日大三打線に立ちはだかった好投手列伝 5/9

コラム

名将・小倉監督に率いられ、数々の名勝負を繰り広げてきた日大三。

その代名詞ともいえる強力打線は豊富な練習量に裏打ちされた技術と体力、気力によって培われてきた。これは、その強力打線と対峙した歴代の好投手たちの戦いの記録である。

2006年夏 西東京大会決勝 早稲田実 5-4 日大三

斎藤佑樹が振り返る高校最後の夏、日大鶴ヶ丘と日大三との死闘 ...

日大三

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
2 0 1 0 0 0 0 0 0 1 0 4
0 1 0 0 1 1 0 0 0 1 5

早稲田実

斎藤佑樹(早稲田実→早稲田大→日本ハム)

4年連続の甲子園出場を狙っていた日大三。その前に大きく立ちはだかったのが、後のハンカチ王子・斎藤佑樹であった。

遡ること1年前、西東京大会準決勝で、当時2年生の斎藤佑樹に対し、日大三打線が猛威を振るう。当時から140キロ台の速球を持っていた斎藤は真っ向勝負を挑んだが、高めの速球に打ち負けない三高打線は、同じく2年生の田中洋平、投手の大越のホームランを浴び、立て直す間もなくコールドで敗退した。甲子園から10年遠ざかっていたとはいえ、過去に幾多の伝説を刻んできた早実のコールド敗退は衝撃的だった。

しかし、雪辱を期して望んだ新チームでは、準決勝で早稲田実が2-0とリベンジ。斎藤は、サード小柳との必殺の3塁けん制アウトも奪い、6安打で完封勝利を収めた。このまま秋の都大会を制し、選抜でも8強入り。久しぶりの甲子園出場から上位進出も決め、この年は早稲田の年という雰囲気が徐々に醸成されてきていた。

だが、21世紀に入ってから西東京の覇権を握り続けた日大三もただでは引き下がらない。昨年から主軸の4番田中洋平を中心に自慢の強力打線が奮起。春季大会関東大会では同年夏に甲子園に出場する甲府工・石合やヤクルトにドラフト一位で指名されることとなる鷲宮・増渕を攻略。その後も粘り強い戦いで関東大会を制し、夏を前に早実と並ぶV候補に挙がってきた。

そして、迎えた西東京大会。日大三が強打を武器に安定して勝ち上がるのに対し、早稲田実は初戦から都立昭和に3-2と苦戦。その後も、準々決勝では同じく選抜出場の東海大菅生に、準決勝は日大鶴ケ丘に苦しめられ、危なっかしい戦いが続いた。しかし、その勝ち上がりの中で野手陣が成長し、斎藤を中心に一枚岩になって戦う姿は小倉監督にとっては不気味に映っていたことだろう。

そして、迎えた両雄の決勝。初回から日大三打線の意気込みが斎藤に猛烈に向かってくる。1番荒木(阪神)がいきなり高めの速球を引っ張って右中間への3塁打とすると、動揺したのか、1アウトからの3番佐藤の打球がセカンドのエラーを誘い、日大三が1点を先行する。さらに畳みかけるように、4番田中洋平もストレートをフルスイング!セカンド横を抜けた打球が、そのまま右中間を破る信じられないような球足。1塁ランナーが生還し、2点目を奪う。

見事なまでの日大三の速攻。しかし、ここからが斎藤の凄さであった。カッカして打たれた1年前とは別人。表情一つ変えず、続くチャンスを抑え込む。その後、互いに1点ずつを取り合い、日大三の2点リードで進むが、斎藤の相手を見透かしたような冷静さ、球数が増えてもうなりを上げるように伸びる威力のある速球で、徐々に日大三打線を封じ込めにかかる。

すると、試合を重ねるたびに成長してきた早実ナインが、中盤に入ってつながり始める。投手力に絶対の自信があるわけではない日大三にとっては、追い上げを食らう嫌な展開だ。5回裏に四死球から招いた2アウト満塁のピンチで、3番桧垣にセカンドへのタイムリーを浴び、1点差。さらに、6回裏には、斎藤の女房役の8番白川がスクイズを成功!ついに両者の差がなくなる。

試合は同点のまま延長戦に。10回表、斎藤はランナーを2塁へ背負うと、犠打処理して3塁へ投じた送球が悪送球に。致命的ともいえる失点を食らってしまうが、ここでも動揺を他には見せず、続くピンチを落ち着いて打ち取る。すると、その裏、ランナー2塁からスタメンで唯一の2年生の川西が同点2塁打を放ち、試合は再び振り出しに。土壇場での異常なまでの勝負強さに、小倉監督もこれまでにないくらい苦しめられる。

こうなると、投手力で劣る日大三には分が悪かった。11回裏、3番手の右腕・久松から5番船橋がサヨナラ打を放ち、ゲームセット!ついに日大三の牙城を崩した早稲田実が、甲子園を勝ちとり、西東京の流れを大きく変えるに至った。後に小倉監督が、「この試合はどうしても勝ちたいという気持ちが薄かった」との反省通り、連覇を重ねてきたことがかえってマイナスに働いた感もあった。この2006年の戦いを境に、日大三時代の第1章が幕を閉じることとなり、西東京は混戦の時代に突入することとなる。

2006 西東京決勝 早稲田実vs日大三1 ハンカチ王子斎藤佑樹!覚醒

2006 西東京決勝 早稲田実vs日大三2 ハンカチ王子斎藤佑樹!覚醒

2009年夏  2回戦 東北 3-2 日大三

東北

1 2 3 4 5 6 7 8 9
2 0 0 0 0 0 0 0 1 3
0 0 1 1 0 0 0 0 0 2

日大三

佐藤朔弥(東北)

2006年から3年連続で優勝校に敗退し、苦しい時代を過ごしていた日大三。しかし、2009年は関谷-吉田(ロッテ)のバッテリーを中心に、強力なチームを形成。角富士夫さんの息子の角鴻太郎(未来富山の監督で甲子園出場)を攻撃的2番として置き、5番には脳腫瘍から復活した天才打者・山崎福(日本ハム)がどっしり座る。上位から下位まで切れ目のない打線で西東京大会を圧倒的に制した。チーム打率は4割8分8厘と驚異的な数字を記録し、本大会では優勝候補の一角に名を連ねていた。

初戦は初出場の徳島北と対戦。好左腕・阪本を前に打線がまさかの3安打に封じられたが、相手のミスにも付け込んで少ないチャンスをものにし、2-0と勝利。エース関谷が得意のスライダーを低めに集め、4安打完封で2回戦へとコマを進めた。

そして、迎えた2回戦は宮城の雄・東北高校。ダルビッシュ有(パドレス)時代を含め、2003~2005年まで3年連続出場果たしていたが、2006年に佐藤由が2年生エースの仙台育英に引き分け再試合の末に敗退した。ここで潮目が変わると、2006年~2008年は仙台育英が連続出場。覇権を再び奪い返されていた。

しかし、2009年はエース佐藤朔を中心に安定した戦いで勝ち上がると、決勝では仙台育英に4-1とリベンジ達成。前年の甲子園を経験していた仙台育英の強力2枚看板、穂積・木村に対し、主導権を与えずに戦い抜き、4年ぶりの出場にこぎつけた。打線も昨年の選抜を経験した佐野を中心に機動力豊かであり、投打に充実した内容で甲子園に乗り込んできた。

迎えた甲子園初戦では、倉敷商との伝統校対決に。2年連続出場を果たしていた強豪校が相手だったが、エース岡(ロッテ)の立ち上がりをとらえ、2回に集中打で一挙6得点!投げてはエース佐藤朔が丁寧な投球で好打者ぞろいの倉商打線を2点に抑え、8-2と思わぬワンサイドで初戦突破を果たした。

さて、こうして迎えた2回戦の強豪対決。試合は初回から東北が先手を奪う。俊足の1番佐野がヒットを放つと、盗塁と犠打野選でチャンスを拡大。スクイズで手堅く1点を先制すると、勝負強い5番伊藤にタイムリーが飛び出し、電光石火の早業でリードを奪う。

このリードを佐藤朔が有効に使う。3回、4回と日大三は8番に座る強打の2年生・吉沢の活躍が絡み、1点ずつを奪って同点にこぎつけるが、前に出ることはできない。佐藤朔のコースを丁寧に突いて打たせて取る投球の前に、2回から毎回ヒットが出るものの、徐々に単発の攻撃となっていく。

中盤からは、関谷が立ち直り、明らかに日大三が押し気味。しかし、ここを踏ん張りぬけるのが佐藤朔の強さであった。また、センター佐野をはじめとしてバックも再三の好守でエースを援護。8回裏には1アウト1,3塁のピンチを招くが、スクイズを失敗に終わらせると、最後は9番籾山を空振り三振に。追い込まれても冷静さを失わない「みちのくのエース」の強さが光る。

再三のチャンスを逃し続けると、流れが動くのがスポーツの宿命。9回表、中盤以降ほとんどヒットを許していなかった関谷が8番大庭に3塁打を浴びると、9番篠塚が犠飛を放って、これが決勝点・最終回は1番からの好打順だったが、フルスロットルで飛ばす佐藤朔の球威が勝る。最後は、好打者の3番日下を高めの速球で空振り三振に仕留め、ゲームセット。東北が接戦を3-2でものにし、3回戦進出を決めた。

日大三としては、4年ぶりの出場を決め、この代は小倉監督にとっても非常に感謝の念と思い入れが強かった。だが、その分、勝ち上がり切れなかった悔しさも募っただろう。ただ、東北も同じように4年ぶりの甲子園であったが、ライバル仙台育英を下してきた勢いがあった。この試合に関しては、日大三の攻撃を正面から受けとめ、しのぎ切ったエース佐藤朔の粘り強さを褒め讃えるしかなかったか。

日大三にとって久々の甲子園は夢半ばで去ることにはなったが、この悔しさが1年後、2年後の躍進につながっていくことになる。

91回選手権 2回戦 東北対日大三

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