大会3日目第1試合
花咲徳栄
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 3 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 2 |
東洋大姫路
花咲徳栄 黒川
東洋大姫路 下山→大野

23年前に延長引き分け再試合、また延長戦を戦った両チームの対戦は、またも終盤にもつれる展開に。好走塁で決勝点をたたき出した花咲徳栄が、2003年のリベンジを果たす形で2回戦進出を決めた。
試合
東洋大姫路は昨秋にエース格でチームを牽引した左腕・下山が先発。大会前に発売される雑誌ではメンバー登録がされておらず、故障などによる離脱が懸念されたが、本戦で戻ってきた。一方、花咲徳栄は長身右腕の黒川が先発。こちらは満を持しての登板だっただろう。
打力では花咲徳栄に分があると思われた試合前。だが、姫路の下山が好投を見せる。短いテークバックから繰り出すキレのある変化球を前に、昨秋の関東大会では9点差をひっくり返した強力打線が沈黙する。実戦で一番捕まえるのに苦労するタイプの投手であり、序盤から淡々とアウトを積み重ねていく。2回にはエンドランが併殺となってしまうなど、もう一つ攻撃がかみ合わない。
むしろ、序盤に攻勢をかけたのは姫路の方であった。昨秋の段階では打力にかなり不安を感じさせる内容だったが、一冬を超えて名将・岡田監督の指導の下、確実にレベルアップした様子だ。各打者の振りが一様に鋭くなっている。2回裏には7番浜根が右中間に落ちる幸運な2塁打で出塁すると、8番実光も変化球をうまくとらえてレフトへヒット。9番萩原がいい当たりのセンターフライに取られて得点はならなかったが、黒川の角度のあるボールにもしっかり対応していた。
試合は、0-0で中盤戦へ突入。打者一巡し、下山を花咲徳栄打線がとらえるかと思ったが、まだその気配がない。左腕から右打者のインサイドを突いてくるクロスファイヤーが威力を発揮し、アウトコースの変化球に対して踏み込みを許さない。スピードは速くても130キロ前後なのだが、ベース板で減速しないキレがあり、とらえたと思った打球でも差し込まれている。さすが名門校のエースと言える投手だ。
ただ、序盤はややバタついた感のあった花咲徳栄の黒川も下山に呼応するように調子を上げていく。自慢の速球は、140キロ台後半を記録し、高めの速球にはどうしても手が出てしまう。ここにフォークボールが加わるため、どうしても縦の変化の前に姫路打線がついていけない。5回裏には3者連続三振を奪い、0-0で前半戦を折り返す。
まるで、23年前の再試合の1試合目のような展開かと思われた前半戦。しかし、グランド整備を終えた6回裏、突如試合が動き出した。
6回表のピンチを下山がしのぐと、その裏、1アウトから3番峰松が四球を選ぶ。4番渡辺がショートゴロに倒れ、2アウト1塁となるが、このシチュエーションは意外に得点が入るものだ。5番松本が初球、真ん中高めに入る速球を逃さず叩く。打球はレフト線を破る長打となり、スタートを切っていた渡辺が一気にホームイン!送球間に松本は3塁を陥れ、なおもチャンスが続く。しかし、ここは代打・辻本を球威で押し込んでセカンドゴロに封じ、失点は1にとどめた。
下山は少ない球数で打たせて取る投球を続け、7回表もクリーンアップをわずか9球で打ち取って3者凡退。あの強打が発揮されることなく終わるのか…、あまりにあっけないと思い始めた8回表、そうは問屋が卸さないとばかりに徳栄打線の猛攻が始まった。
8回表の2アウト1,2塁のピンチを黒川がしのぐと、1アウトから7番谷口が見事な流し打ちで出塁。左腕攻略のお手本のようなチャンスを作ると、続く8番中森のサードゴロを中田が後逸。姫路にとっては痛いミスでピンチが広がる。さらに、9番市村も流し打ちのヒットを放ち、1アウト満塁に。下山にとっては投球の軸になっていた、左打者のアウトコースの速球と変化球をいずれもとらえられ、苦しい状況となる。
2010年代に甲子園を席巻した徳栄の強打。サスケの応援に乗って、そのイメージがよみがえってくる。しかし、令和の徳栄が見せた攻撃は、まったく予期せぬものであった。
1番岩井(監督の息子さん)が押し出しの死球をもらってまず同点に追いつくと、ここで岩井監督は2塁ランナーに代走で更科を送る。塁上をすべて俊足のランナーで埋める積極策。すると、続く2番鈴木の二遊間深い位置への当たりで、1塁へ送球する間に、3塁ランナーに続いて、2塁ランナーの更科まで一気にホームイン!3塁コーチャーも迷わず腕を回しており、素晴らしい判断力と勇気であった。姫路のファースト渡辺が捕球した時にはもう成す術のないタイミング。守る側に落ち度はなく、ただただ攻撃側を褒めるべき状況であった。
リードをもらった黒川だが、直後の8回裏、先頭で3番捕手の峰松が高めの速球をとらえると、打球は右中間を深々と破る3塁打に。昨夏の戦いで最後の打者となってしまった攻守の要が意地を見せる。その後、2者が凡退するが、6番辻本の打席で捕逸が出てしまい、峰松がホームイン!やはりこの両チームの戦いは簡単には終わらないようだ。
9回表、姫路は2番手で右腕・大野がマウンドへ。こちらも角度のある速球が武器であり、真っ向勝負で徳栄の強打者を3者凡退に切って取る。その裏、姫路は2アウトランナーなしから代打・藤本がヒット。関東屈指の好投手から、これで9本目のヒットであり、打線が弱いと言われたチームの面影はもう感じさせなかった。しかし、最後は好打者の1番伏見が高めに浮いたボールを打ち上げてしまい、ゲームセット。終盤にもつれた好試合を徳栄が逆転で制し、2回戦進出を決めた。
まとめ
花咲徳栄は想定以上に姫路の先発左腕・下山に苦しんだが、8回の下位打線の逆方向への打撃は見事だった。下位にあの打撃ができる選手が揃っているのは、打線の地力が相当高い証拠だ。そして、勝ち越しの場面での2塁ランナーの生還は、見事の一言。これは甲子園の歴史でも語り継いでいくレベルの好走塁であり、普段の練習の意識付けのたまものであった。エース黒川も9安打を浴びながらも要所を締めて2失点完投。次戦以降の好投も期待できる内容だ。
優勝した2017年以降は、なかなか上まで勝ち上がり切れなかった花咲徳栄。今大会は久々に上位まで顔を出す可能性、十分にありそうだ。
一方、東洋大姫路も負けはしたものの、素晴らしい内容の試合であり、特に打撃陣の秋以降の成長は目を見張るものがあった。やはり、岡田監督の指導力と伝統校の底力は素晴らしいものがある。惜しむらくは、8回にミスが絡んでピンチを広げてしまったことか。岡田野球は守備・犠打・走塁できっちりやるべきことをやってこそ勝てるという哲学があり、その面では悔いが残ったかもしれない。ただ、試合全体を見通すと、23年前に劣らない好勝負であったし、堂々と胸を張って帰還できる内容であった。
【高校野球 甲子園】 東洋大姫路(兵庫)vs花咲徳栄(埼玉) 23年前に再試合の死闘演じた因縁のカード 【第98回選抜高校野球 1回戦 全打席ハイライト】 2026.3.21 センバツ


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