那覇 比嘉忠志

大会10日目第4試合
2000年夏3回戦
育英
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 3 | 2 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 4 | 12 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 |
那覇
育英 橋本→野辺→大畑→馬場
那覇 成底→豊原→宮里
試合前予想
智辯和歌山の強打が甲子園を魅了したことで有名な2000年夏の甲子園だが、個性的な選手/チームが数多く登場したことでも知られている。その筆頭格だったのが、南国から現れた甲子園球児、那覇高校のナインであった。
春から指揮を取った池村監督は、選手を型にはめない指導で知られ、個性的な選手が伸び伸びとプレーする。足を高く上げる1番宮里、右利きが務めるポジションに左利きで果敢に挑んだ捕手の長嶺にサードの金城佳。エース成底を中心に安定したディフェンス力を武器として、激戦の沖縄大会を勝ち抜いた。
甲子園では初戦となる2回戦で岐阜・中京商(現・中京学院大中京)と対戦。2年生ながら才能あふれる強打者の松田宣(ソフトバンク)を擁する実力校であった(お兄さんは左腕投手でベンチ入り)。試合は那覇・成底、中京商・園川の投げ合いで投手戦となるが、那覇の野手陣は長峰も金城佳も左利きのディスアドバンテージを微塵も感じさせない動きを見せる。
すると、延長11回表、那覇は2アウト2塁のチャンスをつかみ、5番仲田の三遊間への当たりがショートの悪送球を誘う内野安打となって、ついに勝ち越しに成功する。成底はテンポのいい投球で10安打を浴びながらも1失点で完投し、個性派チームが見事に初戦を突破した。
こうして、3回戦へ進んだ那覇だったが、続く相手は地元・兵庫の強豪・育英であった。秋の近畿大会を制した王者は、選抜大会こそ初戦敗退に終わったものの、夏は圧倒的な強さで兵庫大会を制し、春夏連続出場をつかみ取った。安定感のあるエース橋本を機動力を絡めた攻撃ができる打線が援護。1番川原、3番栗山(西武)を中心に片山、小林、山下と下位まで長打力のある面々が並ぶ打線は破壊力満点であった。
また、この大会では上野主将が選手宣誓と春夏連続の開幕試合を引き当てるという「くじ運」の強さも見せ、開幕戦では秋田商を8-1と下して、見事に選抜のリベンジを果たした。2回戦では小松工の好左腕・鹿野を相手に3点差のビハインドをひっくり返すなど、看板の攻撃陣が力を発揮。2試合で9盗塁を決めたように、塁上からガンガン圧力をかけてくる相手だけに、那覇の捕手・長嶺がどう対峙するかも注目された。
展開
3回戦の1日目最後の試合で組まれたこのカード。ただ、那覇サイドとしたら育英と対する以前に、アクシデントによる不可効力が多すぎた。エース成底は、3日前に延長11回を完投したばかりで、方と背中に炎症があり、また、正捕手の長嶺は試合前々日の打撃練習で右足に打球を受ける不運に見舞われた。
このコンディションでは、好調・育英打線を止めるのは、やはり容易ではない。初回にいきなり3点を先行されると、2回には重盗を決められ、動揺したところで3番栗山にタイムリー2塁打を浴びてしまう。4回まで毎回の7失点を喫し、那覇ディフェンス陣は成底–長嶺のバッテリー陣をまるごと取っかえることとなった。
ただ、そんな状況下でも、那覇ナインは明るさを失うことなく懸命なプレーを見せる。降板したエース成底はサードでも溌剌としたプレーを見せ、その後はなんと捕手も務めるというユーティリティーさを見せた。また、他の野手陣も育英の走者が飛び出したところを見逃さずに刺すなど、集中力を失わないプレーを見せ、全員でアウトを積み重ねていく。
すると、5回裏には成底が育英のエース橋本の速球をフルスイング!打球は、レフトスタンドへ飛び込むホームランとなり、反撃ののろしを上げる得点をたたき出した。ビハインドは大きかったが、上げ潮ムードのなか、7回裏を迎えることとなる。
そして、代打へ
育英はこの回から、橋本を温存し、2番手で野辺をマウンドに送るが、那覇打線が奮起する。先頭打者が四球で出ると、当たっている6番成底もヒットでつなぐ。ここで7番上原はバスターでアウトコース高めのボールを流し打ち、ライト線へタイムリー2塁打!2点目を返し、野辺をKOする。
なおも攻撃は続き、3番手の右サイドハンド・大畑からも四球をもぎ取って2アウト満塁に。ここで、池村監督はとっておきの代打・比嘉を打席に送る。打席でかがみこむようにホームベースへかぶさり、ボールのラインに目線を入れる独特の構え。体格もホームランバッターのそれであり、実際練習試合では2発放り込んでいた。個性派軍団・那覇を象徴するような選手、一発飛び出せばたちまち1点差という状況に球場は、この日最高潮の盛り上がりを見せた。ただ、結果はアウトコースのスライダーにバットが空を切り、空振り三振。それでも豪快なスイングに球場からは拍手が沸き起こった。
結局、この試合は力及ばずに2-12と大敗に終わったが、それでも各選手の長所や特徴を殺さずに生かす野球は、当時の高校野球界では非常に新鮮であった。池村監督に率いられた、個性派集団・那覇を記憶している高校野球ファンは今でもたくさんいるはず。高校球史に残る魅力的なチームであった。
甲子園 左利きキャッチャー・左利きサード 個性派バッター 那覇高校 2000年 / Left handed throwing Catcher,Third Baseman


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