2023年選手権1回戦 市立和歌山vs東京学館新潟(4日目第3試合)

2023年

大会4日目第3試合

市立和歌山

1 2 3 4 5 6 7 8 9
1 0 4 0 0 0 0 0 0 5
1 0 0 0 0 2 0 0 1 4

東京学館新潟

 

市立和歌山   栗谷→小野

東京学館新潟  須貝→杉山→涌井

伝統校vs初出場校という対照的な顔合わせとなった試合は、最終回まで1点にしのぎを削る好試合に。好投手2人の継投で序盤のリードを守り切った市立和歌山が2016年以来となる夏の甲子園1勝を手にした。

試合

市立和歌山は右腕2枚看板の一人である栗谷が先発。春の和歌山大会では智辯和歌山を封じ込めた、安定感の光る実力派右腕である。一方、東京学館新潟は多彩な投手陣を誇るチームだが、先発には右腕・須貝を指名。県大会同様に、継投を視野に入れて試合に臨んだ。

市立和歌山は1回表、1アウトから2番田嶋が死球で出塁。3番栗谷の打席で果敢にスチールを仕掛けると、これが相手捕手の悪送球を誘って一気に3塁を陥れる。栗谷は四球を選ぶと、4番麹家がきれいな流し打ちで1,2塁間を破り、1点を先制する。2021年の松川(ロッテ)、2022年の松村と市立和歌山が出場する時は、捕手の打撃がいいケースが多い。

対する東京学館新潟も打撃には自信を持つチーム。1回裏、すぐに反撃を開始。1アウトから2番渋川が、こちらも痛烈な流し打ちでライトへ打ち返すと、2アウト後に4番遠藤はカウント0-1からスライダーが甘くなったところを逃さずとらえる。これが左中間を深々と破るタイムリー2塁打となり、渋川が長駆生還。試合開始から両チームが激しく攻めあう展開となる。

東京学館新潟としては、継投のタイミングの見極めが難しいところ。先発・須貝は2回にも複数のランナーを出すが、なんとかしのいで無失点。ディフェンスのいい市立和歌山を前に出したくないだけに旅川監督も判断が難しいところだっただろう。しかし、3回表に市立和歌山打線の集中打をあびることとなる。

この回、ノーアウトから3番栗谷がアウトコースのボールをうまくレフトに流し打って出塁。続く4番麹家の場面で強攻策を選択すると、この作戦に応えてセンターへとはじき返す。5番大江はきっちりと送って1アウト2,3塁とすると、6番アウトコース低めのボールをうまくミートしてセンターへはじき返し、2者生還。基本に忠実なセンター返しと手堅い野球で、市立和歌山がリズムをつかむ。

東京学館新潟にとっては、当然継投も視野に入れていただろう。しかし、続く7番藤井を三振に仕留めるも、8番玉置の打席で暴投が出たところで、ついに2番手の杉山をマウンドに送る。これで流れを止めたいところだったが、市立和歌山は下位打線が奮起。玉置がフルカウントからの高めの速球を逃さず、レフト線へ打ち返すと、続く9番熊本は低めの速球をまたもセンターへ打ち返して、2者連続のタイムリー!この回、5安打のうち実に4安打がセンターから逆方向へのあたりであり、市立和歌山らしい、シュアな打撃で主導権を一気にものにした。

東京学館新潟としては投手陣の制球がままならないところを突かれての痛い失点。早い回に反撃したいところだが、セーフティリードを得た市立和歌山・栗谷は安定してリリースポイントからキレのある速球、変化球をコースに投げ分け、打たせて取っていく。ディフェンス陣も早い出足と安定した投球でエースを援護。3回、5回とヒットのランナーを出しながらも、いずれも併殺でリズムよくアウトを突き重ねていく。

こうなると、市立和歌山のペースで試合が進行しそうな気配が漂ってきていたが、グランド整備の終了した6回に、潮目が変わり始める。

6回裏、1アウトから新潟大会で高打率を残した1番佐藤、2番渋川がいずれも右打席からの理想的な流し打ちで1,3塁とチャンスを作る。東京学館新潟の初出場の原動力となった2人がさすがの打撃で、栗谷攻略の突破口を開いた。ここで3番八幡が高めの速球を流し打ってライトへの犠飛を放ち、まず1点。さらに、1塁に残った渋川が盗塁を決めて2塁を陥れると、初回に同点タイムリーを放った4番遠藤がストレートをこれまたセンターへ打ち返し、タイムリーを放って2点差に!ついに栗谷をマウンドから引きずり下ろした。

両チームともセンターから逆方向へのヒットを積み重ねての得点の取り合い。熱戦はやや東京学館新潟に流れが傾きかけていたが、ここで市立和歌山のリリーバー小野がその流れをせき止める。栗谷よりダイナミックなフォームから繰り出す角度のついた速球を武器に、いい意味で荒々しさをまとった投球で相手打者を打ち取っていく。この速球で押し込んで、手元で動くツーシームで打たせて取る投球で終盤の大事なイニングを無失点で切り抜けていく。

一方、序盤に5失点した東京学館新潟も4回以降は、左腕・杉山、そして6回からマウンドに上がった同じ左腕の涌井が市立和歌山打線を封じる。特に、涌井は大きなカーブとチェンジアップを武器に、緩急を活かした投球でリズムよく打たせて取る投球が光った。両投手陣の好投で2点差のまま、試合はラストイニングへと進んでいく。

9回表に市立和歌山は4番麹家・5番大江の連打を足掛かりに、2アウトながら満塁のビッグチャンスを迎える。しかし、ここを涌井がセンターフライで切り抜けて追加点は許さず。最後の攻撃へと望みを託す。

9回裏、東京学館新潟は途中出場で好守を見せた5番鈴木が甘く入った変化球をしっかりとらえ、ライトへのヒットで出塁。さらに続いて、これまた途中出場の6番近藤が今度はストレートを痛烈にレフトへ打ち返し、無死1,2塁とビッグチャンスを迎える。いずれも途中出場の選手が結果を残すあたり、東京学館新潟は非常に選手層の厚さを感じさせるチームだ。

同点のランナーを出し、イケイケの東京学館新潟。しかし、ここで強攻策の相手チームに対して野も開き直ったか、自慢の速球で押しまくる。代打の渡邉を三振に切ってとると、8番森田もいい当たりながらセンターフライに打ち取り、試合終了まであとアウト一つに迫る。近藤にはとらえられたものの、やはりあの速球が低めに糸を引くように決まるとそう簡単に打てるものではない。

ここで打席にはまたも代打の芳賀。低めの変化球に泳がされた打球はサードへの緩いゴロになる。これをつかんだサード田嶋が、2塁へ投じるか、1塁へ投じるか、一瞬の迷いがあったのだろう。1塁への送球が高くそれて、鈴木がホームを駆け抜ける、1点差に迫ってなお、逆転サヨナラのランナーまで2塁へ進む。野球の神様は時としてとんでもないシナリオを用意しているものだ。続く打席には、チームで最も頼りになる1番佐藤が向かった。

逃げ切りか、サヨナラかという場面。カウント1-1から小野が投じたアウトコースへのスライダーを佐藤がスイング!しかし、無情にも打球は捕手・麹家へのフライとなってゲームセット。最後まで目の離せない好ゲームを制した市立和歌山が2016年以来となる、夏の甲子園での勝利を手にしたのだった。

まとめ

市立和歌山にとっては、自分たちの持ち味を出した、プラン通りの試合内容だったと言えるだろう。序盤に手堅い攻撃でリードを積み重ね、投手陣を中心とした自慢のディフェンスで逃げ切る。彼らの最も得意とするパターンで勝利をつかみ取った。特に打撃陣は2022年選抜でもそうだったが、逆方向への意識が非常に強く、難しいコースの打球も粘り強くヒットコースへ打ち返す打撃が光った。県内に智辯和歌山という強力なライバルがいながらも、その実力を虎視眈々と磨いてきた和歌山の強豪が、夏の聖地で1勝を刻み付けた。

一方、創部41年で初めての出場を果たした東京学館新潟も、実力を十二分に出した試合だったのではないだろうか。序盤に投手陣の制球難でリードを奪われてはしまったが、持ち味の打力で市立和歌山をあと一歩まで追い詰めた打撃は見事だった。特に1番佐藤、2番渋川のコンビは、2人で5安打を放ち、縦横無尽にダイヤモンドを駆け抜けた。かつては打力不足に泣いた時代もあった新潟勢だったが、日本文理の台頭を契機に、今やその時代は完全に過去のものになったと言えるだろう。今後も、東京学館新潟の戦いに注目だ。

【東京学館新潟】初出場ながら9回脅威の粘り!!9回裏アルプス応援シーン!市立和歌山vs東京学館新潟 – YouTube

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