東海大甲府vs龍谷大平安 2012年夏

2012年

強力打線封じ込めたタフネス右腕

2012年夏の選手権。2回戦最後のカードは、強豪同士の楽しみなマッチアップとなった。

東海大甲府は4強入りした2004年以来となる甲子園出場。前年は超高校級のスラッガー・高橋周平(中日)を擁しながら全国の舞台に手が届かなかったが、今年は高い総合力で新チーム結成時から評価が高かった。好投手・神原は力強い速球にシンカーも光り、左打者も苦にしない投球ができ、守備陣も渡辺(阪神)-新海の二遊間を中心に堅い。前年より安定感のある守備をベースに、今年は落ち着いた戦いで持ち前の強打を活かすことができた。

秋は関東大会で高崎高校のエース島田にかわされ、地元開催の大会で不覚をとる形となったが、春の関東大会ではきっちり8強入りし、選抜4強の健大高崎にも善戦。手ごたえを得ると、夏の山梨大会では圧倒的な強さでライバル校を下し、久々の出場を成し遂げた。甲子園では初戦は初出場の成立学園と対戦。2年生エース谷岡(巨人)を相手に11安打を放ちながらも3点どまりだったが、神原には3点あれば十分。内外野の堅守もあって、相手打線を全く寄せ付けず、4安打完封で初戦をものにした。

龍谷大平安・高橋 身体能力抜群のスラッガー誓う50発 ...

対する龍谷大平安打線は、2年連続の選手権出場。当時から4番を打っていた高橋(広島)を中心に前年夏のチームも強打を誇っていたが、本戦では新湊の技巧派右腕・袴谷を攻略できず、初戦敗退に。その反省をばねに、攻撃の中身を練り直したチームは、持ち前の破壊力に加えて、犠打・走塁面も見直して、点の取れる打線を作り直した。投げてはエース田村が速球とフォークを武器に、好投を見せ、守りの面でも安定感のある戦いが光った。

しかし、初戦の旭川工戦は1番井沢が2ホームランを放つなど、打線が持ち味を発揮するも、エース田村が相手打線に捕まって一時は8-4と4点のリードを奪われる展開に。9回裏に5番有田が2アウトから同点打を放ち、延長戦で6番嶋田がサヨナラ打と2年生コンビの活躍でサヨナラ勝ちをおさめたが、次戦以降に向けてやや不安を抱える内容になってしまった。

投打かみ合い、最後まで主導権渡さず

2012年夏2回戦

東海大甲府

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 1 0 1 0 1 1 0 4
0 0 0 0 1 0 0 0 1 2

龍谷大平安

 

東海大甲府   神原

龍谷大平安   田村→井沢

さて、この注目カードの焦点は何といっても東海大甲府のエース神原vs平安の強力打線だろう。重い速球にスライダー、シンカーを交える神原に対して、1番井沢、3番久保田、4番高橋と好打者のそろう平安打線がどう捉えていくのか、注目の一戦が幕を開けた。

序盤は両チームとも無得点に静かな入り。しかし、ストレートを狙う平安の各打者に対し、東海大甲府のバッテリーはスライダー主体にかわす投球で、相手打者の目先をかわす。狙い球が来ない平安打線はやや面食らう内容となり、0-0で試合は推移していても、ペースは東海大甲府が握っている感があった。

すると、3回表、東海大甲府打線が平安のエース田村をとらえる。当時から速球にめっぽう強かった2年生のトップバッター渡辺がやや甘く入った速球を左中間にはじき返して2塁打を放つと、犠打で1アウト3塁に。ここで同じく2年生の3番山本が逆方向へのうまい打撃で2塁打を放ち、先取点をGET!フォークを見極め、甘く入った速球をとらえるという攻撃の狙いを実現させる。

先制点をもらった神原は快調に飛ばし、4回まで無失点投球。4回裏は上位打線に対して合うと3つをすべて三振で奪い、ここまで計6三振と波に乗る。特に、4番高橋には自分の打撃をさせず、ここまで2打席ノーヒット。1回戦で速球も変化球もしっかりはじき返して4安打を放った平安の主砲を完全に封じ込める。打席内で考えさせる甲府バッテリーの配球がうまい。

5回表にも甲府はラストバッター新海のヒットを足掛かりにチャンスを作り、またも3番山本の一打で追加点。広角に打ち分ける好打者を3番に置いて、着実に得点を挙げていく。これに対して、平安も5回裏にようやく反撃開始。6番嶋田、7番基村の長短打でチャンスメークすると、8番平城の犠飛で1点を返す。この日は下位打線に当たりが目立つ平安打線。1点差のまま試合は後半戦に突入した。

しかし、甲府バッテリーは序盤の変化球攻めから一転して、後半は速球勝負が目立つ。この1試合を通した「配球マネジメント」に平安の、特に上位打線が手を焼き、肝心な場面で一本が出ない。すると、7回表、甲府は注目のトップバッター渡辺が田村の甘く入った速球をレフトスタンドへ放り込んで1点を追加。さらに8回表にも6番相原のうまい右打ちで4点目を挙げ、東海大甲府の3点リードで最終回へと突入していった。

9回裏、粘る平安は5番有田の死球と6番嶋田のライト線へ落ちるヒットでアウト1,3塁。土壇場でチャンスを作り、アルプスはこの日一番の盛り上がりを見せる。しかし、ここで7番基村の痛烈な当たりをサード相原がしっかり捕球し、2塁で封殺。「怪しいボレロ」が鳴り響く、アウェー雰囲気の中で落ち着いた守りを見せた。この間にサードランナーは生還したが、2アウトとなり、最後は代打・目賀田をセカンドゴロに打ち取ってゲームセット。東海大甲府は3回戦進出を決めた。

まとめ

東海大甲府はその後も、宇部鴻城・作新学院との接戦を制して4強へ進出。準決勝では光星学院の強打に屈したが、8年ぶりの大舞台で大躍進を見せた。この年も強力打線の威力は光ったが、やはり基盤となっていたのはエース神原の好投と二遊間を中心にした堅守であった。特に渡辺-新海の2人の動きは出色であり、強肩と広い守備範囲で難しい打球も難なくアウトにしてみせた。やはり野球で大事なのは守りであると改めて痛感させられる、この年の東海大甲府の戦いであった。

これに対して、龍谷大平安は持ち前の強打を封じられて惜敗。エース田村を中心とした投手陣は4点を奪われたとはいえ、各イニングを最少失点に抑えて踏ん張っただけに、敗因はやはり相手エース神原を攻略できなかったことに尽きた。前年に続いて、全国レベルの、またタイプの違う好投手を相手に涙を飲む結果となったが、その後も平安は毎年のように甲子園に出場。この大会をスタンドで見ていた1年生たちが、2年後の選抜で、初めて紫紺の優勝旗を手にすることとなる。

東海大甲府vs龍谷大平安 ダイジェスト(第94回選手権・2回戦) (youtube.com)

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