大会3日目第3試合
高知
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | 4 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 2 |
東洋大姫路
高知 山下→中嶋→日野
東洋大姫路 森
甲子園優勝経験のある伝統校同士の一戦は、中盤に高知の強力打線が東洋大姫路のエース森を攻略。継投でリードを守り切り、4強入りした2013年以来となる勝利を手にした。
試合
昨秋は攻撃力で四国大会を制した高知とエース森を軸とした守りの野球の東洋大姫路。高知打線vsエース森という、試合の焦点は非常にわかりやすい試合であった。
立ち上がりから姫路のエース森は高知の各打者のインサイドを果敢に突く投球を見せる。近畿大会で大阪桐蔭打線を相手にもひるまず攻めた好右腕だが、高知サイドにもこの情報は当然入っており、立ち上がりからそのボールを狙っている節は感じ取れる。
1回表、2アウトランナーなしから3番高橋が粘って8球目で四球をもぎ取ると、続く4番川竹はインサイドのストレートがやや甘めに入るのを待ってましたとばかりに引っ張ってレフトへの2塁打を放つ。主砲が強打で圧力をかけると、続く5番西野もインサイドのストレートを痛烈にレフトに引っ張る。しかし、これを東洋大姫路のレフト賀川がダイビングキャッチし、森はなんとか無失点で立ち上がる。
このあたりはさすが、守りの東洋大姫路。2003年の花咲徳栄との引き分け再試合の1試合目で1,2回と連続して外野に好返球が飛び出したのを思い出した高校野球ファンは私だけではないはずだ。
これに対して、高知の先発は1番打者も務める山下。昨秋は投手陣の柱が見つからなかった高知だったが、この日の山下は安定したコントロールでしっかり試合を作る。是が非でも先制点の欲しい東洋大姫路は初回から藤田監督がスチールを仕掛け、得点圏にランナーを進めるが、山下の前に決定打が出ない。
一方、東洋大姫路の森も初回のピンチをしのいだことでリズムに乗る。小柄な体格ながら真っ向投げ下ろしの投球のため、ボールに非常に角度があり、高知の各打者も苦戦する。先輩・森木(阪神)のボールを見慣れているはずのバッター達でも苦戦するのだから、それだけ森のボールの質がいいのだろう。
0-0で進む試合。これは東洋大姫路の流れかと思っていたが、この局面を先に打開したのは打者3巡目に差し掛かった高知打線であった。
5回表、1アウトから8番櫛田がストレートを振り切ってセンターに詰まりながらも落とすと、続く9番三谷には初球でエンドランを敢行。カーブをとらえた打球は奇麗にセンターに落ち、1,3塁のチャンスを迎える。永年、中学軟式野球を指揮してきた浜口監督だけあって、チャンスを切り開く場面では躊躇がない。
ここで打席には1番山下。当然インサイドのストレートが頭にある場面で東洋大姫路バッテリーもこの勝負球を選択する。しかし、森の角度があるうえに少しシュート回転するという、この厄介なボールを山下はしっかりととらえると、打球は3塁線を痛烈に破るタイムリー2塁打となって高知が1点を先制する。
さらに2アウト後には、3番高橋もストレートを詰まりながらもセンター前に落とす2点タイムリーを放ち、この回計3点。東洋大姫路にとってはあまりにも痛い失点であったが、決め球を中盤できっちり攻略した高知打線が見事というほかない。
攻勢を強める高知は6回表にも先頭の5番西野が2塁打で出塁。森が粘って2アウトまでこぎつけるが、8番櫛田のショートゴロが痛恨の悪送球を呼んで4点目が刻まれる。
反撃したい東洋大姫路だが、ようやく山下のボールに慣れ始めたところで浜口監督は2番手のサイド右腕・中嶋にスイッチ。その中嶋から8回裏に東洋大姫路は3番賀川、4番山根の中軸が連続2塁打を放って2点を返し、意地の追撃を見せる。しかし、試合の主導権はずっと高知が握っている感はあった。最終回の反撃を3番手の変則右腕・日野に阻まれてゲームセット。高知が4-2で伝統校対決を制し、ベスト16へとコマを進めた。
まとめ
高知は打線も投手陣も際立った選手はいないものの、とにかくスキがなく層が厚い印象を受けた。特に5回の攻撃は下位打線のエンドランからつかんだチャンスで、上位打線が相手エースの決め球を攻略するという見事なものであった。投げては山下から中嶋、そして日野へとタイプの違う3投手でしのいで2失点のみ。浜口監督のタクトに選手がしっかり応える四国王者が侮れない存在になってきた。
一方、東洋大姫路はエース森が持ち味は発揮していたが、やはり「決め球」の使い方は難しいところ。使いすぎると相手が慣れてしまうし、使わないと良さが出ないという諸刃の剣である。今はSNSなどで情報が簡単に出回るだけになおさら不利に働く面もあるだろう。それでも初回の堅守や8回の堅守など、エースだけに頼らないチーム力の向上が見られた試合であった。
そして、永年チームを指揮してきた藤田監督も今回が最後の指揮となった。打撃全盛の時代において、愚直なまでに投手を中心とした守りの野球で存在感を発揮し続けたことはオールドファンにとっては誇らしいことだっただろう。途中堀口監督に交代した時期もあったとはいえ、あのグエン・トラン・フォク・アンが1年生だった2001年夏から出場5大会連続2勝以上という安定感は、素晴らしいの一言である。
原樹里(ヤクルト)・佐藤翔太・乾真大(日本ハム)など数多くの好投手を育て、「出ると強い東洋大姫路」の歴史を紡いできた名将の一時代が今日、幕を下ろすこととなったが、その伝統は同校OBである岡田監督がしっかり引き継いでいってくれそうだ。
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