記憶に残る代打(代走)(2002年夏)

2002年

川之江 高井強、土師健吾

大会8日目第2試合

2002年夏2回戦

浦和学院

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 0 0 0 0 4 0 0 5
0 0 0 1 0 0 0 4 6

川之江

 

浦和学院  須永

川之江   鎌倉

試合前予想

史上初めて春夏の出場校すべてがベスト8入りするという快挙を成し遂げた2002年の四国勢。圧倒的な強さで甲子園を制圧したが、その勢いの象徴ともいえたのが、選手権大会での愛媛代表の川之江であった。これまで、甲子園出場経験は複数回あったものの、夏の甲子園では最高成績が2回戦まで。しかし、同じ公立の雄である今治西出身の重沢監督が徹底してディフェンスを鍛え上げ、この夏は11年ぶりに代表の座をつかんでいた。

その強さの源は高い投手力。エース鎌倉(日本ハム)は180センチを超す長身からサイド投法で140キロ台の速球と高速スライダーを操る本格派右腕だ。相手打者からすると、あまり見たことのない軌道からスピードボールが投じられるため、まず目が慣れるだけでかなりの時を擁してしまう。さらに、左の技巧派の武村も1試合任せるだけの安定感があり、この左右の両輪がチームに安心感を与えていた。また、打線は小柄な選手が並んでいたが、3番藤原・4番三好は長打力があり、ここという場面でも勝負強さも兼ね備えていた。

1回戦は仙台西との公立校対決となったが、鎌倉が1失点完投。9イニング中5イニングは3人で攻撃を片付ける安定感が光り、5-1と完勝でまずは初戦をものにした。そして、迎えた2回戦。相手は東の横綱・浦和学院であった。初戦で選抜優勝校の報徳学園を下し、1回戦が終わった段階で優勝争いの筆頭格に躍り出たチームであった。2年生左腕・須永(日本ハム)を擁して埼玉大会でほとんど失点のなかった投手陣、選抜優勝投手の大谷(ロッテ)を打ち砕いた強力打線は、いずれも大会トップクラス。川之江としてみれば、明らかに格上の相手であった。

展開

浦和学院・須永、川之江・鎌倉の両エースが先発。浦和学院が2回に失策がらみで1点を先行すれば、川之江は4回裏に鎌倉が自ら同点アーチをかけ、1-1のまま前半戦を終了する。鎌倉は速球とスライダーをアウトコース低めに集める投球で6回までを1失点にしのぎ、V候補と互角の戦いを演じていた。

しかし、終盤にきて浦和学院打線がその本領を発揮する。あの選抜優勝投手の大谷を打倒するために磨き上げてきた強打は、そう簡単に引き下がってはくれない。外のスライダーの目付をしっかりでき始め、甘く入った速球はきっちりとらえる。7回表、7番河野の勝ち越しタイムリーなど6安打を集中し、一気に4点を勝ち越し。7回でついに鎌倉をKOする。8回のピンチは2番手で登板した武村がなんとかしのいだが、4点差のまま試合は8回裏に突入する。

終盤に来て防戦一方な川之江。「やはり、浦和学院は強かった」、そんな空気が球場に充満していたのだが…

そして、代打へ

ただ、浦和学院の森監督にも懸念点があった。それは、選抜王者を倒したことでの緩み。1年間かけてターゲットにしてきた王者を倒すことは、全国制覇以上の目標であった。それを達成してしまったのだから、浮遊感が出てしまうことはある意味致し方ない。まして、まだ高校生なのだ。報徳戦の翌日の練習で雷を落としたものの、やはりどこか煮え切れない感覚はあったらしい。

4点をリードして迎えた8回裏。須永が突如捕まる。この回で決して球威・スピードが落ちた印象はなかったのだが、カウントを整えにいく姿勢が積極打法の川之江打線とかみあってしまう。テキサス性ヒットが出て気持ちが切り替えられなかった点も大きかったか。5番鎌倉、6番高井雄、7番高石と次々にヒットを重ね、あっという間に1点差となる。決して大振りはせずにコンパクトに打ち返す打撃が光った。

そして、8番の武村の打順で重沢監督は代打・高井強を起用。これがさらなる反撃への糸口となる。強烈に引っ張った打球がサード強襲の内野安打となり、2アウト1,3塁に。ここで高井強の代走に土師を送ると、川之江ベンチは思い切った作戦に出る。1塁ランナーが飛び出して、挟殺を狙う間に3塁ランナーがホームを突く重盗を敢行したのだ。

ここまで4連打を浴びていた須永は、ようやく3つ目のアウトを取れると1塁へボールを投じるが、タッチプレーが完成したと思って振り返ると、狂喜乱舞で同点のホームを駆け抜けた高石の姿があった。呆然とする浦学ナイン。その後の攻防を暗示するかのような一瞬の同点劇であった。

直後の9回表、再登板した鎌倉を攻め、浦和学院は2アウト満塁とチャンスを築くが、6番内田はセカンドフライに打ち取られて勝ち越しはならない。こうなると、追いついた川之江に勢いが傾くのは必定であった。その裏、2塁打で出塁した1番鈴木が暴投で3塁へ進むと、最後は3番藤原のたたきつけた打球が二遊間を抜けてセンターへ。劇的なサヨナラ勝ちで、川之江が同校初となる夏の2勝目を挙げ、3回戦へコマを進めたのだったv。

ここまで全校が初戦を突破していた四国勢の勢いをさらに加速させるかのような勝利を、東の横綱から上げ、川之江は勢いに乗る。2試合連続完封中だった左腕・清原を擁する桐光学園、後に阪神にドラフト指名される2年生左腕エース・小嶋が率いる遊学館を相手に、いずれも1点差で勝利。3試合連続で好左腕を攻略し、あれよあれよという間にベスト4まで駆け上がった。この快進撃のきっかけとなったのが、エースが攻略されながらも、途中出場の選手の活躍とベンチワークがかみ合ってひっくり返した2回戦勝利だったのは間違いないだろう。

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