2023年選手権3回戦 慶応vs広陵(10日目第2試合)

2023年

大会10日目第2試合

慶応

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
2 0 1 0 0 0 0 0 0 3 6
0 0 1 0 0 1 1 0 0 0 3

広陵

 

慶応   小宅→鈴木→松井

広陵   高尾

V候補同士の一騎打ち、3回戦屈指の好カードとなった試合は、両者譲らずに延長タイブレークに突入。10回表に広陵のエース高尾の牙城を突き崩した慶応が、2008年以来となるベスト8進出を決めた。

試合

慶応は小宅、広陵は高尾とともに2年生ながらチームの絶対的支柱である「エース」が先発。熱戦に火ぶたが切って落とされた。

1回表、慶応のトップバッターはキーマンの一人である丸田。早々と2ストライクに追い込まれるが、ここから粘る。速球待ちの状態で変化球を見極め、四球を奪取。続く2番八木の打席でスライダーがワンバウンドしたところを逃さず2塁へ進む。八木の犠打が小フライとなるが、続く3番渡辺千の打席で初球に三盗を敢行!これがまんまと決まり、ビッグチャンスを迎える。高尾が落ち着く間をとにかく与えない丸田の好走塁だ。

高尾も初回、決して投球内容が悪いわけではなく、ストレートはアウトローのいいところに決まり、スライダーも低めに落としていた。事実、3番渡辺千は三振に打ち取り、2アウトとするのだが、塁上からかかるプレッシャー、そして慶応一色となった球場のムードに苦しむ。

4番加藤にも粘られて四球を与えると、5番延末の打席で再び投球がワンバウンドとなる間に加藤が2塁へ進む。一つ一つの小さなミスを逃さない慶応の機動力。ここで5番延末がフルカウントからアウトコースの速球を逆らわずにレフトへはじき返す。3塁ランナーに続き2塁ランナーも先制して2点。機動力をからめ、低めを見極めてストレートを投げざるをえない状況を作り、それを叩く。走塁と打撃が一体となった素晴らしい攻撃をみせた。高尾の初回の球数は30球近くに及んでおり、いかに苦しませたかがわかる。

これに対し、慶応の小宅は選抜以降に球威が増した速球を武器に、1番田上、2番谷本を2者連続でセカンドゴロに。3番真鍋には警戒して四球を与えるが、4番小林を速球で詰まらせ、ショートフライに打ち取る。初回からインコースを印象付けるリードを見せる。広陵も2回裏に5番只石のヒットを足掛かりに1アウト2.3塁とチャンスを作るが、ここは打線が下位。8番高尾が三振、9番松下がセンターフライと、どこか序盤からめぐりあわせが慶応に向いている感があった。

すると、3回表、再び慶応の上位打線が高尾を攻める。先頭の2番八木が四球を選ぶと、3番渡辺千の打席でエンドランを敢行。これが前進気味だったサードの横を抜き、レフトへのヒットとなる。4番加藤がきっちり犠打で送ると、延末の引っ張った打球はファーストのミットをはじく強い当たりに。セカンドがカバーしてファーストはアウトにしたが、その間に3塁ランナーはホームインし、点差が3点に広がる。

1回表から完全に慶応ムードの試合。なんとか2年生エースを援護したい広陵は、3回裏に主砲が意地を見せる。1アウトから巧打の2番谷本が速球を力強く打ち返して、右中間を破る2塁打。真ん中寄りのボールを逃さず長打にすると、3番真鍋は倒れるが、4番小林がカバーする。小宅のアウトコースを狙った速球がやや内に入るのを逃さずとらえると、打球は三遊間を真っ二つに切り裂くタイムリー!広陵に流れを呼び込む貴重な1点をもたらした。

しかし、続く5番只石のセンターに抜けようかというセカンドへの当たりは、今度は慶応の主将・大村が二遊間深い位置でつかんでアウトに!両チームの主将が大事な場面で貴重な働きを見せる。

点差を縮めてもらった高尾は、4回にもランナーをスコアリングポジションに進ませる苦しい投球になるが、ここで1番丸田を低めのスライダーで空振り三振に切って取る。ようやく振らせたかったボールを振らせることができ、守りのリズムもできてくると、4回、5回と得点にこそ結び付かなかったものの、慶応・小宅にヒットを浴びせ、反撃体制を整えていく。

グランド整備明け、すっかり立ち直った高尾は、前の回に続いて2イニング連続で3者凡退のイニングを作る。バックも堅い守備で2年生右腕を盛り立て、西の優勝候補の力を見せる。速球でファウルを打たせ、低めのスライダーを振らせるという、いつもの高尾の投球が蘇ってきた。

こうなると、流れは広陵サイドに傾いていく。6回裏、先頭の6番高橋がアウトコース寄りの速球をきれいにレフト線へ打ち返すと、レフトが少しジャッグルしたところを逃さず2塁へ。犠打で3塁へ進めると、8番高尾のセーフティスクイズはピッチャー正面をついてしまうが、9番松下がカバーする。ミートのうまい好打者は、インコースをついた速球がやや甘く入るところを逃さずライトへのタイムリー!後半になるに従って小宅の速球に打線全体が対応し始めていた。

一度傾いた流れは、とめどないのが野球というスポーツだ。7回表、先頭の8番大村がじっくりと選球して四球をもぎ取るが、9番小宅の犠打は高尾の正面に転がり、1-6-3の併殺に。この後、1番丸田に内野安打が出るというちぐはぐな攻撃で得点を上げられない。この回の攻撃を重く見たのか、森林監督は7回裏に犠打を失敗したエース小宅を下ろし、2番手で左腕・鈴木をマウンドへ。いよいよ総力戦の様相を呈してきた。

しかし、広陵の打線は上位から。この回、ついにあの男のバットが火を噴く。ここまで小宅に3打席で四球1つの無安打だった3番真鍋が、鈴木のアウトコースへのスライダーをうまく拾ってセンターへのヒット。渋い当たりではあったが、彼が打つとチーム全体に活気が出る。ここで、この日2安打と当たっている4番小林がアウトコースのスライダーを逆らわずに打ち返すと、打球は右中間への2塁打!1アウト2,3塁とチャンスを広げると、5番只石のショートゴロの間に真鍋が生還。ついに広陵が同点に追いついた。

ただ、この場面で慶応ディフェンス陣が敢えて前進守備は敷かずに対応。1点を惜しんで2点を失わなかったことがこの後の戦いに繋がっていく。

広陵が押し気味で試合は最終盤に。高尾は球数が優に100球を超えるが、この日は投げるほどに状態が安定していく。慶応打線もシャープな振りで打っていくが、球威・スピードともに十分な速球、キレのあるスライダーの両方を相手にするのは容易ではない。9回には先頭の6番渡辺憩がヒットで出るが、高尾の気迫のこもった投球の前に、スコアリングポジションのランナーを返すことができない。

この流れで一気に勝負を決めたい広陵だったが、ここからの攻撃が悔やまれた。8回裏は、先頭の7番濱本がヒットで出ながら、8番高尾には途中からヒッティングの指示。サード福井のチャージが広陵ベンチの作戦を揺らがせたか。結果、これが慶応にとっては注文通りのセカンドゴロ併殺となってしまう。ハイレベルの攻防の中、一瞬の躊躇が勝負を分けていく。

さらに、9回裏、慶応が3番手で右サイドの松井を送ると、ここでも先頭の2番谷本がヒットで出てチャンスメークする。続く3番真鍋の打席で、広陵ベンチは犠打を指示。高校球界注目のスラッガーに対し、よく言えばチームプレー、悪く言えば「なぜ強打者に打たせない」という、是非の分かれる選択となった。結果は、小フライとなり、1アウト。何としても得点が欲しい場面で、中井監督のコンピューターが少し機能しきれなかったか。この回の攻撃が、思えば、この試合の結末を暗示していたのかもしれない。試合は3-3と同点のまま延長戦へ入っていく。

迎えた延長タイブレーク。この年の春から13回→10回での適応となっていた。それまでの試合の流れを、嫌な言い方をすれば「ぶった切る」ルール。これを、陸の王者が有効に使いきった。

10回表、球数が130球を超えた高尾に対し、慶応は1番丸田から。願ってもない打順である。犠打もある場面だったが、ここは丸田が甘い変化球をライトに痛打し、無死満塁。犠打を選んで失敗した広陵と、強気でチャンスを広げた慶応。明暗が分かれていく。2番八木は浅いレフトフライに倒れるが、3番渡辺千に対し、高尾は力が入ってボール先行となる。カウント1-3となり、高尾は強気にインサイドを突くが、セカンドへの緩い当たりで併殺を焦ったセカンド松下が2塁へ悪送球してしまう。この間に3塁ランナーがホームイン。広陵にとってはあまりに痛すぎる失点だった。

さらに畳みかける慶応は、4番加藤が打ち取られるも、この試合すでに3打点の「クラッチヒッター」が待っていた。高尾がインサイドを強気に突くところを逃さずとらえたのは5番延末。力強く叩きつけると、打球は1,2塁間突破の2点タイムリーになり、6-3。試合の趨勢を決定づけるタイムリーとなった。

3点のリードをもらった右腕・松井。無死1,2塁からのスタートだが、塁上のランナーは返しても問題ない。春まではエース番号を背負っていたサイド右腕は、四球1つは与えたものの、強気の投球で広陵打線に立ち向かった。アウト3つはすべて三振で奪う力投ぶり。最後は2アウト満塁と一打同点もある場面で、好打者の1番田上を渾身の速球で空振り三振に打ち取り、試合終了!大会随一とも言える熱戦を制した慶応が、力強く8強へ駆け上がっていったのだった。

まとめ

慶応は、これ以上ないという試合運びで広陵を競り落とした。試合序盤に調子が出てくる前の相手エースから機動力も絡めた攻撃で先取点を奪い、中盤から後半にかけてはセカンド大村をはじめとしたバックの堅守で相手打線の猛攻を耐えしのいだ。そして、流れの変わる機微を逃さない、タイブレークでの猛攻。すべてのシナリオを完ぺきに繋げ合わせたかのような、完ぺきな試合運びであった。

もちろん、エース小宅をはじめとした投手陣の力投や5打点を上げた5番延末の活躍など、個々の活躍は素晴らしかった。が、それだけではなく、攻守でその時々の状況を考えて動くハイクオリティーなプレーが広陵に傾きそうな流れをことごとく食い止めたと言えるだろう。選抜のサヨナラ負けからの雪辱に燃えるナインが、素晴らしい成長ぶりを見せた試合であった。

一方、広陵は終盤に押しまくっていながら、惜しくも敗退。この年代は1年間で練習試合も含めて4敗しかしないという「負けないチーム」であったが、最後の勝負所で、もう一つ歯車がかみ合いきれなかった。高尾は、中盤以降に調子を上げ、おそらくこの大会でも最も慶応打線を苦しめた投手の一人だったと思うが、最後は慶応打線の集中打の前に涙を飲むこととなった。

両者を勝者にしたくなるような好ゲーム。しかし、勝敗が分かれてしまうのが、甲子園の厳しさである。2023年度を代表する強豪が、惜しまれながら聖地を後にすることとなった。

【高校野球 甲子園 ハイライト】注目の超好カード!どちらも投打にレベルが高い優勝候補同士の対決はタイブレークまでもつれる超大熱戦!!【3回戦  広陵 vs 慶応義塾 】2023.8.16 – YouTube

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