屈指の左右好投手、初戦で激突
記念大会となった第90回大会では数多くの好投手が顔をそろえたが、1回戦で九州勢同士の好投手の投げ合いが実現した。

浦添商のエース伊波は2年時から主戦格だったが、前年夏は決勝で興南に惜敗。秋の大会でも予選で敗退し、しかもライバルの沖縄尚学は選抜で優勝を成し遂げていた。しかし、忸怩たる思いだったナインは名将・神谷監督の元で奮起して春季九州大会では準優勝。アンツーカーまで駆け抜けるような疾走感のある走塁とエース伊波の力投で夏の沖縄大会を勝ち上がると、決勝では好投手・東浜から初回に5点を挙げる猛攻で5-2と下し、念願の甲子園切符を勝ち取った。

対する飯塚は激戦区・福岡からの初出場校。こちらは好左腕・辛島(楽天)を中心とした守りの野球で勝ち上がった。辛島は福岡大会では46イニングを投げて自責点はわずか2。しなやかなフォームから繰り出すストレートとスライダーの前に、猛者ぞろいの福岡県のチームも手が出なかった。部員の8割が地元・筑豊地区というおらが町のチームが初めての大舞台へ向けて腕を撫していた。
本格派右腕が見せた、「省エネ投球」の妙
2008年夏1回戦
浦添商
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 2 | 0 | 2 | 0 | 3 | 0 | 0 | 7 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
飯塚
浦添商 伊波
飯塚 辛島→武田

試合は立ち上がりは静かな様相。伊波は持ち味の速球やスライダーではなく、手元でボールを動かす投球を見せて球数少なく打たせて取れば、辛島は持ち味のキレのあるボールで浦添商打線に立ち向かっていく。
しかし、打者一巡して迎えた3回表、辛島が浦添商の積極野球につかまる。味方のエラーで背負ったランナーをスコアリングポジションに進められると、1番山城、2番漢那、3番伊波と怒涛の3連打で2点を先取。破壊力というよりはスピード感のある攻撃で相手に付け込むうまさが浦添商にはある。
これに対して、初出場の飯塚には硬さがあったか、2,3回とヒットのランナーをいずれも走塁ミスでつぶしてしまう。記録上はボーンヘッドだが、伊波-山城のバッテリーと中心とした浦添商ディフェンス陣の落ち着きぶりは、とても初めて聖地を踏むナインとは思えないものがあった。それだけ王者・沖縄尚学を下した自信を大きかったのだろう。
この序盤の攻防で勢いを得た浦添商は中盤以降には辛島のボールを完全に攻略。5回に2本の3塁打で2点を加えると、7回には3番伊波のこの日3本目のタイムリーが飛びだして7点を挙げる。辛島のボールが悪いようには見えなかったが、試合の中で徐々に自分たちの攻撃のリズムに引き込んでいった。
すると、5回まで7安打を放っていた飯塚打線から後半は徐々に快音も消えていく。カットボール、チェンジアップなど多彩な球種でバットの芯を外す投球の前に、なすすべなく打ち取られていった。このあたりに伊波という投手の引き出しの多さと余裕が垣間見え、点差以上に両投手、両チームの間に大きな隔たりを感じた。
結局、伊波は9回をわずか91球で投げ抜いて完封。四死球0、三振0というある意味理想的な投球で、余力を持って試合を締め、九州屈指の好投手同士の投げ合いを制した。
まとめ
浦添商はその後、好投手・斎藤を擁する千葉経済大付、機動力野球の関東一、田村・只野の左右2枚看板を擁して旋風を起こした慶應義塾と関東のいずれも春夏連続出場の強豪を下し、1997年以来の4強に進出。最後は常葉菊川の集中打の前に散ったが、この大会随一の存在感を示すとともに、沖縄野球の強さを見せつけた。
一方、敗れた飯塚だったが、この甲子園の経験を糧にその後も福岡県内では安定した成績を残し続けた。そして、2012年夏に4年ぶりの出場を果たすと、広島工との強力打線対決を制して、見事甲子園初勝利を達成。4年前のリベンジを後輩たちが成し遂げたのだった。


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