチームは上記のようなスター選手は不在。投手陣は長身右腕の羽毛田から技巧派左腕・阿部への継投でしのぎ、打線もプロが注目するような選手は不在であった。ただ、3拍子揃った選手はいなくとも、一芸に秀でた選手は多く、ここ一番での盗塁や代打の一打などで秋の東京大会をしぶとく勝ち上がり、2年ぶりの選抜出場を達成。今回は、総合力で手にした全国の舞台であった。神宮では、のちに優勝校となる沖縄尚学に惜敗しており、同じ沖縄勢へのリベンジを狙う格好となった。
一方、美里工は沖縄から初出場の県立高。浦添商を率いて2008年夏にベスト4入りした名将・神谷監督に鍛えられ、数年前から県内上位をにぎわせていたが、ついに全国への切符をつかみ取った。このチームの強みは何といっても、伊波-与那嶺のバッテリー。独特の間合いを持ち、巧みな投球術も駆使して気づけば試合を支配している「大人のバッテリー」であった。関係者が、「社会人ばり」と評する1試合トータルを見据えての配球の妙があり、非常にハイレベルな投球で相手を牛耳ることができたのだ。
秋は、このバッテリーを中心に堅守と1番宮城、3番花城を中心とした勝負強い打線で県大会、九州大会を勝ち上がることに。ただ、いずれも決勝では神宮王者の沖縄尚学に惜敗してしまう。県内の覇権を争うライバルが巨大な壁となって立ちはだかったが、沖尚が秋の全国王者となったことで美里工ナインも自信を深める結果となった。
奇しくも、秋に沖縄尚学に敗れたチーム同士の対戦。ハイレベルな攻防が期待され、火ぶたは切って落とされた。
美里工は伊波、関東一は羽毛田と両エース右腕が先発。1,2回とともにランナーは出すものの、伊波は内角を強気に突いていき、そして、羽毛田は持ち味の角度を活かした投球で、それぞれ得点は与えない。また、2回表裏にはともに得点圏に走者を置いて犠打を失敗してしまい、互いの守備陣のプレシャーの前にチャンスを生かしきれない展開となる。
やや拙攻気味の試合となる中、3回表に、美里工が先に得点の門に手をかける。1アウトから長打力のある1番宮城が甘く入ったスライダーをセンターオーバーに持っていくと、秋の公式戦打率が5割を超える2番神田も変化球をうまく呼び込んでライトは運ぶ。2巡目に入って、早くも羽毛田のボールに対応し始めたか、ここで3番花城がアウトコースのストレートを逆らわずにセンターへ打ち返し、美里工が甲子園初得点で先制に成功する。
ただ、続くチャンスで得点を挙げられず、先制点をあげたものの、美里工としてはやや雰囲気が重く感じていたか。それは関東一の攻撃陣サイドもそうだったかもしれない。互いに機動力を生かした攻撃が持ち味だが、それを警戒した両チームの守備陣が執拗なけん制やバント処理でのブルドッグを敢行し、つけいるスキを与えてくれないのだ。ともに攻守で鍛えられた常連校と新鋭校の対戦は、1回戦とは思えないハイレベルな内容で後半戦へ突入していく。
美里工としては、早く踏ん張るエース伊波に2点目をプレゼントしたかったが、関東一の羽毛田の前に1回から6回まで毎回ランナーを出しながら1点どまり。それでも伊波は気迫十分の投球で関東一打線を封じ込め、甲子園の空間を支配していく。
すると、7回表、美里工に待望の追加点が。先頭の7番砂川が巧みな右打ちで出塁すると、犠打で2塁へ。ここで打席には好打者の1番宮城。2アウトランナー2塁の状況で、美里工ベンチはエンドランを指示する。これに宮城が応え、第2打席でとらえた変化球を今度は流し打ってレフト前に持っていくと、スタートを切っていた砂川は余裕をもってホームイン!試合の趨勢を決める大きな2点目が入り、美里工の勝利が近づいたかと思われたが…
ここまで7回を投げて6安打無失点と力投の伊波。だが、初めての大舞台で球数は100球を超え、想像以上の疲労が迫っていた。さらに、8回表には関東一の2年生左腕・阿部が2番手で登板し、見事な投球で美里工の中軸を3者凡退に。流れは少しずつ関東一へと傾いていく。
すると、8回裏、関東一は3番伊藤がアウトコースの速球を逆らわずにライトへ運ぶ。さらに4番山口ヘは内外角へ散らすが、カウント2-2からの勝負球が甘く入ってしまい、センターへの連打を許す。ここでこれまで2度失敗していた犠打を代打・大内がきっちり決め、2,3塁に。6番池田はインサイドの速球で詰まらせてファーストフライに打ち取るが、7番清には死球を与えてしまい、2アウト満塁となる。
打順は下位だが、しぶとい打者のそろう関東一打線。ここで8番五十嵐はアウトコースの変化球に泳ぎ気味ながらも食らいつき、打球はレイトへのテキサス性タイムリーに!ここまで伊波のインコースのボールに苦しめられていた関東一打線だったが、8回に来てついに打席の中での「踏ん切り」をつけられるようになった。さらに、続く9番臼井はカウント1-0からアウトコースを狙ったボールが逆球になるのを逃さず!打球はレフトフェンスを直撃する2点タイムリー2塁打となり、この回一挙4点の猛攻でついに伊波の牙城を崩したのだった。
2点を追う美里工は、9回表、先頭の6番伊波がヒットで出塁するも、先ほどの打席で打っていた7番砂川の強攻策は併殺打に。ここ一番でまたしても関東一の堅守の前にチャンスの芽を摘み取られてしまった。関東一は左右の技巧派投手の継投と勝負強い打線で、強敵を相手に見事な逆転勝ち!2年前に続いての初戦突破となった。
関東一はその後、2回戦で明徳義塾・岸(西武)の好投の前に2回戦敗退となったが、この試合も2-3と内容の濃い好ゲームであった。スター選手不在の中で見せたこの年の戦いぶりは、堅守と勝負強い打撃で準優勝に輝いた2024年夏の戦いにもどこか通ずるものがあった気がする。米沢監督が就任して着実にチーム力を強化してきた関東一だったが、この2014年度のチームで得た功績と自信はのちの財産になったのではないだろうか。
一方、美里工も惜敗したものの、初めての甲子園とは思えない堂々とした戦いぶりであった。伊波-与那嶺のバッテリーの配球は、噂にたがわぬ熟練さがあり、打線も沖縄のチームらしく、小柄ながらパワフルな打球を放っていた。甲子園のファンは初出場校に対して、少し洗礼的な目線で見ることもあるが、この試合が終わった時、目の肥えた甲子園ファンの送る視線は常連校へのそれであった。この大会で8強入りした沖縄尚学と同様に、沖縄勢のレベルの高さを存分に見せつけられたことだろう。


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