独断と偏見で選ぶ、2024年夏にベスト8へ進めなかったイチオシの好チーム

2024年

早稲田実(西東京)

1 中村 11 唐箕
2 山中 12 川上
3 國光 13 浅木
4 内囿 14 小薗井
5 高崎 15 松尾
6 宇野 16 片山
7 石原 17 磯田
8 三澤 18 金城
9 灘本 19 西村
10 山崎 20 田中

覚醒した2年生エースを中心に、見せた伝統校の底力

王貞治(巨人)、荒木大輔(ヤクルト)、斎藤佑樹(日本ハム)、清宮幸太郎(日本ハム)と、一世を風靡したスター選手の活躍で甲子園を沸かせてきた名門・早稲田実。しかし、時が令和に移ると、同じ西東京のライバルである日大三・東海大菅生の前に後塵を拝し、清宮を擁した2017年の選抜以来大舞台から遠ざかっていた。

しかし、2024年度のチームは強力打線を武器に久々に代表権を獲得。西東京決勝では日大三とのすさまじい打撃戦を制し、サヨナラで甲子園行きを決めた。2番に強打者の宇野(ソフトバンク)を置き、初回から複数得点を狙える打線を形成。大物うちがいるわけではないが、切れ目なくつながり、足も絡めて気づけば大量点を上げるのが必勝パターンだ。

一方、2年生左腕・中村がエースの投手陣はやや不安を擁する。中村は速球にはキレがあるが、制球が安定せず、予選では5試合で22失点と苦しんだ。多くの投手が登板し、継投策も視野に入れてはいるが、やはり本戦ではエースの一本立ちが望まれる状況であった。

1回戦

早稲田実

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 3 0 0 0 1 2 1 1 8
2 0 0 0 0 1 1 0 0 4

鳴門渦潮

初戦の相手は打力に定評のある鳴門渦潮。徳島大会決勝では、選抜8強入りを果たした阿南光の剛腕・吉岡(DeNA)を打ち崩し、勝ち上がってきた。3番森高、4番岡田は長打力があり、エースも務める岡田は長身からの速球とスプリットで三振の奪える好投手であった。

1回表、早実は1アウトから2番宇野が打席へ。木製バットで打つ主将は、2球目の速球を完ぺきにとらえてレフトへ打球を運ぶと、相手の守備位置を見て一気に2塁を陥れる。この回は無得点に終わるものの、早稲田にムードを持ってくるような好走塁であった。

一方、中村の立ち上がりに不安を抱える早実。1回裏、1アウトから2番古住、3番森高がよく選球して連続四球を勝ち取ると、打席にはエースで4番とチームの顔である岡田。カウント1-1から甘く入ったスライダーをとらえた打球は右中間に弾むタイムリーとなって1点を先制する。さらに、1アウト1,3塁から5番福山もストレートに詰まりながらもライトへはじき返し、この回2点を先行する。

不安が的中しての2点。ただこれくらいのビハインドは西東京でもよくあった展開だ。2回表、腰を据えて岡田攻略に取り掛かる。先頭の6番山中がアウトコース高めの速球をセンターに返し、犠打と四球で1,2塁とチャンスを広げると、9番瀧本がスライダーをたたきつけた打球はしぶとく1,2塁間を破り、チャンスを広げる。球場はコンバットマーチの大応援。1番三沢は三振で2アウトとなるが、続く2番宇野が粘って10球目のスライダーをとらえた打球が、レフトフェンスを直撃する逆転タイムリー2塁打に!一気に試合をひっくり返す主将の会心の一撃だった。

この逆転打に呼応したかのように2回以降、中村が別人のように立ち直る。都大会とは別人の内容で、2回から5回まで鳴門渦潮打線にヒットはおろかランナーすらも許さない投球を展開。早稲田実に守りからリズムをもたらす。一方、2回に逆転打を許した岡田も3回以降は四球こそ出しながらも力のある速球とスライダーを武器に、早稲田実打線を無失点に封じるが、球数は5回で早くも99球に到達。細心の注意を払って投げている分、どうしても球数がかさんでいった。

すると、疲労が出たか、6回表、早実打線が岡田の打球をとらえだす。先頭の6番山中がセンターの頭上を襲う打球を放ち、これはセンターの好守に阻まれるが、会心の当たりを放つ。続く7番国光は高めのスライダーをセンターに返すと、8番内園には強攻策を指示。センターに落ちるヒットとなり、1塁ランナーは好走塁で3塁を陥れる。打撃だけでなく走塁も鍛えられており、しかも下位打線からのチャンスメーク。やはり怖い打線である。続く9番瀧本の内野ゴロの間に1点を追加。4-2とリードを広げる。

しかし、6回裏は鳴門渦潮も上位から。1アウト後、3番森高がセンターへのヒットを放ち、初回以来、久々のランナーとして出塁する。暴投で2塁へ進むと、打席には最も頼りになる4番岡田。初回はスライダーを右中間に引っ張られただけにバッテリーも警戒していたが、またもアウトコースのスライダーを拾われ、技ありの打撃でセンターへのタイムリーとなる。この日、2本目のタイムリーは、初回が「剛」ならば、「柔」のタイムリーであった。

食らいついていく鳴門渦潮だが、終盤に入り、岡田の球数は優に100球を超える。7回には早実打線の徹底したセンター返しに会い、3番高崎、4番石原に連打を浴びる。1アウト後、6番山中、7番国光と下位打線がへ連続タイムリー!コンパクトな打撃で追加点を奪うと、8回、9回にも好走塁を絡めて加点。中村から川上への継投も決まり、8-4と快勝で初戦をものにした。主将・宇野の3安打の活躍と、2回から立ち直った中村の好投が勝利を手繰り寄せることとなった。

鳴門渦潮 vs 早稲田実 【夏の甲子園 1回戦 全打席ハイライト1回裏〜】 強打早実打線爆発!鳴門渦潮4番兼エース岡田が185球完投! 2024.8.11 阪神甲子園球場

2回戦

鶴岡東

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
0 0 0 0 0 0 0 0 0 1

早稲田実

2回戦の相手は、U-18に選ばれたエース桜井が率いる鶴岡東。1回戦の鳴門渦潮・岡田と同様にエースで4番とチームの柱だが、こちらは左腕からの速球とスライダーを武器にする安定感ある左腕だ。初戦は、聖光学院との東北対決に2-1と競り勝っており、こちらはディフェンス力の光るチームだ。

試合は、桜井中村の投手戦に。早実自慢の強力打線が桜井のキレのあるスライダーに苦しみ、初戦のような攻撃のリズムはなかなか生まれない。やはり全国区の好左腕を相手となると、そう簡単にヒットは出ないものだ。特に予選から攻撃のキーマンだった2番宇野が封じられたことで、中軸へとつながる得点パターンが消失してしまった。

ただ、そんな展開を負けに繋げなかったのが、2年生左腕・中村の好投である。もともと速球には球速以上のキレがあったが、この日は過去一番といってもいいほど速球が走っていた。そして、制球難と言われていたコントロールもこの日は安定。速球とスライダーが低めに集まり、ストライク先行の投球で鶴岡東打線をねじ伏せていく。

両エースを崩せないまま、試合は終盤戦へ。7回に来てようやく得点の香りが漂い始める。

7回表、鶴岡東は先頭の2番松下がショートへの内野安打で出塁。犠打で2塁へ送ると、ここで早実バッテリーは4番桜井を敬遠する。ベンチのこの選択にバッテリーが応え、5番小林は高めの速球で空振り三振!さらに6番億田もサードゴロに打ち取り、難を逃れる。速球が走っているだけに、鶴岡東打線に狙われているとわかっていても、速球で押す選択ができるのが早実バッテリーの強みであった。

すると、7回裏、今度は早実にチャンスが。先頭の3番高崎がインローやや甘めの速球を強振し、レフト横への2塁打で出塁。四球と犠打で1アウト2,3塁とし、桜井を追い詰める。だが、ここで今度は鶴岡東のエースが意地の投球を披露。代打・松尾のスリーバントスクイズを得意のスライダーで封じると、7番中村もアウトコースへのスライダーで空振り三振!得意のスライダーで徹底的に勝負し、得点を許さなかった。

試合は最終盤へ突入。ここまで継投で勝ち抜いてきた早実だが、この試合は和泉監督が中村と心中。その期待に応え、9回まで鶴岡東打線を無失点で抑える。一方、桜井も9回を投げ切って強打の早実打線を4安打無失点。8回裏はけん制タッチアウトを奪い、9回裏は併殺でピンチをしのぎ切った。3安打を許した3番高崎以外はほぼ完ぺきに封じており、見事な投球である。0-0と両者譲らない試合は、ついに延長戦へ突入した。

しかし、好試合もいつか明暗の分かれるときがやってくる。10回表、タイブレークの無死1.2塁から7番酒井の犠打は、ブルドッグ守備を見せたファースト国光の好守で3塁フォースアウトに!さらに、続く8番田崎の打席で、2塁ランナーが三盗を狙うが、これも捕手・山中の好送球で封殺と、意地でも3塁を与えない早実の守備が光った。中村は10回を投げ切って、4安打無失点。想定を大きく上回る好投であった。

すると、10回裏、この勢いに乗って早実打線が桜井を攻める。6番国光がきっちり犠打を決めると、鶴岡東ベンチは満塁策を選択。ここで打席には、この日投げ合ってきたエース中村桜井が投じた121球目、スライダーが甘く入ったところを逃さなかった。打球は、ライトのはるか頭上を超していくタイムリーとなり、サヨナラ勝ち!早実が苦しい試合をものにし、前回出場の2015年に続いて3回戦進出を決めた。

早実にとっては打線が苦しんだものの、頼もしい2年生エースを手に入れた一戦となった。

早稲田実 vs 鶴岡東 【夏の甲子園 2回戦 全打席ハイライト】 両投手魂の好投!タイブレークまで続く緊迫の投手戦! 2024.8.15 阪神甲子園球場 早実

3回戦

早稲田実

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 2
1 0 0 0 0 0 0 0 1 0 3

大社

3回戦の相手は島根の伝統校・大社。初戦で選抜準優勝校の報徳学園を下し、2回戦では常連校・創成館とのタイブレークを制して勝ち上がってきていた。エース左腕・馬庭の好投と相手の隙を逃さないするとい攻撃が光る好チーム。今大会の台風の目となってきており、早実としても油断ならないチームであった。

その馬庭に対し、試合前に和泉監督はカウントを整えに来るアウトコースの速球を狙うべく指示を出していくが、なかなか攻略は難しい。1回裏に5番下条のタイムリーで先制点を許すと、わかっていても詰まってしまう馬庭の速球の球威とキレに苦しむこととなる。特に、2回戦から不調の沼にはまってしまった2番宇野になかなか当たりが出ない。序盤は、大社が1-0とリードで折り返し。早実・中村もこの日は少し制球に苦しみながらも好投を見せ、投手戦で試合は後半戦へ入っていく。

グランド整備を終え、仕切り直しとなった6回表。ついに早実打線が馬庭攻略にかかる。1アウトから初回に連打を放った3番高崎、4番石原のコンビがいずれも速球をとらえて連打。この二人はしっかりと馬庭の速球に対してタイミングが取れていた。続く5番山中には馬庭が痛恨の死球を与え、満塁となると、6番國光のセカンドゴロの間に3塁ランナーが生還。大社のセカンド高橋翔のダイビングキャッチでヒットは阻止したが、上位の打順で迎えた大事なイニングに得点を上げた。

やや早実に傾きだした流れ。7回表には大きなプレーが出る。この回、先頭の8番内囿馬庭のカウント2-2から速球を素直にセンターに返すと、この打球をセンター藤原が後逸。打球がフェンス際まで転がる間に一気にランナーが生還し、思わぬ形で早実が勝ち越しに成功する。相手のミスから奪った得点。その裏の大社の攻撃を中村はが気迫の投球で無失点に抑え、早実リードで試合は進行していく。

ただ、早実にとって誤算だったのは、7回で中村の球数が120球を超え、左手中指のまめも潰れていたこと。和泉監督は8回から右腕・川上への継投を決断する。早実としては、少し不安を抱えた状況であり、ここに輪をかけて、馬庭が8回、9回と気迫の投球で早実の攻撃を3者凡退に封じてしまうのだ。1点ビハインドながら、ムードは大社より。いよいよ局面は9回裏を迎えることとなる。

その9回裏、先頭で打席に入るのは、ここまでチームを牽引してきた馬庭。アウトコースの速球を引っ張った打球はセカンドへのゴロ。内囿が好捕し、厳しい体勢から1塁へ送球したが、これが悪送球となって無死2塁に。さらに、8番園山の犠打を今度はバッテリーが見合ってしまい、無死1,3塁と逆転サヨナラのランナーも出ることとなる。この日は大社の大応援団の迫力を前に硬さがあったか。続く9番高橋翔が3塁戦へ見事なスクイズを成功!送球もそれてオールセーフとなり、土壇場で試合が振り出しに戻る。

1番藤原はきっちり犠打を決め、1アウト2,3塁に。スクイズでも微妙な当たりの内野ゴロでもサヨナラの場面。しかも、打席にはこの日3安打の藤江である。だが、ここで早実の名将・和泉監督が思い切った策に打って出る。レフトを1年生の西村に変更すると、そのまま投手の横を守らせるというスクイズ封じの守備体系を見せたのだ。この作戦で後押しを受けた川上は、思い切ってインサイドにボールを投げ込むと、藤江の詰まった打球は、代わったばかりの西村の前に。西村がしっかり1塁へ送球すると、その間にホームを狙った3塁ランナーを國光が好送球で刺し、ダブルプレー!お互いに見どころ満載の9回裏の攻防が終わり、2-2でタイブレークへと投入した。

タイブレークでは10回表裏と互いに無死1,2塁から相手の犠打をブルドッグ守備で封殺し、譲らない展開で互いに無得点。甲子園球場は異様な熱気に包まれる。ただ、早実は上位打線で迎えた11回表、この日2安打と当たっている3番高崎に命じた強攻策が併殺となってしまう。ここは何としても1点が欲しいイニングだったが、馬庭の渾身のピッチングの前に得点はならなかった。

すると、11回裏、ついに勝負が決する時が来た。大社の先頭打者は代打の安松。普段は控え捕手だが、犠打が得意であり、石飛監督のリクエストに迷わず手を上げた強心臓の持ち主だ。カウント0-1から3塁線へ転がした打球は、取っても間に合わないタイミングで絶妙なコースをたどる。内野安打となり、無死満塁のビッグチャンスに!思えば、ここで早実の命運はすでに尽きていたのかもしれない。

続く打席には、ここまで一人で投げぬいてきた7番馬庭。早実の川上は明らかに気圧されている様子だった。カウント1-2からの4球目、速球をとらえた打球は、川上の足元を抜けてセンターへのサヨナラタイムリー!大社が激闘を制し、93年の時を経て選手権ベスト8へとコマを進めるとともに、早実の久々の甲子園は幕を閉じたのだった。

ただ、甲子園に来て大きく成長するという早稲田の伝統は、この2024年のチームにも引き継がれていたと言えるだろう。エース中村の成長や大社戦の終盤の攻防は、多くの観衆を魅了。最後に和泉監督が勝者の大社をたたえる姿も素晴らしいものであったし、清々しさとともに甲子園を後にすることとなった。

早稲田実 vs 大社 【夏の甲子園 3回戦 1試合フル完全版】まさに死闘!ミラクル大社の神撃!名場面だらけの大熱戦!2024.8.17 阪神甲子園球場

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