2022年選抜2回戦予想 明秀日立vs市立和歌山

2022年

2022年選抜2回戦

明秀日立vs市立和歌山

52% 48%

〇8-0  大島  〇5-4  花巻東

総合力で比較すれば、打力に秀でる明秀日立に分があるだろう。市立和歌山はエース米田の投球次第で勝機が見えてくる。

 

市立和歌山・米田は伸びのある速球と低めに落ちるスライダー、チェンジアップを武器に花巻東の強力打線を終盤まで1失点に抑えた。左打者へのアウトコースが外に流れる傾向があり、右打者の多い明秀日立の方が「左右」の観点では相性がいいか。ただ、1回戦の序盤のように制球を乱すと、明秀日立打線に真っすぐを狙い撃ちされる可能性があり、変化球の精度を試合開始から高めていきたい。同じく本格派右腕の淵本やサイドハンドの奥地の出番もあるか。

対する明秀日立打線は、1回戦で大島の好左腕・大野を攻略。立ち上がりから鋭いスイングでプレッシャーをかけ、迫力という点では大会でも屈指の打線だろう。3番石川、4番武田に当たりがそこまで出なくとも、5番以降で畳みかけられる層の厚さがある。米田の高めに抜けるストレートを捨てるのか、あるいはあえて狙わせるのか、金沢監督の作戦も気になるところだ。

 

一方、明秀日立のエース猪俣は低めの変化球を打たせる投球で1回戦は併殺の山を築いた。高さを間違わないため、単打は許しても、大けが(長打)はしないピッチングができる。最終回に左腕・石川を登板させられたのも大きいだろう。次戦も猪俣の先発になりそうだが、球数制限の影響も考えると、他の投手の出番も十分にあり得る。

対する市立和歌山打線は、初戦で花巻東の左腕・萬谷を攻略。センターから逆方向にコンパクトなスイングではじき返し、技巧派投手のお手本と言える攻撃を見せた。ただ、明秀日立の猪俣はストレートに威力があり、まずは球威の負けないスイングをすることが重要だ。ストレートでファウルを稼がされて、スライダーを打たされる格好になると相手の術中にはまってしまうだろう。初戦で3安打をマークした4番寺田の前にチャンスで回していきたい。

 

市立和歌山としては、1回戦のように序盤でアドバンテージを得て米田に余裕を持って投げさせる展開が作れればベストか。勝ちパターンとしては打力のある明秀日立の方が多い印象。初戦と同様にフルスイングで相手バッテリーに圧力をかけたい。

 

主なOB

明秀日立…増田陸(巨人)、細川成也(DeNA)、ンドカ・チャールス(サッカー)、岡田英里(バスケットボール)、小滝水音(ゴルフ)

市立和歌山…藤田平(阪神)、川端慎吾(ヤクルト)、益田直也(ロッテ)、松川虎生(ロッテ)、小園健太(DeNA)

 

和歌山  茨城

春  3勝  1勝

夏  0勝  5勝

計  3勝  6勝

春は和歌山勢が、夏は茨城勢がリード。夏に関しては茨城勢が全勝と抜群の相性を誇っている。

1984年の夏では取手二と箕島のV候補2校がいきなり初戦で激突。嶋田(阪神)、杉本(広島)とのちにドラフト1指名される両エースを要した箕島に対し、取手二は序盤にいきなり3点のビハインドを背負う。箕島の鋭い攻めに取手二のエース石田(横浜)もタジタジだったが、なんとか3点で踏ん張ると、8回表に味方打線が一挙5点を挙げて大逆転。試合後に喜び過ぎて審判団に怒られるほど、ヤンチャ軍団にとって会心の勝利であった。

この逆転劇で勢いに乗った取手二は決勝まで勝ち上がると、桑田・清原(ともに巨人)のKKコンビが2年生だったPL学園を延長戦で下し、茨城勢初優勝を飾ったのは有名な話だ。

一方、1994年の選抜では智辯和歌山と常総学院が対戦。智辯和歌山は前年夏に甲子園初勝利を挙げたばかりだったが、笠木-松野の継投と井口、中本を中心とした強打がかみ合い、横浜・宇和島東・PL学園とV候補を次々ねじ伏せて決勝に勝ち上がってきた。

この強力打線を擁するチームに対し、右サイドハンドのエース清本を擁する常総学院は、木内監督があえて左中間を広く空ける守備シフトを取らせ、智辯の右打者が引っ張りたくなるような状況を作った。しかし、智辯の各打者は愚直なまでのセンター返しで対抗。常総も3点差を追いつく粘りを見せたが、最終回に7番藤田の決勝打が飛び出した智辯和歌山が2度目の選抜出場で初優勝を飾った。この年から智辯和歌山の黄金時代が幕を開けることとなる。

思い出名勝負

2003年夏2回戦

智辯和歌山

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 0 0 2 0 0 1 0 0 3
2 0 0 0 2 0 1 1 × 6

常総学院

 

智辯和歌山  滝谷→坪内→木林

常総学院   磯部→飯島

 

2003年の選手権大会は序盤は静かな滑り出しを見せていたが、2回戦で選抜優勝の広陵が岩国に逆転負けを喫すると、ここから優勝候補が次々と姿を消す波乱の展開となる。強豪が同ブロックに固まった影響もあったが、広陵以外にも、春季四国王者の今治西、復活を期す名門・PL学園、前年王者の明徳義塾、選抜8強の近江と名だたる強豪が3回戦を前に甲子園を後にした。

そして、2回戦の最後から2カード目もまた優勝候補同士の対戦に。4季連続出場で前年夏の準優勝メンバーが多数残る智辯和歌山と名将・木内監督の最後を飾らんとする常総学院。決勝のカードと呼ばれてもなんら不思議でないV候補同士のつぶし合いが始まった。

 

智辯和歌山は前年までの9年間の春夏の甲子園で優勝が3回、準優勝が3回、ベスト4が1回と出場すれば、必ず上位まで勝ち進んでいた。1学年10人の少数精鋭制度、夏の県大会まで体力強化を図るという驚異的な体力調整、徹底した打撃強化と高嶋監督の甲子園で勝ちあがるメソッドを叩き込まれたチームはあっという間に全国屈指の強豪へと上り詰めた。

打線は、前年の夏にもスタメンを務めていた嶋田、堂浦、上野、本田を1番から4番にずらりと並べ、5番以降にも山崎、山本、森川と実力者が並んでいた。また、春以降、捕手を上野から加藤に変更し、選抜とは違う布陣で臨んだが、滝谷・坪内の2年生の左右2枚看板が安定し、夏の和歌山大会を圧倒的に勝ち抜いた。

甲子園では初戦で兄弟バッテリーが話題となった長野工から5番山崎が3ランを放ち、6-1と快勝。まずは順調なスタートを切った。

 

一方、常総学院も夏は3年連続の出場。前年夏は優勝した明徳義塾を6-7と唯一苦しめ、存在感を放った。しかし、新チームでもエース格として期待していたサイド右腕の飯島の調子が上がらず、秋季関東大会では成瀬(ロッテ)、涌井(楽天)を擁して選抜準優勝を果たすこととなる横浜に2-7と完敗。チームは苦しい時期を過ごしていた。

しかし、夏を前にして木内監督の巧みな選手操縦法で飯島が復活すると、打線も坂(阪神)・松林の中軸を中心に順調な仕上がりを見せていた。夏の茨城大会では決勝で美馬(ロッテ)-新岡のバッテリーを相手に初回に1番平野が出塁すると、2番泉田には犠打でも盗塁でもエンドランでもなく強攻の指示。これに答えた泉田がいきなりレフトに先制2ランを放ち、完全にゲームの流れを掌握して7-1と快勝した。

名将のタクトに乗って、得体のしれない強さを放つ常総学院には大会前から何かやってくれそうな期待が漂っていた。1回戦ではスラッガー吉良(近鉄)を擁し、県大会5試合でわずか2失点の柳ヶ浦と対戦。左腕エース磯部が7回途中まで無安打の快投を見せ、2-1で投手戦を制した。

 

ともに1回戦は守り合いを制して、勝ち上がってきた両校。木内監督は「負けても許される相手」と謙遜していたが、1994年選抜決勝のリベンジへ向けて闘志みなぎっていた。一方、智辯和歌山の主砲・本田も気合十分。試合前に木内監督が最後の夏であるとコメントを向けられると、「今日で引退してもらいます」と強気に言い放っていた。

先発は初戦と同様に常総学院が磯部、智辯和歌山が滝谷と両左腕の先発となった。

1回表、2アウト3塁のピンチで磯部が智辯の4番本田をライトフライに打ち取ると、その裏、常総学院は2番泉田の内野安打と3番坂のサードゴロエラーでランナーをためる。2アウト後に5番吉原にライト前タイムリーが出ると、3塁を狙った坂を刺そうとしたライト山崎が悪送球をしてしまい、坂もホームに生還。1回戦のラッキーボーイ山崎が痛い失策をしてしまう。

強打が注目される智辯和歌山だが、「負けるときは守備が乱れた時」と高嶋監督は守りにこだわりを持っており、早くもその負けパターンが頭をちらつくような嫌な滑り出しとなる。

それでも、2回以降は2年生左腕・滝谷が踏ん張りを見せると、4回表に智辯和歌山打線が反撃を開始する。4番本田、5番山崎の連打でチャンスを作ると、7番加藤の2試合連続タイムリーでまず1点。さらにランナー3塁で捕手・大崎がスクイズを警戒してウエストするもこれがキャッチャーミットをはじく暴投となって3塁ランナーが生還。常総にも守りのミスが出てしまう。

ここで、1回戦で快投を見せた磯部を木内監督はスパッと変え、県大会でもあまり投げていなかった飯島をマウンドに送る。「今日の磯部はツキがない」とのことだったが、木内監督にしかできない采配である。

すると、5回裏、今度は攻撃で木内マジックがさく裂する。2番泉田、3番坂の連打と犠打で2,3塁のチャンスを作ると、2アウト後に打席に代打・上田を送る。県大会でもそう出番の多い選手ではなく、智辯バッテリーもおそらく「誰だ!?」と思ったことだろう。

この代打・上田をを滝谷は投手ゴロに打ち取るも、なんとファーストへの送球が大暴投となって2者が生還。智辯としては4失点中3失点が失策がらみと完全に自滅パターンだったが、観衆は「これも木内マジックか」と感じsざるを得ない場面だった。

その後、智辯和歌山は7回表に4番本田のタイムリーで1点を返すが、常総学院は智辯和歌山のリリーフ陣を攻めて7回、8回と着実に加点。智辯和歌山としては滝谷と左右の軸として考えていた右腕・本田の調子が上がり切らなかず、起用できなかったことがここ来て響いた印象だった。

それでも、この両校の戦いは最終回までドラマがあった。9回表、1アウトから1番嶋田のヒットと代打・前田の四球で1,2塁のチャンスを作る。ここで3番上野は一度捕手の頭上に飛球を打ち上げるが、これをなんと捕手・大崎が落球。命拾いした上野はレフト前にヒットを放ち、なんと1アウト満塁で本田に打席が回る。

絶体絶命の場面で、ここまでロングリリーフを務めてきた飯島にはどん底から這い上がった強さがあった。アウトコースへの丁寧な投球で本田を追い込むと、最後は必殺のスライダーを前に智辯の主砲は空振り三振。なおも一発出れば逆転の場面は続いたが、常総バッテリーの集中力は最後まで切れなかった。5番山崎の打ち上げた打球を主将・松林がつかんでゲームセット。常総学院がしびれる戦いを制して、3回戦進出を決めた。

 

常総にしてみれば、お互いにミスが出た試合にはなったが、最後は名将・木内監督の采配が勝利を呼び込んだ。よく木内マジックと言われていたが、普段から選手のことをよく観察している木内監督からすれば、なんら不思議なことはしていなかったとのこと。選手個々が最も力を発揮できる場面で、型にとらわれることなく臨機応変に起用したことが、相手にとっては有形無形のプレッシャーを与える「マジック」となった。

その後、静岡・鳥栖商・桐生第一と危なげなく下して決勝に勝ち上がると、最後はのちのメジャーリーガー・ダルビッシュ(パドレス)までも攻略。最後は監督が具体的な指示は出さずに、選手個々が考えて攻撃をつなげるという、「大人の野球」で剛腕を沈め、取手二時代以来実に19年ぶりとなる夏の頂点に輝いた。

 

一方、智辯和歌山にとっては守りの乱れが失点につながるという「負けパターン」にはまった試合となった。強豪対決となったが、意識過剰になってしまったのは智辯和歌山の方だったかもしれなかった。思えば出場するたびに決勝まで勝ち進んでいた智辯和歌山の神通力が止まったのもこの年だったような気がする。

その後、苦しい時期も過ごした智辯和歌山だったが、昨年中谷監督の元で21年ぶり3度目の夏の頂点に輝き、現在は再びその強さを取り戻している。

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