2023年選手権決勝 慶応vs仙台育英(14日目第1試合)

2023年

大会14日目第1試合

慶応

1 2 3 4 5 6 7 8 9
2 1 0 0 5 0 0 0 0 8
0 1 1 0 0 0 0 0 0 2

仙台育英

 

慶応     鈴木→小宅

仙台育英   湯田→高橋→田中

選抜の再戦となった2023年決勝は、慶応義塾が1番丸田の先頭打者ホームランで試合をリード。中盤にも集中打で2番手の高橋を攻略し、リリーフした2年生エース小宅の好投もあって最後まで主導権を渡さなかった。県大会から厳しい戦いが続いた陸の王者が、8-2と快勝で選抜のリベンジを果たし、107年ぶりとなる栄冠に輝くこととなった。

試合

仙台育英の先発は剛腕・湯田。大会序盤は苦しい投球になったが、準々決勝の花巻東戦あたりからしり上がりの調子を上げてきていた。対する慶応は、準決勝で完封勝利のエース小宅を後ろに回し、準々決勝で先発した左腕・鈴木をマウンドへ上げた。また、ここまで5番を打っていた勝負強い延末を4番にし、当たっている6番渡辺憩は3番に。一方、4番だった2年生加藤を5番、3番だった渡辺千を6番にし、負担の軽減を図った。森林監督のこの打順変更がどう出るかも注目された。

ここまで、素晴らしい勝ち上がりを見せた両校。選抜では2-1とタイブレークの末に仙台育英がサヨナラ勝ちを収めていたが、この試合は、同じ展開にはさせじといきなり慶応打線が火を噴くこととなる。

立ち上がり、リズムを作りたい仙台育英・湯田に対し、慶応の先頭打者はもちろん1番丸田。色白で端正な顔だちで、俊足巧打の「映える」トップバッターは、すでに甲子園の観客の人気もひとしおの選手である。その丸田がいきなり観衆を興奮のるつぼに叩き落とす。やや制球がばらつく湯田に対し、カウント2-2からインコースのスライダーを引っ張ると、打球はライトスタンドへ飛び込む先頭打者ホームラン!球場のムードを一気に自軍へ呼び込む値千金の一打で、慶応が1点を先行した。

リズムをつかむ前に得点を与えた湯田。大歓声が鳴り響くアウェーな環境も動揺を誘ったか。昨年は、東北勢初優勝を狙う立場で観衆の後押しがあったが、今年は昨夏王者であり、しかも選抜の直接対決では勝った側である。判官びいきの甲子園ファンが慶応に味方するのは、無理もないシチュエーションであった。

1アウト後、3番渡辺憩にサード前でイレギュラーするアンラッキーなヒットを浴びると、四球を挟んで2アウト後に、6番渡辺千のセンターへ打ち上げた打球は、風に流されて内外野の間にポトリ。不運な当たりが続いての2点目であり、慶応としては打順変更が見事の当たった初回となった。

これに対し、仙台育英は慶応の左腕・鈴木から2番山田がサードゴロエラーで出塁する。ここで打席には3番湯浅。なんでもできる状況だったが、大会序盤に打ちまくっていた2年生も終盤戦はやや当たりが止まってきていた。スライダーを打たされた打球は、注文通りの6-4-3の併殺打に。動かしていきたい場面だったが、その前に難しい球に手が出てしまった。

初回の明暗を分け、2回を迎えても慶応の勢いは止まらない。先頭の8番大村湯田が四球を与えると、9番鈴木がきっちり犠打を決めて1アウト2塁。慶応の攻撃は初回から実に無駄がなく、流れるような運びである。湯田は得意のスライダーがなかなか制球できない中、迎えたのは先ほど先頭打者弾の丸田。初球、狙いを速球に絞った丸田はインサイドのストレートを振りぬくと、打球はライトの前にテキサス性で弾む。ボールの威力では湯田が押し勝っていたが、勝負に勝ったのは丸田。流れがいい時はこういうものである。

3点を先行された仙台育英。この大会ビハインドの状況を背負ったのは、履正社戦、神村学園戦に続いて3試合目だが、展開としては守備が乱れた履正社戦と並ぶくらい、まずい状況である。だが、ここまで5試合で46得点の強力打線がこのまま黙っていることはさすがになかった。

2回裏、先頭の4番斎藤陽がアウトコースのスライダーをうまくセンターへ運ぶと、当たっている5番尾形が今度はスライダーを引っ張ってライト戦を破る。左打者だが、左投手を全く苦にしない打撃だ。無死2,3塁となると、1アウト後に8番住石がセカンドゴロ。慶応は3点リードの状況から前進守備は敷いておらず、3塁ランナーを迎え入れて1点を返す。ただ、この場面で鈴木が粘って2点目を与えなかったことは大きかった。

徐々に硬さの取れた仙台育英野手陣は3回裏にも慶応守備陣の乱れに乗じて1点を返すのだが、肝心の湯田が立ち直れない。スライダーを見極められ、速球に的を絞られるため、投球の幅はどうしても狭くなった。失点こそしなかったものの、3回は満塁のピンチを背負い、4回にもランナーを出す。手遅れになってはいけないと須江監督湯田を4回までとし、5回から2番手で高橋をマウンドへ送る。まだ2-3とビハインドは1点の状況であり、昨年の優勝投手に命運を託したのだ。こうして、運命の5回表へと試合は突入していく。

この回、先頭の4番延末にセカンドへの内野安打を打たれるが、後続二人を打ち取って2アウト。高橋の調子はそう悪くないように見えた。実際、ストレートは140キロ台後半を計測し、ボールは走っていた。だが、7番福井に対し、カウント1-1からカウントを取りに行ったスライダーが甘くなる。これを逃さずとらえた福井の打球はレフト線を痛烈に破り、1塁から延末が長駆ホームイン。守備体系もやや隙があったか、一塁ランナーを一気に返してしまった。

この一打が再び、慶応の圧をよみがえらせる。8番大村が四球でつなぐと、9番鈴木の打席で代打・安達を送る。高橋は2ストライクと追い込んでいたが、ストレートがやや甘くなると、これを安達は執念で振りぬく。打球は前進したレフトの前に弾むテキサス性タイムリーとなり、5-2。決して、いい当たりばかりではないが、慶応の各打者のヒットが芝生に弾んでいく。

球場中に慶応の応援が響き渡る中、打席には1番丸田。インコースの速球に詰まらされたあたりは、左中間のフライとなり、センター橋本が落下点で構える。ところが、大声援で声の連携が取れない中、レフトの鈴木がこのボールを追ってしまい、橋本と衝突。捕球できなかったボールがレフトを転々とする間に2者が帰り、決定的な2点が追加される。両者の立場の分かれ方を象徴するようなプレー。仙台育英にとっては、あまりに不運であった。さらに、2番八木にもタイムリーが飛び出し、この回、計5点。選抜では1点どまりだった慶応打線が、仙台育英の誇る右腕2枚看板から大量8点をもぎ取った。

おそらく、この夏だけでなく、この一年間でここまでのビハインドを背負う展開は、仙台育英にはなかっただろう。あの分厚い投手陣でそうそう大量点を先行されることはないのだ。だが、決勝戦で現実にそれが起こってしまった。そして、慶応はダメを押すように5回からエース小宅を登板させ、主導権を完全に掌握しにかかる。

ただ、小宅も準決勝で完封した疲れがあり、さすがにボールの走りは絶好調時のものではない。毎回のようにスコアリングポジションにランナーを背負うが、ただ、ここまで激戦を経験してきた2年生エースの経験値とタフさが、そのピンチをしのがせていく。仙台育英も高橋が6回、7回をしのぐと8回からは左腕・田中が登板して好投。8-2のスコアのまま、試合は最終盤へ入っていった。

なんとか反撃したい仙台育英にチャンスが訪れたのは8回裏。2アウトランナーなしから4番斎藤陽、5番尾形と強力な中軸がヒットを連ねる。コントロールの良い小宅に対し、追い込まれては分が悪いだけに浅いカウントからの仕掛けでチャンスを形成した。2アウト1,3塁となり、打席には代打・伊藤。だが、カウント1-1からインサイドの速球に詰まった打球はファースト延末への正面のゴロ。しっかり捕球してベースを踏み、2年生エースはピンチを脱した。

県大会決勝の劇的な逆転勝利に代表されるように、2023年の夏を熱くした慶応旋風もいよいよ最終章。9回裏、仙台育英は先頭の8番住石がヒットを放つが、慶応守備陣に焦りはない。後続を小宅が淡々と打ち取っていき、2アウト。そして、この大会で準決勝まで5割以上の打率を残してきていた1番橋本に対し、最後まで逃げずにインコースを攻める投球で立ち向かっていった。最後はインローの速球を打たせ、レフトへのファウルフライとなってゲームセット。慶応が数々の強敵を打ち破り、実に107年の時を経て、再び全国の舞台で凱歌をあげることとなった。

まとめ

慶応の勝因は数多くあるが、まず何と言っても1番丸田の活躍だろう。もともと慶応の応援団の方が多かったとな思うが、あの先頭打者弾が両チームの応援団以外のスタンドにいた第3勢力を一気に味方に引き込んだと言える。この試合は応援のことにfocusされることが多く、仙台育英に不憫な面も確かにあったと思うが、そのきっかけを自ら作った核弾頭・丸田の活躍はやはり触れなくてはいけない。

また、打順の変更や鈴木小宅への継投など、森林監督のタクトもさえわたった。神奈川県大会決勝での横浜戦の勝利に始まり、広陵・沖縄尚学と好投手を打ち崩しての勝利には、ベンチワークとそれに応える選手のレベルの高さが背景にあった。エンジョイベースボールとは言われるものの、必要なハードワークと考える力が礎にあっての「エンジョイ」である。高いレベルでの「エンジョイ」を実践したナインが、最後の夏に最高の結果をもって、歩んできた道の正しさを示すこととなった。

一方、仙台育英は敗れはしたものの、大会での戦いぶりは素晴らしいものがあった。1回戦から浦和学院・聖光学院・履正社・花巻東・神村学園と見事の常連校ばかりを相手に勝ち抜いたのだ。チャレンジャーとして臨んだ昨夏と違い、王者として挑戦者を迎える立場で、これだけの強豪校を下した成果は、昨年に勝るとも劣らないものであった。

優勝こそならなかったものの、須江監督のもと、苦しい時期も経ながら再びファイナルの舞台へ戻ってきた2023年の仙台育英。投攻守に高い総合力を兼ね備えたチームは、間違いなくこの年度を代表する強者であった。

【高校野球 甲子園 ハイライト】慶応のプリンス・丸田先頭打者弾!初回から猛攻!応援がハンパない!1回表攻撃【決勝  仙台育英 vs 慶應義塾】2023.8.23 – YouTube

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