2023年選手権準決勝予想 仙台育英vs神村学園

2023年

2023年選手権準決勝

仙台育英vs神村学園

52%    48%

〇19-9   浦和学院   〇10-2    立命館宇治

〇8-2     聖光学院   〇11-1  市立和歌山

〇4-3     履正社    〇10-4    北海

〇9-4     花巻東    〇6-0      おかやま山陽

2015年の選抜大会以来となる両校の対戦。攻撃力の高い両チームの対戦だが、長打力・投手層の厚さでやや仙台育英が有利と言えるだろう。

 

仙台育英は豊富な投手陣でつなぎ、全員に疲労の色が濃くない状態でここまで勝ち上がってきているのが大きい。中でも、湯田が3回戦までの不調を乗り越え、準々決勝で好投を見せたのは非常に大きいと言えるだろう。もう一人の柱である高橋は準々決勝で完全に温存することができており、準決勝以降も、おそらくストッパーとしてしっかり試合を締めることができそうだ。その他にも、2年生左腕の田中・武藤のコンビや経験豊富な左腕・仁田もおり、質量ともに投手陣は充実。4強入りしたチームのなかでも最も余裕を持って試合に入れそうだ。

対する神村学園打線は、連続2桁得点は準々決勝でストップしたものの、4試合連続で2桁安打を記録しており、好調を維持。気迫のこもった打撃をする、主将の1番今岡歩が出塁し、2番増田が送って、中軸で返すのが理想のパターンだ。中でも、2年生ながら4番にどっかり座る正林、打率6割越えと絶好調の6番上川床の2人の左打者がチームの得点源となっている。これまで右投手との対戦が多く、仙台育英の左投手が先発した場合に、正林・上川床を中心とした左打者陣がいかに外へ逃げるスライダーに対応するか、また準々決勝であった走塁ミスをどれだけ修正できるかがカギになってくるだろう。湯田、高橋の2人に対してはまずストレートを強いスイングではじき返せるかが焦点になってくる。

 

一方、神村学園はこれまで右の松永、左の黒木の左右2枚看板を中心とした投手起用で4試合を戦い抜いてきた。準々決勝では松永から黒木へのリレーでおかやま山陽打線を完封。投手陣は上り調子だ。松永は右スリークオーターからコントロールよくアウトコース低めに集める投球が持ち味。安定感ある投球はできるが、右打者のインサイドへの投球はやや投げにくそうであり、外に集まったところで、ボールを振らせる投球ができるかがカギになる。右打ちで攻略されそうな空気が出てきた場合は、早めに黒木への継投をした方がいいだろう。その黒木は抜群の切れ味を誇るスライダーを武器に今大会4試合を投げて1失点。神村学園が打倒仙台育英を掲げるうえでも最も重要な選手と言える。リードを奪って彼への継投ができれば、勝利が近づいてくるだろう。

対する仙台育英打線は、準々決勝でも花巻東のタイプの違う投手を次々に攻略し、4試合で40得点と絶好調。特に対右投手に対しては、抜群の強さを見せており、塁上からの機動力・逆方向への打席でほとんどの投手を攻略してきた。左投手に対してはやや苦戦するようなキライもあったが、花巻東との試合では5番尾形が左の軟投派の葛西に対して、逆方向へ打ち返すレフトポールへの一発を放ち、試合を決定づけた。絶好調の1番橋本、3番湯浅を中心に、上位から下位まで切れ目がなく、「そのボールを外野の頭超すの?」と思ってしまうような長打を打てる選手が揃っている。相手投手のちょっとしたスキや継投機の遅れがあれば、瞬く間に試合を決めてしまうだろう。

 

仙台育英の優勢が予想される中、神村学園としては中盤までなんとか小差で食らいついて、「ジョーカー」的存在の左腕・黒木につなぎたい。打線に関しては、神村学園も好調を維持しているだけに、投手の枚数の多い仙台育英に対して、好球必打で仕掛けていって、相手の継投を後手に回していきたいところだ。2015年の選抜では12-0と大差で仙台育英が勝利している両校の対戦。神村学園のリベンジなるか、仙台育英の2年連続の決勝進出か、注目の準決勝第1試合の幕が切って落とされる。

主なOB

仙台育英…大越基(ダイエー)、金村暁(日本ハム)、佐藤由規(ヤクルト)、佐藤世那(オリックス)、平沢大河(ロッテ)

神村学園…野上亮磨(西武)、羽月隆太郎(広島)、渡邉陸(ソフトバンク)、桑原秀侍(ソフトバンク)、泰勝利(楽天)

 

宮城  鹿児島

春  1勝   2勝

夏  2勝   1勝

計    3勝     3勝

対戦成績は春は鹿児島勢が、夏は宮城勢がリード。

1993年の選抜では鹿児島商工(後の樟南)と東北の伝統校対決が実現。鹿児島商工は福岡-田村(広島)の2年生バッテリーが東北打線を伸びのある真っすぐと、スライダー・カーブで翻弄する。大会一番乗りとなる完封勝利を挙げた鹿児島商工が、東北を4-0で下し、出場5回目で初の8強入りを決めた。なお、東北高校には後に広島カープで赤ゴジラとおされられた嶋重信が2年生で在籍していた。

一方、夏の大会では平成元年に仙台育英と鹿児島商工が対戦。ともに春夏連続出場校同士であったが、仙台育英はエース大越(ダイエー)を打線が援護し、大量7点をたたき出す。しかし、実力校の鹿児島商工も最終回に大越に食らいつき、1番大西(中日)のタイムリー3塁打などで3点を返し、大越をタジタジにさせた。試合は7-4で仙台育英が勝利したが、試合後に名将・竹田監督は大越に雷を落とした。これで奮起した大越は、2回戦で選抜4強の京都西を1安打で完封すると、準々決勝では選抜で敗れていた上宮にもリベンジを達成。この大会、宮城県勢として初となる決勝進出を果たすこととなる。

過去に幾たびも好勝負を演じてきた両県の対戦。準決勝での顔合わせは初となるが、決勝への片道切符をつかみ取るのはどちらになるか、、、

思い出名勝負

2012年選抜1回戦

神村学園

1 2 3 4 5 6 7 8 9
1 1 0 2 5 0 0 0 0 9
0 0 0 5 0 0 0 0 0 5

石巻工

 

神村学園   平藪→柿沢

石巻工    三浦→阿部剛

 

東日本大震災から1年が経過するも、まだ復興の最中だった2012年選抜。その状況下で、21世紀枠として選出されたのが、被災地からの代表・石巻工であった。練習環境もなかなかままならない中で、選手たちは復興活動にも協力。主将兼捕手の阿部人、カーブを武器とする長身右腕・三浦のバッテリーを中心に、新チームは秋の宮城大会をしぶとく勝ち上がり、宮城大会で準優勝を達成する。

東北大会では初戦で田村(ロッテ)、北條(阪神)を擁する光星学院に大敗したものの、献身的な加活動とチーム力が評価され、石巻工は選抜切符を手にする。阿部人主将は開幕日に選手宣誓(大会運営から打診された)も行い、チームは復興のシンボルとして、大きな期待を背負って甲子園に乗り込んできた。

しかし、その石巻工の初戦の相手は、なんと九州王者の神村学園である。前年夏、3季連続種つじょゆを狙っていた大本命の鹿児島実がまさかの敗退を喫する中、4年ぶりに代表切符を獲得。甲子園では初戦敗退に終わったものの、エース柿沢(楽天)を中心に多くのメンバーが残ったチームは、安定した戦いで鹿児島大会・九州大会を勝ち抜いていった。

本格派右腕の柿沢、技巧派左腕・平藪のタイプの違う左右2枚看板に加え、打線も俊足の1番新納を筆頭に足のある選手が多く、機動力豊かな打線を形成していた。決して、長打が多く出るチームではなかったが、秋の九州大会決勝では九州学院の好左腕・大塚(楽天)を1イニング8得点の速攻で沈め、九州の頂点をつかみ取った。九州王者として臨んだ神宮大会では、初戦で優勝した光星学院にサヨナラ負けを喫するも、土俵際まで強豪を追い詰め、本大会でも優勝候補の一角に名を連ねていた。

 

試合前は、九州王者・神村学園の優位を予想するものがほとんど。序盤はその予想通り、神村ペースで試合が進んでいく。

初回、俊足の1番新納が死球で出塁すると、さっそく盗塁を敢行。1アウト後に打撃もいい先発・平藪がタイムリーヒットを放ち、1点を先行する。2回にも四球で出たランナーを犠打で送り、下位打線の核である8番中野がタイムリー。いずれも1ヒットで1点を積み重ねるという神村学園らしい機動力野球で試合をリードする。

神村学園の先発・平藪は左腕から内外に丁寧に投げ分ける投球で、内野ゴロの山を築く投球。1回に石巻工は3番阿部人にチーム初ヒットが飛び出すも、チャンス拡大はならず。淡々とアウトが積み重なっていく形で、ディフェンス面でも神村学園がなかなかスキを見せてくれない。

すると、2-0で迎えた4回表には先頭の6番瀬口にヒットを許すと、犠打で二進。ここで8番中野のセカンドゴロがエラーを誘う形となり、さらにピンチが広がる。このチャンスを試合巧者の神村学園が逃すはずもなく、盗塁で2,3塁となると、ラストバッターの二河がタイムリーヒットを放って2者が生還。点差は4点に広がり、これは勝負あったかという雰囲気も流れ始めていた。

ところが、ここから被災地の思いを背負った石巻工が素晴らしい反発力を見せる。

4回裏、2番斎藤が右中間への3塁打で出塁すると、平藪の投球がやや単調になったこともあり、石巻工打線との波長が合い始める。3番阿部人がセンターへの痛烈なタイムリーを放って、甲子園初得点を記録。球場は石巻工の応援一色の雰囲気となる。続く4番三浦が死球でつなぐと、6番遠藤・7番阿部克と連打が続いて2-4。追いすがる石巻工の前に九州王者もたじたじになっていた。

そして、なお1アウト満塁の場面で迎える打者は8番伊勢。ここで平藪は狙い通りに内野ゴロを打たせるのだが、これをショート二河がまさかのトンネル。打球が左中間を転々とする間に満塁のランナーがすべてホームに生還し、石巻工が一気に試合をひっくり返した。まさに起死回生の大逆転劇。甲子園球場の石巻工のスタンドはお祭り騒ぎとなった。

ただ、この攻撃でエース三浦が手に死球を受けたことが直後の守りで響く形に。制球が定まらない中、3番平藪のヒットの後に四球を連発。失策も絡み、神村打線が打者一巡の猛攻で一挙5点をたたき出した。石巻工に5点を返された直後に、すぐにそつなく取り返すあたりは、さすが九州王者の面目躍如といったところだった。

試合は、その後、神村の2番手・柿沢の力の投球の前に石巻工打線が沈黙。石巻工も2番手・阿部剛が無失点で踏ん張り、5-9のまま試合は進んだが、跳ね返すまでには至らなかった。石巻工の健闘を球場全体が讃える中、神村学園が貫禄を示し、2回戦へコマを進めた。

 

神村学園はその後、2回戦で健大高崎の機動力野球にかき回され、1-3と惜敗。夏も連続出場を果たすが、秋に敗れた光星学院へのリベンジならず、3回戦で4-9と敗退した。投攻守に非常に総合力が高く、この年の九州では最強と呼べるチームだったが、やはり全国の舞台で勝ち続けるのは簡単でないと感じさせられる結果となった。

一方、石巻工は敗れはしたものの、大健闘を見せ、被災地の方たちを大いに喜ばせる戦いを見せた。逆境にいる中でも決してあきらめない姿勢を貫いた戦いが、多くの方に勇気を与えたのは間違いないだろう。白星こそならなかったものの、歴代の21世紀枠の中でも、最も大きなインパクトを残したチームの一つであった。

【好投手列伝】鹿児島県篇記憶に残る平成の名投手 2/2 | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

神村学園vs石巻工業 ダイジェスト(第84回選抜・1回戦) – YouTube

コメント

タイトルとURLをコピーしました