2023年選手権1回戦 仙台育英vs浦和学院(1日目第3試合)

2023年

大会1日目第3試合

浦和学院

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 4 0 0 5 0 0 9
4 0 5 0 1 5 0 4 × 19

仙台育英

 

浦和学院   鈴木→渡辺→細沢→月野→田中→伊藤

仙台育英   湯田→高橋→仁田

2013年、2018年に続いて3度目となった両校の対戦。あの10年前の試合を彷彿とさせる、ナイトゲームの激闘は、両チーム合わせて28得点の乱打戦になった。下位打線の連続ホームランなど、打の成長ぶりを示した仙台育英が

試合

浦和学院は左腕・鈴木、仙台育英は右腕・湯田が先発。ともに県大会でエース格として好投した投手がマウンドに上がった。しかし、試合開始から予想外の展開が続いていく。

1回表、仙台育英の剛腕・湯田は連続三振の立ち上がり。3番喜屋武にヒットを許すものの、スピードにこだわらず低めへ集める投球で後続をしのぐ。これで3度目の甲子園とあって落ち着いた投球である。

これに対し、甲子園初登板の左腕・鈴木に対して、今夏好調の仙台育英が襲い掛かっていく。1番橋本が見事な流し打ちで出塁すると、2番山田には強攻策でエンドランをかけて、これもものの見事に1,2塁間を破る。理想的な攻撃で無死1,2塁を作り、打順は中軸。3番湯浅は死球で満塁と、まるで10年前の対戦のリプレーを見ているように、初回からアウトなしでフルベースの展開となる。

ここで鈴木は4番斎藤陽をレフトフライに打ち取り、レフト小林の好返球によるホーム捕殺もあって、ダブルプレーを奪う。絶体絶命のピンチを免れかけたように見えたが、ここから仙台育英打線が分厚い。春以降の成長株の5番斎藤敏が1塁手の前ではねるタイムリーを放って2点を先制。さらに、6番鈴木、7番尾形と2者連続で高めのボールをしっかりとらえて、ライトへタイムリーを放ち、この回4点をたたき出す。相手の失投を逃さず、コンパクトに振りぬく打撃はさすが優勝候補の筆頭格である。

この4点が与えた安心感は大きく、序盤は湯田が快調に飛ばす。序盤3イニングをしっかり無失点でしのぐと、3回裏に仙台育英打線が2番手の渡辺も攻略する。1アウトから県大会で不調だった4番斎藤陽がレフトへの2塁打で出塁。チームの勢いが主砲を蘇らせる。ここから暴投と四球、そして内野ゴロの間に1点を追加。この間、須江監督はしっかりタイムを取り、打者に明確な攻撃の支持を与える。そして、衝撃はここから。続く7番尾形が完ぺきな打撃で渡辺の速球をライトスタンドへ放り込むと、続く8番湯田も初球をとらえて再び打球はライトスタンドへ。下位打線の連続ホームランで甲子園の観客の度肝を抜いて見せる。さらにこの回、1番橋本にもタイムリーが飛び出し、9-0と一方的な展開となる。

V候補同士の一戦だが、3回を終わって思わず大差に。しかし、この点差で逆に開き直ったか、4回に入って浦和学院打線が目を覚ます。先頭の3番喜屋武がストレートをしっかりたたいて1,2塁間を破ると、各打者がしっかり低めのボールを見極め始める。1年生の4番西田はカウント2-2と整えて、ストレートが甘く入った速球をレフト線へはじき返し、喜屋武の好走塁もあってまず1点。さらに県大会でラッキーボーイだった、2年生の5番三井も高めの速球を、今度は流し打ってレフトへはじき返し、中軸の3連打で2点を返す。湯田の投球の軸であるストレートを攻略したという意味でも大きな得点だ。さらに、この回9番江口にも2点タイムリーが飛び出し、4点を返して、試合の行方はわからなくなる。

ただ、浦和学院は実力のある投手を多く擁するが、いずれも仙台育英クラスの打線を相手にすると、「決め球を欠く」状況となってしまう。カウントは作れるが、2ストライクになってからが苦しい。仙台育英が2番手でエース高橋を投入して流れをつかむと、5回裏に仙台育英は1番橋本のタイムリーで1点を追加。次の得点は仙台育英に入る。

さらに、6回裏には2番山田のヒットを足掛かりに再びチャンスを作ると、3番湯浅もヒットで続く。ここで4番斎藤陽須江監督は犠打を命じ、1アウト2,3塁とチャンスを拡大。5回の得点も犠打が絡んでおり、流れを渡さないと言わんばかりの攻撃だ。続く5番斎藤敏のキャッチャーゴロが浦和学院のランダンプレーのミスを誘い、11点目。続く代打・伊藤には畳みかけるようにスクイズを命じると、これが再び浦和学院守備陣のミスを誘って、2塁ランナーまで生還してしまう。この回から登板した左腕・細沢にとっては、打たれ続けたわけでないのだが、失点がかさむイニングとなってしまった。その後、攻撃がつながって1番橋本にも2胆タイムリーが飛び出し、15-4。仙台育英の機動力と抜け目のなさが、内野陣が全員下級生である浦和学院の守備をかきまわしたイニングだった。

これで試合の態勢は決したかと思われた7回。しかし、森大監督になって「超攻撃野球」を掲げる浦和学院サイドの気持ちは決して折れていなかった。

7回表、代わってから安定感ある投球を見せていた仙台育英・高橋に対し、打つしか選択肢のなくなった浦和学院打線が、「打」のみに集中し始める。9番江口が死球で出塁すると、続く1番小林が1,2塁間を破って、1,3塁とチャンスメーク。2番月山は初球を流し打ってライトへはじき返し、1点を返すと、1アウト後に、4番西田・5番三井がいずれも内野をしぶとく破るタイムリーを放って15-8になる。守備面では苦しい展開が多かった浦和学院だが、こと攻撃に関しては仙台育英の強力な右腕2本柱を完ぺきに攻略して見せた。関東の強豪としての意地を見る攻撃だ。この回、さらに6番篠塚のテキサスヒットに暴投、内野ゴロと続き、もう1点を追加。5点を失った直後にすぐ5点を奪い返してみせた。

しかし、試合はすでに終盤に突入しており、最終的にはやはり失った点数が多かったのも事実。8回裏に再び、仙台育英打線の集中打で4点が入り、万事休した。浦和学院は最終回にも3番手の左腕・仁田を攻めて2安打を放つも、最後は9番江口の痛烈なセンターフライを橋本がつかんで試合終了。思わぬ乱戦となった大会屈指の好ゲームを制し、仙台育英が2年連続で初戦突破を決めた。

まとめ

仙台育英は選抜以降、攻撃力が大幅にアップしたことを感じさせた。もともと機動力が使えるチームであったが、下位打線の連続弾を含め、純粋な「打力」が上昇したことで何度も大量点をスコアボードに刻み込んだ。浦和学院投手陣の投げるボールも決して悪くなかったが、打席で粘って好球を引き出す技術の高さはさすがの一言であった。県大会で苦しんだ4番斎藤陽にもマルチヒットが飛び出しており、攻撃陣に関しては100点をつけられる内容だったのではないだろうか。

一方、今大会No.1と目された投手陣は4回、7回と湯田高橋の右腕エースコンビが捕まって計9失点。やはり、これが全国大会の怖さなのだろう。浦和学院打線のレベルの高さももちろんあるが、一度流れが傾きだすと、なかなか元に戻すのは難しかった。それでも、勝ったチームには次があり、課題を活かす機会がある。連覇を狙う昨年の王者が、この日の戦いを次戦にどう生かすのか、楽しみだ。

そして、敗れた浦和学院だが、あれだけの劣勢に追い込まれながら、2度にわたって集中打の飛び出した「反発力」は素晴らしいものがあった。ディフェンス面ではたしかに課題が残ったが、「それなら打って返そう」という気持ちの強さがチーム全体に感じられた。特に西田三井の中軸コンビはいずれも2本のタイムリーヒットを放ち、全国クラスの速球・変化球に対してしっかり対応して見せた。仙台育英投手陣をこれほど打ち込めるチームは、全国を見渡してもそうはいないだろう。多くのメンバーが残る浦和学院の新チームから目が離せなくなった。

8月6日 🅵🆄🅻🅻【仙台育英 vs 浦和学院 】 ハイライト&ホームラン | 第105回全国高校野球選手権記念大会2023 – YouTube

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