大会12日目第1試合
沖縄尚学
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 計 |
| 0 | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 5 |
| 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 |
仙台育英
沖縄尚学 末吉
仙台育英 吉川

優勝を狙う九州と東北の雄が激突した第1試合は、今大会のベストバウトと呼べる白熱した攻防に!延長11回に奪った決勝点をエース末吉の力投で守り抜いた沖縄尚学が、同校初となる1大会3勝を上げて8強進出を決めた。
試合
沖縄尚学は2年生エース左腕の末吉、仙台育英もエース左腕の吉川がそれぞれ先発。ともに2回戦はリリーフ登板しており、スタミナも十分温存してのマウンドであった。
立ち上がり、仙台育英・吉川は素晴らしいピッチングを見せる。140キロ台の力のある速球、低めに落ちるスライダーで沖尚の打者をきりきり舞い。1番新垣瑞、2番真喜志を連続三振に取るなど、3者凡退で無失点に封じ込める。この回を見た限りだが、とても点が取れるとは思えないほどの、最高のスタートであった。
その裏、沖尚の末吉も1番田山、2番原を連続で内野ゴロに打ち取るが、初戦や2回戦ほどはボールが走っていないようにも見受けられた。すると、続く3番土屋にはストレートを逆方向へ打ち返され、これが広く空いた三塁線を破る2塁打となる。ポジショニングもやや仇となった一打。ここで4番捕手と攻守の要の川尻が低めのスライダーをうまく拾った打球はショート横を破ってレフトへ!東北楽天ゴールデンイーグルスの応援曲に乗って、土屋がホームインし、仙台育英が1点を先行する。おそらく川尻にとって、末吉の決め球を攻略するために思い描いてきた会心の打撃だっただろう。
しかし、これで勢いに乗っていきたいところで仙台育英に思わぬミスが出る。沖縄尚学は、1アウトから今大会好調の5番宜野座が高めのスライダーをセンターへ打ち返すヒットで出塁。2アウト後、7番宮城がインサイドのスライダーをうまく拾うと、打球はライト前に弾む。これをチャージしてきたライト田山が後逸してしまい、宜野座が一気にホームイン!立ち上がり流れを掴んでいただけに、仙台育英にとってはもったいない失点であった。
この同点劇で気をよくしたか、末吉が2回を連続三振などで3者凡退に切ると、打線も活発になってくる。この日は1,2回戦が嘘のようだ。先頭の9番末吉が高めのスライダーをレフトへ流し打つと、犠打と内野ゴロで3塁へ。ここで3番比嘉も高めのスライダーを叩いた打球は背走するレフトの頭上を越すタイムリー2塁打となり、逆転に成功する。吉川対策で徹底して浮いたスライダーを叩く沖尚打線。どうやら大会序盤の打線の不調は2回戦の鳴門戦の最終回で抜けたようだ。得点にこそつながらなかったが、4回表にも鮮やかなエンドランが決まり、攻撃陣は上向きとなる。
一方、2回以降立ち直った末吉に抑えられていた仙台育英打線だが、こちらもただで終わるわけにはいかない。4回裏は末吉のけん制悪送球などでもらったチャンスを活かせなかったが、5回裏に反撃に転ずる。
この回、先頭の8番今野が低めのスライダーをミートして、センターへヒット。こちらは末吉の低めに決まるボールを立ち上がりからうまくとらえていく。犠打で二塁へ進むと、ここから末吉がまさかの2者連続死球。仙台育英としては棚ぼたのような形で満塁のチャンスを得ると、2アウト後にまたも4番川尻が結果を残す。初球に第1打席で打ったようなコースのスライダーを鋭くファウルすると、次のボール、捕手らしく真っすぐが来ると見切ったような打撃でアウトコースのストレートを叩く。打球は、ライト前に弾むタイムリーとなり、2者が生還!東北の雄が相手の2年生エースの作った隙を逃さなかった。
逆に追う展開となった沖縄尚学だが、吉川も粘りを見せる。2回以降、毎回のようにランナーを背負い、6回表も先頭打者のヒットから、暴投と犠打で1アウトランナー3塁のピンチを招く。しかし、ここで6番阿波根、7番宮城を渾身の速球で連続三振!スライダーが狙われていると見るや、速球で相手の裏をかき、得点を与えなかった。すると、呼応するように、6回裏には末吉が無死1,2塁のピンチで後続を連続三振に取り、無失点。両エースが互いを高め合うような珠玉の攻防が続く。
吉川としては勝利まであと3イニング。しかし執拗に迫る沖尚打線に7回表、ついに捕まる。先頭の8番伊波にカウント0-3となってしまい、4球目、取りに行った速球を痛打される。犠打で2塁へ進むと、2アウト後に2番真喜志が大仕事をやってのける。1球目、低めのスライダーを空振りした後、2球目は捕手の川尻が立ち上がってややウエスト気味に構える。そこに吉川の速球がやや甘く入るところを逃さなかった。上からきっちりとらえた打球はセンター左横に弾み、同点。後半増えてきた真っすぐにきっちり対応した、値千金の一打であった。
その後も両者が互いの好左腕を攻めあう展開に。9回表は沖尚が犠打を失敗してチャンスを広げきれず、裏の仙台育英もランナー2人を置いたサヨナラの場面で頼みの3番土屋、4番川尻が凡退。末吉も吉川も球数が120球を超えてくるあたりになっても、全く力が衰える気配がなかった。
試合は同点のまま延長タイブレークに突入。10回表に沖尚は犠打で1アウト2,3塁のチャンスを作るも、2番真喜志、3番比嘉と右打者がインサイドのボールに詰まらされて内野ゴロに。得点ならず、そして、その裏、この試合最大のハイライトが訪れる。
仙台育英は先頭の代打・山中がスリーバント失敗に倒れ、1アウトとなるも、続く打者は2回戦でホームランを放った6番高田。外から入ってくるスライダーを引っ張ると、打球は三遊間を真っ二つに破って、レフトへ。前進守備だったため、3塁に止まるも、もう勝利まであと少しの位置に迫る。
ここで打席には7番中岡。カウント0-2となり、須江監督の指示はスクイズ!しかし、これを末吉が球威でねじ伏せ、ファウルを取って成功させない。まるで転がせるものなら転がしてみろと言わんばかりの気迫。これに中岡が押されたか、2-2からのインサイドにやや中途半端に当てた打球はファーストへのハーフライナーに。掴んだ新垣瑞がそのままファーストベースを踏み、最大のピンチを沖商ナインが逃れた。
こうなると、流れはピンチを耐えた沖尚に移る。先頭は4番安谷屋。打球はショート正面へのおあつらえ向きのゲッツーコースとなるが、掴んでセカンドベースを踏んだ後の今野のファーストへの送球が逸れる。この間にランナーがそれぞれ進塁し、ついに沖尚に勝ち越しの1点が刻まれた。さらに、続く5番宜野座に対し、吉川の決め球のスライダーが吸い込まれるように真ん中高めへ。研ぎ澄まされた空間にいる、強豪の打者のバットがそれを逃すはずもなく、しっかりとらえた打球はレフト頭上を越え、決定的な2点目が刻まれた。
ただ、2点のリードがあるとはいえ、まだ油断できないのがタイブレーク。ゆえに、末吉の集中力は最後まで切れなかった。
打席には先ほどのプレーの挽回に燃える8番今野。しかし、無情にも打球はセカンドの正面を突き、併殺打で2アウト3塁となる。そして、打席には9番吉川。この試合のフィナーレを飾るにふさわしい、両エースの対峙となる。フルカウントまで粘って8球目。痛烈に捕らえた打球は、しかし、セカンド比嘉の好プレーに阻まれ、ゲームセット!強豪同士の、大観衆を魅了した攻防は、沖縄尚学が紙一重で制し、ベスト8一番乗りを決めたのだった。
まとめ
沖縄尚学は、末吉が今大会初失点を喫するなど、動揺してもおかしくない展開であったが、こういう時にこそ、奮起し、そして援護するのが上級生野手の役目である。この日は好左腕・吉川から10安打5得点。高めに浮いた失投はことごとくとらえ、不調だった打線に活気が戻ってきた。また、投げては末吉が苦しみながらも169球を投げぬき、完投勝ち!この大一番を制したことで、技術的にも精神的にも計り知れない成長を得たことだろう。これからのことを考えると末恐ろしい左腕だ。
同校として初の1大会3勝を上げた沖縄尚学。まだまだ戦いが続く中、今大会一とも言える戦いを制したナインは、試合後、大歓声を浴びながら、ひと時の充実感をかみしめていた。
一方、敗れた仙台育英も一歩も引かない展開を見せ、この素晴らしい試合を作るうえで欠かせない、もう一つの主役であった。特に吉川は打たれる場面もあったが、本当に粘り強く投げぬき、心身ともにタフであるところを見せてくれた。打線も難攻不落と思われた末吉のスライダーを巧みにとらえ、9安打で3点をマーク。実力校同士、本当にハイレベルな攻防であった。
今大会は3回戦で終わったが、名将・須江監督に率いられる仙台育英は、まだしばらく高校球界に上位に位置し続けることは間違いないだろう。本当に本当に素晴らしいチームであった。
【高校野球 甲子園】 仙台育英 vs 沖縄尚学 譲らぬエース対決…タイブレークにもつれた死闘! 【全国高等学校野球選手権大会 3回戦 全打席ハイライト】 2025甲子園 8.17


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