2021年選手権1回戦
広島新庄vs横浜
52% 48%
ともに得点力が高く、総合力にも秀でた強豪同士の対戦。投手力で上回る広島新庄が少し優位に立つか。
広島新庄は本格派右腕の花田、昨年からエース級の左腕・秋山に加えて、左腕・西井が成長。33イニングで41奪三振を記録し、投手陣の柱となった。3人ともストレートにキレ・球威があり、変化球の精度も高い。それぞれ得意とする変化球も異なり。この3人でつながれると攻略は容易ではない。今大会でも屈指の投手力と言えるだろう。
対する横浜は7試合で100安打を放った強力打線が看板。選抜覇者・東海大相模に打ち勝つつもりで鍛え上げた打力は全国トップクラスと言えるだろう。1年生ながら1番を務める緒方は積極果敢に打って出る理想のトップバッター。安西(巨人)、荒波(横浜)に引けを取らないポテンシャルを持つ。中軸の金井、立花はパワーと柔らかさを兼ね備えており、村田監督の細かい指示にも柔軟に対応。緻密な横浜野球が復活する気配がある。
一方、横浜の投手陣はエース金井が本調子でない中で、杉山をはじめとするそのほかの投手の成長が優勝を大きく引き寄せた。特に杉山は1年生ながらマウンド度胸満点で1年生ながら変化球を器用に低めに集めて打たせて取る。ただ絶対的柱がいない分、やや広島新庄より投手力は落ちるか。投手の枚数は揃っているだけに、村田監督が思い切った投手起用をできるかどうか見ものだ。
対する広島新庄の打線は選抜でこそやや不発に終わったものの、この夏は好調を維持。左打者7人を並べたスピーディーな攻撃で相手をかく乱し、花田ら主砲の長打力で仕留めるのが得点パターンだ。作戦のバリエーションも豊富であり、横浜の若い守備陣をかき回す力は十分に持っている。パワーと機動性を備えた厄介な打線と言えるだろう。
ともに相手の攻撃力をどこまで封じ込められるかが重要となる。横浜としては若いメンバーが多い分、序盤から先行して勢いに乗れれば投手力の差を埋められる可能性はある。
主なOB
広島新庄…田口麗斗(ヤクルト)、堀瑞輝(日本ハム)、畝章真(広島)
横浜…愛甲猛(ロッテ)、鈴木尚典(横浜)、松坂大輔(西武)、涌井秀章(楽天)、及川雅貴(阪神)
広島 神奈川
春 2勝 4勝
夏 2勝 3勝
計 4勝 7勝
思い出名勝負
2008年夏2回戦
広陵
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
1 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 4 |
0 | 1 | 1 | 2 | 1 | 2 | 0 | 0 | × | 7 |
横浜
広陵 森宗→中田→前田
横浜 土屋
2008年夏の選手権で2003年選抜の決勝カードの再現となる試合が実現した。
広陵は前年夏に野村(広島)-小林(巨人)のバッテリーを中心に準優勝したが、この年は1番上本(広島)、3番林を中心とした攻撃型のチームに変貌。広島大会決勝では前年夏に競り勝った総合技術に一時2-9と大量リードを許したが、好投手・水野から打線が集中打を放ち、まさかの逆転劇で代表切符をつかみ取った。この試合で3本の犠飛を放つなど、好機で確実に外野へと運ぶ打者の技術の高さが光った。
一方、投手陣は速球派右腕・中田(広島)、技巧派右腕・前田、春季中国大会で20三振を記録した左腕・森宗の3本柱。ともに高いポテンシャルを誇るが、好不調の波が激しいのが難点。甲子園初戦の高知戦では一時5点のリードを集中打で追いつかれるなど、粗さも見られた。ディフェンス主体だった前年のチームと違い、やや守りには不安を覚える戦いぶりだった。
対する横浜は松本、小川、筒香(ドジャース)ら左の強打者を並べた打線とエース土屋(ロッテ)の好投で秋季関東大会を優勝。神宮でも順調に勝ち進み、敗れはしたものの決勝で常葉菊川と4-5と接戦を演じた。ところが、選抜ではセオリーをかわす強攻野球の北大津にかく乱され、2-6とまさかの完敗で初戦敗退に。チームは立て直しを迫られた。
カウント0-3からでも打ってくる北大津野球に再度自分たちの緻密な野球を再考させられた横浜。小倉コーチのもとで足元を見つめなおしたナインは、南神奈川大会を順当に勝ち抜いて優勝。県予選で不調だった筒香は甲子園初戦の浦和学院戦で7番に下がるも、先制2ランを放つ活躍を見せて復調。エース土屋も14安打を浴びながらも5失点で踏ん張り、まずは選抜の借りを返す初戦突破を果たした。
試合は初回からいきなり動く。広陵のトップバッター上本崇が土屋の高めのストレートをたたくと打球はレフト席に飛び込むホームランとなり、1点を先制。2003年夏には兄の上本博(阪神)もホームランを放っており、史上初の兄弟での先頭打者ホームランを達成した。この後、さらにランナー1,2塁と攻め込むが、土屋はなんとか後続を断つ。
2回に入っても調子の出ない土屋に対して、広陵はランナー1塁からエンドランを決めて1アウト1,3塁のチャンスをつかむ。ここで再び上本がインハイのボールをたたいて左中間を破り、1点を追加。しかし、1塁ランナーはホームまで生還できず、続く2番下川のセンターフライでホームへ突っ込むもタッチアウト。序盤アップアップだった土屋に2回までで5安打を放ちながらも1点止まりだったのは痛かっただろう。
広陵の先発は初戦で登板のなかった左腕・森宗。左打者が主力の横浜に対して登板させたが、こちらも序盤からコントロールがばらつく。2回に8番小田にタイムリー2塁打を許すと、3回には復調した2年生4番筒香に同点タイムリーを許し、早くも3回でマウンドを降りる。
土屋が徐々にリズムを取り戻す中で横浜は4回裏に2番手で登板した速球派右腕・中田を攻略。元気者の1年生大石のタイムリー3塁打で勝ち越すと、広陵守備陣の乱れを突いて一気にホームインする。1年生の一打で波に乗った横浜に対し、広陵は序盤に主導権を握り損ねた形でビハインドを背負うこととなる。
それでも、攻撃力に自信を持つ広陵は5回表に当たっている9番長谷部のヒットからチャンスを作り、3番林のタイムリーで1点を返す。ところが、横浜内野陣の一瞬のスキを突いて積極的に2塁を狙った林がセカンドで刺されてしまい、1アウト1,3塁のはずが2アウト3塁に。後続も打ち取られて結局チャンスを活かしきれなかった。
5回裏にもそつなく1点を追加した横浜が5安打5点なのに対して、広陵は8安打で3点。横浜のそつのなさが広陵の積極性を上回った形となった。
すると、後半は横浜がじりじりと差を広げていく。元来速球に強い打者の揃う横浜の打者はストレートで押す中田の投球をとらえて6回に4安打を集中。ついにヒット数でも広陵を上回り、7-3と大きくリードを広げる。
なんとか反撃したい広陵は8回に1点を返すも、横浜の二遊間の好守備に阻まれてチャンスを拡大できず。最終回にもランナーを出したが、最後は1番上本が打ち取られてゲームセットとなり、3-15で敗れた2003年の選抜のリベンジを果たす形で3回戦進出を果たした。
横浜はその後、仙台育英・聖光学院を下して4強に進出。準決勝で優勝した大阪桐蔭に敗れたが、東の横綱として存在感を示す大会となった。横浜高校が夏に8強以上に進んだのはこの年が最後となっており、小倉コーチが部長としてベンチ入りした最後の夏の甲子園でもあった。常連校ばかりを相手に4つの勝利をマークし、緻密でそつのない横浜野球を存分に見せつけた年だった。
一方、広陵にとっては何とも惜しまれる敗戦となった。積極的なミスは責めないという広陵の方針通りに果敢に攻めていったが、この試合では結果的に裏目に出る形となった。野手陣のポテンシャルでは前年を上回るかもと言われたこの年のチームだったが、それだけでは勝てないのが野球の難しさ。この後、如水館や広島新庄の台頭もあり、夏は準優勝した2017年まではなかなか勝ち上がれない年が続くこととなる。
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