2023年選抜準々決勝 報徳学園vs仙台育英(10日目第4試合)

2023年

大会10日目第4試合

仙台育英

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
0 0 0 0 0 1 0 0 2 1 4
2 1 0 0 0 0 0 0 0 5

報徳学園

 

仙台育英   仁田→高橋→湯田→田中

報徳学園   間木→盛田→今朝丸

名門校同士の激突となった準々決勝第4試合は終盤に二転三転する好ゲームに。タイブレークの死闘を制した報徳学園が、6年ぶりのベスト4進出を果たした。

試合

報徳学園は過去2戦ともリリーフ登板だった2年生右腕・間木が先発。一方、仙台育英は初戦以来の先発となる左腕・仁田をマウンドへ送った。

間木は初回、いきなり仙台育英の1番主将・山田を四球で歩かせてしまう。さらに2番橋本には追い込みながら決め球が甘くなり、センターへヒット。いきなりピンチに立たされてしまう。しかし、続く3番寺田の犠打が正面を突き、間木が落ち着いて3塁へ送球して封殺すると、4番齋藤陽・5番尾形をレフトフライに打ち取り、無失点で切り抜ける。捕手・は強気のインサイド攻めで間木をリードし、たびたび鋭い牽制球を投じて仙台育英の機動力に待ったをかける。

その裏、マウンドには仙台育英の左腕・仁田。初戦の慶応戦は雨の中、自分の投球がなかなかできなかっただけに今日は雪辱のマウンドとなる。1番岩本を三振、2番山増をショートゴロ打ち取り、好調な立ち上がりに思えた。ところが、ここから3番、4番石野と連続四球を与えてしまう。は4番石野の打席で盗塁も決め、ライバル視する仙台育英の捕手・尾形に圧力をかける。

報徳にとっては絶好の先制のチャンス。ここで5番辻田は仁田のスライダーをセンターに打ち返す。センターの守備位置から考えると、ホーム突入を指示しても良かったが、3回戦の東邦戦で幾度もホームで刺された残像がよぎったか、サードコーチャーはストップをかける。2アウト満塁となってその3回戦でサヨナラ打を放った6番西村仁田のスライダーをうまくためてミートすると、打球は1,2塁間を破る。2塁から石野も生還し、この回2点を先制。幸先のいいスタートを切る。

リードをもらった間木は2回は一転して安定した投球。エース盛田今朝丸のようなボールの角度はないが、短いテークバックからキレのある速球・変化球を丁寧にコーナーへ投げ分けていく。打たせて取っていくため、非常に守りのリズムも良く、3者凡退で2回を無失点で抑える。

直後の2回裏、報徳は好調の8番仁田のスライダーをとらえてライト前ヒットで出塁。決め球をとらえられている姿を見て須江監督は厳しいと判断したか、ここで2番手の高橋にスイッチする。報徳は犠打で二進させると、1番岩本はフルカウントからエンドランで3塁にゴロを転がす。これが内野安打となってチャンスを広げると、2番山増のショートゴロの間にが生還。3点目が入り、序盤は完全に報徳ペースで試合が進む。

3回以降、仙台育英は高橋が快速球を武器に報徳打線を封じ込めるも、打線がなかなか間木から点を奪えない。毎回のようにランナーを出すが、の強気のインコース攻めと報徳内野陣の堅い守備の前に2併殺を取られる。報徳はまだ後ろに盛田今朝丸と2人の投手が控えているだけに、仙台育英としては5回までになんとか追い上げておきたかった。試合は3-0と報徳のリードで後半戦は入る。

しかし、グランド整備を終えた6回表に仙台育英打線がようやく間木から得点を挙げる。4番齋藤陽、6番湯浅がともに間木の投球の軸となっているストレートを逆方向に打ち返すと、7番濱田の振り逃げの間に斎藤陽がホームイン。相手のミスから大きな1点を手にする。

一方、好リリーフで味方に流れを持ってきた仙台育英・高橋だが、そんな高橋に躊躇なくチャンスで代打を送れるのが仙台育英の強みだ。3番手で3回戦に好投した湯田を登板させると、こちらも球威十分の速球で報徳打線を封じ込める。これに反応するように、報徳学園も7回からエース盛田をマウンドへ。大角監督もここは負けじと勝負をかける。

すると、試合が終盤にさしかかって両チームとも攻防が激しくなる。報徳は7回裏にヒットで出た1番岩本を犠打で送り、3番湯田の速球を痛烈にセンターへ打ち返す。しかし、仙台育英外野陣の前進守備の前にホームをつけず、後続が打ち取られて得点を挙げられない。さらに、8回表にはこの日あまり制球の定まらない盛田が先頭の4番齋藤陽に四球を与えると、早々と3番手の今朝丸に交代する。本当は最後まで行かせたかっただろうが、昨夏の王者相手に大角監督もスキを見せられないと思ったのだろう。

報徳は8回にも7番竹内、8番の連打でチャンスを迎えるが、後続が犠打ミスなどで倒れて無得点。最終回に向かう流れの中で、どこかムードが仙台育英に傾いているような感じがしたのは私だけではないだろう。

そして、9回表、まさかの展開が訪れる。今朝丸は9番齋藤敏、1番山田を打ち取り、あとアウト一つまでいくが、2番橋本には8球粘られた末に四球を与える。すると、続く代打・永田はセンターに飛球を打ち上げるが、これをセンター岩本が落下地点を通り過ぎてしまい、まさかの落球。橋本が1塁から一気に生還し、1点差に迫る。高校野球ファンの中には2010年の仙台育英vs開星戦がよぎった人も少なくないだろう。

さらに続くチャンスに打席には全国制覇を知る4番齋藤陽。ストライクの欲しい今朝丸の心理をモス化したように2球目のカーブをしっかりためてミートすると、打球は三遊間を破ってレフト前へ。2塁から代走・登藤が生還し、土壇場で試合を振り出しに戻す。

その裏、仙台育英のマウンドには8回から登板している4番手の左腕・田中。1アウトから3番に左中間へ落とされると、好走塁では一気に2塁を奪う。しかし、4番石野を敬遠して塁を埋めると、5番辻田・6番西村は内野ゴロで得点はならず。報徳としてはここで決めたい気持ちが強かっただろうが、試合はタイブレークへと突入していく。

すると、追いついたものの勢いか、仙台育英は無死1,2塁から犠打で送ると、7番濱田が低めの変化球をうまくすくいあげる。これが前進するライトの前で弾み、3塁ランナーがホームイン。仙台育英がこの試合初めてリードを奪う。報徳としては意気消沈しそうな場面だが、今朝丸は気持ちを締め直し、8番田中・9番岡田を連続三振に切って取る。「まだ試合は終わっていない」と上級生野手陣を鼓舞するかのような2年生右腕の力投。試合は勝負の10回裏へと入っていった。

仙台育英はあとアウト3つでベスト4。しかし、勝ち越したことで今度は重圧がのしかかる。10回裏、報徳は7番竹内が犠打をすると、これを途中からサードに入っていた登藤が悪送球。ボールが手に引っかかってしまい、送球が1,2塁間を転々と転がる間に、2塁ランナーがホームを駆け抜ける。信じられない同点劇で、終盤以降積み上げてきた仙台育英のムードが瓦解する。

さらに無死1,3塁と続くチャンス。しかし、仲間のミスを挽回すべく左腕・田中は踏ん張る。当たっている8番をサードゴロに打ち取ると、死球を挟んで1番岩本は渾身の投球で空振り三振。両者の意地と意地がぶつかり合う好試合は、2アウト満塁で2番山増へと回る。ここまで5打数無安打と音なしの2番。カウント0-2からストライクを2つ挟んで迎えた5球目のアウトコースを鋭く振り抜くと、打球はサードの頭上を越え、レフト前へ。3塁から西村が生還し、報徳学園が2試合連続のサヨナラ劇で4強へと勝ち上がった。

まとめ

報徳学園はあとアウト一つから勝ちが逃げていくというショッキングな展開だったが、そこから持ち直してのサヨナラ劇は、やはり永田監督時代から築いてきた全員野球の精神のなせる業だっただろう。全員がつなぎの意識を強く持ち、決して独りよがりな打撃をしないことで仙台育英の豊富な投手を攻め立てていった。これで東邦に続いて地区大会王者の分厚い投手陣を攻略したことになる。

また、投げてはエース盛田の調子が上がらなくとも2人の2年生右腕が力投。間木がしっかり自分の投球で試合を作れば、今朝丸は1点勝ち越された場面で渾身の投球を見せて、自軍に流れを引き戻した。また、守りはミスこそあったものの、要所で捕手・を中心に好プレーを連発し、投手陣を盛り立てていった。投手陣も野手陣も非常に層が厚く、足も守りも光る報徳学園。大角監督が苦労して作り上げてきたチームが今、大輪の花を咲かせようとしている。

一方、仙台育英は序盤から報徳に流れをつかまれる苦しい展開だったが、それでも最終回に追いつく当たりはさすがに昨夏の王者であった。特に同点打を放った4番齋藤陽の打撃は、こちらもつなぐ意識が集約されていた一打だったと言えるだろう。惜しくも敗れてしまったが、やはり最終回に何かが起こるという仙台育英の伝統はこの日も生きていると感じさせた。

そして、投手陣は他校もうらやむ陣容で、4人がつなぎ、逆転への流れを作ることに成功した。ただ、惜しむらくは、この日チャンスのたびに、投手に打順が回って代打を送らざるを得なかったことか。ただ、これは試合の成り行き上致し方のないことであった。昨夏の王者というプレッシャーを感じながら力に変えてきた今年の仙台育英。着実に実績を積み上げながらも、新たに出た課題に向き合い、須江監督のもとで今度は夏連覇を目指していく。

2023年選抜準々決勝予想 仙台育英vs報徳学園 | 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

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