大会3日目第2試合
山梨学院
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 |
0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | × | 2 |
天理
山梨学院 山田→榎谷
天理 南沢
春夏連続出場の強豪同士の一戦は、1点を争う好ゲームに。エース南沢を中心に堅守を見せた天理が、4強入りした2017年以来の夏の勝利を手にした。
試合
天理は奈良大会を無失点で投げ抜いたエース南沢、山梨学院は選抜以降に急成長を見せた右腕・山田を先発にたてた。
天理の南沢は選抜で初戦敗退に終わったものの、星稜打線を終盤まで封じた実力者。188㎝の長身からサイドとスリークオーターの中間くらいの腕の振りでボールを投じる。ゆったりしたフォームからキレのあるボールを繰り出し、左打者のインサイドも強気に攻める。山梨大会で4割超えの打率をマークした強打の山梨学院打線をもってしても、なかなか自分のポイントではとらえきれない。
これに対して、山梨学院は選抜で快投を見せたエース榎谷に迫るほどの成長を見せた右腕・山田が先発。いきなり1番藤森、2番松本に連打を浴びて無死1,3塁とされるが、中軸を三振2つと内野ゴロに仕留め、ピンチを脱する。バランスの取れた投球フォームから内外角をきっちり投げ分け、好打者の並ぶ天理の中軸の決定打を許さなかった。
序盤は守り合いの様相。天理はセカンド藤森がファウルフライを見事にジャンピングキャッチするなど、守りの堅さを見せる。選抜の星稜戦で内野の守りの乱れから敗れた悔しさがしっかり活かされている。一方、山梨学院も先発の山田が全くスキのないピッチングを展開。抜群のコーナーワークで天理の打者をきりきり舞いさせる。選抜であれだけの投球を見せた榎谷から先発の座を奪っただけのことはあるというピッチング内容だ。
こうなると、先制点の占める比重は大きくなってくる。その大事な1点を先に手にしたのは伝統校・天理だった。
4回裏、1アウトから4番戸井がインサイドの速球をレフト線へ運ぶ2塁打とする。少し、甘く入ったとはいえ、やはり戸井のスイングは天理の打線の中でも別格だ。山梨学院バッテリーにもプレッシャーを与える一打となる。5番山村はセンターフライに終わるも、続く6番内藤が立ちはだかる。奈良大会後に、不調で打順降格となった男は、山田の決め球のスライダーを右打ちのお手本と言える打撃でライト前に打ち返し、戸井が生還。主砲の意地を見た一打だった。
先制点をもらった南沢は、力の抜けたフォームから投じるボールのキレで山梨学院打線を封じ込める。コース、高さの両方を間違う球はほとんどなく、山梨学院打線としてもなかなか攻略の糸口を見いだせない。そもそも、こういう角度から来るボールを練習する機会も少なく、初見で攻略するのはやはり難しい投手だろう。
6回表のピンチも三振ゲッツーでしのいだ天理はその裏に大きな追加点を挙げる。2アウトから4番戸井が今度はライトへ痛烈なヒットを放つと、打球が不規則にバウンドしてライトが後逸する間に2塁を奪う。ここで5番山村がすかさず初球のストレートをレフト線に打ち返す2塁打として追加点を奪う。相手の動揺が見える中での初球攻撃、4番5番と連続して逆方向へ打ち返すシュアな打撃、さすが名門・天理である・
南沢の出来を考えると大きな2点目が入り、試合は終盤戦へ。山梨学院は7回表に1アウトから7番岳原が2塁打を放ち、チャンスを迎える。山梨学院のラインナップの中ではこの岳原が最もタイミングがあっていそうだ。しかし、続く8番佐仲、代打・山本は連続三振に取られ、無得点。追い込んでから絶妙なコースに投じるスライダーは威力抜群だ。
一方、山梨学院も7回からエース榎谷を登板させ、流れを変えようとする。榎谷は選抜の時ほどの出来ではなかったが、伸びのある速球を武器に天理打線を2イニング無失点で封じる。関東屈指の好投手が意地の投球で流れを呼びこみに行く。
1点を追う最終回、山梨学院は強打でチームを牽引してきた4番高橋、5番相沢が打ち取られ、2アウト。万事休すかと思われたが、ここからドラマが起こるのが甲子園だ。6番渋谷が1,2塁間をしぶとく破るヒットで出塁すると、打席にはタイミングの合っている7番岳原。高めに浮いたスライダーをとらえると、打球は浜風に乗ってレフト大城の頭上を越え、ついに待望の1点が入る。
ここで、背走していた大城が足をつった影響で、少し間があく。今大会は酷暑の影響でこういう場面がどうしても多くなってしまっているが、この時間で天理バッテリーは落ち着きを取り戻すことができたか。続く8番佐仲をアウトコースのスライダーで打ち取り、打球はこの日再三好守を見せていたセカンド藤森の前へ。これを藤森がきっちりさばいて、1塁へ送球し、試合終了。1点を争う好ゲームをものにした天理が2回戦へコマを進めた。
まとめ
天理はこの日は完全に「守り勝った」と言える試合だっただろう。打線は山梨学院・山田の好投の前に2点どまりだったが、その2点もエース南沢の投球と内外野の堅い守備で生み出した「守りのリズム」からの得点だっただろう。特に南沢は失投と呼べるボールは本当に少なく、選抜以上に相手にスキを見せない内容であった。
中村監督になってから、かつての脆さは少なくなり、持っている以上の力が出るようになってきた印象の天理。打つべき人が打ち、エースを中心にしっかり守り切れる今年の天理は、上まで勝ち進む力を十分秘めているだろう。
一方、敗れはしたものの、山梨学院もディフェンス面では素晴らしい内容だったと言えるだろう。特に、先発・山田は持ち味のコントロールを活かして、天理打線をきっちり封じる投球を見せた。6回にややエアポケットに入ったところを突かれた失点が結果的に痛かったが、それ以外はほぼ100点の投球だったのではないだろうか。
選抜で抑え込まれた打線は、再び全国レベルの好投手の前に屈する形となったが、野球は投手中心のスポーツである以上は、致し方ない結果だったような気はする。この日のようにしっかり守れる野球ができていれば、今後も甲子園に出てきて勝ち上がる可能性は十分あるはずだ。
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