大会15日目第1試合
沖縄尚学
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 3 |
| 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
日大三
沖縄尚学 新垣有→末吉
日大三 谷津→山口→近藤

2025年の選手権大会のフィナーレを締めくくる一戦は、両校の投手陣が好投し、ロースコアの接戦に。終盤に4番宜野座の2本のタイムリーが飛び出した沖縄尚学が、新垣有→末吉の継投でこのリードを守り切り、同校としては初めて、沖縄県勢としては2010年の興南以来15年ぶりとなる夏の栄冠に輝いた。
試合
沖縄尚学は、準決勝で好リリーフを見せた2年生右腕の新垣有が先発。大会終盤になるにつれてどんどん調子を上げてきている。一方、日大三の先発はなんと今大会初登板の右腕・谷津。西東京大会では、エース近藤に次ぐイニング数は投げているものの、この大舞台で三木監督が思い切った起用を見せた。
1回表、マウンドの谷津はさすがにやや緊張気味ではあるが、武器である曲がりの大きいスライダー、カーブを操り、沖尚の上位打線を3者凡退に抑える。沖尚の各打者も、データが少ないため、打席の中でやや探り探りで向かっている印象だった。特に1番宮城に対し、フルカウントから低めの速球をストライク判定してもらえたことが大きく、これが三振と四球では大きな違いである。まずは、三木監督の狙い通りのスタートである。
一方、沖尚のマウンドには新垣有。こちらはすでに今大会4試合目の登板であり、日大三打線もしっかり研究している。立ち上がり、1番松永がたたきつけた打球は二遊間への緩い当たりとなり、ショート真喜志が送球するも間一髪セーフ!続く2番松岡が今大会実に8つ目となる犠打で進めると、3番本間は初球、やや真ん中寄りに入った速球をとらえる。打球は、セカンド左横を鋭く破り、ライトへのタイムリー!日大三が大一番で先制点を手にする。
しかし、続くチャンスで今大会2ホームランの4番田中をインサイドの速球で内野フライに。これが、要求した宜野座も投げ切った新垣有も見事である。失点直後のこの投球が、試合の行方を左右する大きな伏線となる。
リードを許した沖尚打線。今大会やや当たりが出ていなかったが、準決勝の山梨学院戦の終盤にようやくつながりが見え始めていた。エース近藤が出てくる前に、目の前の打者を少しでも短いイニングでマウンドから降ろさなくてはいけない。
2回表、先頭は今大会最も当たっている4番宜野座。フルカウントからアウトコースの速球に当てただけのような打撃になるも、飛んだコースが良く、2塁への内野安打に。こちらも手堅く犠打で送ると、6番安谷屋はいい当たりのショートライナーに打ち取られるが、7番阿波根が真ん中寄りの速球を逃さない。完ぺきにとらえた打球はレフト頭上を越すタイムリー2塁打となり、沖尚がすぐ同点に追いつく。準決勝から4番以降の右打者陣に当たりが出始めていたが、この試合でも結果を残した。
すると、同点に追いついてもらった新垣有が乗っていく。2回、3回とランナーは許すものの、武器であるスライダーがキレ始め、無失点に抑える。打者寄りで急激に変化し、変化量も大きいため、なかなか捉えるのが難しいボールだ。さらに、宜野座がこの日はフォークを多投させることで目先も変えていき、インコースも果敢について踏み込みも簡単に許さない。初回に出合い頭での失点はあったが、イニングを重ねるごとに、持ち味を出し始めた。
スコアは1-1のタイだが、自慢の打線が抑えられており、三木監督としては不穏な気配を感じ取ったか。先発の谷津を3回で降板させ、4回からは準々決勝で先発した右腕・山口をマウンドへ送る。この山口が4回、5回と沖尚打線を三人で片付け、流れを再び日大三に引き戻す。
この流れに乗って、4回裏、日大三は2安打に新垣有の野選も絡んで攻略の糸口を見出し始める。しかし、1アウト満塁から9番山口はセカンドフライ、1番松永はショートゴロといずれも新垣有のボールを仕留めきれず、得点を上げれない。松永は高めのスライダーに手を出したのだが、とらえきることはできず。やはり、高校生ではなかなか攻略困難なボールである。
それでも、2回、3回と押され気味だったところから4回、5回と少し押し戻した三高。すると、6回表、山口が先頭の宮城にヒットを許したところで、満を持してエース近藤をマウンドに送る。
近藤はまず、2番真喜志の犠打をインハイの速球で打ち上げさせ、1アウト。さらに3番比嘉も初球を打ち上げて、わずか3球で2アウトを奪う。沖尚としては流れを壊しかねない攻撃。ここで、1塁ランナーの宮城が思い切って盗塁を敢行。大会序盤はもう一つ発揮しきれていなかった機動力をここで駆使する。エース近藤のモーションを完全に盗み、捕手・竹中が投げることもできなかった。
このチャンスを4番宜野座が逃さない。直後のアウトコースに決まるスライダーを引っ張ると、打球は3塁横を破ってレフトへ!2塁から宮城が帰り、貴重な勝ち越しのタイムリーとなる。日大三としてはディフェンスのいい沖縄尚学を前に出したくはなかっただろうし、それもエースが登板してから失った得点。いろんな意味で両者の明暗を分ける1点となった。
リードをもらった新垣有は、後半戦に入っていよいよ手が付けられなくなる。スライダーは低めに決まるボールももちろんだが、高めのボールゾーンからストライクに入ってくるものもあり、このボールが相手としては厄介。通常なら高めの変化球は危ないボールになりがちなのだが、曲がり幅があるぶん、打者からすると想定外の高さ・コースから入ってくる。このボールでカウントを稼がれ、山梨学院の強力打線も姿を消していった。6回、7回と一人のランナーも出せず、無得点。徐々に球場は沖尚のムードへと変化していく。
これ以上の失点は避けたい日大三。しかし、ここまで力投を見せていた近藤もさすがに大会最終日にきて疲労はたまっている。8回表、1アウトから2番真喜志が初球、アウトコース高めの速球を逆らわずにライト前へ。ここでも徹底して攻め方を貫き、犠打で2塁へ進める。打席には、沖尚にとっては待望の、日大三にとっては最も迎えたくない4番宜野座。1塁は空いており、三高バッテリーとしては厳しいコースをついて、最悪歩かせてもいい状況だ。
ここで近藤は県岐阜商戦でも見せたように、初球、スローカーブでカウントを取る。宜野座としては想定外のボールだっただろう。近藤が得意とする投球の入りである。さらに低めの速球でファウルを打たせ、カウントは2-0。三高バッテリーとしては、いくらでも攻め方がある場面だった。しかし、続く3球目、竹中がアウトコースのボールゾーンに構えたところで、近藤の投げたボールはボール2個分内に入る。これを絶好調の4番が見逃すはずもなく、打球は左中間を完ぺきに破っていく。2塁から真喜志が生還して3点目!試合終盤に大きな1点が沖尚に刻まれた。
8回裏、2点を追う三高は、2番からの攻撃。この回、1点でも返しておきたいところで2番松岡は打ち取られるが、3番主将の本間がこの日3本目となるヒットをセンターへ返す。ここまで不振にあえいできた男の意地の一撃。続く打席には、逆に前の試合まで大当たりも、この試合無安打の田中が入る。一発出れば同点もある、この試合の趨勢を決める打席である。
ここでも、沖尚バッテリーはスライダーから入り、簡単に速球でカウントは取りに行かない。第1打席のインコースの残像も残っていたか。2球目のスライダーを打ったスイングにはやや迷いもあったように見られた。打球は、ショートへのフライとなり、2アウト。この試合、田中のバットからついに快音は響かなかった。
すると、ここで沖尚はついに2番手でエース末吉をマウンドに送る。これに対し、三高も5番嶌田に代えて、準々決勝の関東一戦で貴重な先制タイムリーを放った豊泉をマウンドに送る。一本ヒットがでれば、まだわからない場面で、代打の切り札を起用。勝負を左右する場面で、アウトコースの速球を思い切って引っ張った打球は、しかし、少し差し込まれてしまったか。サード安谷屋のグラブに収まり、セカンドフォースアウト。得点をあげることができない。
それでも、9回表、近藤は7番阿波根の四球と8番伊波のバントヒットから招いた2アウト2,3塁のピンチで1番宮城を抑え、得点を与えなかった。球場全体に指笛が響き、この日もアウェイの雰囲気であったが、最後まで冷静さは崩さなかった。速球のスピードは130キロ台でもコントロールと緩急で、この大会での大量失点はついに無し。紛れもなく今年の三高のエースは彼であった。
そして、勝負の決まる9回裏。さすがに疲労の色は濃い末吉は1アウトから7番安部を四球で出してしまう。さらに、8番桜井の投手強襲の打球を処理するも、1塁へのボールが悪送球となり、1アウト1,3塁。ついに同点のランナーも出塁し、三木監督は打席に代打・永野を送る。幾多の名勝負を生んだ107回大会はどんな結末を迎えるのか。
今大会、代打で登場してきた日大三の選手はみな思い切りが良かった。沖尚の守りは前進はせず、1点OKのシフト。打者サイドとしても、小技は使わず、打って決めてやろうという状況で、末吉の初球、アウトコースの速球に永野は迷いなくバットを出した。芯でとらえた打球はショート真喜志を強襲する当たりに!しかし、これを体の前で落とした真喜志は冷静にセカンド比嘉にトス。6-4-3の併殺が完成し、1塁塁審の右手が上がった瞬間、ついに沖縄尚学の優勝が決定し、夏は初めてとなる優勝旗を手中に収めたのだった。
まとめ
沖縄尚学は、高い投手力を武器に1回戦からの厳しい道のりを勝ち上がって、悲願の夏優勝を達成した。特に大会序盤は打撃陣になかなか当たりが出ず、投手陣への負担も増すことが多かったが、そんな中でも、末吉・新垣有の2年生の左右2枚看板を鉄壁の守備で支え、守り勝ってきた。6試合で失った得点は9失点。強豪ばかりを相手にしてのこの数字は誇れるものだろう。大会序盤に圧倒的な投球を見せた末吉、逆に大会後半に急成長を見せた新垣有と二人の投手のピークが重ならなかったことも大きかったかもしれない。
また、苦しんだ打線だが、いよいよ窮地になった時に真価を発揮した印象が強い。3回戦では仙台育英の好左腕・吉川の高めに浮いたスライダーをとらえ、準決勝の山梨学院戦では若いカウントから打っていって、檜垣を打ち崩した。打撃の調子が上がらなくとも、ここという時の集中力は目を見張るものがあった。そして、ことごとくチャンスでタイムリーを放った宜野座の打撃も見逃せないだろう。女房役として2年生投手二人を牽引し、打ってもただ一人5割近い打率を記録。決勝戦の活躍も含め、彼なくして沖尚の優勝はあり得なかった。
県内のライバルであるエナジックスポーツと切磋琢磨し、一強と呼ばれて選抜を制した横浜へのリベンジを目指して戦った夏。直接対決でのリベンジこそかなわなかったが、課題を1つずつクリアし鍛錬を重ねたその先には、県勢2度目となる最高のフィナーレが待っていたのだった。
一方、日大三の辿ってきた道のりも見事であった。秋季東京大会ではエース近藤が二松学舎大付に7回に集中打を浴びて、1-8と屈辱的なコールド負けを喫したところからこのチームはスタートしている。そんな中、近藤は試合の中で相手を見ながら修正していく力をつけ、打線もここというところで相手の決め球を攻略する勝負強さを発揮していった。
西東京の決勝では、春季大会で惜敗し、ここまで大会を通じて無失点だった東海大菅生の投手陣を攻略。2年ぶりの代表切符をつかんだ時、確かな手ごたえを三木監督も感じていたに違いない。甲子園では豊橋中央・高橋、関東一・坂本、県岐阜商・柴田と一線級の好投手を攻略。「打の三高ここにあり」を存分に示した大会だった。
決勝での惜敗に選手は涙を流していたが、この悔しさがまた新たな三高を作っていくのだろう。小倉監督から泥臭いチームカラーを継承しつつ、新たな歴史を作った今年の日大三。三木監督が率いる同校も変わらず、その強さを見せ続けてくれることを確信した、この夏の戦いぶりであった。
日大三―沖縄尚学 2回表【第107回全国高校野球選手権大会】


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