強打の応酬となった東京対決
選抜王者・興南を倒すべく、多くの強豪校がしのぎを削った2010年選手権大会。その3回戦でともに強打を誇る東京の強豪校が相まみえることとなった。両校とも選抜で上位進出を果たした都内のライバル校を倒すことを想定していた意味では、似たような経緯をたどったチームでもあった。

関東一は永年、東東京のライバル帝京に行く手を阻まれていたが、2008年に広瀬・江川の長距離砲2人を軸にしたチームで春夏連続出場を果たすと、徐々に潮目は変わり始めていた。ただ、この年は前年夏から帝京が2季連続甲子園出場を果たしており、伊藤拓、山崎康(ともにDeNA)、鈴木の速球派右腕3人を攻略するのは容易ではなかった。
そんな中で、打力を磨き上げたチームは俊足好打の1番山下(DeNA)、広角に打てる3番伊藤、天性の長距離砲・宮下、攻守の要の5番捕手・本間と強力な布陣に仕上がってきていた。また、左腕エース・白井も宮下と同じく1年夏に甲子園を経験しており、キレのあるスライダーを武器に、要所を締める投球が光る。東東京大会では帝京が国士館に6-14とまさかのコールド負けを喫する大波乱が起こったが、関東一は順当に決勝へコマを進める。決勝はエース三ツ俣(オリックス)の修徳に一時4点差をつけられながらも、最終回に奇跡的な逆転サヨナラ勝ちを収め、2年ぶりの甲子園切符をつか
んだ。
すると、甲子園本戦では2試合で20得点と猛打爆発。特に2回戦の遊学館戦では、初戦で完封勝利をあげていた2年生エースの土倉を相手に4回までに9得点を奪ってKOする圧巻の破壊力を見せた。特に先ほど述べた1番山下、3番伊藤、4番宮下の3人は4回までに全員が猛打賞を記録。宮下に至ってはこの試合で5打数5安打4打点1ホームランとすさまじい打棒を見せつけた。遊学館・山本監督をして、「恐ろしくコンパクトなスイング」と評された打撃は、あるいはライバル帝京の速球派投手を攻略すべく磨いたバッティングの成果だったのかもしれない。

一方、西東京代表の早稲田実は2006年夏に斎藤佑樹(日本ハム)を擁して、全国制覇を達成し、一世を風靡したが、その後は夏の舞台からは遠ざかっていた。ライバル日大三の復活をはじめとして、日大鶴ケ丘、創価などの強豪校がひしめく中を勝ち上がるのは容易ではない。ただ、その中で、中学3年生の時に2006年の優勝を見て入学した世代が3年生となった時に選抜に出場し、ベスト8まで進出。久々の甲子園出場に和泉監督も手ごたえを得ていた。
そして、その大会を2年生で経験した小野田、鈴木の投手2人が最終学年となったのがこの年。ただ、小野田は春先にピッチングが不調になったため、ピッチャーを断念し、最後の夏は不動の4番として臨むこととなった。こちらも同じ西地区に選抜準優勝の日大三がいたため、その強敵を倒すべく鍛錬を積むことに。日大三は準決勝で日大鶴ケ丘に延長戦の死闘の末に敗退したが、決勝ではその日大鶴ケ丘をエース鈴木が完封し、4年ぶりの代表切符を掴んだ。
打線は1番重信(巨人)、2番真鍋、3番安田と2年生が3人並ぶ若い布陣に。初戦はエース鈴木が倉敷商打線を完封し、2-0で初戦を突破すると、2回戦で大一番が待っていた。前年夏の優勝校・中京大中京。屈指の伝統校対決である。しかし、ここで早稲田実打線がその真価を発揮する。相手の2年生左腕・浅野、エース森本を相手に徹底したセンター返しの攻撃をみせ、1回に7点、5回に12点の猛攻撃!終わってみれば、21-6とまさかのワンサイドで試合を制し、一躍V候補の一角に躍り出るような勝ちっぷりを見せた。3回戦を前に投打とも絶好調。4年ぶりの全国制覇もあるかと期待が膨らんでいた。
技巧派右腕を打ち崩した女房役
2010年夏3回戦
早稲田実
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 3 | 6 |
| 0 | 0 | 3 | 0 | 2 | 0 | 4 | 1 | × | 10 |
関東一
早稲田実 鈴木→八木→鈴木
関東一 白井

さて、試合は関東一・白井、早稲田実・鈴木と両エースの先発で幕を開ける。長打力の関東一とコツコツ連打を積み重ねる早実。果たしてどちらの強打が相手を呑み込むのか注目が集まった。
1,2回は両チームとも無得点。しかし、白井は1回に4四球を出す大乱調であり、これだけ四球を出しながら失点しなかったのは奇跡的だ(3番安田の併殺の後に2四球であった)。2回、3回にもヒットを許し、いつ崩れてもおかしくないような出来。捕手の本間もハラハラしていただろう。
対する早稲田実・鈴木は1回、2回で3三振を奪う好調な立ち上がり。小柄な体格から繰り出すキレのある速球と低めに落ちるチェンジアップを武器に、飄々と投げていく。これは早稲田実が優位に試合を進めるかと思われた。
が、そんな流れを関東一が一発で変えてしまう。3回裏、2回戦でもホームランを放っていた1番山下が、鈴木をとらえる。米澤監督からはストレート狙いの指示だったが、自らの判断でチェンジアップに的を絞ると、とらえた打球はライトスタンドに届く先制2ランに!春先まで絶不調な中でも腐らずにバットを振り続けたリードオフマンが甲子園で大輪の花を咲かせる。この回、一挙に3点を先行し、主導権を得る。
ただ、この日は関東一の白井もコントロールに苦しんでおり、先制点をもらった直後の4回表にランナー2人をためて、重信に2点タイムリーを浴びる。当時から非常にバットコントロールに長けており、素晴らしい打撃でセンターへはじき返していった。
打ち合いの様相を呈してきた中盤戦。ここで流れを持っていったのは、関東一の主将・本間である。エース白井を支える女房役は、5回裏、鈴木が2つの死球を与えてピンチを招くと、この機を逃さなかった。捕手らしく配球を読み切って、待っていた変化球をとらえた打球はセンター最深部まで届く2胆タイムリー3塁打に!この2点の追加は非常に大きく、早実の絶対的柱であった鈴木の自信を奪う一打であった。
その後、関東一は7回に2番手で登板した八木、再登板の鈴木をせめたて、5番本間からの4連打などで4点を追加。これまで上位打線が目立っていたが、この日は5番からの5人で8安打を放ち、切れ目のないところを見せた。
一方、8回を終わって3-10とまさかの大量ビハインドを背負った早実も最後まで粘る。球数もかさんできた白井を攻め立て、こちらも下位打線が頑張って満塁のチャンスを作ると、またも重信が今度は満塁の走者を一掃する3塁打!この試合、一人で5打点と大活躍を見せた。
ただ、この日唯一誤算だったのは、3番安田の不調。重信と同じく抜群のバットコントロールを誇り、2回戦まで9打数6安打と絶好調だった。しかし、この日は打球のツキもなく、6打数無安打。最後のバッターにもなり、悔しい結末となった。
江戸っ子同士の対決は、東の関東一に軍配が上がり、2年前に果たせなかった8強入りを達成。その後、2015年に4強、2024年に準優勝と着実に結果を残している。また、その2015年には早稲田実も同じく4強入り。スーパー一年生清宮幸太郎(日本ハム)を擁し、話題を独占した。カラーの違う強豪2校だが、今も高校球界で存在感を放ち続けている。


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