好左腕打ち崩した強力打線
平成最後となった2019年の選抜大会。その1回戦で好投手vs強力打線の屈指の好カードが実現した。

横浜は1年生時から速球派左腕として注目された左腕・及川(阪神)がエースに成長。一時期イップスに苦しんだこともあったそうだが、2年夏の花咲徳栄戦で好投を見せるなど、復活を遂げ、新チームでは県大会を優勝して関東大会まで導いた。その関東大会ではストレートを狙い打たれて春日部共栄相手にまさかのコールド負けを喫したが、及川のポテンシャルを評価されて関東5番目で選出。不気味な存在として本大会でにらみを利かせていた。

対する明豊は分厚い投手陣と強力打線で九州大会で準優勝。2015年夏に準優勝した仙台育英に1-12とショッキングな大敗を喫したが、川崎監督の地道な指導でチーム力を強化し、2017年夏にはベスト8まで勝ち進んだ。2年生の技巧派左腕・若杉に加え、寺迫、大畑ら速球派の3年生右腕もいる投手陣は充実。表、布施、野邉ら強打者が上位に並ぶ打線も好調で、選抜では初となるベスト8を狙っていた。
4点ビハインドを跳ね返した集中打
2019年選抜1回戦
明豊
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 5 | 4 | 1 | 0 | 0 | 3 | 0 | 13 |
| 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 5 |
横浜
明豊 若杉→大畑
横浜 及川→松本→木下→及川

立ち上がり、及川は予想に反してスライダー主体の投球を見せる。ちょっと多すぎるのではないかというほどだったが、これに困惑したか打者一巡目は明豊打線を抑えることに成功する。
一方、横浜打線は初回から好調。1番内海へのいきなりの死球で動揺したか、スライダーが高めに抜けるところを3番小泉、4番吉原、6番及川ととらえられて2点。さらに盗塁で送球がそれる間に3塁ランナーがホームインして3点目と、往年の横浜らしいそつない攻めが戻ってきたような初回の攻撃だった。
若杉は2年生投手で大舞台で、しかも名門校相手ということもあってなかなか緊張の色を隠せない。2回裏になってもスライダーの制球がままならず、ヒットで出た9番山口にセンター前に運ばれると、送って1アウト2塁から1番内海にタイムリーを浴びて4点目。横浜にとってはここまで理想の展開である。
ところが、この流れが3回表に突如暗転する。及川に不安視していた制球難が出始め、連続四球でランナーをためると、1番主将の表に取りに行ったストレートを痛打されてまず1点。さらにランナーをためて3番布施、4番野邉にはともにスライダーをとらえられて連続タイムリーで一気に同点となる。動揺した及川の暴投でランナーは3塁に進むと、6番青地のサード強襲の当たりが内野安打となってついに明豊が逆転に成功する。
横浜バッテリーにとってはストレートが走っていないという判断のもとでのスライダー多投だったかもしれなかったが、かえって多投したことで序盤から見切りをつけられてしまい、スライダー、ストレートともに明豊の打者にとっては脅威ではなくなってしまったのかもしれない。結局及川は3回途中での降板となった。
逆転した明豊は4回にも2番手の2年生左腕・松本(DeNA)を攻めて満塁とすると、5番薮田が走者一掃のタイムリー2塁打を放って一挙3点を追加。序盤の大量ビハインドを跳ね返したぶん、その後の勢いは止まることなくむしろ加速していった。
反撃したい横浜だったが、4回から登板した右腕・大畑の角度のある速球の前に抑え込まれる。7回に4番吉原の会心の一発で1点を返すが、時すでに遅し。終盤に再び明豊の5番薮田に満塁走者一掃打を浴び、薮田はこの日一人で6打点の大暴れ。明豊が予想に反して大差で勝利し、2回戦進出を決めた。
まとめ
明豊は序盤は先発・若杉の乱調に苦しんだが、3回に一気に劣勢を跳ね返した打線には底力があった。リードされていても各打者が冷静に相手のボールを見極めていき、相手の持ち球を一つずつ奪っていった。若き川崎監督のもと躍進を図る明豊にとって強豪・横浜から奪った勝利は大きな自信になっただろう。この大会で初のベスト4まで勝ち上がり、そして2021年の選抜では決勝進出。大分の強豪として着実に階段を上っている。
対する横浜はここ最近ずっとそうであるように選手個々の能力が高い中でも結果が出なかった。一時期は出れば必ず8強以上まで勝ち進んでいたが、この時代は、出場回数こそ重ねているものの、甲子園では苦しい戦いが続いていた。しかし、現在の村田監督が就任し、再び渡辺監督、小倉コーチ時代のような1点を緻密に奪い取って守り抜く野球を取り戻した現在は、再びその強さを取り戻した感がある。2025年度のチームは、公式戦連勝記録を続け、神宮・選抜と2冠に輝いた。そして、当時のエースだった及川は、現在阪神のリリーフエースとして確固たる地位を築いている。
2021年選抜決勝予想 東海大相模vs明豊 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)
【第91回 1回戦2日目第2試合フル】明豊vs横浜 2019年3月24日■選抜高等学校野球大会(甲子園) – YouTube


コメント