【好投手列伝】北海道篇記憶に残る平成の名投手　1/4

羽澤正樹（駒大岩見沢）

駒大岩見沢史上最高成績となるベスト4進出をはたした1993年の選抜大会。佐々木啓示監督の元、「ヒグマ打線」の愛称で親しまれた強力打線が看板だったが、やはりエース左腕・羽澤の好投も大きかっただろう。初戦で当時2年生の赤星（阪神）が在籍していた大府との接戦を制すると、続く3回戦では東京大会を震撼させた世田谷学園の強力打線も1失点で完投。内外角を丁寧に投げ分ける揺さぶりが見事であった。

続く準々決勝の八幡商戦も打線の大量援護で勝ち上がると、準決勝は強豪・上宮が相手に。さすがにここまでくると、連投による疲労から球威を欠き、序盤でKOされたが、雪国が不利と言われた時代に選抜で見せた快進撃は北海道勢に大きな自信をもたらしたことは間違いないだろう。

第65回選抜高校野球大会世田谷学園×駒大岩見沢(2／2) – YouTube

安井謙一（東海大四）

東海大四を7年ぶりの夏の代表に導いた大型右腕。がっしりした体格から繰り出す伸びのある速球と低めに決まるスライダーを武器に南北海道大会を勝ち抜くと、甲子園では初戦で好左腕・前田（ヤクルト）を擁する東福岡と激突。のちにヤクルトで日本一に貢献した左腕を向こうに回して、安井は武器のスライダーで猛者ぞろいの東福岡打線を翻弄。10個の三振を奪取し、4-3のスコア以上に圧倒した内容で初戦を突破した。

続く3回戦ではこれまた巨人でローテーション投手になる高橋尚がエースの修徳と対戦。終盤に一時リードを奪いながらも延長の末にサヨナラ負けを喫したが、のちにプロで活躍する2投手を相手に堂々と投げ合った姿は立派であった。ちなみにこの時バッテリーを組んだ捕手・大脇が2015年に母校を率いて選抜で準優勝を果たすこととなる。

岡崎光師（北海）

平成に入って夏の北海道勢で初めて8強入りをつかんだのが1994年の北海であった。初戦の相手はこの大会で浦和学院や横浜と並んでV候補に挙がっていた宇和島東。宮出（ヤクルト）、橋本（ロッテ）を中心とした強力打線と松瀬、岩出ら4人の先発完投能力のある投手を擁し、これで4季連続の甲子園であった。

しかし、試合が始まると、投打に重厚な戦力を誇るチームを相手に2年生エース岡崎は得意のカーブを武器に臆することなく自分のボールを投げ込んでいく。守備陣も相手のボーンヘッドを見逃さずにけん制死を奪うなど、2点差で終盤まで食らいつくと、8，9回に怒涛の反撃で6点を奪い、見事な逆転勝利をつかみ取った。

その後、砂川北・小松島西と強打で圧倒してベスト8に進出。岡崎も投げるたびに自信を深め、特にカーブのコントロールとキレは試合を重ねるたびに向上していった。しかし、準々決勝では監督が疲労を考慮して先発を回避。控え投手が打ち込まれて、この大会で優勝した佐賀商に3-6と敗退した。今でも岡崎が先発していれば、この大会で北海道勢初優勝まで行ったのではないかという高校野球ファンは多い。

愛媛vs北海道 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

[プロ野球ハイライト] 1994熱闘甲子園　北海ｖｓ宇和島東 – YouTube

角井修（旭川実）

1995年夏に北北海道勢として初めて8強の壁を破った旭川実。松山商、鹿児島商、銚子商と名門公立校ばかりを相手に次々と打撃戦を勝ち抜いたが、その陰で打たれ強い投球を見せたエース右腕・角井の働きも見逃せないものがあった。

目立ったボールはないものの、ストレートとカーブを丹念にコーナーに集める投球で、翌年に全国制覇を達成する2年生4番今井や銚子商のプロ注目スラッガー沢井（ロッテ）にも敢然と立ち向かった。失点数自体は多かったが、ここぞという場面で踏ん張り続ける角井のピッチングが奇跡的な逆転劇を呼び込んだのは間違いないだろう。

また、打撃でも主砲・岡田の後を打つ5番として大活躍。特に2回戦の最終回に見せたイレギュラーヒットは、我慢強い投球を見せた角井への野球の神様のプレゼントだったのかもしれない。

【炎天下の夢のような猛打戦】1995 77回大会 2回戦旭川実 vs 鹿児島商平成7年　【乱打戦】 – YouTube

’95夏甲子園　旭川実vs銚子商 – YouTube

鈴木貴志（旭川工→ロッテ）

1996年夏の1回戦屈指の好カードとして注目されたPL学園vs旭川工。旭川工・鈴木、PL学園・前川（近鉄）のプロ注目左腕同士の投げ合いは期待に違わぬ投手戦となった。鈴木は恵まれた体格から繰り出す剛速球を武器に、大阪大会で数々の逆転劇を繰り広げたPL学園打線を序盤は無失点に封じた。しかし、6回に味方の拙守に足を引っ張られて3点を失うと、打線も前川の前に3安打で完封され0-4で敗退。投球内容では決して劣っていなかっただけに惜しまれる敗戦となった。

甲子園初の女性実況中継　ＰＬ学園　前川勝彦　旭川工を完封　1996年 – YouTube