平安(京都)
| 1 | 服部 | 10 | 芝村 |
| 2 | 原 | 11 | 井上 |
| 3 | 山原 | 12 | 中西 |
| 4 | 白滝 | 13 | 竹原 |
| 5 | 丸木 | 14 | 浜本 |
| 6 | 松崎 | 15 | 浦上 |
| 7 | 西村 | 16 | 柴田 |
| 8 | 西野 | 17 | 柳沢 |
| 9 | 西郷 | 18 | 増田 |
鉄壁のディフェンス力を誇った伝統校
2002年度の平安は、前年夏の8強メンバーが数多く残り、エース高塚、好打者・今浪(日本ハム)ら力のある面々が揃っていた。しかし、V候補の一角として臨んだ選抜は2年生エース・須永(日本ハム)を擁する浦和学院に1-7と完敗。そして、夏は京都大会の準々決勝で福知山成美にまさかのコールド負けを喫し、春夏連続出場はならなかった。期待されていた学年だけに原田監督もショックは大きかっただろう。その結果を受けて迎えた新チームは野手で西村、西野と軸になる選手が残ったとはいえ、まだ投打に未知数な部分が大きかった。
しかし、新チームが始まると、例年以上に活発な打線が投手陣を援護。近江に7-5、斑鳩に4-3、そして、夏の準Vメンバーが多く残った智辯和歌山には6-3と見事な逆転勝ちを収め、監督の予想に反して近畿大会優勝を勝ち取ったのだ。一方、投手陣は1年生の左腕・服部が成長。打たれ強い投球で次々に接戦を勝ち抜く原動力となった。勝つたびに強くなっていったチーム。秋の段階では守備中心のチーム作りをする原田監督をもってして、「今年は打てる」と豪語するほどの打力と下級生エースの投球がかみあっての栄冠であった。
近畿王者として迎えた選抜。ただ、当時は練習場の環境の問題もあり、雪の影響などで打撃練習がなかなかできないのが悩みであった。冬を超えて選抜に臨むと、いつもの投手陣を中心とした守りをベースにした平安の野球に良くも悪くも戻っていた。一冬を超えての新2年生エース服部の成長はすさまじく、松崎–白滝の二遊間、先輩捕手・原を中心としたディフェンス陣が援護。初戦で宇部鴻城に4-0と完封勝ちを収めると、2回戦では神宮王者の中京を相手に中盤のワンチャンスを生かして、3-2と逆転勝ち。昨年の成績を大きく超える8強入りを果たした。
一方、打線は3番西村、4番西野の頼みの中軸コンビが不振。地区大会チャンピオン同士の対戦となった準々決勝の横浜戦では、相手エースの成瀬(ロッテ)を前にわずか2安打で完封負け。図ったようにボール球を振らせる相手の術中にはまり、何もさせてもらえなかったといって差し支えない。服部の好投でスコアは0-3だったが、それ以上の差を感じさせる内容であった。
悔しさをもって終えた選抜。3番西村は、「夏、最強の平安として甲子園に行く」という決意通り、春の京都大会をまずは圧倒的に制する。そして、各校が打倒・平安で臨んできた夏の京都大会では、準々決勝まで1試合平均1失点の投手陣をベースに安定した戦いで勝ち上がる。すると、準決勝、決勝では福知山成美、京都外大西と府内最大のライバル相手にエース服部が苦しむが、3番西村の打棒がさく裂。決勝では不振にあえいでいた4番西野に先制3ランが飛び出し、10-5、8-4とそれぞれ失点の倍の得点をたたき出して返り討ちにしてみせた。
すっかり夏仕様となった、「打てる平安」。5番には成長著しい2年生丸木が座り、9番に小技も効く俊足の西郷が定着したことで攻撃の幅は格段に広がっていた。また、投げては服部も相変わらずの打たれ強さを見せ、内外野も堅守で援護。投攻守に隙のない戦いでつかんだ連続出場の夏は、春の8強以上となる成績を狙えるチームになっていた。しかし、夏の甲子園では対戦相手のレベルが上がり、なかなか打ち続けて勝つのは難しい。そんな中で平安の強さを支えたのは、エース服部を中心とした「鉄壁のディフェンス力」であった。
1回戦
平安
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 1 | 2 | 1 | 4 | 0 | 0 | 0 | 8 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 |
日大三
1回戦の相手は一昨年の夏の優勝校・日大三。投手力にやや不安はあるものの、2001年に全国を席巻した打力は健在である。投打のバランスでは平安有利との呼び声だったものの、油断ならない相手であった。
打力を誇る日大三としては先制して流れをつかみたいところ。1回表、1番佐藤が広く空いたライト線へ2塁打を放ち、犠打で1アウト3塁に。いきなりチャンスを迎える。ここで、小倉監督は3番滝にスクイズを命ずるも、3塁線ぎりぎりの打球をサード丸木が冷静に見送ってファウルに。平安の守備は非常に落ち着いている。この後、左打者の滝に対して服部はインサイドの速球で起こし、外のスライダーを振らせるという完ぺきな配球で三振を奪う。4番井田にも自分のバッティングをさせず、セカンドゴロで打ち取り、無失点で立ち上がった。
日大三は2回にもヒットのランナーを出すが、得点できず。徐々に服部のリズムに引き込まれ、得点の気配が消えていく。服部はスピード、球威ともに目を見張るものはないが、安定したコントロールが持ち味。直球はコーナーに決まり、変化球は低めに落ちる。驚くようなボールはなくとも、打てるボールも少ない、そんなピッチングだ。まさに強豪校の「勝てる投手」である。
2回裏も服部は無失点ですると、日大三は1,2回と踏ん張っていた左腕・小田が捕まる。3回表、スコアリングポジションにランナーを背負うと、選抜では3試合で1安打に終わった3番西村が会心の一撃でレフトオーバーのタイムリー2塁打を放つ。先制点を取られたことで、日大三守備陣に重圧がかかり、4回、5回といずれも守備のミスが出て失点につながり、5回を終えて4-0。日大三の守りは西東京大会を見ても決して悪くはなかったが、自慢の強打が服部に封じ込まれたことが重ねてプレッシャーとなったようだ。
こうなると、試合は完全に平安ペースに。6回には2番手の右腕・高山も完全に攻略し、4得点。余裕を持った服部は、7回に7番小沢に一発を浴びたが、流れの中で取られた点は0。2年生エースらしからぬ老獪さで一昨年の優勝校を破り、まずは力強く初戦を突破した。強打とエースの力投、そして堅守がかみ合っての快勝劇。選抜からリニューアルした「NEW平安」を見た思いだった。
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2回戦
平安
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 2 |
| 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
明徳義塾
しかし、続く2回戦の相手は前年度の優勝校・明徳義塾。直近2年間の優勝校と戦うのだから、くじ運はなかなかのものだ。明徳は、鉄板の3年生メンバーが中心だった前年と違い、2年生主体のチームカラー。2年生エース鶴川に、梅田、田辺、久保田ら伸び盛りの面々を主将・沖田、4番山口の3年生二人が支えるチームカラーだった。馬淵監督としては翌年も見越しての手ごたえを感じていただろうが、この代でももちろん狙うは全国制覇だった。
夏春連覇を狙って臨んだ選抜では、準々決勝で平安が3-0と完敗した横浜と3回戦で対戦しており、延長12回の死闘の末に4-8と惜敗している。単純比較はできないが、横浜との試合内容を見ると明徳の方が春の段階では力は上に思えた。
夏は並み居るライバルを退けて高知大会を勝ち上がると、夏の1回戦では奇しくも同じ神奈川代表の横浜商大と対戦。エースで3番の給前を中心に、神奈川決勝で横浜を7-2と投打で圧倒して勝利していた。1回戦屈指の好カードとなった試合は、0-0のまま進み、7回に先発の右アンダーハンド・湯浅がついに1点を先行される。しかし、ここで給前にかえって力みが出たか、直後の7回裏に代打・大原の同点タイムリーが飛び出して試合は振り出しに。ここからたたみかける攻撃で一気に3点を奪い、鮮やかな逆転勝ちを演じた。この試合を見て、「今年の明徳も強い」と思ったファンも多かったはずだ。
さて、互いに関東の強豪を下しての、2回戦での激突。大会中盤の山場とも言える試合であり、このカードが準々決勝や準決勝で実現していてもなんら違和感はなかっただろう。平安にとっては、春以降の成長度合いを測る絶好の相手であった。
しかし、立ち上がりにやや不安を抱える服部に明徳打線が襲い掛かる。1回裏、主将の1番沖田がセーフティバントで揺さぶりをかけると、これがまんまと決まって内野安打に。犠打で2塁へ進むと、2アウト後に連続四死球を与え、満塁とピンチが広がる。ここで打席に入るのは6番田辺。昨年の優勝投手の弟であり、自信は女房役としてチームを支える。服部のボールがやや甘く入るところを逃さず引っ張った打球は、三遊間を真っ二つ!3塁から沖田が生還し、2塁ランナーの山口もホームを狙うが、ここはレフト西村の好返球でタッチアウトとなる。このあたりの堅守はさすが平安である。
先制点を取られた服部。だが、2回以降はいつもの落ち着きを取り戻すと、投手戦の様相を呈し始める。いつもはそつのない攻撃が持ち味の明徳だが、この試合はどこか様子がおかしい。2回、4回とボーンヘッドで塁上のランナーを失い、チャンスを逸してしまう。もちろん、明徳のミスではあるが、その一瞬のスキを逃さない平安守備陣のしたたかさが上回った印象だ。ランナーが出てもタイムリーにつながる前に未然にピンチの芽を摘み取っていく。
すると、明徳の先発・湯浅に封じ込まれていた平安打線が徐々に本領を発揮し始める。5回表、伸び盛りの2年生丸木がセンターオーバーの2塁打で出塁すると、犠打で1アウト3塁に。ここで原田監督はすかさず8番原にスクイズを指示。これがきっちり決まって同点に追いつく。1安打に2犠打を絡めたスピーディーな攻撃。従来の平安らしさが前面にでた攻撃だった。
同点のまま試合は終盤戦へ突入するが、ミスの多い明徳に対して、そつなく食らいつく平安に流れがあったことは球場の空気も察していたか。8回表、巧打の9番西郷が先頭でヒットを放つと、続く1番松崎の犠打を処理しようとした湯浅とセカンド松原が顔面から衝突してしまう。不運な形で内野安打となったうえに、湯浅はこのアクシデントで退場となる。明徳は2番手で鶴川をマウンドへ送るが、犠打で1アウト2,3塁とされ、打席には3番西村。鶴川の速球をとらえた打球は、左中間フェンス手前まで飛ぶ犠飛となって平安が貴重な勝ち越し点を手にする。
結果は、犠飛だったが、球場全体が気圧されるほどの大飛球であった。西村は初戦に続いての貴重な一打であり、春からの成長を見せた一本だった。
ただ、明徳もこのままでは引き下がれない。8回裏、今度は平安守備陣に犠打処理のミスが出てしまい、同じように1アウト2,3塁で中軸の4番山口を迎える。ここで、平安の捕手・原は速球を要求するも、服部は自分の意志でカーブを投じる。「打てるものなら打ってみろ」と言わんばかりのボールは低めに決まり、明徳の仕掛けたスクイズは空振り。結果的に山口を三振に打ち取り、この絶体絶命のピンチを脱して見せた。
1点差のまま、試合は最終回の守りへ。9回裏、明徳は代打・永尾のヒットと死球で1アウト1,2塁とし、最後まで食らいつく。ここで打席には主将の沖田。だが、服部の強気は最後まで崩れなかった。沖田に対して強気の速球でインサイドをえぐると、詰まった打球は2塁手・白滝の前へ。白滝からショート松崎、そしてファースト山原と鉄壁の二遊間が併殺を完成させ、ゲームセット!平安が堅守をベースとした隙の無い野球で昨夏の王者を下し、会心の試合で3回戦進出を決めたのだった。
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3回戦
平安
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 計 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1× | 1 |
東北
1,2回戦と近年の全国制覇校を下しての3戦目。相手は昨秋の神宮大会で0-2と惜敗した東北高校であった。エース・ダルビッシュをはじめとして、名将・若生監督のもとに有望な選手が集ったみちのくの雄。ちょうど2年前にライバル仙台育英の不祥事があったことで、県内外の有力選手が一堂に会した代でもあった。分厚い投手陣とタレントが揃う打線で、東北地区ではもはや負けなし。悲願の白河の関越えを果たす、最有力候補であった。
しかし、優勝を狙って臨んだ春は、大会前のアクシデントで負傷したダルビッシュが本調子ではなく、花咲徳栄との打撃戦の末に9-10とサヨナラ負け。これが尾を引いたか、ダルビッシュは成長痛や腰の痛みにも悩まされ、春以降なかなかベストコンディションでの投球は難しくなった。ただ、これをチャンスに変えたのが、ダルビッシュ以外の投手陣。選抜で好投した右腕・高梨をはじめ、2年生左腕・采尾、そして同じく2年生の右サイドハンド真壁が練習試合などで次々結果を残し、夏を迎えるころには投手陣の厚みがさらに増していたのだった。
宮城大会では、準決勝まで危なげなく勝ち上がると、決勝は永年行く手を阻まれてきたライバル仙台育英に5-4と競り勝って春夏連続出場を達成。東北としては全国行きを決めたことより、大一番で仙台育英に勝ったことの方が喜びは大きかったかもしれない。それほど東北の選手は喜びを爆発させていた。
迎えた甲子園では初戦で筑陽学園を相手に初回に7点を先行しながら、激戦区を勝ち抜いた初出場校の底力を前にダルビッシュがつかまってしまい、3回で早くも1点差まで詰められてしまう。しかし、ここで好投を見せたのが2番手で登板した真壁。サイドハンドから140キロに迫る速球を投じ、相手打線の勢いを断つと、終盤に追加点を挙げて、11-6と辛くも初戦を突破した。
続く2回戦は春の近畿王者の近江とのV候補対決に。ダルビッシュは10安打を浴び、「こんな強力打線は見たことがない」と驚きながらも粘りの投球で1失点完投。打線も中盤に試合をひっくり返し、大一番を3-1で制して、3回戦はコマを進めてきた。
こうして、前年秋の神宮以来、顔を合わせた両校。服部、ダルビッシュの両エースも紆余曲折ありながらも成長を見せており、リベンジか、返り討ちか、注目の3回戦が幕を開けた。
試合は、立ち上がり、またも服部が1アウトランナー3塁のピンチを背負うが、東北の3番大沼、4番横田を連続三振に切って取る。東北も野手陣は2年生が多く、同世代の打者を相手に服部も負けん気むき出しで立ち向かう。これで1回戦から3試合連続で1アウトランナー3塁の状況を無失点。神がかり的な勝負強さを見せる。
この初回の投球を皮切りに両エースの凄まじい三振奪取が始まる。服部がカーブを軸に、速球との緩急で三振を奪えば、ダルビッシュは速球主体の力の投球で平安打線を圧倒。この大会好調の3番西村からもアウトローの速球でバットを出させもせず、相手の軸を完全に封じ込める。高校時代のダルビッシュは多彩な変化球でかわす投球が持ち味だったが、高校3年間の甲子園で、この試合は唯一力勝負に出た印象の投球であった。
両者とも中盤戦で早くも三振数は2桁に乗り、互いに一歩も譲らない投手戦。ただ、服部の方が三振数は多いが、相手打線をねじ伏せているのはダルビッシュといった印象だった。平安もランナーが出ないことはないが、スコアリングポジションに進んでからのダルビッシュの集中力は抜群である。球威・スピードともに申し分ないボールが突き刺さり、夏に向けて打力を鍛え上げてきた平安打線が手も足も出ない。原田監督としても厳しい試合内容だったが、それでもエース服部の好投と内外野の堅守で東北に得点は与えない。試合は、0-0と緊迫した雰囲気のまま終盤戦へ突入した。
しかし、後半になるに従って、徐々に服部の方がヒットを打たれだす。球場もざわめくレベルとなった珠玉の投手戦となったが、押し気味なのは東北の方だった。
そして、結末を迎えたのは延長11回裏、しかも1年生のバットからだった。東北は先頭の2番宮田のヒットを足掛かりに2アウト1,2塁とチャンスをつかむと、打席には1年生ながらスタメンを勝ち取った加藤政。2ストライクと服部に追い込まれたが、外すつもりだったストレートが甘く入るのを逃さなかった。三遊間をキレイに破った打球は、レフト西村の懸命のバックホームも及ばず、宮田が一歩速く生還してサヨナラ勝ち!東北が屈指の好ゲームを制し、久々のベスト8へとコマを進めた。
平安は惜しくも寸前でベスト8には届かず、惜敗に終わった。しかし、競合が集ったブロックの中で難敵を2校下し、この大会の準優勝校にも最後まで食い下がった戦いぶりは見事であった。近畿勢最後の砦を守り事はできなかったが、多くの高校野球ファンの間で、この年の平安の戦いは脳裏に刻まれていることだろう。
【高校野球】甲子園が揺れた瞬間 東北のダルビッシュと平安サウスポー服部の2年生エースの投げ合い


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