鹿児島工 今吉晃一

大会12日目第4試合
2006年夏準々決勝
鹿児島工
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 計 |
| 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 3 |
| 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
福知山成美
鹿児島工 榎下
福知山成美 駒谷
試合前予想
昭和中期~後期にかけて、鹿児島実、樟南(元鹿児島商工)、鹿児島商のいわゆる「御三家」が君臨していた鹿児島の高校野球。平成に入ると、鹿児島実・樟南の2強体制の色合いが濃くなり、1994年夏には樟南が準優勝、そして、1996年選抜では鹿児島実が悲願の初優勝を果たした。
しかし、2000年代に入ると、様相が異なってくる。2005年にはソフトボール界で一時代を築いた名将・長沢監督が就任した神村学園が、エース野上(西武)・4番天王寺谷を中心に初出場で選抜準優勝を達成。鹿児島県内の勢力図に変化が生まれる。そして、2006年夏、川内で剛腕・木佐貫(巨人)を育てた名将・中迫監督が率いる鹿児島工が初出場を果たす。榎下(日本ハム)・下茂の左右2枚看板、4番捕手と攻守の要の鮫島、巧打の1番宿利原、勝負強い5番今吉健と粒ぞろいのメンバーが揃い、初陣ながら高い実力を誇っていた。
本大会に入ると、49代表校中で最後の登場と最も不利な日程になったが、伝統校・高知商との初戦を4番鮫島の決勝タイムリーで制し、難しい試合をものにする。すると、続く3回戦の香川西戦では、エース榎下が投打で活躍。投げては140キロ近い伸びのある速球で3失点完投し、打っては自らホームランと、まさに千両役者の活躍で9-3の大勝に貢献した。勢いに乗る南国の新星。準々決勝の相手は、速球派のサイド右腕・駒谷と強力打線がかみ合う、強豪・福知山成美であった。
展開
試合は立ち上がり、鹿児島工が福知山成美・駒谷からカウント球のストレートを狙い打つ。敵失で出塁した1番宿利原を犠打と内野ゴロで3塁へ進めると、5番今吉健がストレートをたたいてタイムリー。幸先よく1点を先行する。
しかし、ここまで3試合連続2桁安打と好調な福知山成美打線が、榎下をとらえる。1回裏、1番成田が出塁して送った後、4番塚下がストレートをとらえてタイムリー。すぐに同点に追いつくと、3回裏には2アウトから4番塚下、5番渡辺、6番駒谷とつなぎ、7番武田が逆転のタイムリー。成美らしい、打って打って繋ぐ野球で主導権を奪い返す。
ただ、ビハインドとなった鹿児島工だが、ヒットを浴びながらも4回以降はバッテリーが踏ん張る。榎下は序盤はボールは高めに浮いたが、中盤以降は調子を持ち直し、丁寧に低めを突く投球で成美打線に決定打を許さない。ただ、鹿児島工打線も成美・駒谷の必殺のスライダーを前に、なかなか攻略の糸口はつかめなかった。残りイニングも少なくなってきた7回表。中迫監督は、ついにあの男を代打に送った。
そして、代打へ
その男の名は、今吉晃一。腰の怪我の影響で夏は代打に専念していたが、県大会の成績はなんと6打数5安打。まさに振ればヒットの打ち出の小づちであり、打席での雄たけびも併せて、勢いに乗るチームを象徴する存在となっていた。迎えた甲子園初戦でもヒットを放っており、鹿児島工ベンチとしても満を持しての起用であった。
先頭で打席に立つ今吉晃。ここまで、準々決勝3試合はいずれも終盤に試合が動いており、観衆も何かを期待し始めていた。初球、駒谷のスライダーをフルスイングで空振りするが、今吉晃の速球狙いはぶれない。2球目のストレートをたたいた打球は鋭い球足でショート田中を強襲。打球をはじいた田中は懸命に送球するが、ヘッドスライディングした今吉晃が一瞬早く、判定はセーフ!ガッツポーズで喜びを表す今吉晃に甲子園は大歓声に包まれる。この雰囲気に駒谷はのまれたか、甘く入ったところを続く9番和田、1番宿利原が逆方向へはじき返し、ついに同点に追いつく。
その後、試合は延長10回表に鮫島が、駒谷の決め球のスライダーが甘くなるのを逃さず、バックスクリーンへ決勝アーチを放つ。成美の最後の攻撃を榎下がしのぎきり、鹿児島工が見事初出場で4強入りを果たした。準決勝では早実・斎藤佑樹(日本ハム)の前に、4安打完封され、今吉晃も空振り三振にとられたが、最後まで甲子園を楽しむ姿勢は失わず。泣き虫監督が率いる南国の個性派チームが、さわやかな風を送り込んだ大会であった。


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