2019年選手権2回戦 花咲徳栄vs明石商(6日目第4試合)

2019年

大会6日目第4試合

花咲徳栄

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 1 0 1 1 0 0 3
0 0 0 0 2 1 1 0 × 4

明石商

 

花咲徳栄  中津原→高森

明石商   中森

一昨年と優勝校と選抜4強が激突した好カードは期待にたがわぬ熱戦となった。息もつかせぬ展開となったが、最後は終盤の競り合いを制した明石商が逃げ切り、夏の甲子園初勝利をつかんだ。

試合

明石商は高い投手力と手堅い攻撃で選抜は4強に進出。優勝した東邦と唯一互角に渡り合った。投手陣は140キロ台の速球とスプリットを武器とする2年生エース中森に加え、春以降は技巧派左腕の杉戸も台頭。より厚みを増した。打線は上位に迫力があり、特に選抜で先頭打者弾とサヨナラ弾を放った1番来田、兵庫大会2ホームランの安藤に期待がかかる。

狭間監督の采配も冴え、兵庫大会決勝では個々の能力で上回る神戸国際大付を相手に9回一挙4点を奪って逆転勝ち。どんな相手にも勝機を探り当てるスキのないチームだ。

 

花咲徳栄は5年連続で夏の埼玉代表の座を獲得。激戦区の埼玉でこれだけ勝ち続けるのは並大抵のことではなく、一昨年の優勝も含めて一時代を築いたといっていい。今年も自慢の打線は破壊力十分で、チーム打率4割3分2厘は出場校No.1だ。特に1~4番に座る池田橋本韮澤(広島)、井上の4人は昨夏からの経験者で高打率を誇り、パワーも確実性も備える。出場校の中でも攻撃力はトップクラスだろう。

一方、課題とされていた投手陣は左腕の中津原が左サイドハンドに転向して成長。腕を下げたことによって横の角度も出てきて、県予選では無安打無得点も成し遂げた。2年生左腕の高森も成長を見せており、失点は計算できる。

 

最大の焦点は花咲徳栄の強力打線が明石商のエース中森から何点奪うかであったが、立ち上がりが不安と言われていた中森が素晴らしい出足を見せる。画面上でも明らかに伸びていることがわかる真っすぐに、スプリット、チェンジアップを交え、序盤は一人のランナーも許さないパーフェクトピッチングを展開。序盤に攻め立てようとした徳栄打線の出鼻を逆にくじいて見せた。

 

これに対して、技巧派の中津原をうまく攻略したい明石商だったが、序盤は徳栄内野陣の好守にはばまれ得点を上げられない。打撃が注目される花咲徳栄だが、守りのレベルも相当に高い。

 

すると、3回まで盤石だった中森が4回に入ってやや勢いに陰りが見える。スピードは140キロを超えるも立ち上がりよりややストレートのキレがなくなったところを疲れ、2番橋本、3番韮澤に連打を許す。さらに4番井上にはスプリットをうまくライトに運ばれ、1アウト満塁。次打者を打ち取るも6番中井には押し出しの四球を与えて、花咲徳栄が1点を先制する。

 

反撃したい明石商だが、4回には犠打失敗でランナーが飛び出してアウトになるなど試合巧者らしくない攻めが続く。このまま徳栄ペースかと思われた矢先、女房役が仕事を果たす。2アウトから1番来田がヒットで出塁すると、2番捕手の水上(楽天)が中津原のアウトコースのストレートをジャストミート。打球は一直線にバックスクリーンに飛び込み、力技で試合をひっくり返す。

 

成長したとはいえ、相手と比較するとやや投手力で分が悪い花咲徳栄は打線がすぐさま反撃に打って出る。4回に中森を捕まえた2番橋本が今度は変化球を拾って出塁すると、3番韮澤は死球でつなぐ。1アウト後に5番羽佐田も四球でつなぎ、先ほど押し出し四球を得た6番中井に再度満塁で回る。中井は打球をたたきつけて高いバウンドの3塁ゴロとなり、3塁走者が生還。花咲徳栄が同点に追いつく。

 

追いつかれた明石商はその裏、2アウトから下位打線が機能する。6番福井がセンターへのヒットで出塁。さらに7番清水のショートゴロがエラーを誘って2アウト1,3塁と願ってもないチャンスを得ると、8番河野中津原のインサイドのボールを詰まりながらもライトへ運び、待望の勝ち越し点を得る。

 

5回以降やや押され気味の花咲徳栄。しかし、こちらも女房役が大仕事をやってのける。1アウトから打席に入ったのは9番菅原。死球の判定を一度避けなかったと断って迎えた3球目の甘いストレートをフルスイングすると、打球はレフトポール際に飛び込む大ホームランとなって再び花咲徳栄が同点に追いつく。正直な心がまさかの同点弾を導き出した。

 

6回で90球を超えた中津原を限界ととらえた岩井監督は7回から2年生左腕の高森を送る。しかし、継投の合間を逃さない明石商は調子を取り戻した1番来田が左中間を破る2塁打で出塁。さらに2番水上の犠打が失策を誘って1,3塁とチャンスを拡大する。ここで打席には頼れる主将の重宮狭間監督はここぞとばかりに2球目にスクイズを敢行するも失敗に終わる。

 

ともに苦笑いの重宮狭間監督。いやな雰囲気が漂うが、重宮はすぐに切り替え、アウトコースのチェンジアップをノーステップ打法でライトに流し打ち、3たび勝ち越しに成功する。

 

追う花咲徳栄は8回に盗塁を敢行するも失敗。最終回にはこの日2打点の中井がヒットで出塁し、2アウト2塁となって先ほどホームランの菅原を迎えるが、中森のアウトサイドの変化球に食らいつた打球は前に詰めていたライト安藤の守備範囲につかまり、ゲームセット。投好守にハイレベルな屈指の好ゲームを制した明石商が3回戦へコマを進めた。

まとめ

明石商はまさしく粘り勝った印象の試合。エース中森が我慢強く投げ、少ないチャンスを確実にものにする明石商らしい戦いぶりであった。中森は中盤以降、つかまりかける場面もあったが、選抜以降修羅場をくぐってきた経験が活き、最少失点で切り抜けた。打線は狭間監督の采配も含めて点の取り方のバリエーションが実に豊富。新たなる兵庫の強豪校が好勝負を制した。

 

対する花咲徳栄もよく中森に食らいつき、投手陣も踏ん張りを見せたが、最後は1点の差に泣いた。岩井監督にとっても久々の夏の初戦敗退。経験も実績も重ねてきていたが、この日は最後のポジショニングも含めてベテラン監督とのタクトの振り合いに敗れた印象の試合だった。ただ、投打に高い実力を十分に示し、埼玉に徳栄ありを示した試合であった。

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