中京(岐阜)
| 1 | 榊原 | 9 | 毛利 |
| 2 | 山本 | 10 | 日下部 |
| 3 | 寺西 | 11 | 林 |
| 4 | 山下 | 12 | 柴田 |
| 5 | 中川 | 13 | 安藤 |
| 6 | 高橋 | 14 | 高井 |
| 7 | 引本 | 15 | 土岐 |
| 8 | 城所 | 16 | 石田 |
秋の全国制覇を成し遂げた大型チーム
計4度の全国制覇を誇る県岐阜商を中心に、高校野球創成期から昭和中期にかけて強さを発揮してきた岐阜県勢。しかし、昭和終盤から平成にかけて私立高の台頭が目立ち始めると、その波にうまく乗り切れず、県勢は低迷が続いた。1983年夏の岐阜第一のベスト8を最後に全国での8強入りが遠く、初戦を突破する頻度も減少。そんな中、2003年度の中京は県民も期待を寄せる久々の大型チームであった。
前年となる2002年夏に、2年生主体の編成で2年ぶりの出場を果たすと、初戦で2年生スラッガー吉良(近鉄)を擁する柳ヶ浦に5-3と逆転勝ち。2年生のエース榊原(オリックス)はスライダーの切れが光り、8三振を奪う好投で完投勝利を飾った。この榊原を中心に、俊足巧打の1番城所(ソフトバンク)、女房役で中軸も務める山本、豪快かつ勝負強い打撃を見せる主砲・中川(中日)、好守の光る高橋とスタメン5人が2年生であり、翌年にも期待のかかる若いチームであった。
夏は3回戦で広陵に榊原のスライダーを攻略されて、2-7と完敗を喫するが、新チームが始まると、中京は快進撃を見せる。強かった。いや、本当に強かった。県大会では1試合10ホームランが飛び出す試合もあり、岐阜大会、東海大会ではほとんどをワンサイドゲームで制して優勝。城所が出塁し、引本、中川、山本の中軸で返すパターンで、先制・中押し・ダメ押しと得点を奪う。試合全体を通じて相手に主導権を与えない勝ち方で次々と相手をなぎ倒していった。
そして、東海王者として臨んだ神宮大会でもその強さは継続。初戦は関東王者の横浜が相手だったが、2回に1番城所のタイムリー3塁打などで好投手・成瀬(ロッテ)から3点を奪取。名将・渡辺監督も舌を巻くほどの速攻劇を見せ、当時乗りに乗っていた強豪を相手に、3-1というスコア以上の差を感じさせる内容で勝利を収めた。その後も、ダルビッシュを擁する東北、強打の延岡学園と下し、岐阜県勢として久々の全国制覇を達成。まだコンディション不良になっていなかったダルビッシュを真っ向から打ち崩した点でも中京打線の実力の高さがうかがえた。
2003年選抜は本命不在といわれ、北から順に東北、横浜、浦和学院、遊学館、平安、智辯和歌山、広陵、徳島商、明徳義塾、延岡学園と優勝候補が乱立していたが、その中でも投打に安定感のある中京の実力は高く評価されていた。神宮王者は春は勝てないというジンクスもあったものの、それを打ち破るのではないかという期待感に満ちたチームであった。
2回戦
延岡学園
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | 5 |
| 4 | 3 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | × | 8 |
中京
迎えた1回戦の相手は奇しくも神宮決勝を戦った九州王者・延岡学園。秋の決勝のリターンマッチが選抜初戦で実現したのである。技巧派左腕・上田と本格派右腕・杉尾の左右2枚看板を強力打線が支え、3番ショートの井本は大会でも注目の打って走れる好選手であった。神宮準決勝では遊学館の好左腕・小嶋(阪神)を攻略したように、一度勢いに乗ると止めるのは難しい打線だ。榊原の投球に加えて、自軍の打線の早めの援護も不可欠であった。
また、このブロックにはほかにも近畿王者・平安、関東王者・横浜、昨夏の甲子園の覇者・明徳義塾などが顔をそろえるという激戦ぶり。監督は目を覆いたくなるほどのブロックとなった。
しかし、試合開始から中京のペースで試合は進む。1回表、榊原は延岡学園の上位打線、1番緒方、2番木村、そして注目の3番井本を3者連続三振に切ってとる。速球は走り、スライダーは打者の手元で鋭く曲がる。まるで久々の大舞台が待ち切れなかったように、しょっぱなからエンジン全開で三振奪取を続けた。
すると、エースの作ったリズムに打線が応える。1回裏、注目の1番城所が積極的な打撃でセンターへ2塁打を放つと、犠打で1アウト3塁となって、打席には3番引本。秋から台頭した引本だが、その卓越した打撃センスはチーム内でも頭一つ抜けていた。左打席からアウトコースのボールを流した打球はレフト前に弾むタイムリー!さらに、これをレフトが後逸する間に引本も生還し、早くも2点を奪って主導権を奪取する。
ここからの中京の追撃はすさまじかった。初回はこれだけにとどまらず、相手内野陣の連続失策も絡んでさらに2点を挙げると、2回に入っても攻撃は止まらない。初回に打者一巡したため、2回も先頭で打席に入った城所が再びヒットで出塁。再び犠打で進塁すると、3番引本、4番中川の連続タイムリーで2点を追加!この回、計5安打を集中し、3点を挙げて、7-0と大量リードとした。一度対戦経験があるとはいえ、実戦派の好左腕である延岡学園・上田をこうも鮮やかに攻略するとは、恐れ入る。
しかし、3回途中から本格派右腕・杉尾が登板すると、序盤の打ち疲れもあったか、さすがに中京打線も沈黙する。すると、序盤は沈黙していた延岡学園打線が中盤以降に繋がり、5回に2番木村の2点タイムリーなどで計3点を返すと、6回にも1点を追加。4-7と3点差に迫り、九州王者の意地を見せる。この辺りは中京バッテリーの配球もやや単調になった感はあったか。
ただ、そうは言っても、やはり序盤のリードは大きかった。6回裏に4番中川のタイムリーで1点を追加すると、榊原は5点を失いながらも、14三振を奪う力投で完投勝ち!リベンジを狙う延岡学園を8-5で返り討ちにし、まずは大一番を制して、岐阜県勢20年ぶりとなる選抜勝利を挙げた。
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3回戦
中京
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | × | 3 |
平安
続く3回戦の相手は近畿王者・平安。伝統的に手堅い戦いに定評があり、2回戦で対戦した延岡学園とは全くがチームカラーの違う相手だ。昨秋の近畿大会では、強打を武器に勝ち上がったが、一冬を超えると、2年生左腕の服部が成長。安定したコントロールを武器に、宇部鴻城打線を4安打12奪三振で完封し、初戦を危なげなく突破した。
一方、打線は4番西野のホームランに、2年生丸木の2本のタイムリーと、効果的にタイムリーが飛び出して計4点を奪取。左サイドハンドの岩本を終盤に打ち崩し、まずは4-0と完勝で初戦を突破してきた。注目の3番西村は1安打のみだったが、打線全体に粘っこさと勝負強さがあり、中京のエース榊原に対して、どう対応するかが注目された。
さて、試合は序盤から投手戦で推移。服部–原の平安バッテリーは、中京の核弾頭・城所を徹底マークし、アウトコースのスライダーを主体に、徹底して厳しいコースを攻める。初戦で3安打を放ち、これまで中京の攻めの起点となってきた城所を抑えることが、打倒・中京のスタート地点であることをよく心得ていた。2回表には1アウト1,3塁のピンチを招くも、スクイズを外して難を逃れる。
対する中京・榊原は、1回戦以上の調子の良さで4回まで5三振を奪い、無安打投球を展開。昨夏はアウトコースに速球とスライダーを集めるも、外偏重になったところを狙われて綱領に打ち込まれたが、この春は特に右打者のインサイドをしっかり突いていき、簡単に踏み込みを許さない。エースの安定した投球が、中京の強さの源であった。
すると、このエースの投球に乗って打線が4回から服部を捕まえ始める。先頭の3番引本が四球で歩くと、盗塁で2塁を奪取。服部は中軸の4番中川、5番山本を連続三振に抑えるが、6番寺西が変化球をうまくとらえてセンターはタイムリー!さらに5回表にも2番毛利がセンター返しでタイムリーを放って2点を先行する。技巧派投手攻略のお手本となる打撃を、つなぎ役の選手たちがやってのけた。
だが、平安打線もただでは引き下がらない。ここから両者の攻防は激しさを増していく。5回裏に、6番丸木・7番服部の連打で1アウト1,3塁のチャンスを作るが、ここで8番増田のスクイズは小飛球となり、榊原が直接つかんで3塁も封殺。ダブルプレーで一瞬にしてピンチを脱した。しかし、グランド整備明けの6回表、今度は中京が先頭の4番中川の2塁打を活かして1アウト3塁としながら、スクイズを失敗。互いにあと一押しができず、2-0と中京リードのまま、試合は6回裏に突入する。
ここまではなんだかんだ言っても、神宮王者・中京のペース。だが、6回裏、平安の集中力が榊原を凌駕していく。
この回、1アウトから1番白滝が死球を受けると、2番原には思い切って強攻を選択。ここまで手堅い攻めに終始していた原田監督が勝負に出る。ランナーがたまって、打席には打線を引っ張る3番西村、4番西野。しかし、ここで両打者は榊原の得意とするスライダーに手を出さず、連続四球を選ぶ。中軸の豪快なイメージとは異なる「静」の圧力。じっくりと選球して、相手エースを追い詰めていく。
この圧の前に動揺があったか、続く5番の打席で出てきた「とっておきの代打」竹原にカウントを取りに行ったボールを狙われる。打球はライト前に落ちる2点タイムリーとなり、平安が逆転!この試合で初めてリードを奪った。
この逆転劇は中京ナインに動揺を生んだだろう。1つは、昨秋からほとんどの試合が先行逃げ切りだったこと。そして、もう一つは攻撃の起点となるはずの城所が完全に封じ込まれていたことだ。ここまで2度スクイズを外されていたことも、嫌な雰囲気を加速させただろう。終盤に入って、もう一つギアを上げた服部を前に7回以降、得点はおろかランナーすら出せない。8回には1番城所、2番毛利、3番引本と上位打線が3者連続三振。いわば中京打線のストロングポイントを、疲れがあるはずの終盤8回に完全に封じてしまったのだ。
結局、服部は9回を投げて12奪三振の好投。2試合連続で2桁奪三振を奪い、タレント揃いに中京打線を相手に堂々投げ勝った。緩急と内外の出し入れができれば、強打者が並ぶ打線でも抑えられることを証明して見せた。
一方、中京はこの大会で岐阜県勢として20年ぶりの勝利を挙げたものの、不完全燃焼だったのは否めないだろう。平安のしたたかさの前に屈した格好だった。勝てば、準々決勝で横浜と神宮の再戦だっただけに惜しまれる結果であった。。
ただ、秋に岐阜県勢として久々の日本一を取ったことは、県の野球に活気を与えた。3年後の選抜では好左腕・尾藤(巨人)を擁する岐阜城北が4強入りを果たし、その翌年にはエース森田を中心に希望枠で出場の大垣日大が準優勝を達成。県勢の不振を一気に吹き飛ばす活躍を見せた。この流れを作り出したのは、あるいはこの2003年度の中京だったかもしれない。それほど期待を持たせる大型チームであった。


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