2023年選手権準決勝予想 土浦日大vs慶応

2023年

2023年選手権準決勝

土浦日大vs慶応

49%    51%

〇8-3    上田西      〇9-4    北陸

〇3-0    九州国際大付   〇6-3  広陵

〇10-6  専大松戸     〇7-2    沖縄尚学

〇9-2    八戸学院光星

準決勝第2試合は関東勢同士の対決となった。土浦日大の初の決勝進出か、慶応の103年ぶりの決勝進出か。

 

慶応は準々決勝は2年生左腕の鈴木が好投。左腕から緩急を活かした投球で沖縄尚学打線をホームランの2点のみに抑えた。今後の戦いに向けて、エース小宅を休ませる(9回の1イニングのみ)ことができたのは大きな収穫だろう。その小宅は抜群のコントロールを誇り、自ら崩れる心配のない投手だ。連戦による球威の低下も、松井をはじめとした控え投手陣の奮闘により、心配する必要はなくなっている。ショート八木を中心に堅守も光っており、そう多くの失点をすることはなさそうだ。とられたとしても4,5点までか。

対する土浦日大の攻撃陣は、準々決勝で八戸学院光星の速球派左腕2人を攻略。特に6回にスクイズを絡めた攻撃から一気に畳みかけての大量点は彼らの真骨頂と呼べるものであった。決して、際立った能力を持つ打者がいるわけではないのだが、試合の中で攻撃の緩急をつけるというか、攻めどころを逃さずに、機動力や小技も絡めて一気に畳みかける様は、かつての取手二や常総学院といった優勝チームを思い起こさせるものがある。準々決勝で4打数4安打を放ち、今大会2ホームランの5番松田を筆頭に乗りに乗った時の土浦日大の集中打を慶応投手陣がいかに出さないようにできるかがカギとなる。

 

一方、土浦日大は伊藤をはじめとした控え投手陣が先発して試合を作り、エース左腕の藤本がリリーフで試合を締めくくるパターンを確立してきている。伊藤は内外にきっちり投げ分けることができ、テンポのいい投球で、試合序盤の流れを作れる。左腕から緩急を武器に抑える藤本とタイプが異なるため、彼らの継投は非常に効果的と言えるだろう。藤本はスライダー、チェンジアップを武器に、タイミングを外す投球で相手打線を翻弄でき、準々決勝でも一時捕まりかけたように見えながら、終わってみれば最後まで投げぬく頼もしさを見せた。問題は、継投のタイミングか。これだけは慶応打線を相手に小菅監督も間違えないようにしたい。

対する慶応打線は3回戦で広陵・高尾、準々決勝で沖縄尚学・東恩納と大会屈指の右腕を攻略して勝ち上がってきた。準々決勝では5回まで相手の変化球攻めに翻弄されていながら、6回に入って相手の力みが見えたところを一気に逃さず、大量6点を奪取。相手の失投を逃さず、しかも長打にできる打力の高さは、さすが激戦区・神奈川の代表である。俊足でかき回す1番丸田、準々決勝で逆転打を放った4番加藤、勝負強い5番延末と役者のそろった打線は、4強のどこと比較しても引けを取らないだろう。当たりの止まっていた3番渡辺千に準々決勝の最終打席で1本が出たのも好材料だ。

 

単純な「打」力という点では、やはり慶応に一日の長があり、投手力の面でもわずかに慶応が上のように感じる。しかし、土浦日大にはそんな力の差を簡単にひっくり返す、「ペース争いを制す」うまさがある。先行しても先行されても、いつ何時飛び出すかわからない土浦日大の集中攻撃を常に気にしながら、慶応は戦うことになるだろう。タイプの違う関東の強豪同士のマッチアップ。非常に面白い試合となりそうだ。

 

主なOB

土浦日大…大西忠(阪急)、工藤一彦(阪神)、田中毅彦(ヤクルト)、小山田保裕(広島)、神戸拓光(ロッテ)

慶応…山本泰寛(阪神)、矢崎拓也(広島)、木澤尚文(ヤクルト)、柳町達(ソフトバンク)、正木智也(ソフトバンク)

 

神奈川  茨城

春  0勝   0勝

夏  4勝   1勝

計    4勝     1勝

対戦はすべて夏。1958年に水戸商が法政二を5-1で下して勝利を挙げたが、その後は神奈川勢が4連勝している。ちなみにこの代を見て、法政二に入ってきたのが、のちに夏春連覇を成し遂げる柴田勲(巨人)たちの世代である。

1974年は当時1年生だった原辰徳(巨人)を擁する東海大相模と、プロ注目の剛腕・工藤(阪神)がけん引する土浦日大という強豪同士が、初戦で激突した。

1点を争う接戦となった試合は、1-2と1点ビハインドの9回裏に東海大相模が2アウトランナーなしからヒットと盗塁でチャンスを築くと、起死回生の同点タイムリーが飛びだして試合は延長戦に突入する。両者譲らずに迎えた延長16回裏、相手の犠打処理のミスにも付け込んで、1アウト満塁と攻め立てた相模は、3番園田にサヨナラタイムリーが飛び出してゲームセット。原貢監督との親子鷹として注目された、東海大相模時代の幕開けは、劇的なサヨナラゲームであった。

現在4連勝中の神奈川勢が5連勝を飾るのか、あるいは茨城勢が久々の勝利を挙げるのか、注目の戦いが今、始まる。

大会No.1投手(1974年選抜) 工藤一彦(土浦日大) | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

第56回(1974年)全国高校野球選手権大会 2回戦 東海大相模 対 土浦日大(音声のみです。) – YouTube

思い出名勝負

2012年選手権2回戦

常総学院

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 0 0 2 0 3 0 5
0 1 2 0 2 2 0 0 × 7

桐光学園

 

常総学院  菅原→伊藤→飯田

桐光学園  松井

2012年の甲子園は決勝カードが春夏連続で大坂桐蔭vs光星学院となり、この2校が抜けた存在で会ったのだが、こと夏の甲子園において、前半戦の主役と呼べる存在だったのが、桐光学園・松井裕樹(楽天)であった。

桐光学園は21世紀になってから、甲子園にたびたび姿を現すようになった新興勢力。野呂監督に率いられ、洗練された野球で瞬く間に神奈川の上位常連になったのだが、この年の出場はまた特別であった。というのも、1998年の松坂大輔を擁した横浜高校の春夏連覇以降、神奈川の代表校は「横浜高校」か「横浜高校を直接倒した高校」が出場する法則が成り立っていたのだが、桐光学園の出場したとき(2002年、2005年、2007年)は、反対の山で横浜が敗れ、桐光学園が出場する形となっていたのだ。そのため、桐光学園が出場した際も、「横浜が負けてくれたから」と口の悪いファンが言うケースもあった。逆に言えば、それだけ対横浜高校を苦手としていたのだ。

しかし、2012年夏は、前年夏の横浜との決勝戦でのサヨナラ負けを経験したメンバーが残り、2年生エース松井を擁して、雪辱を晴らす戦力が整っていた。松井だけでなく、主軸を打つ植草・水海など2年生が多いチームだったが、その脇を女房役の宇川、主将の田中、核弾頭・鈴木といった頼れる3年生が脇で支え、神奈川大会を着実に勝ち上がっていった。そして、迎えた神奈川の準々決勝では、横浜とのリベンジマッチに。好投手・柳(中日)を終盤に打線が攻略し、松井が横浜の反撃をしのいで4-3と勝利!見事リベンジを達成し、勢いそのままに優勝を飾った。出場4回目にして初めて、横浜高校を下しての甲子園出場を成し遂げたのだ。

そして、甲子園初戦、それまで好投手の一人という位置づけだった松井裕樹が一躍脚光を浴びることとなる。四国の強豪・今治西を相手に松井のスライダーが猛威を振るい、なんと1試合22奪三振の大会新記録を達成。前人未到の数字もさることながら、およそ高校生では打てないのではないかと言われた、そのスライダーの威力は高校野球関係者を絶句させた。このボールを一体どこのチームが攻略するのか、大会の焦点はその1点に絞られつつあった。

その桐光学園と2回戦で対戦することになったのが、茨城・常総学院。泣く子も黙る関東の強豪、名門校である。名将・木内監督に率いられ、創部間もないころから甲子園で上位常連となったチームは、2001年選抜・2003年夏と2度にわたって全国制覇を達成。「柔よく剛を制す」チームカラーで、相手の特徴を見極めて、その良さを消し、気づけば自分たちのペースに引き込むという試合巧者ぶりは際立っていた。

ところが、木内監督が勇退すると、甲子園には出場するものの、なかなか勝てない時期が続いてしまう。同じく名将の持丸監督が就任したが、2006年は今治西の猛打に屈し、2007年は京都外大西との投手戦の末に惜敗。2008年からは再び、木内監督が就任するも、同年は関東一に、2009年は九州国際大付の前に力負けする格好となった。印象として、2000年代中盤以降、急速に投打ともパワーアップした高校球界の流れを前に、「うまく相手の力をいなす」常総の野球が通用しきれなくなっている感は否めなかった。

常総学院は2011年夏をもって木内監督が2度目の勇退(ちなみにこの年もかなり力のあるチームであった)。2012年から取手二時代の教え子で優勝メンバーの佐々木力監督が就任した。木内監督時代の良さを継承しながら改革に着手したチームは、4番捕手の杉本を中心に総合力の高さを見せ、3年ぶりに茨城大会を制覇。豊富な投手陣と2年生の好打者の高島、内田(楽天)を中心とした打線がかみ合い、強い常総が戻ってきたと感じさせた。初戦は大分・杵築に対して、大量14点を奪い、4投手の完封リレーで大勝。順調に2回戦はコマを進めてきた。

 

関東勢同士のマッチアップとなった好カード。焦点はもちろん、「松井裕樹を常総打線がどう打つか」であった。しかし、試合が始めると活発だったのは、桐光学園打線であった。

松井裕樹は初回から140キロ台中盤の伸びのある速球と曲がりの大きいスライダーが威力を発揮し、常総打線を翻弄。1回から3回まで常総の攻撃を9人で片付け、7三振を奪うという快刀乱麻の投球を見せる。初戦の22三振を受けて、「本物なのか?」と懐疑的な目を向けていた野球関係者も完全にその実力を認めざるを得ないピッチングである。

エースの投球でリズムを得た桐光学園打線は、2回に相手の守備のほころびに付け込んで先制点を挙げると、ここから主将・田中が大活躍を見せる。3回裏に右中間にタイムリー3塁打を放って追加点を挙げると、5回裏にも、今度は2点タイムリーで、2安打3打点とチームを牽引。下級生主体と言われてきた中で、最上級生キャプテンが存在感を放った。

これに対し、序盤真っすぐ狙いで松井攻略にかかるも、どうしてもボールになるスライダーに手が出てしまう常総学院。見極めようとするのだが、桐光の正捕手・宇川も常総の打者が振りやすそうな高さに松井のスライダーを要求。4回に3番内田に初ヒットが出たものの、5回を終了して1安打で毎回の10三振を喫する。ここまでは完全に桐光学園のペースで試合が進行する。

しかし、同じ関東のライバルとしてこのまま引き下がるわけにはいかない常総が、グラウンド整備を終えた6回に牙をむく。9番伊藤が四球を選ぶと、犠打で二進。ここで2年生ながらチーム随一の打撃技術を持つ2番高島がアウトコースの速球を完ぺきにとらえる。左打席から流し打った打球は左中間を真っ二つに破るタイムリー3塁打となり、松井に今大会初の失点をつける。さらに、3番内田の打席で暴投が飛び出し、この回2点目。試合の行方が分からなくなってくる。

ただ、この直後の守りで、常総学院もエース菅原が捕まってしまう。1番鈴木、2番宇川の上級生コンビが連打を放つと、犠打で2,3塁となって失策と犠飛で2点を献上。この日の常総は継投でうまく相手をかわし切れなかったこともあるが、2つの失策や四死球などミスを着実に得点に結びつけた桐光打線のうまさが一枚上手であった。しかし、常総も3番手の飯田が落ち着いた投球で試合を締め、その後はなんとか無失点でしのぐ。

2-7と5点のビハインドを背負った常総。得点を挙げたとはいえ、このままでは松井攻略とは呼べない。意地を見せたい8回表、再度、桐光の若き左腕に襲い掛かった。

先頭の8番田山はこの日15個目となる三振を奪われて1アウトとなるも、9番伊藤がラッキーな内野安打で出塁。1番大崎が四球でつなぐと、2アウト2,3塁となって、打席には3番内田が入る。チーム一のパワーを誇る2年生の3番打者は、試合前の松井裕樹対策の通り、「打席の一番後ろに立ち、前に出ながら変化球の曲がりっぱなを叩く」打撃を実践。これがセンターへ抜ける2点タイムリーとなり、4点目を挙げる。さらに続く4番杉本も間髪入れずに速球を今度は左中間にはじき返し、送球間に2塁に進んでいた内田が生還。常総の力を見せつける攻撃で松井裕樹に5失点をつけた。

ただ、やはり前半に背負ったビハインドが大きすぎたか、最終回はフルスロットルで投げる松井裕樹に2三振を喫して試合終了。互いの良さが充分に出た関東対決を制し、桐光学園が3回戦へ進出した。

 

桐光学園はその後、3回戦で浦添商も4-1と撃破。ノーステップ打法で挑んできた相手を打たせて取る投球でかわし、春夏通算5度目の出場で初めて8強まで進出した。準々決勝では田村(ロッテ)、北條(阪神)を擁する光星学院を前に散ったが、今大会4試合で68奪三振と圧倒的な成績を残した松井裕樹は一躍スターダムにのし上がった。今や楽天イーグルスの押しも押されぬストッパーとなったのは周知の事実だが、やはり原点は、あの2012年に数々のジンクスを打ち破って甲子園ベスト8までたどり着いたチームなのは間違いないだろう。

一方、常総学院も敗れはしたものの、そして19三振を喫しはしたものの、今大会松井裕樹から最も多くの得点を挙げた攻撃は見事であった。前半戦は苦戦したが、後半は積み上げてきた対策が実を結び、5点を奪取。ここ数年苦戦していたイメージを吹き飛ばす活躍を見せた。翌年には、この2012年夏を経験した高島、内田(楽天)、エース飯田を中心に8強に進出。2016年にも好左腕・鈴木(ロッテ)を擁して再び8強入りと、完全復活を成し遂げた。その後、昨年の明秀日立や今年の土浦日大のように、その他の勢力も台頭して、茨城の高校球界がさらに活性化されてきており、再びその強さを取り戻しつつある。

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桐光学園 松井裕樹投手・19K(常総学院戦・第94回選手権) – YouTube

 

 

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