記憶に残る代打(2004年夏)

2004年

千葉経大付 香取佑太郎

大会11日目第3試合

2004年夏3回戦

千葉経大付

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
0 0 0 0 0 0 0 0 1 2 3
0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 1

東北

 

千葉経大付  松本

東北     ダルビッシュ→真壁

試合前予想

大会前の優勝争いは東北、横浜、PL学園、明徳義塾の4強と思われ、その他にも多くの甲子園優勝経験校が顔をそろえた2004年夏の選手権大会。そんな中、毎年激戦となる千葉県の代表を射止めたのは初出場の千葉経大付であった。

チームを率いる松本吉啓監督は、1976年夏の甲子園でエースとして桜美林を初出場初優勝を達成した名投手であった。クレバーな投球術で強豪校を次々なぎ倒し、決勝戦でPL学園を相手に劇的なサヨナラ勝ちを収めたシーンを記憶しているファンも多いだろう。そのクレバーさは監督になってからも健在であり、練習中は選手にメモを取らせて指摘事項をしっかり記憶させること、データを駆使して大胆なポジショニングを敷くことなど、随所に松本監督らしさを見せた。

チームの中心となったのは、監督の息子さんに当たる松本啓(DeNA)。独特なテークバックから繰り出すキレのある速球を武器とし、打っても4番とまさにチームの大黒柱であった。また、右の本格派・井上松本に劣らぬ実力の持ち主であり、千葉大会決勝戦では1失点完投勝利。投手力は大会出場校中でも上位に位置し、1回戦の鳴門第一戦では井上松本の継投で1失点、2回戦の富山商戦では松本が完封と守り勝つ野球で2勝を挙げた。また、打線にも少ないチャンスを生かせる勝負強さがあり、初出場ながら徐々に侮れない存在感を示しつつあった。

そして、迎えた3回戦の相手はV候補筆頭の東北。エース・ダルビッシュ(パドレス)を中心に昨年の準優勝を経験したメンバーを多くそろえ、2年間東北地区では負けなしの強さを誇っていた。選抜では優勝した済美にまさかの逆転サヨナラ負けを食らったが、最後の夏は東北の優勝、悲願の白河の関越えを期待していた人も多かった。

甲子園では、初戦で好打者・中西(ソフトバンク)のいた北大津、2回戦は2年生スラッガー・鈴木将(広島)を擁する遊学館を、いずれもダルビッシュが完封。打っても、1番家弓、3番大沼、4番横田の鉄板のメンバーをはじめとして、1年生ながら5番に食い込んだ成田など新戦力もかみ合い、ここまでの戦いには一切隙が見られなかった。ダルビッシュの後ろには、本格派サイド右腕の真壁や左腕・采尾も控えており、戦力は潤沢。初出場の千葉経大付としても、ここが正念場、ないしはここで負けてももう十分よくやっただろうという風に思っていた人も多かったかもしれない(失礼ながら自分もそう思ってました…)

展開

試合は、東北・ダルビッシュ、千葉経大付・松本の二人の投げ合いとなり、雨の中での投手戦となる。

ダルビッシュは腰の故障から高校時代を通じて満足なコンディションで投げられる時期はほとんどなかったが、その中でも多彩な変化球でかわす投球術で抑えるうまさを持っていた。また、2回戦の遊学館戦では相手が走塁でかき回そうとするところをけん制で狙い撃ちしたように、フィールディングも含めて付け入るスキを与えない、下級生時はマウンドで露骨に表情に出すところもあったが、最上級生となってそういったメンタル面の不安定さも消失。円熟味を増したみちのくのエースが初出場校の前に大きく立ちはだかっていた。

ただ、この高校球界No.1エースを相手にして、松本も一歩も引かない投球を見せる。やや肘を下げた独特なスリークオーター気味の腕の振りから繰り出す速球は威力十分。特に左の好打者が多く並ぶ東北打線には効果てきめんであり、アウトコースへの速球とスライダーをコーナーに決めて翻弄する。7回裏に3番大沼に先制タイムリーを浴びたものの、格上の相手を8回まで1点に抑え、食らいついていく。8回を終えて、東北が1-0とリードするも、予断を許さない状況で試合は最終回へ突入する。

そして、代打へ

9回表、千葉経大付は9番和田の打席で代打・香取を送る。カウント2-0と追い込まれ、苦しいカウントになるが、ここで東北の捕手・がアウトコースへ構えたボールが内寄りに入る。これを香取は逃さず、センターへ痛烈な当たりのヒットを放つ。この後、犠打・内野ゴロで2アウト3塁となり、打席には3番主将の井原ダルビッシュとしては3試合連続完封まであと一人だ。だが、アウトコースのボールを引っかけさせた打球は、サード横田の前でイレギュラー。拾いなおして1塁へ送球するも、それてしまい、香取がホームを駆け抜けて、千葉経大付が土壇場で同点に追いつく。

雨に泣く形となった東北。追いついたものと追いつかれたものの勢いの差は延長に入って如実に表れた。この回、7番滝沢の2塁打を足掛かりにチャンスを作ると、先ほどの代打・香取に代わって守備から入っていた河野がセンターは勝ち越しタイムリー!さらに、2番手・真壁からも2番川上がタイムリーを放ち、決定的な2点目を奪う。

10回裏、松本は2アウトを奪い、最後は運命に導かれるように、投げ合ってきたダルビッシュが打席へ入る。笑顔を浮かべながら打席に入ると、最後は2ストライクからのクロスファイヤーに手が出ず、見送り三振でゲームセット。エースの好投と途中出場の選手の活躍で千葉経大付が見事なジャイアントキリングを演じ、ベスト8進出を決めた。

この後、準々決勝では2試合連続完封中だった修徳・斎藤勝(日本ハム)を攻略し、4強へ進出。最後は、選抜優勝校の済美の前に力尽きたが、初陣校が大舞台で素晴らしい活躍を見せた大会となった。

ダルビッシュ三年 夏

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