日本文理 石塚雅俊

大会15日目第1試合
2009年夏決勝
日本文理
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 | 5 | 9 |
| 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6 | 2 | 0 | ✖ | 10 |
中京大中京
日本文理 伊藤
中京大中京 堂林→森本→堂林→森本
試合前予想
1990年代後半から名将・大井監督のもと、着実に力をつけてきた日本文理。新潟明訓と県内2強を経験し、2006年の選抜では新潟県勢初勝利と初の8強入りという快挙を成し遂げていた。しかし、夏の甲子園の勝利はまだなく、この2009年世代も北信越大会を制したように力はあったが、選抜では初戦でV投手となる清峰・今村(広島)に完封負けを喫してきた。大会屈指の右腕をよく攻めたが、スコアリングポジションに進んでからギアチェンジする投球の前に対応できなかった。
だが、雪辱を期した夏は打線が奮起。切手、高橋隼、武石、吉田、高橋義と並ぶ上位打線は壮観であり、下位打線も良く打った。甲子園では初戦で寒川の左腕・斎に苦戦するも終盤に高橋義のホームランなどで逆転勝ち。3回戦、準々決勝は2桁得点の猛打を見せ、新潟県勢として初の決勝進出を果たした。特に5番高橋義、9番主将の中村の二人は6割を超す打率を記録し、好調な打線を象徴する存在であった。また、投げてはエース伊藤が必殺のチェンジアップを武器に、好投。若林との息の合ったバッテリーで相手打線をかわし、準決勝では好調な県岐阜商打線を1失点で完投し、集大成の投球を見せていた。
そんな日本文理の決勝の相手は、春夏計10度の全国制覇の経験を持つ、名門・中京大中京。下級生時から主力を担った河合、堂林(広島)、主将・山中を中心に東海地区では頭一つ抜けた存在であった。神宮大会は天理に、選抜大会は報徳学園に敗退し、力がありながらもう一つかみ合わない戦いが続いていたが、夏の甲子園では1回戦で龍谷大平安、2回戦で関西学院と連破し、近畿勢へのリベンジを達成。特に、関西学院戦は苦しい戦いになったが、ここを3番河合のサヨナラ弾で制し、波に乗った。
投手陣では2年生右腕・森本にめどが立ったことで、エース堂林の負担を軽減。その堂林は、140キロを記録する速球と変化球を力まず低めに集め、打たせて取る投球で、準々決勝・準決勝と尻上がりに調子を上げていた。打線は、準決勝でも花巻東の菊池雄星(エンゼルス)を打ち込み、4ホームランを記録。2年生の正捕手・磯村(広島)が2試合連続ホームランを放てば、下位の6番伊藤、8番金山にも一発が飛び出し、上位から下位まで破壊力抜群の打線を形成した。初優勝を目指す日本文理にとっては、厳しい相手が待ち受けることとなった。
展開
先発は、中京大中京が堂林、日本文理が伊藤と両エースを指名。しかし、立ち上がりから互いに強力打線が襲い掛かる。1回裏、中京大中京が堂林の右中間スタンドに2ランを叩き込み、2点を先行すれば、日本文理は4番吉田、5番高橋義の連続2塁打や2番高橋隼の同点弾などで、すぐに試合を振り出しに戻す。
その後は堂林と伊藤がランナーを背負いながらも踏ん張り続けたが、6回裏、中京大中京は9番岩月の四球を足掛かりに1番山中のヒットなどで満塁のチャンスを作る。ここで、続く4番堂林に三遊間を破られて勝ち越しを許すと、さらに攻撃は続き、7番柴田が満塁走者一掃の3点タイムリー2塁打で8-2。選抜まで女房役だった男がエースに大きな援護点をもたらした。その後も、両チーム2点ずつを加えるが、点差は変わらず。6点のリードをもって中京大中京が最後の守りについた。
そして、代打へ
9回表、中京大中京はこの回から堂林をマウンドへ。エースを優勝投手にするべく、大藤監督が継投のカードを切った。堂林は期待に応え、8番若林、9番中村を打ち取って2アウト。優勝はもうそこまで迫っていた。
しかし、ここから日本文理の信じられない猛攻が始まる。1番切手が四球で出塁すると、2番高橋隼、3番武石の連続長打で2点を返し、10-6。さらに、4番吉田がサード後方へのフライを打ち上げるも、中京守備陣のお見合いで命拾いとなり、命拾い。ここから連続四死球で満塁となると、球場は大盛り上がりとなる。中京は堂林を降板させ、2番手で森本を送っていたが、流れは止まらない。6番の伊藤が声援に後押しされたかのように、2点タイムリーを放ち、10-8。もはや、試合の行方は完全にわからなくなっていた。
点差が2点となり、押せ押せの日本文理。次の打席に誰を送るか悩むところで大井監督は2年生の平野を代打に考えていたが、ここで打撃のいい3年生石塚が立候補。ナインもその後押しをする。カーブが苦手なため、大井監督としては不安があったが、ここはナインの意見を尊重して打席へ送る。すると、石塚はそのカーブを待っていたかのように、しっかり呼び込んで痛打!打球は三遊間を真っ二つに破り、2塁ランナーが生還して、ついに1点差にまで迫った。ベンチと選手が一体となって取った作戦が見事にはまってのタイムリーであった。
その後、8番若林がサードライナーに倒れ、10-9と惜しくも届かなかったが、王者を瀬戸際まで追い詰めた姿は、「史上最も美しい敗者」として、今も高校野球ファンの胸に刻みこまれている。


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