2021年選手権決勝
智辯学園vs智辯和歌山
51% 49%
〇10-3 倉敷商 〇5-3 高松商
〇5-0 横浜 〇9-1 石見智翠館
〇7-1 日本航空 〇5-1 近江
〇3-2 明徳義塾
〇3-1 京都国際
関西勢の強さが際立った今大会。そのフィナーレを飾るのは智辯学園と智辯和歌山による兄弟校対決となった。かつて両校を甲子園に導いた高嶋監督にとっては夢にまで見た対決だ。
智辯学園は次戦は左のエース西村がマウンドに上がるだろう。ストレート、スライダー、カーブ、チェンジアップと全ての球種が一級品であり、コントロールも抜群だ。後ろに小畠が控えていることもあり、序盤から飛ばしていくことができるだろう。上位に左打者の並ぶ和歌山の打線に対して、攻略の糸口はつかんでいるはず。あとは4番徳丸の懐をどれだけつけるかだ。
対する智辯和歌山打線は大会が進むにつれてどんどん調子を上げてきている。特に1番宮坂が準決勝で4安打を放ったのは心強い。下位の渡部、高嶋も当たっており、上位から下位までスキがないのが特徴だ。あとは準決勝で無安打に終わった4番徳丸の爆発に期待したい。いい当たりは出ており、調子自体は悪くないはずだ。対西村に対してどの球種に的を絞って攻略していくか。強力打線の真価が問われる。
対する智辯和歌山投手陣は日程面でかなりの余裕があり、質量ともに豊富な投手陣を擁する。和歌山大会決勝で登板した右サイドの伊藤の起用や左打者の多い智辯学園に対して左投手の高橋をぶつける可能性も十分考えられる。エース中西は好調な近江打線を1失点完投に抑えて好調を維持しているが、あえて後ろに持ってきた方が相手は嫌かもしれない。とにもかくにも選択肢は豊富であり、中谷監督の手腕に期待だ。
対する智辯学園打線はここ2試合やや当たりが止まっているのは気がかりだが、実力者の揃った顔ぶれは出場校でもNo.1であり、心配はなさそうだ。前川、山下という大砲2人の周りを垪和、森田、岡島、植垣ら巧打者が固めており、一度つながりだすと止まらない破壊力を秘める。大事な決勝の舞台だけに、犠打、走塁の細かいミスはなくしていきたいところ。それさえなければある程度の得点は見込めるだろう。
日程面では智辯和歌山に分があるが、総合力ではやはり智辯学園がわずかに上を行くだろう。智辯学園の攻撃力に対抗するためにも智辯和歌山は4番徳丸の猛打が欲しいところだ。
投手力に大差はないだけに両軍の攻撃がうまくはまるかがカギ。智辯学園は相手の継投策を後手に回すような先制攻撃を見せたい。一方、智辯和歌山は西村のどの球種を打ち、どの球種を捨てていくかをしっかりチーム内で共有して少ない失投を逃さないようにしたいだろう。
互いに意識して高め合ってきた兄弟校同士。2002年夏は智辯和歌山が、現3年生が1年秋の近畿大会では智辯学園がそれぞれ勝利を収めている。最も勝ちたいこの一戦で勝利を収めるのは兄(智辯学園)か弟(智辯和歌山)か。注目の朱色決戦が幕を開ける。
主なOB
智辯学園…秦裕二(横浜)、岡崎太一(阪神)、加治前竜一(巨人)、岡本和真(巨人)、廣岡大志(巨人)
智辯和歌山…中谷仁(楽天)、岡田俊哉(中日)、西川遥輝(日本ハム)、黒川史陽(楽天)、細川凌平(日本ハム)
奈良 和歌山
春 0勝 1勝
夏 0勝 1勝
計 0勝 2勝
対戦成績は春夏1度ずつでいずれも和歌山勢が勝利。1977年の選抜準決勝では定時制で通っていた箕島のエース東が智辯学園の剛腕・山口(阪急)との投手戦を制し、2-0で決勝に進出。そのまま春2度目の全国制覇を達成した。
夏は2002年に3回戦で智辯学園と智辯和歌山の兄弟校対決が実現。智辯和歌山が2試合連続完封の智辯学園・田中を攻略し、7-3で勝利をおさめ、勢いに乗ってこの大会準優勝を飾った。
兄弟校対決を制するのはどちらになるか。
思い出名勝負
2002年夏3回戦
智辯和歌山
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 4 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 7 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 1 | 3 |
智辯学園
智辯和歌山 田林→滝谷
智辯学園 田中→大橋
2002年夏は四国勢がすべて8強入りし、無類の強さを誇った大会であった。一方、近畿勢は選抜優勝の報徳学園や西岡剛(ロッテ)を擁した大阪桐蔭など4強が初戦で姿を消す結果に。そんな中で唯一残った智学園と智辯和歌山の兄弟校2校が3回戦で史上初めて顔を合わせることとなった。
智辯学園は秦(横浜)-岡崎(阪神)の盤石のバッテリーを擁し、優勝候補に挙がった前年のチームから加治前(巨人)、上田、松山の打撃陣は残ったが、新チーム結成以降投手力が安定しなかった。
だが、最後の夏を迎えてエース田中が急成長を見せ、奈良大会を盤石の戦いで勝ち上がると、甲子園では決め球のスライダーを武器に拓大紅陵、海星を連続完封。一躍大会注目の好投手に躍り出た。また、主将の松山が骨折で抜けた打線も2番米田仁、3番加治前ら上位打線が起動して着実に得点を重ねた。
一方、智辯和歌山は一昨年の優勝から一転して前年のは和歌山大会で初戦敗退という結果に。新チームは岡崎、西村の1年生の優勝メンバーを中心にある程度打力には自信を持っていたが、選抜では関西の宮本(日本ハム)に4安打2点で完敗する結果に終わった。
しかし、夏に向けて課題とされていた投手陣でエース田林が一本立ちすると、打線も智辯和歌山らしく夏には復調。甲子園では初戦で札幌第一戦で9回に3点差を追いつかれながらも、延長戦の末に競り勝つと、2回戦では田林が東邦打線に9四死球を出しながらも3安打1失点で粘りの完投勝ち。選抜と比較して明らかにボールのキレが増したサイド右腕が、チームを押し上げる原動力となっていた。
ともに朱色の「智辯」の文字が胸に躍る同校のユニフォーム。袖の和歌山と奈良でしか見わけのつかない審判泣かせの両チームの対戦が第1試合で幕を開けた。
立ち上がりは両エースともに無難な投球を見せる。田中が切れ味鋭いスライダーと140キロの速球で真っ向勝負を挑めば、田林はサイドから左右両コーナーを突く丁寧な投球で的を絞らせない。互いにスタメンに下級生が多く並ぶ布陣だったが、序盤は上級生エースの投球が勝る。
しかし、3回に入って智辯和歌山打線がその威力を見せ始める。1アウトから9番田林、1番嶋田が甘く入ったストレートを連打すると、2番堂浦はスライダーを引っ張ってレフト前ヒット。田中の生命線の両球種をヒットし、圧力をかける。
3番本田はスライダーで空振り三振に取られた後、打席には4番捕手の岡崎が入る。カウント1-3からインサイドをストレートで突かれた後のスライダーを完全に読み切って振り抜いた打球は、レフト線へ落ちるタイムリー2塁打となり3人のランナーが次々に生還。この後、5番西村もセンターへタイムリーを放ち、一挙4点を先制する。
リードをもらった田林が余裕を持った投球で打たせて取るのをしり目に智辯和歌山は5回にも3番本田、4番岡崎、5番西村の3連打で3点を追加。2年前のような圧倒的な長打力はないものの、自分の狙っている球種を引き出すのが実にうまい。ただ厳しい練習を課されただけでなく、非常に野球IQの高い攻撃で大会屈指の本格派右腕をした。
反撃したい智辯学園は8回裏に先頭の代打・西村が2塁打で出塁すると、続く代打には主将の松山が入る。骨折で満足に走れない中、必死にファウルで粘って死球をもぎ取ると、ナインは奮い立ち、1番荒川・4番上田の2本のタイムリーで田林から得点を刻んだ。
ただ、前半の7点のビハインドは重たく、9回にも1点を返すもそこまで。智辯和歌山が兄弟校対決を7-3で制し、2年ぶりにベスト8まで勝ち進んだ。
智辯和歌山はその後、選抜準Vの鳴門工、東の横綱・帝京を下して決勝に進出。最後は明徳義塾に力負けしたが、見事に準優勝を飾った。この代は決して大会前の評判が高いチームではなかったが、高嶋監督に「あかんたれ」と評されながら、厳しい指導に耐えてつかんだ銀メダルは非常に価値あるものであった。
1994年春から2002年夏までの9年間で優勝3度、準優勝3度、ベスト4が1回は驚異的な戦績であり、智辯和歌山の黄金時代であった。その後、低迷期を迎えたこともあったが、現在は中谷監督の元で新たな黄金期を築き上げようとしている。
一方、智辯学園はこの大会に敗れた後、2003年からの4年間は復活を果たしたライバル天理の前に苦汁をなめ続ける結果となった。そんな中、1995年夏のベスト4時に主将を務めた小坂監督が就任。熱い指導でチームの強化を図り、2007年夏は強力打線で5年ぶりに奈良大会を制覇した。
甲子園では2回戦で仙台育英と対戦。1回戦で兄弟校の智辯和歌山打線をねじ伏せた佐藤由(ヤクルト)から集中打で5点を奪い、大会最速右腕に打ち勝った。この年の戦いぶりは強打の智辯学園を改めて印象付けるとともに、初陣の小坂監督に非常に自信を与えるものになっただろう。2016年選抜では同校初の全国制覇を達成。そして、今年いよいよ真紅の大優勝旗が手に届くところまで来ている。
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