2024年選手権3回戦 大社vs早稲田実(11日目第4試合)

2024年

大会11日目第4試合

早稲田実

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
0 0 0 0 0 1 1 0 0 0 0 2
1 0 0 0 0 0 0 0 1 0 3

大社

 

早稲田実  中村→川上

大社    馬庭

ベスト8最後の椅子を争ったナイトゲームは、1点を争う好ゲームとなり、タイブレークに突入。大社が延長戦の攻防をエースのバットでものにし、2024年度大会のベストバウトと言っても過言でもない好ゲームを制して8強入りを決めた。

試合

大社はこの試合ももちろん絶対的エースの左腕・馬庭が先発。一方、早稲田実も2回戦で延長10回を完封と覚醒した2年生左腕・中村をマウンドに送った。

馬庭に対し、試合前に和泉監督はカウントを整えに来るアウトコースの速球を狙うべく指示を出していた。高めの速球には球威があるが、そこを打ちにいかなくては馬庭攻略はならない。

1回表、いきなり1番三澤は高めの速球にどん詰まりの内野フライに。強打の2番宇野も速球の前に三振に切って取られる。ただ、ここから3番高崎が高めのスライダーをうまくライト方向へテキサス性のヒットにすると、4番石原は真ん中に入った速球を痛烈にライトへ引っ張る。このあたりはさすが早実の4番だ。チャンスを迎え、打席には当たっている5番捕手の山中。だが、スローカーブを交えた緩急に翻弄され、最後は速球に詰まってライトフライに。立ち上がり、馬庭が無失点で切り抜ける。

その裏、1回戦の報徳学園戦と同様に、大社が初回からスタートダッシュをかける。1アウトから俊足の2番藤江がアウトコースのスライダーを踏み込んでレフトへ流し打つ。3番石原はエンドランをかけ、その間に藤江が2塁へ。続く4番高梨の当たりは平凡なサードゴロになるが、2塁ランナーと少し接触した関係で1塁への送球がそれてしまう。2アウト1,3塁となり、打席には5番下条。大声援の中、やや甘く入った速球をとらえた打球は、ライトへのタイムリーに!大社が貴重な先制点を奪う。下条は1回戦に続いての殊勲打だ。

リードをもらった馬庭は、2回表にも先頭の6番國光にストレートをとらえられ、ライトへのヒットを許す。馬庭の伸びのある速球に対し、早実の各打者はバットを一握り短く持って対応している。犠打で1アウト2塁となるが、ここは打順が下位。馬庭の力のある速球の前に詰まらされる打撃となってしまう。2回戦はやや本調子ではないように見受けられた馬庭だが、この日はストレートの伸びが戻り、特にアウトコースいっぱいのボールで簡単にカウントを整えていく。

一方、早実の中村は2回裏に連続四球を与えたように、こちらはやや制球に乱れがある。ただ、もともと荒れ球が持ち味の投手であり、こちらもストレートを前にして明らかに大社の打者が振り遅れている。球持ちのいいフォームであり、タイミングが差し込まれているのだろう。大社の打者もノーステップで打つなど工夫は見せるが、チャンスを生かし切ることができない。

両左腕の好投で試合は静かに進行。3回、4回とランナーは出てもあまり得点の気配は漂ってこない。両チームの内外野も堅守で支え、投手戦の様相を呈していく。5回裏、大社は1アウトから2番藤江、3番石原がいずれもストレートをとらえ、連打でチャンスメーク。打者3巡目に入って速球にタイミングが合い始めるが、フルカウントからエンドランをかけての4番高梨の打球はセカンドライナーに。飛び出したランナーはもちろん戻れずに併殺。1-0のまま前半戦を終了する。

ただ、大社の攻撃はランナーが出ると、エンドランなどを執拗に仕掛けて中村にプレッシャーをかけていた。5回を終えて球数は90球越え。この序盤のボディーブローのような攻撃が、試合の行方を左右することになるとは、前半を終えて誰もわかってはいなかった。

グランド整備を終え、仕切り直しとなった後半戦。ここまで、馬庭の速球の前にわかっていても詰まらされることが多かった早実打線。しかし、目の慣れ始めた6回表、攻略にかかる。

この回、先頭の2番宇野は高めの速球に空振り三振に取られるが、初回に連打を放った3番高崎、4番石原のコンビがいずれも速球をとらえて連打を放つ。この二人はしっかりと馬庭の速球に対してタイミングが取れている。続く5番山中には馬庭が痛恨の死球を与え、満塁となると、6番國光のセカンドゴロの間に3塁ランナーが生還。セカンド高橋翔のダイビングキャッチでヒットは阻止したが、試合はタイスコアに戻った。

中盤に入り、馬庭の速球に的を絞って打席のホームベース寄りに立ってインコースを消しに来た早実打線。強打を誇る伝統校が好左腕に対して徐々に対応し始めていた。そして、グランドに照明の入った7回表、大社に痛恨のプレーが出てしまう。この回、先頭の8番内囿馬庭のカウント2-2から速球を素直にセンターに返す。すると、この打球をセンター藤原が後逸。打球がフェンス際まで転がる間に一気にランナーが生還し、思わぬ形で早実に勝ち越し点が入る。

その裏、早実の中村は先頭の8番園山に死球を与えてしまう。犠打は失敗に終わるが、2アウトから2番藤江がカーブをとらえてヒットでつなぎ、同点のチャンスを迎える。ここで3番石原の打席に暴投も飛び出し、2アウト2,3塁と一打逆転のチャンスに。しかし、石原はストレートにやや差し込まれ、センターフライに打ち取られて2者残塁。早実が2-1とリードのまま、試合は最終盤へ突入する。

ただ、早実にとって誤算だったのは、7回で中村の球数が120球を超え、左手中指のまめも潰れていた。和泉監督は8回から右腕・川上への継投を決断。早実としては、少し不安を抱えたまま、最終回を迎える。まだ、この試合は何かがある。球場全体にそんな予感めいた雰囲気もあったかもしれない。その流れに輪をかけるように、馬庭が8回、9回と気迫の投球で早実の攻撃を3者凡退に。1点ビハインドながら、大社よりのムードで局面は9回裏を迎えることとなる。

その9回裏、先頭で打席に入るのは、ここまでチームを牽引してきた馬庭。アウトコースの速球を引っ張った打球はセカンドへのゴロ。内囿が好捕し、厳しい体勢から1塁へ送球したが、これが悪送球となって無死2塁に。さらに、8番園山の犠打を今度はバッテリーが見合ってしまい、無死1,3塁と逆転サヨナラのランナーも出ることとなる。これまで応援団の大声援をバックに甲子園を味方につけてきた早実だったが、この日は大社の大応援団の迫力を前に初めてアウェイの雰囲気を感じ取っていたかもしれない。続く9番高橋翔が3塁戦へ見事なスクイズを成功!送球もそれてオールセーフとなり、土壇場で試合が振り出しに戻る。

1番藤原はきっちり犠打を決め、1アウト2,3塁に。スクイズでも微妙な当たりの内野ゴロでもサヨナラの場面。しかも、打席にはこの日3安打の藤江である。だが、ここで早実の名将・和泉監督が思い切った策に打って出る。レフトを1年生の西村に変更すると、そのまま投手の横を守らせるというスクイズ封じの守備体系を見せる。1995年夏に観音寺中央が日大藤沢を相手に同じような場面で見せた、アグレッシブな守備。相手打者にフォーメーションで圧をかける。

守備に後押しを受けた川上は、思い切って腕を振り、速球を投げ込むと、インサイドのボールに詰まらされた藤江の打球は、その西村の前に。西村がしっかり1塁へ送球すると、その間にホームを狙った3塁ランナーを國光が好送球で刺し、ダブルプレーに!お互いに見どころ満載の9回裏の攻防が終わり、2-2でタイブレークへと投入した。

10回表、無死1,2塁で早実は9番灘本がサード前へバント。だが、これをブルドッグ守備で前進したサード園山が3塁送球で封殺し、貴重な1アウトを奪う。さらに続く1番三澤の犠打も捕手前の弱い打球になり、再びサード封殺。早実にとっては痛いミスとなる。後続を馬庭が抑えて、早実は無得点。一方、大社も10回裏に先頭の3番石原に犠打を命じるが、これを今度は早実のファースト國光が前進してさばき、3塁封殺。互いに相手の犠打を鍛えられた守りで封じ、両者譲らずに、11回の攻防へと移っていった。

11回表、早実の打順は、この日2安打と当たっている3番高崎から。先ほどの回に犠打を2回失敗しており、この場面は高崎を信じて強攻策に出る。しかし、結果はサードゴロでサード園山が3塁を踏んで、そのまま1塁へ送球。併殺となり、一気に2つのアウトがスコアボードに刻まれる。過去の甲子園で神がかった戦いを見せ、こういう戦いはことごとくものにしてきた早実だったが、この日は勝負所で打つ手がはまらない。後続も馬庭が打ち取り、無得点でいよいよ明暗を分ける11回裏を迎えた。

そして、11回裏、大社の先頭打者は代打の安松。普段は控え捕手だが、犠打の得意な選手であり、攻撃開始前に石飛監督が「ここで行きたい人は手を挙げて」という場面で、迷わず手を上げた。強心臓を持つ2年生は打席に入ると、転がした打球は3塁線へ。取っても間に合わないタイミングで絶妙なコースをたどる内野安打となり、無死満塁のビッグチャンスに!途中出場の選手が見せたビッグプレー。地鳴りのような歓声が響き、早実を飲み込んでいった。

続くのはここまで一人で投げぬいてきた7番馬庭。早実の川上は明らかに気圧されている様子だった。カウント1-2からの4球目、速球をとらえた打球は、川上の足元を抜けてセンターへのサヨナラタイムリー!大社が激闘を制し、93年の時を経て選手権ベスト8へとコマを進めることとなった。

まとめ

大社は、終盤の攻防を制し、ついに8強入り。馬庭の好投、終盤の好守備の連発、途中出場で決めた絶妙なバントと、神の宿る県の代表がまさに神がかったプレーを見せ続けた。7回にセンター藤原の後逸で勝ち越し点を許したが、そのミスをチーム全員で取り返した、素晴らしい逆転劇であった。また、エース馬庭はこの日も伸びのある速球を武器に好投。強打の早実打線を相手に11回を投げて7安打に封じ、雄たけびを上げる気迫の投球で味方にムードを呼び込んでみせた。

初戦で選抜準優勝の報徳学園を倒し、2,3回戦は常連校を相手に2試合連続でタイブレークの攻防を制しての快進撃。ちなみに、早稲田実が夏の甲子園で西日本のチームに敗れたのは、あのやまびこ打線の池田戦以来、実に42年ぶりの出来事でもあった。数々のジンクスを打破した島根の古豪が、2024年の甲子園の主人公に躍り出た、そんな印象の試合であった。

一方、早稲田実も敗れはしたものの、投攻守にわたって素晴らしいプレーを見せた。この好試合を演じたもう一人の主役であり、試合後に勝った大社の選手をたたえる和泉監督の姿は、まさに「good loser」そのものであった。終盤は目まぐるしい展開となったが、9回裏に見せた守備シフト、10回裏のバント処理は、早実野球の底力を示したものだったと言えるだろう。

打線は、試合前から馬庭対策を講じており、3番高崎、4番石原は計5安打を放った。ただ、惜しむらくは、ほとんどの場面にてランナーなしで彼らを迎えることとなったこと。特にキーマンの2番宇野が無安打に封じられたのが痛かったか。しかし、これは馬庭を褒めるしかないだろう。それだけ彼のピッチングが素晴らしかったのだ。

この大会はベスト8を前に姿を消したが、久々の甲子園で存在感を見せた早実。出場すると強い伝統校の底力は健在なことを証明した2024年の夏であった。

早稲田実―大社 9回裏【第106回全国高校野球選手権大会】 (youtube.com)

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