常葉菊川 伊藤慎悟

大会10日目第3試合
2007年夏3回戦
日南学園
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 計 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 1× | 4 |
常葉菊川
日南学園 有馬→中崎
常葉菊川 田中→戸狩
試合前予想
2007年の選抜大会で甲子園初勝利を挙げると、そのまま一気に初優勝を飾った常葉菊川。もともと田中健(DeNA)、戸狩の左腕2枚看板の評価が高かったが、大会が始まるとその強打ぶりが際立った。チーム打率は2割4分台と高くはなかったが、犠打を使わない攻撃スタイルには、相手投手が見せる隙を逃さない鋭さがある。仙台育英・佐藤由(ヤクルト)、今治西・熊代(西武)、大阪桐蔭・中田(日本ハム)、熊本工・隈部、大垣日大・森田と好投手を次々に打ち崩し、優勝を勝ち取った背景には、打撃と走塁に特化したがゆえの強さがあった。
その強さは、夏にかけても持続し、夏の静岡大会も順調に勝ち抜いていく。決勝では前年代表の静岡商の好左腕・大野に対し、中盤まで無得点に封じられていたが、終盤に一挙7得点の猛攻で攻略。改めて、菊川打線の強さを見せつけた。甲子園に来ても勢いは止まらず、初戦となった2回戦では前年8強入りを果たした日大山形のエース阿部をKO。3番長谷川が2本の3ランを放つ活躍を見せ、12-4と大差で初戦突破を果たした。
春夏連続8強入りをかけた3回戦。相手は、九州の強豪・日南学園であった。2年生左腕コンビの有馬(ソフトバンク)と中崎(西武)の2枚看板を、4番中本を中心とした強力打線が援護する好チーム。初戦は神奈川・桐光学園と延長戦に及んだ死闘を9-6で制し、3回戦へ進んできた。大会後に、智辯和歌山・高嶋監督をして「この大会で裏の優勝候補だった」と言わしめた強豪が、選抜王者を倒すべく、立ち向かってきた。
展開
先発は常葉菊川が田中健、日南学園が有馬と両エース左腕が先発。前の試合で不本意な投球だった2年生エース有馬が速球主体の投球で、フルスイングしてくる常葉打線を真っ向から封じ込める。この全盛期の常葉打線を速球勝負で抑えるのだから、相当なレベルである。また、打っても日南打線が選抜優勝投手・田中(DeNA)を圧倒する。角度のある速球をものともせず打ち込み、5番大松、6番中崎のタイムリーなど5安打を集中して3点を奪取。しかも2アウトランナーなしからの連打であり、まさに力攻めで奪った3点であった。
そして、代打へ
試合は、日南学園が3点リードのまま終盤戦へ。常葉菊川は2番手の戸狩が好投し、なんとか食らいつくが、日南・有馬の球威は衰える気配もなく、8回裏を迎えた。この回、先頭の1番高野が2塁打を放つと、2アウト後に4番相馬が四球を選ぶ。町田、前田、酒井、中川と2年生がスタメンに多く並ぶ中、3年生野手陣が意地を見せる。すると、ここで森下監督は代打で2年生の伊藤を起用する。県大会までベンチにも入っていなかった選手だが、ここにきて好調さと天性の長打力を買われての起用であった。
一発出れば同点の場面。日南学園バッテリーはここで直球勝負を選択する。伊藤もフルスイングで応戦し、明らかに直球狙いのタイミングでのスイングをしていたが、有馬は一番自信のあるボールでの勝負を選択した。のちに試合を見ていた高嶋監督が、「なんで変化球を混ぜないのか」と思ったそうだが、当事者にとっては一番自信の直球で勝負したかったのだろう。すると、ファウルで粘って迎えた8球目、インサイド寄りの速球を振りぬいた打球は、左中間スタンドへ飛び込む同点3ランに!土壇場で王者が息を吹き返し、試合はそのまま延長戦に突入した。
迎えた10回裏、日南のマウンドには2番手の左腕・中崎。2番町田の内野安打などで2アウト1,2塁のチャンスを迎えると、ここで打席にはまたしても伊藤が立つ。中崎の速球を今度は基本に忠実にセンターへ打ち返すと、打球は二遊間を破るサヨナラタイムリーに!史上初めてホームランとサヨナラタイムリーを放つ千両役者が、地方大会でもベンチにも入っていなかった2年生から生まれるのだから、高校野球はわからないものである。この活躍でレギュラーに定着した伊藤は、翌年夏の甲子園でも倉敷商戦の逆転3ランや浦添商戦の満塁走者一掃打などなど、大活躍を見せることとなる。


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