2023年選手権準決勝 慶応vs土浦日大(13日目第2試合)

2023年

大会13日目第2試合

土浦日大

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
0 1 0 0 0 1 0 0 × 2

慶応

 

土浦日大   伊藤→藤本

慶応     小宅

関東勢同士の対決となった準決勝第2試合は、両チームの投手陣の好投で締まった投手戦に。勢いに乗る土浦日大打線を7安打で完封した慶応・小宅が、自ら先制打も放つ千両役者ぶりを見せ、慶応を107年ぶりとなる決勝の舞台に導いた。

試合

土浦日大はこの日もエース左腕・藤本を後ろに回し、右腕・伊藤彩が先発。一方、慶応は2年生右腕・小宅を3回戦以来となる先発のマウンドに上げた。

土浦日大は、故・木内幸雄監督のDNAを受け継ぐ小菅監督(取手二の優勝メンバー)が率い、常総学院ばりの柔軟かつ大胆な攻撃が目立つ。一方、慶応はここまで3試合連続で春夏連続出場校との対戦を制しており、特に3回戦では広陵・高尾、準々決勝では沖縄尚学・東浜といった大会注目の右腕を集中打で崩してきた。ともに打線には勢いと力があり、互いの投手陣がどう抑えるかが注目された。

1回表、慶応の小宅はここまで14イニングを投げてわずか2失点と好調を維持。春以降、球威・キレが増し、コントロールの良さをより生かせるようになった。立ち上がり、1アウトから好調の2番太刀川にヒットを許し、打順には土浦日大で最も頼りになる3番後藤を迎えるが、落ち着きは崩さない。塁上から再三スタートを切って圧力をかけてくるが、淡々とコーナーを突き、簡単に作戦を遂行させない。最後はインサイドの速球で詰まらせ、ファースト延末の好守もあって併殺に打ち取る。

対する土浦日大の先発・伊藤彩はここまで5試合連続の登板で、イニングイーターとして貢献してきた。3回戦では専大松戸打線につかまったが、他の試合では相手打線を抑えこんでいる。しかし、1回裏、いきなり警戒すべき1番丸田に四球を与えると、2番八木には森林監督がエンドランを指示。これに八木が応えて、三遊間を鋭く流し打ちで突破!中軸を前に大きなチャンスを迎えると、さらに暴投も飛び出して無死2,3塁となる。慶応にしてみれば、千載一遇のチャンス。

だが、ここで3番渡辺千はフルカウントから高めの変化球を打ち上げてしまい、キャッチャーフライ。さらに、4番加藤、5番延末と勝負強さの光る打者をスライダーで抑え、味方の好守もあって得点を与えない。ここまで数々の修羅場をくぐってきた土浦バッテリーもまた、勝負勘が研ぎ澄まされている。

初回をうまく切り抜けた両チーム。ただ、慶応は小宅にある程度試合を任せる想定なのに対し、土浦日大はどこでエース藤本に繋ぐかを常に考えながらの試合となる。それゆえに、是が非でも先制点が欲しいところだったが、先に得点の門をこじ開けたのが慶応であった。

2回裏、1アウトから7番福井がスライダーに狙いを定め、シャープに振りぬいて三遊間を破る。下位に当たっている打者がいるのは勝っているチームの勢いの証だ。2アウト覚悟で、主将の大村が送ると、打席には先発の9番小宅。2ストライクと追い込まれたところで、土浦日大バッテリーはスライダーを選択するかと思われたが、選んだのは直球。これが真ん中に入ってしまい、完ぺきにとらえた打球は、センターの頭上を悠々超すタイムリー2塁打に!土浦バッテリーとしては、球種の選択も、そしてコースもどこか不用意な一球に思えたが、それを逃さなかった小宅が素晴らしかった。

自ら先制点を奪った小宅は3回表に先頭打者に2本目のヒットを許し、犠打で2塁へ送られるが、ここも1番中本を打ち取って得点を与えない。土浦ベンチは多彩な攻めで小宅をかく乱しようとするが、強気のインサイド攻め、そして、バックの堅守でチャンスを簡単に広げさせない。このあたりは、土浦日大の攻撃の前にかく乱され、自滅していったこれまでのチームより、慶応の方がワンランク上のようだ。

この流れはよくないと判断した小菅監督は、3回裏に伊藤彩が2アウトでランナーを3塁に背負ったところで早くも藤本を投入。一瞬の躊躇も許されないハイレベルな攻防は、中盤へ進んでいく。

早く同点に追いつきたい土浦日大だが、この日の小宅は今大会でも一番と思える素晴らしい出来。速球の威力が強く、2回戦からの登場という事もあって、まだ疲労度も1回戦からのチームと比較すると薄いのだろう。球威のあるボールが厳しいコースに来るため、打ちに行ってファウルが精いっぱい。打者優位でカウントを作ることができず、追い込まれるとカットボールを織り交ぜられて、淡々と打ち取られていく。

打線がなかなか援護をできないなか、2番手で登板した藤本は5回裏にピンチを招く。

先頭の9番小宅がこの日2本目となるヒットを放って出塁。さらに1番丸田には強攻策を選択すると、高めの変化球を詰まりながらもセンターへ落とし、チャンスを拡大する。好調の2番八木だが、きっちり犠打で送り、1アウト2,3塁。1回に続いて大チャンスで中軸を迎える。小宅の出来を考えると、もう1点も与えなくない場面。ここは土浦バッテリーが落ち着いて、慶応のスクイズを封じると、渡辺千はセカンドゴロでホーム封殺に。さらに4番加藤は四球で満塁となるが、当たっている5番延末をスライダーで空振りの三振に切って取り、絶体絶命のピンチをしのいでみせた。

ピンチの後にチャンスありとはよく言ったもので、土歌日大としてはグランド整備明けの6回表、上位に回る打順でなんとか点を取りたいところ。1アウトから1番中本が甘くなったスライダーをとらえてセンターへヒット。続く好調の2番太刀川には当然簡単には送らせない。ただ、この場面でも小宅は厳しいコースを突き、2球でカウント2-0と追い込む。さらにアウトロー、インハイと攻められると、最後は2-2からアウトコースのスライダーを打たせ、小宅への併殺打となってチャンス消滅。付け入るスキを一分も与えない慶応バッテリーの攻めであった。

流れが再び動き出しそうな休み明けの攻防。ここは何としても抑えたい土浦日大・藤本だが、先頭の6番渡辺憩にアウトコースよりの速球を完ぺきに引っ張られ、レフト頭上を越す2塁打を打たれる。ここは7番福井が確実に送ると、打席には8番主将の大村。スクイズもある場面で、守備陣は当然前進守備だ。最警戒モードの中、慶応ベンチはカウント1-1から大村にスクイズを指示。しかし、スライダーをうまく転がせず、ファウルで追い込まれる。

さらにカウントは進んで2-2となり、大村はアウトコースのボールに対して、ポイントを捕手寄りにおいて粘る。外に目付をし、嫌らしい打撃で相手バッテリーに圧力をかける。すると、8球目、藤本の決め球のチェンジアップがついに高めに浮く。このボールを体ごとぶつけるような打撃でとらえた打球は、右中間に弾み、3塁から渡辺憩がホームイン!あまりにも大きな2点目が慶応のスコアボードに刻まれた。

点差は2点に広がったが、もちろんあきらめる点差ではない。7回、8回とさすがに疲れの見え始めた小宅を攻めたて、ヒットが飛び出してスコアリングポジションにランナーを進める。しかし、いずれの場面でも小宅の速球の前にバットが押し込まれ、どうしてもタイムリーが出ない。前半から各打者のインサイドをきっちりついて、簡単に踏み込ませない伏線を引いていたことも大きかっただろう。特に左打者へのインローは、天下一品のボールである。8回はランナー二人を背負って好調の2番太刀川を迎えたが、最後は速球で詰まらせてレフトフライへ打ち取った。

対する土浦日大・藤本も7回に1アウト3塁のピンチを招くが、ここは4番加藤へのスクイズがセカンドへの飛球となってダブルプレー。8回も複数ランナーを背負ったが、この試合大活躍の9番小宅を打ち取って得点を与えなかった。再三ランナーを背負いながらも、慶応打線に3点目を許さなかったのは、藤本のエースとしての意地であった。

最終回、2点を追う土浦日大の攻撃は、3番後藤から。通常なら追いつける雰囲気の得点だが、この日の小宅を前にしては、重い2点であった。後藤は高めの速球を打つも高いバウンドのサードゴロに打ち取られて1アウト。ここにきてもコースいっぱいへの速球、スライダーは絶品だ。4番香取も力で封じ込めてセンターへのフライとなる。しかし、もう決まったかと思われた雰囲気の中、5番松田は初球をセンターへ打ち返して、出塁。最後まであきらめない姿勢を見せる。

ただ、この試合の主役はやはり小宅であった。最後まで球威の落ちない直球で攻め続け、6番鈴木は高めの速球で押し込んでレフトへのフライに。前進した渡辺千がつかみ取り、慶応が107年ぶりとなるファイナルへの切符をつかんだのだった。

まとめ

慶応は、この日は何といってもエース小宅の投球が一番の勝因だっただろう。球威抜群の速球で内外角の厳しいコースを突き、打席の中で相手打者に主導権を与えない。かき回す攻撃が得意な土浦日大をもってしても、早いカウントで追い込まれてしまうため、次々選択肢を奪われてしまった。わかっていてもどうしようもない、そう感じさせるほどの小宅のピッチング、いや慶応バッテリーの攻めであった。

また、攻撃陣は今大会最少の2点に終わったが、いずれも下位打線から得点できたことが相手にダメージを与えたと言えるだろう。やはり、激戦区の神奈川を勝ち抜くためには下位の攻撃力も重要になっただろう。1番から9番までどこからでも攻められる打線の分厚さが、慶応の強みであった。2点目を奪った8番大村の一打はその象徴だったと言える。横浜、東海大相模というそびえたつ2強の壁を前に、なかなか全国の舞台が遠かった慶応だが、磨き上げたエンジョイベースボールでついに全国の頂点へあと一つと迫ることとなった。

一方、土浦日大は、投手陣は慶応の強力打線を2点に封じ、十分仕事を果たしただろう。2回の先制点の場面はやや悔やまれるところもあったが、責めることはできない。むしろ、1回、5回と中軸を前に大ピンチを背負いながら得点を与えなかったことを褒めたたえるべきだ。10安打を許し、再三ランナーを背負いながらも踏ん張ったことで、この好試合が出来上がった。

惜しむらくは、打線が7安打を放ちながらも完封されたことだが、この日の小宅の出来を考えると致し方ない面も多いだろう。数少ない失投が来た場面で塁上の走者を動かして攻撃したかったが、その失投が大事な場面で全く来なかった。持てる力をすべて出し切ったうえでの敗戦という印象だった。ここまで全国の舞台にきてもなかなか勝ち上がれないことが続いた同校だったが、いくつもの壁を突き破ってたどり着いた、2023年夏のベスト4。今後、長く語り継がれるだろう快進撃であった。

注目の準決勝は関東勢対決!試合は観客も息を呑む緊迫の投手戦に!慶應義塾vs土浦日大 準決勝 ハイライト 甲子園 高校野球 – YouTube

コメント

タイトルとURLをコピーしました