大会12日目第4試合
仙台育英
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 4 | 4 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 9 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 4 |
花巻東
仙台育英 湯田→武藤→仁田→田中
花巻東 小松→北條→葛西→中屋敷→阿部→北條

2015年夏の3回戦以来となる、東北の強豪校同士のマッチアップは、序盤から仙台育英打線が花巻東の投手陣を攻略。最終回の猛追をしのぎ切り、2年連続となる4強進出を決めた。
試合
仙台育英は前回履正社戦に続いて、剛腕・湯田を先発に指名。一方、花巻東はフォークボールが武器の2年生右腕・小松を1回戦以来となる先発のマウンドに送った。
1回表、いきなり仙台育英は巧打の1番橋本が先制パンチ。ここまで打率6割越えのトップバッターがインコースの速球を流し打つと、打球はレフト線へ弾み、好走塁も見せて2塁へ進む。花巻東としては、いきなり出してはいけないランナーを塁上に背負う。ここで2番には攻撃型の山田を送る。単純に送ってはこない仙台育英は強攻策を見せるが、ここはサードゴロに倒れて進塁はならず。さらに3番湯浅、4番斎藤陽を球威十分の速球と縦に落ちる変化球の組み合わせで打ち取り、立ち上がりのピンチを脱する。
これに対し、1回裏、仙台育英の湯田は快調な立ち上がり。3回戦で16安打を放った好調・花巻東打線を圧倒する。1番久慈を速球勝負で3球三振に切って取ると、2番熊谷、そして、注目の3番佐々木麟をいずれも速球で詰まらせ、連続内野ゴロで3者凡退に打ち取る。
1,2回と両チームとも無得点。しかし、いずれも走者を出した仙台育英に対し、花巻東は6人連続凡退とその内容は大きく異なっていた。球威十分の速球を低めに集め、2回で3三振と湯田が花巻東に付け入るスキを与えない。前回登板の反省も踏まえた投球がチームに勢いを与え、3回に入って打線が火を噴き始める。
3回表、ここまで低めへの意識を強く持って投球してきた花巻東・小松だが、1アウトからまたも1番橋本に二遊間への内野安打を許す。すると、2番山田の打席ですかさず初球スチール!これがまんまと決まり、スコアリングポジションにランナーを進めると、2番山田の四球と4番斎藤陽のしぶとい内野安打で、満塁とチャンスを広げる。花巻東も3番湯浅のショートゴロで熊谷が好判断を見せて、3塁封殺するなど、好守備で小松を盛り立てるが、仙台育英の各打者が低めのボールになる変化球になかなか手を出してくれない。甘く入った速球をとらえ、着実に、堀を埋めるように、花巻東を追い込んでいく。
ここで打席には、怖い5番捕手の尾形。3回戦では決勝のスクイズも決め、この大会乗っている。ここで小松は強気のインサイド攻めを見せ、カウント2-1と追い込むが、ここで決め球のフォークを待ってましたとばかりにミート。少し体が開きながらも、バットのヘッドがしっかり残っており、打球はライトオーバーのタイムリー2塁打に。捕手らしい、読みの効いた打撃で得点の門をこじ開けると、さらに、同じく3回戦で2ランを放って乗っている、6番鈴木がフルカウントからインサイドの速球に詰まりながらも右中間に落とし、4-0。小松の投手としての選択肢を奪うような2本のタイムリーで一気に試合の流れをつかんだ。
花巻東は直後の3回裏に7番晴山に初ヒットが飛び出し、反撃の機会をうかがうが、この日の湯田は絶好調。得点はおろか進塁すら許さない3者連続三振!両者の隔たりが大きく分かれた3回であった。
佐々木洋監督は3回で小松をあきらめ、4回からは2回戦で好投した右腕・北條をマウンドへ。しかし、ここまで3試合で31得点の仙台育英打線にのびのび打てる雰囲気を与えては分が悪い。9番の住石に華麗な流し打ちで出塁を許すと、1番橋本には警戒して四球、そして、2番山田の犠打がエラーを誘い、無死満塁とチャンスが広がる。ここでポイントゲッターの3番湯浅、4番斎藤陽が連続タイムリー!湯浅はアウトコースのスライダー、斎藤陽はインサイドよりの速球といずれも簡単なボールではなかったが、この辺りはさすがに昨夏優勝校の中軸である。
さらに1点を加えて、8点差とした仙台育英は、5回以降は連戦を考慮して、投手リレーにでる。2番手の武藤、3番手の仁田といずれも球威十分の速球で押していく。点差が開いていることもあり、ゾーンの中で勝負しやすい状況であった。機動力野球の花巻東も、やはり、この状況ではなかなか持ち味を発揮できる展開にはならない。打線のキーマンである3番佐々木麟にヒットを許さなかったことも大きく、このあたりは先発・湯田の強気のインサイド攻めが効いている印象だった。
そんな中、花巻東は4回から3回戦の智辯学園戦で好投した2年生左腕・葛西が登板。大味になり始めた展開の中、丁寧な投球で引き締め、5回以降は7回に飛び出した5番尾形のホームラン1本で抑える。前の試合もそうだが、東西の強力打線を擁する相手に対して、2試合好投できたことは大きな手ごたえになっただろう。
試合は、仙台育英が9点リードのまま最終回へ。花巻東の打順は4番北條からであり、打者一巡しないと「麟太郎」までは回らない。しかし、ベンチではその佐々木麟がヘルメットをかぶり、バッティンググローブをつけて待機。そのモチベーションが花巻東ナインを奮起させたのか、ここから凄まじい反発力を見せる。
9回裏、仙台育英のマウンドは4番手の左腕・田中。花巻東は先頭の北條がきっちり選球して四球を選ぶと、勝負強い5番千葉が高めの速球に力負けせずにセンターへ返し、無死1,2塁とチャンスを拡大する。追い込まれた場面で好球必打を徹底できる花巻東ナインもまた、鍛えられている。ここから6番廣内が甘く入ったスライダーを引っ張って三遊間を破り、2塁から北條が生還してまず1点!さらに、代打・堀川は速球を逆らわずに流し打ち、今度は1,2塁間を破るタイムリーとなって、2点を返す。
地鳴りのような歓声の中、仙台育英・田中も投げにくさはあっただろう。判官びいきになりやすい甲子園の大観衆が花巻東ナインの背中を後押しする。代打・寿時のショートゴロで併殺かと思われたが、送球を受けたセカンド浅面が1塁へ高投してしまい、2塁ランナーが生還して3点目が入る。しかし、続く9番小林はセカンドゴロに倒れて2アウト。いよいよあと一人になってしまう。麟太郎にまわすには後二人出塁しなくてはいけない。
ここで打順は1番に返り、途中出場の簗田。田中のインサイドへ入ってくる高めのスライダーにパット反応すると、打球は詰まりながらもセンターの前へ!4点目を返すと、さらに2番熊谷もヒットで続き、ついに佐々木麟へ打席を回すことに成功する。信じられないほどの粘り強さで実現した、打者一巡の猛攻。このチームの、この夏の主役の打者が打席に向かった。
その佐々木麟、万感の思いを込めて打席にたつと、カウント2-0と追い込まれてからファウルで粘る。ここまでつないでくれたナインのために、簡単に終わるわけにはいかなかった。そして、カウント2-2からの5球目、アウトコースよりの真っすぐを引っ張った打球は鋭い球足で1,2塁間へ!しかし、これを途中出場の浅面が好捕し、ダイビングキャッチからの1塁へ送球!麟太郎の懸命のヘッドスライディングも及ばず、判定はアウト。最後は、5点差がついているとは思えないほどの緊張感を見せた試合は、仙台育英が9-4で制し、昨年に続いての準決勝進出となった。
まとめ
仙台育英のこの日の勝因は何といっても右腕・湯田の好投だろう。この大会一番といってもよい投球で、4回を無失点。自慢の速球で花巻東のミートのうまい打者から凡打の山を築いた。イニングこそ4イニングだったが、序盤の攻勢の流れを作ったのは、間違いなく彼の好投であった。また、打っては好調の5番尾形を中心に12安打9得点。多彩な投手陣を誇る花巻東の良さを出させる前に、勝負を決めてしまった。特に、先発・小松の低めのボールを振らない選球眼は着実に重圧を与えたことだろう。
ともに、実績を積み重ねてきた東北の両雄の激突だったが、「東北の王者は俺たちだ」と言わんばかりのプライドを垣間見せた戦いで、連覇まで後二つと迫ったのだった。
一方、花巻東は投打に力負けした感はあったが、最終回の打者一巡の猛攻は、感動を覚えさせるものがあった。最終回にきて迷いがなくなったか、各人が好球を迷いなく振っていく姿勢が、仙台育英守備陣に圧力をかけた。惜しむらくは、先発・小松が3回に一気に捕まってしまった点。豊富な投手層を擁するだけに継投の選択肢もあったが、その判断をする余地も与えないほどの速攻を見せた仙台育英を褒めるしかなかっただろう。
ただ、佐々木麟太郎ばかりが注目される中、1番久慈、2番熊谷のコンビや投手兼任の北條、3回戦からの2試合を好投した2年生左腕・葛西など、多彩な陣容、そして、総合力の高さで勝ち進んだことは明白であった。菊池雄星、大谷翔平とスター選手の系譜がある花巻東だが、このような戦いぶりができるからこそ、生徒が集まってくるのだろう。改めて、花巻東の実力の高さを示した大会となった。


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