大会14日目第1試合
京都国際
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 計 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 2 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 |
関東一
京都国際 中崎→西村
関東一 畠中→坂井→大後

ともに高いディフェンス力を誇った東西の強豪の対決は、両チーム無失点のままタイブレークに突入。しびれる攻防を制した京都国際が初優勝を果たし、京都勢として実に68年ぶりとなる栄冠を手にした。
試合
京都国際はここまで中崎と西村の左腕2枚看板が交互に先発してきたが、この決勝は中崎が2試合連続で先発。一方、関東一は左腕・畠中が3試合目となる先発のマウンドへ。後ろにエース坂井を回すいつもの起用法で臨んだ。
攻撃力では、1番から5番までいずれも打率3割5分以上の打つ京都国際に分があるが、守備力では互角かやや関東一が上か。特に関東一の二遊間の堅守は、ヒット性の当たりをここまで何度もアウトにしてきた。守り合いが予想されるなか、継投のタイミングは勝機をわけると考えられた。
その予想通り、関東一・畠中、京都国際・中崎の両左腕が好投を見せて、0-0で試合が進行していく。1回表の京都国際の1番金本の痛烈な当たりを関東一のショートライナーを市川がしっかりつかむと、両チームの野手陣が軽快な守備でアウトを積み重ねていく。特に、市川の二遊間深い位置へのゴロの処理は出色。守りから相手にプレッシャーをかけることができる。
両投手の内容に目を移せば、畠中は持ち味の緩急をいかし、ストライクゾーンの奥行で勝負すれば、中崎はキレのあるスライダーを武器にストライクゾーンの横幅を使って打者を打ち取っていく。特に中崎は準決勝で初回に制球が乱れたが、この試合はストレートのキレが戻り、右打者の懐をどんどん攻めていく。スライダーとのコンビネーションが光り、小牧監督も一安心の内容であった。
一方、両チームの打線は、積極的に若いカウントから打っていく姿勢が目立つ。追い込まれると、畠中のチェンジアップ、中崎のスライダーはともに攻略困難なボール。そのため、打てると思ったボールには積極的にスイングをかけるので、早いカウントで勝負がついていく。しっかり打つべきボールは打っているとも言え、攻守ともにキビキビした内容で試合が進んでいく。
両チーム無安打のまま試合は3回表へ。京都国際はこの回も2アウトとなるが、9番中崎が真ん中よりのスライダーをとらえ、両チーム初ランナーとなるヒットを放つ。ここまで両チーム合わせて、14人連続アウトだったのだ。さらに1番金本もスライダーをとらえてセンターへはじき返し、連打とする。畠中に対し、ボールをとらえるタイミングをややつかみ始めたか。ただ、後続の2番三谷が打ち取られると、4回には四球で出た4番藤本がけん制死。なかなか関東一の堅牢な牙城を崩せない。
一方、京都国際の中崎は立ち上がりから絶好調。準決勝の不調が嘘だったかのような内容で、打者一巡をパーフェクトで封じ込める。4回裏に1アウトから2番成井に初ヒットを許すが、3番坂本、4番高橋と力で抑え込んで切り抜ける。ストレートが走っている分、捕手・奥井も思い切った攻めができる。
すると、5回表、京都国際が大きなチャンスを手にする。1アウトから好調で打順を7番に挙げた奥井が真ん中よりに入った速球を逆らわずに左中間へはじき返し、2塁打を放つ。さらに、2アウト後、9番中崎が放ったショートへの当たりはラッキーな内野安打となり、チャンスを拡大。ただ、この場面でも三遊間深い位置でゴロをつかんだ市川は1塁へ送球せずに、オーバーランしそうな3塁ランナーを刺しに行っていた。本当に隙の無い守備である。続く1番金本は畠中が変化球をうまく打たせてショートゴロ。畠中は5回を無失点と先発としての役割を十二分に果たした。
一方、関東一は5回裏にも2アウトから7番熊谷が二遊間を抜けるヒットを放つが、2塁を狙ったところを京都国際守備陣のバックアップで刺されてしまい、チャンスを広げきれない。中崎の右打者へのクロスファイヤーがいよいよさえわたり始めており、そうそうチャンスは巡ってこない雰囲気の中で、この逸機は少し痛かったか。だが、決して消極的な意味での走塁死ではないだけに、責めることはできないだろう。
試合はやや京都国際が押し気味も、0-0のまま後半戦へ。関東一としては東海大相模戦や神村学園戦と同じような流れであり、決して嫌な感触はなかっただろう。だが、6回表、京都国際は2番三谷がスライダーを素直にセンターへ返すと、3番澤田の犠打は1塁線ぎりぎりを転がって内野安打に。京都国際らしい野球でチャンスを広げると、4番藤本の犠打で1アウト2,3塁とチャンスを広げる。
ここで打席には当たっている5番長谷川。両チームのベンチが激しい攻防を見せ、仕掛けあいながらカウントは2-2となるが、最後は当てる打撃になって浅いセンターフライとなる。さらに、6番高岸を三振に取り、畠中はこの回も無失点で切り抜ける。ただ、この回の畠中のツキのなさのようなものを感じたか、あるいは、流れを引き戻したい気持ちが強かったのか、米沢監督は畠中をこの回で降ろし、7回からついにエース坂井への継投を決断する。
関東一としては裏の攻撃であり、いつもはこの終盤に向かうイニングから打線が数少ないチャンスを生かす展開が多かった。しかし、この日は相対する中崎の調子がすさまじく良い。速球の伸びが桁違いであり、クロスファイヤーで何度も見逃しのストライクを奪う。関東一は6回、7回、8回とランナーを出し、機動力も絡めてなんとか得点を狙うが、いかんせんホームが遠い状況となる。
この雰囲気をなんとか変えたい関東一は、こちらもエースの坂井が渾身の投球を見せる。球威抜群のストレートは何度も140キロ台後半を記録。5回、6回と2安打ずつを放っていた京都国際打線を再び沈黙させる。両チームの投手を含めたディフェンスが譲らず、いよいよ0-0のまま9回を迎えることとなった。
勝負の9回。まずは、表の攻撃で京都国際がチャンスをつかむ。
この回、先頭の4番藤本が痛烈なセンター返しで出塁。だが、この場面でもセンター飛田が捕球直後に1塁へ送球し、オーバーランを刺しにかかる。まさに攻めの守備だ。5番長谷川が送って1アウト2塁。ここで京都国際は代打・服部を送るが、球威に押されてファーストファウルゾーンへの飛球となる。これをファースト越後がカメラマン席に倒れこみながら好捕。すると、その隙に2塁ランナーの藤本がタッチアップで3塁を奪い、局面は2アウト3塁にかわる。互いに目いっぱいかつ隙のないプレーだ。なお一打先制の場面は続いたが、最後は8番清水がアウトコースのスライダーを打たされてサードゴロ。関東一がついに9回を無失点で抑え込み、9回裏へ突入した。
その9回裏、さすがに疲労の色が出てきた中崎に対し、2番成井が死球で出塁する。犠打で2塁へ送ると、4番高橋はセンターフライに倒れるが、これまであまり見られなかったいい当たりのアウトとなる。ここで京都国際バッテリーは当たっている5番越後を敬遠。6番小島での勝負を選択する。その小島を中崎はショートへのゴロに打ち取るのだが、ランナーと重なったか、藤本がはじいてしまう。
9回裏、2アウト満塁。絶体絶命、究極のシチュエーションとなるが、ここは小牧監督はエースを信じて続投を決断する。この期待に応え、中崎は7番熊谷をライトライナーに打ち取って3アウト!両チーム無得点のまま、試合は延長タイブレークへと突入する。
迎えた10回表、無死1,2塁の場面で小牧監督はついに継投を決断。ここまで打率5割と打撃もいい西村を代打に送る。セオリーなら犠打の場面。しかし、出たサインは何とバスターエンドラン。まるでオリックス・中嶋監督のような思い切った戦法だ。これが、レフトへのヒットとなって無死満塁。動揺した坂井から1番金本が押し出しの四球を選び、ついに京都国際が1点を先制する。
ここで米沢監督は流れを変えるべく坂井に代えて準決勝で好投した右腕・大後を送るが、2番三谷がきっちり犠飛を打ち上げて2点目を奪取。タイブレークにおける2点目の意義は誰しもが感じ取っていたことだろう。多くの強豪が崩せなかった関東一のディフェンスをついに凌駕し、大きなリードをもって最後の守りについた。
だが、関東一もここまで勝ち残ってきたゆえんである「しぶとさ」を見せる。10回裏、先頭の8番小島が3塁線への絶妙なバントを見せると、これを西村がファンブル。無死満塁となり、一気に同点・逆転のピンチとなる。ここで代打・堀江の当たりは弱いショートゴロとなり、併殺崩れの間にまず1点。なお1アウト1,3塁と同点のランナーが27.431mの位置まで迫ってきた。
ここで京都国際バッテリーは1番飛田を歩かせ、1アウト満塁。2番成井、3番坂本の左打者との勝負となった。だが、この場面で開き直ったか、西村は本来の球質が戻ってくる。全国決勝の舞台で何というメンタルの強さか。2番成井をキレのある速球でファーストゴロに打ち取り、2アウト。最後は3番坂本に対し、2ストライクから選んだのは、伸びのある速球でも、決め球のチェンジアップでもスライダーであった。捕手・奥井も含め、心憎いばかりの冷静さ。アウトコースいっぱいに逃げていくボールに坂本のバットは空を切り、ゲームセット!
京都国際が守りが信条の関東一に守り勝ち、出場3回目でついに夏の頂点へと駆け上がったのだった。
まとめ
京都国際は中崎・西村とハイレベルな左腕二人を擁し、この二人を軸に守り勝つスタイルで優勝を成し遂げた。中崎はスライダー、西村はチェンジアップと高校球界ではトップクラスの決め球を持っていたが、その威力を活かしたのは捕手・奥井であり、支えたのはバックを守る守備陣であった。また、打線は低く強い打球を放つことを心掛け、高校野球の原点とも呼べるスタイルでヒットを量産。ホームランこそ0だったものの、攻撃力は非常に高かったと言えるだろう。
思えば、旧・京都韓国学園時代から部員が集まらずに苦しい状況に立たされていたが、小牧監督の指導のもと、恵まれない環境で続けてきた強化が実を結んだ形となった。投手中心に守り勝つスタイルが奇しくも、新基準バット元年の高校球界の流れにマッチしたことも何かの因縁だろう。平安の優勝以来タイトルが遠かった京都に久々の優勝をもたらしたのは、国境も時代も乗り越えた、令和の新たな新鋭校であった。
一方、関東一も敗れはしたものの、投手を中心に守り勝つスタイルでここまで勝ち上がれたことは、大きな自信になっただろう。全国に攻撃力には決して恵まれていないチームは多々あるはずだが、そんな高校にとっても、2024年度の関東一はモデルケースとなったはずだ。特に市川–小島の二遊間の守備力は素晴らしく、2007年の佐賀北や2013年の前橋育英を想起させるほどの堅守であった。また、打線も少ないチャンスを生かし切る勝負強さは天下一品であり、数々の強豪校の隙をついた機動力と勝負強さは、関東一の歩んできた道のりが間違っていなかったことを証明していた。
最後は、ほんの少しのぼたんの掛け違いでタイトルは取れなかったが、優勝に勝るとも劣らない準優勝に、観衆からは万雷の拍手が送られたのだった。


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