2023年選抜3回戦
高知vs専大松戸
49% 51%
〇4-1 北陸 〇3-0 常葉大菊川
〇3-2 履正社
本格派右腕・平野を擁する専大松戸と試合巧者の高知の対戦。しぶとい野球の高知がエースを中心に正攻法で向かう専大松戸にどう対峙するか。
平野は初戦は常葉大菊川打線を相手に序盤は変化球主体、終盤はストレート主体の投球で7安打を浴びながらもしり上がりに調子を上げていった。力感のないテークバックから繰り出される速球はキレを伴った本物のスピードボールであり、相手打者のバットを押し込むことができる。まだまだ余力を残していそうであり、速球を攻略しないことには平野からの得点は難しいだろう。捕手・吉田のインサイドワークも素晴らしく、難攻不落のバッテリーと言える。
対する高知打線は初戦は北陸の長身右腕・友廣の角度のあるボールを攻略、2回戦は履正社の左腕・福田に7回まで無安打に抑えられながらも、8回にワンチャンスを活かして勝利と、しぶとい野球を展開する。スター選手はいないものの、各選手がしっかりつなぎの意識を持ち、相手の見せたスキに付け込むしたたかさがある。平野の速球に対し、序盤からコンパクトなスイングで対応していけるか。相手バッテリーの配球にも翻弄されないように注意したい。
一方、高知は1,2回戦と継投策で2試合を計3失点に封じている。特に2年生右腕の辻井は伸びのある速球とスライダーを武器に、初戦は先発、2回戦はリリーフでチームをすくう働きを見せている。下級生ながら、この大会は投手陣の軸になっていくだろう。専大松戸・平野からそう多くの得点は望めないだけに、この試合も濱口監督は早め早めの継投をしてきそうだ。1,2戦と温存した変則サイド・中嶋をどのタイミングで使うのかも注目だ。
対する専大松戸は中山・吉田・太田の中軸を中心に速球には強い打者が並んでおり、得点力は決して低くはない。しかし、2回戦は常葉大菊川の左腕・久保が立ち直ると、中盤から終盤にかけて得点はおろかほとんどランナーも出せなかった。内外をスライダーで丁寧に攻め分ける投球の前に翻弄された姿を高知・濱口監督はどう見ているか。ただ、高知投手陣は基本的にストレート主体に押す投手が多く、相性としてはそう悪くなさそうだ。攻め方としては犠打を使ってタイムリーを待つオーソドックスな形になりそうだ。
高知としては2回戦と同様に、この試合も3点以内のロースコアの接戦で勝機を見出すことになるだろう。一方、ディフェンスに自信をもつ専大松戸としても初戦と同様に、先制して守り切る展開が理想か。互いに自分たちの勝ちパターンに持ち込んでいけるか、楽しみな試合になりそうだ。
主なOB
専大松戸…上沢直之(日本ハム)、高橋礼(ソフトバンク)、渡邉大樹(ヤクルト)、原嵩(ロッテ)、深沢鳳介(DeNA)
高知…有藤通世(ロッテ)、杉村繁(ヤクルト)、木下拓哉(中日)、和田恋(楽天)、森木大智(阪神)
千葉 高知
春 2勝 2勝
夏 4勝 2勝
計 6勝 4勝
春は2勝2敗のタイ、夏は千葉勢がリードしている。
1985年の選抜では伊野商と東海大浦安が対戦した。優勝候補の一角だった東海大浦安の強力打線に対し、伊野商のエース渡辺智(西武)が快刀乱麻のピッチングを展開。自らのホームランなどで挙げた得点を守り切り、6安打1失点で甲子園初勝利を飾った。この後、準決勝ではのちに西武でチームメイトになる清原和博を3三振に抑えて勝利し、この大会初出場初優勝を飾ることとなる。
一方、2001年夏は習志野と明徳義塾が激突した。2年生の3番森岡(ヤクルト)、主砲・松浦を中心に強力打線を誇る明徳打線に対し、習志野はエース佐々木が決め球のフォークを武器に好投。1回戦で選抜8強の尽誠学園打線を沈めた決め球は、明徳打線にも通用し、馬淵監督曰く「真ん中でも見逃せと言っていたが、バットが止まらなかった」と嘆かせた。女房役・白鳥の2ラン一発で挙げた得点を最後まで守り切り、2-1で逃げ切り勝ち。最終回は外野手の3連続ファインプレーが飛び出し、ディフェンス力で挙げた勝利であった。
強豪県同士の好カード。勝利するのはどちらか。
思い出名勝負
2018年選抜2回戦
中央学院
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 4 | 0 | 5 |
3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 3× | 7 |
明徳義塾
中央学院 大谷
明徳義塾 市川
記念大会で出場校が36校と多かった第90回大会センバツ高校野球。その初戦で地区大会王者同士、しかも神宮の再戦となる好カードが組まれた。
中央学院はエースで3番の投打二刀流、しかも名前も大谷であるという、注目の大谷拓海がいよいよ全国デビューを飾ることとなった。千葉県内では実力校として知られていた同校だが、初出場を果たすときは、例によってこういうスター選手を擁する時が多い。恵まれた体格から繰り出す140キロ台中盤の速球派威力十分であった。
関東大会でV候補の東海大相模や、強打の明秀日立に競り勝ち、一気に関東の頂点に立つと、神宮でも大谷が流し打ちのホームランを放ち、観衆の度肝を抜いた。もちろん大谷以外にも宇田、高鹿など実力ある打者が多く、優勝を狙うポテンシャルは十分秘めている。
一方、明徳義塾は2005年に不祥事で出場辞退となった後、2010年代に復活を果たしてまた出場を重ねていた。ただ、2000年代に比べるとややチームとして小型化した印象はあり、小技や巧みなミート打撃で得た得点を接戦で守り切る印象が強かった。明徳らしい野球であり、高校生らしいチームと言った印象だったが、準々決勝・準決勝で最後はパワー負けしている印象もあった。
しかし、2018年度のチームは速球派のサイド右腕・市川(ヤクルト)、主砲・谷合と、投打に太い柱を有し、スケールの大きな印象であった。四国大会を危なげなく制すると、神宮でも上述した中央学院、静岡、創成館と下して優勝。馬淵監督に初めてとなる秋のタイトルをもたらした。スター集団の大阪桐蔭がこの大会の優勝候補筆頭に上がっていたが、明徳義塾も選抜初優勝へ向け、腕を撫していた。
試合開始前、中央学院のラインナップを見ると、なんと「1番大谷」の文字が。「栗山監督か!?」と思わず突っ込みを入れたくなるような相馬監督の起用だったが、チームに勢いをもたらすにはもってこいの打順でもあった。
その大谷が初回、いきなり相性のいい右サイドの市川に対してライトへ詰まりながらもヒットを放つ。犠打で送って中軸の一打に期待したが、3番宇田・4番高鹿と凡退。左打者のインサイド、右打者のアウトサイドをスライダー主体に厳しく攻める市川の投球に手が出ない。
一方、投手としてももちろん注目の大谷だが、前年秋からやや肘の位置が下がっており、一度対戦した明徳の打者も少し戸惑ったのではないだろうか。
しかし、そんなことはお構いなしと、明徳は好投手の立ち上がりを攻め、1番真鍋の四球と2番田中の犠打野選を足掛かりに2アウトながら1,3塁とチャンスを築く。ここで5番中隈がストレートを詰まりながらも振り切ると、打球はセンターの前に落ちるヒットとなってまず1点。送球間に好走塁で2塁を陥れると、6番安田もストレートをとらえて、今度はセンターの頭上を超すタイムリーとし、この回一挙3点を挙げる。
これに対し、中央学院打線は序盤3イニングは市川の前に沈黙。一度対戦経験があるとはいえ、右打者のアウトコースのコーナーギリギリに140キロ台の速球と高速スライダーがビシバシ決まるのである。そうそう打てる投手ではない。
だが、打者一巡した4回表、上位の左打者が市川をとらえる。2番平野が1,2塁間を破って出塁すると、続く3番宇田は珍しく高めに浮いた市川の速球を強振。打球は右中間を真っ二つに破るタイムリー3塁打となり、中央学院が1点を返す。ただ、なおランナー3塁のチャンスだったが、ここはスクイズを明徳バッテリーに阻止され、得点ならず。惜しいチャンスを逃す。
一方、大谷をとらえたい明徳打線だったが、2回以降はつながりを欠く。荒れ気味の投球である大谷にうまく序盤を切り抜けられると、ここから大谷が徐々に速球も変化球も低めに決まり始める。特にスライダーはコントロール、キレともに素晴らしく、さすが注目の好投手と思わせるピッチングを展開する。試合は両エースの安定した投球でなかなか複数のランナーが出ず、終盤に突入。
すると、迎えた8回表、市川が突然乱れる。右サイドで一度テークバックで肘をロックしたような状態からボールを解き放つが、リリースの感覚が狂ったのか、この回明らかに引っかかったような投球が多くなる。絶対的エースの想定外の制球難に馬淵監督も手の施しようがない。1番大谷からなんと3者連続の四死球が飛び出し、あっという間に塁上が埋まっていく。
打席にはここまで全くスライダーにタイミングの合わず、3三振の4番高鹿。しかし、振っていく姿勢はうしなっていなかった主砲は初球、ストライクを取りに来たスライダーを引っ張ると、打球は三遊間を抜け、走者2人が生還。貴重な同点タイムリーとなる。なおも乱調の市川は四球を与えて満塁となると、2アウト後に7番西村がアウトコースのスライダーを今度はセンターに打ち返す。制球が乱れてやや置きにきた分だけ、キレを欠いたか。いずれにせよ、中央学院の素晴らしい集中打であった。
しかし、初優勝を狙う明徳もこのまま終わるわけにはいかない。その裏、四球で得たチャンスは併殺に終わり、得点機がしぼみかけたが、ここから内野安打で出塁した5番中隈が盗塁で2塁へ。続く6番安田はインコースの速球をきっちりとらえてレフトへはじき返す。苦しんでいたスライダーを見極め、ストレートをとらえた一打で、中隈が生還。1点差に詰め寄り試合はわからなくなる。
そして、試合は9回に突入。信じられない幕切れが待っていた。
9回表、先ほどの乱調が嘘のようにコントロールを取り戻した市川が上位打線を3人で片付けると、明徳の最終回の攻撃は簡単に2アウトとなる。
が、ここまでかと思われた矢先、甲子園の魔物が顔を覗かせる。2番田中が執念のセンター返しで出塁。続く3番渡部が四球を選ぶと、打席にはここまで無安打の主砲・谷合が入る。相手の4番高鹿が同点打を放っており、気合も入っていただろう。大谷の高めに浮いた直球を迷いなく振り抜く。打球は背走するセンターのはるか上を超える逆転サヨナラ3ランに!1年生から4季連続出場の4番が最後にでっかい仕事を果たし、明徳義塾が劇的な初戦突破を果たした。
明徳の馬淵監督はこれが甲子園通算50勝目。松井秀喜の5打席連続敬遠や松坂大輔率いる横浜戦の大逆転負け、そして2002年の初優勝と数々の歴史を積み上げて成しえた偉業であった。ただ、これで勢いに乗るかと思われた次の試合、強打の日本航空石川を相手に9回まで1点をリードしていたが、今度は相手の3番原田に市川が逆転サヨナラ3ランを浴びることに。「サヨナラホームランに笑い、サヨナラホームランに泣いた」明徳の春は3回戦で幕を閉じる結果となった。
一方、中央学院としては、勝利まであと一歩に迫っただけに悔やまれる結果となった。ただ、8回に市川をとらえて逆転劇は本当に見事なものであり、チームの底力を感じさせる攻撃であった。中央学院は夏も連続出場を果たすのだが、大谷は怪我の影響で投手として登板はできなかった。サイド右腕・西村の奮闘で甲子園までたどり着いたが、その甲子園では初戦で済美に4-5と惜敗。春夏連続で四国の試合巧者相手に涙を飲む結果となった。大谷の本来のパフォーマンスを見たかった高校野球ファンも多かったと思うが、この夏、それは叶わなかった。
明徳義塾vs中央学院【第90回選抜】2018年 – YouTube
【好投手列伝】高知県篇記憶に残る平成の名投手 3/3 | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)
コメント