PL学園(大阪)
| 1 | 宮内 | 9 | 奥野 |
| 2 | 加藤 | 10 | 朝井 |
| 3 | 徳重 | 11 | 河村 |
| 4 | 中尾 | 12 | 藤井 |
| 5 | 清水 | 13 | 小森 |
| 6 | 今江 | 14 | 上原 |
| 7 | 中山 | 15 | 中田 |
| 8 | 荘野 | 16 | 桜井 |
投打にバランス取れた高校球界の王者
長く続いた大阪の私学7強時代を終わらせ、1970年代から1980年代にかけて高校球界の絶対王者に上り詰めたPL学園。その後、一時期衰退したこともあったが、1990年代にはサブロー(ロッテ)、福留孝介(中日)、前川勝彦(近鉄)といった、後にプロ野球で活躍した選手を軸に甲子園に出場し、毎回上位にまでは顔を出していた。桑田真澄・清原和博のKKコンビや立浪和義の時のように優勝が続くことはなかったが、それでも近畿を中心に特A級の選手がPL学園に進む流れは変わらなかった。
そして、2年前の1998年夏、あの横浜vsPL学園の延長17回の死闘が繰り広げられる。この大会でも優勝はならなかったものの、春夏連覇を果たした王者を最も追い詰めたチームとして、PL学園の名は確実にその栄光を取り戻しつつあった。
だが、前年の代も選抜4強入りと結果を残す中、この代は秋の近畿大会で上宮太子を前に初戦敗退を喫してしまう。エース亀井(巨人)を擁し、のちに選抜出場を果たすチームだけに、結果から見たら仕方ない部分はあった。シード制のない大阪だからこそ起こった事態でもある。ただ、11年ぶりの府大会初戦敗退がナインに与えたショックは大きかった。11年前は暗黒期での出来事だったが、今回は上昇気流に乗りかけていた中での出来事だっただけに、衝撃度も違ったのだ。
しかし、主将・加藤(ソフトバンク)、副主将・清水を中心にチームを立て直すと、春季大阪大会では準決勝で秋に敗れていた上宮太子に逆転サヨナラ勝ち!決勝は上宮との終盤勝負に競り負けたが、手ごたえを得た大会となった。2年生エース朝井(近鉄)は球速が140キロ台に乗り、打線も2年生の今江(ロッテ)を軸に上位から下位まで切れ目のない打線を形成した。
中でも売りだったのは左右のジグザグ打線であり、1番荘野、3番中尾、5番奥野、7番徳重、9番中山が左、2番清水、4番今江、6番加藤、8番朝井が右と相手バッテリーからすると、投手の左右を苦にせず、かつ攻め方の難しい打線となっていた。
投打がかみ合った夏の大阪大会は順当に勝ち上がると、準決勝では春季大会で敗れていた上宮と激突。PL・朝井、上宮・国木(広島)と後に高卒プロ入りするチーム同士の対戦となったが、延長10回に5番奥野が2番手の下敷領(社会人・日本生命でも活躍された)からサヨナラ2ランを放ち、劇的なリベンジ勝利を果たした。
さらに、準決勝では北陽に昨夏の借りを返す勝利を挙げると、決勝では当時新興勢力だった履正社と激突。序盤から先制し、試合を優位に進めるが、8回裏に無死満塁のピンチを招く。ここで3年生のサイド右腕・宮内が気迫の投球を披露。次々と打者を打ち取り、一打逆転もありえた場面を見事に抑え、そのまま4-2で逃げ切って代表切符をつかみ取った。
2年ぶりの選手権出場であり、外から見るとあまりチームが苦しんだことは伝わりにくかったかもしれない。しかし、秋の初戦敗退を乗り越え、秋に敗れた上宮太子、春に敗れた上宮、そして、前年夏に敗れた北陽と3つのリベンジ勝ちを果たしたことは、まさに「逆転のPL」を体現するものであった。投打にスーパーな選手はいなくとも、あの2年前の延長17回を戦った先輩たちのように束になってかかっていく強さが、この年のチームにはあったのだ。
1回戦
札幌南
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 1 | 4 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | × | 7 |
PL学園
迎えた甲子園初戦の相手は南北海道の進学校・札幌南。偏差値60を超える学校の野球部は、当時は珍しい動体視力を鍛えるトレーニングや徹底した相手の配球への研究など、独自のスタイルで強さを築きあげてきた。決勝では選抜出場の北照を破っており、実力の伴った堂々の出場である。左腕エース皆方はややスリークオーター気味の投法から、相手の懐を大胆に突く投球が光り、見た目以上に打ちにくい投手であった。
すると、1回表、いきなり札幌南打線がPL・朝井に襲い掛かる、2アウトを簡単にとられるが、3番田端、4番白野がいずれもカウントを取りに来た速球を叩き、連続ヒット。PLバッテリーの傾向を読み取り、しっかりと上から叩いた。ただ、続く5番北川はカーブにタイミングが合わず、サードゴロに倒れる。ここで2塁ランナーの田端は転倒して、守備の集中力をかき乱そうとする抜け目のなさを見せたが、サード清水は全く動揺することなく、落ち着いて処理してみせた。
立ち上がりをうまく乗り切ったPL学園は、普段着野球で本領を発揮し始める。1回裏に1アウト2塁から3番中尾はセオリー通りアウトコースの変化球を右方向へ。これをセカンド白野が後逸してしまい、先制点を挙げる。硬さの取れた打線は、2回裏、札幌南の守備の乱れや四球にも乗じて3番中尾、4番今江の連続タイムリーで計4点を挙げる。札幌南バッテリーとしては、各打者の傾向を把握し、その通りの配球をしたが、決め球に至るまでの甘いボールはPLの打者は見逃さない。「好球必打」の鉄則通りの攻めで、3回までに6-0とリードを広げた。
大量点をもらった朝井は、2回以降危なげない投球で得点を与えない。140キロ台の速球と縦に割れるカーブのみでの配球だが、打者の内外をきっちり投げ分け、緩急もついているので、そう簡単には打たれない。あの桑田真澄(巨人)と同じ投球スタイルであり、大阪大会で数々のライバルを倒してきた自身も上乗せされて、全国の舞台で堂々とした投球を見せた。8回からは宮内に代わり、札幌南打線を二人で5安打で完封。打線は終盤に札幌南・皆方に封じ込まれ、やはり配球面も含めて油断ならない相手であったが、序盤の得点が功を奏し、まずは順調に1回戦を突破した。
【甲子園】2000年 1回戦 PL学園 対 札幌南【高校野球】#甲子園 #懐かしい #高校野球
2回戦
明徳義塾
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 3 | 0 | 0 | 4 |
| 0 | 1 | 6 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | × | 9 |
PL学園
初戦を終えたPL学園だが、このブロックには選抜準優勝の智辯和歌山、同8強の明徳義塾、最多優勝回数を誇る中京大中京と強豪が入り乱れていた。
その2回戦の相手は高知・明徳義塾である。これで6季連続の甲子園出場であり、この時期の甲子園で最も「常連校」というフレーズがふさわしいチームであった。投手陣は前年から主力だった右腕・三木田と左腕・増田の左右2枚看板が健在。選抜では秋にPL学園が敗れた上宮太子に9-3と完勝しており、あの好投手・亀井を4番清水を中心とした打線が完膚なきまでに打ち込んでいた。2回戦でも神宮王者の四日市工とのルーズベルトゲーム(8-7)を制しており、実力は間違いなく全国トップクラスであった。
春夏連続出場を狙った高知大会決勝では土佐との0-0の投手戦から8回裏に2点を先行されるが、9回表に4番清水のタイムリーなどで4点を奪って逆転勝ち。連続出場が続いていた明徳だが、こうした県内の強力なライバルとの死闘を制することで、毎年チームの地力を高めてきていた。
甲子園初戦は高校通算34本のホームランを放っていた東北屈指のスラッガー畠山(ヤクルト)を擁する専大北上と対戦。しかし、三木田–木下の明徳バッテリーは、5種類はあるという多彩な変化球と強気の内角攻めで畠山を封じ込める。全く自分のバッティングをさせず、強打の専大北上打線は2安打で完封してみせた。打線は2年生エース梶本(ヤクルト)の前に苦戦したが、6番内村のホームランに犠飛2本と効果的な得点の仕方で3点を奪取。試合後、馬淵監督は「三木田の方が格が上だった」とご満悦の様子であった。
こうして迎えた2回戦でのV候補対決。2年前の選抜では準々決勝で激突していた。この試合では、明徳のエース寺本(ロッテ)に1-1から9回に勝ち越し弾を浴びるが、その裏にPL打線が寺本の制球難につけ込んで4四球を奪う。打ちに行きたくなる場面での、この冷静さというか肝の座り様はさすがPLである(2018年の大阪桐蔭-履正社戦の最終回にも通ずるものがある)。延長10回裏に2番手で登板していた稲田が自らサヨナラ打を放ち、PLが中村監督の有終の美を飾るべく、準決勝へ進出したのだった。
因縁浅からぬ両校の対戦であり、明徳にとってはリベンジを期す戦いである。PL・朝井は初回こそ警戒して2つの四死球を与えたものの、ボール自体は走っており、2回は3者凡退。明徳打線は主砲・清水の周りを攻守の要の3番捕手・木下、2年生スラッガーの5番松浦が固め、どちらかと言えば巧打者タイプが多いイメージ。これに対して、朝井は自信のある速球を堂々と投げ込み、ストライク先行の投球でリズムを作っていく。
これに対し、明徳・三木田の調子は今一つ。初戦ほど速球が走っておらず、変化球主体の投球となる。相手がPLという事で硬さもあったのかもしれない。2回裏、PLは8番朝井が自らセンターへタイムリーを放つと、3回裏に、そのしたたかな野球で三木田を飲み込んでいく。
上位打線がつながり、2番清水のヒットと四死球で無死満塁とすると、5番奥野のタイムリー内野安打でまず1点。さらに、6番加藤の浅めのライトフライで一瞬3塁ランナーはスタートをためらっていたものの、外野手の送球が浮くのを見てすかさず再スタート!好走塁で3点目を奪うと、さらに7番徳重もセンターへテキサス性のタイムリーを放ち、4-0とリードを広げる。
この一連の攻撃の中で、PLナインは前の打者が打った球種を捨て、その他の変化球に絞っていく。明徳バッテリーの配球の一歩先を読み、多彩な球種を持つ三木田から一つずつ武器を消していく攻撃。この回のヒットは決していい当たりばかりではなかったが、先手を取られている明徳バッテリーとしては真綿で首がしまるような感覚だっただろう。結果、走っていない速球に頼らざるを得ない状況に追い込まれ、8番朝井に投じたストレートはジャストミート!レフトスタンドへ飛び込む3ランとなり、注目の好カードは早々と大勢が決した。
初戦に続き、しかも、自らホームランを放った朝井は乗っていく。まるであの桑田真澄が池田を相手にやってのけたような千両役者ぶりだ。同じ四国の強豪相手という意味でもリンクするところは大きかった。7回に明徳期待の1年生森岡良介(ヤクルト)にタイムリーを浴び、3点は失ったものの、140キロ台の速球とカーブで強力打線を4失点完投。投打ががっちりかみ合い、そつのなさを見せたPLがいよいよ全国の頂点が見えるところまで勝ち上がってきた。
3回戦
智辯和歌山
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
| 1 | 0 | 4 | 2 | 2 | 0 | 0 | 0 | 2 | 11 |
| 0 | 0 | 1 | 0 | 2 | 2 | 2 | 0 | 0 | 7 |
PL学園
2回戦を豪快に勝ち切り、迎えた相手は選抜準優勝の智辯和歌山。2回戦で対戦した明徳義塾のようなバランス型のチームと異なり、打力・体力に特化した「打ち勝つ」チームである。選抜では初戦から24安打20得点を挙げ、国士館・小島(広島)や東海大相模・筑川といった好投手からも2桁安打を放った。近畿大会1回戦負けながら、武内(ヤクルト)・池辺・後藤の中軸を中心とした振りの鋭さを評価されて選出されており、よほど他校と比較して打撃のレベルが抜けていたのだろう。
ただ、伝統的に守りに関しては絶対的エースがいることは少なく、この年も自転車操業であった。選抜で活躍した左腕・白野が不調であり、2年生右腕・中家と野手兼任の山野の右腕二人で、実質しのがなくてはいけなかった。初戦は新発田農に14-4と大勝するも、犠打や守備のミスが続いて高嶋監督もおかんむり。2回戦の中京大中京戦は、初回に5番後藤が頭部死球で退場というアクシデントが発生するなか、代役の1年生捕手・岡崎が踏ん張り、7-0から7-6と迫られる苦しい試合をなんとか逃げ切った。
こうして、迎えた近畿強豪対決。1994年選抜準決勝でも対戦しており、この時は智辯和歌山が5-4で競り勝って初優勝を弾みをつけた。ただ、この大会の勝ち上がりを見ると、安定感があるのはPLの方。もともと智辯和歌山は1学年10人の少数精鋭で、そのうち8人は和歌山出身の選手を取るという不文律があり、高嶋監督曰く、「PLに来る選手は特A級で、うちはB級」というほど中学時代の実績には差があった。
ただ、この差を埋めるのが高嶋マジック。少数精鋭だけに、一人当たりの打撃練習の数は必然的に多くなる。また、6月から県大会期間にかけて徹底して体力強化を行うことで、本番の甲子園で体力的に負荷が取れて楽になる面もあった。他校の選手が連戦で疲労がたまる中、智辯和歌山の選手が後半戦までピンピンしているのには、そういう理由があった。
試合は、序盤から智辯和歌山ペースで進む。1回表、PLのサード清水が併殺を焦って送球ミスをし、智辯が先制点を挙げると、3回表にも猛打で襲い掛かる。攻守に隙の無いPLに対し、先行されては分が悪いだけに、自慢の猛打で先手を取らなくてはいけない。2アウトから3番武内が四球で出塁すると、4番池辺は高めの速球をフルスイング。一番威力のあるボールをなんとバックスクリーンに余裕で到達するところまで運ぶ。朝井のショックは図り知れない。
さらに、続く5番捕手の後藤がカーブを待っていたようにセンターへ運ぶと、続く6番山野はストレートをとらえて、バックスクリーン付近へ届く2ラン。1イニングに2本の2ランを浴び、朝井は茫然とした表情のまま、この回を終わったところでマウンドを降りた。だが、智辯の攻撃はこれでやまず、その後もリリーフした宮内から武内のフェンス直撃のタイムリー2塁打や山野の2打席連続弾などで5回までに計4点。守っていたPLの選手が「初めて野球が怖いと思った」というほどの猛打ぶりで9-1と一方的に試合をリードした。
だが、先輩たちの数々の逆転劇を見てきたPLナインにあきらめるという文字はない。5回裏、3番中尾、5番奥野と2本のタイムリー2塁打が飛び出して2点を返すと、ここから追い上げを開始。6回裏には1番荘野、2番清水がいずれも基本に忠実なセンター返しでタイムリーを重ねていく。送球間の進塁も抜け目がなく、これぞPLの野球である。すると、7回裏にはリリーフの宮内がこの日のPLのヒットの中でも一番というあたりを放ち、レフトフェンス直撃の2点タイムリー2塁打!8点あった差が2点となり、智辯ナインが顔色を失うほどの猛追を見せる。
ただ、この試合唯一の攻撃面の想定外は、4番今江であった。2点差で迎えた8回裏にもランナー二人をため、ここでこの日4打数ノーヒットの今江に打順がまわる。2番手・山野のスライダーを完ぺきにとらえたあたりはライナーでレフトへ飛ぶが、レフト井口が正面でキャッチ。いつもの彼ならばスタンドへ運んでもおかしくなかったが、本調子ではなかったのだろう。5番奥野もキャッチャーフライに打ち取られると、智辯和歌山は9回に5番後藤のホームランなどで2点を追加。猛烈な追い上げを見せたPLだったが、ここで万事休した。
朝井にとっては、140キロ台の力のある速球をあそこまで運ばれるとは想像だにしていなかっただろう。ただ、これも高嶋監督の全国制覇を見据えたチーム作りのたまものであり、中でもPL学園は同じ近畿地区にあって、「優勝を狙ううえで」標的にされるチームとなっていた。この後、翌年の出場辞退をはじめとして、PL学園は衰退の道をたどってしまうこととなる。2000年夏の「事実上の決勝」と謳われたこの試合で、勝敗が逆になっていたら、あるいは違った未来があったのか。そう思わずにはいられないほどの、ハイレベルでかつ熱い試合であった。


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