大会8日目第2試合
広陵
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 計 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 3 | 0 | 5 |
0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 3 | 1× | 6 |
青森山田
広陵 高尾
青森山田 桜田→関
広陵・高尾にとっては酷な試合になった。0-0で進行する中、無安打ピッチングを続ける高尾が試合を支配しているように見えたが、終盤に青森山田打線が猛追。9回裏に3点差を追いつく驚異的な粘りを見せ、延長サヨナラ勝ちでベスト8進出を決めた。
試合
広陵はエース高尾が先発。一方、青森山田は2人のエース格右腕の一人・桜田がマウンドに上がった。
桜田は昨秋の東北大会で無安打無得点を達成した実力者。初回、四球2つは出したものの、角度のある速球を武器に、広陵の5番草島を封じ込め、無失点で立ち上がる。腕を振った後に、しなっている感じが伝わってきており、非常に腕の振りがいい投手だ。
一方、初戦で圧巻の投球を見せた広陵・高尾は、1回裏、いきなり死球と野選で無死1,2塁のピンチを招く。しかし、経験豊富な右腕は、このような場面でも慌てるところがない。3番対馬の犠打を失敗させると、4番原田は注文通り併殺に。こちらも安定した投球で無失点スタートを切る。
広陵は3回表、1アウトから2番田村が巧みな流し打ちで出塁。3番土居のセカンドゴロがエラーを誘い、チャンスを迎える。ここで打席に中軸を迎え、青森山田としては嫌な場面になるが、桜田は低めに変化球を集めて丁寧なピッチングを展開。4番只石、5番草島を抑え、先制点を許さない。
一方、青森山田も4回裏に先頭の3番対馬の打球がエラーを呼び、盗塁と四球でチャンスを広げる。犠打で1アウト2,3塁となり、一打2点の場面に。ただ、ピンチの場面でこそ集中力が上がるのが好投手たるゆえん。高尾はここでも初回に続いて徹底して低めを突く投球で後続を連続三振に打ち取る。昨夏は序盤の制球難からの失点が響いて敗退したが、最終学年となり、同じ轍を踏まない強さを見せた。
4回を終わり、試合は0-0のまま進行。広陵の高尾はランナーこそ出しているものの、まだ青森山田打線にヒットを許していない。青森山田・兜森監督は5回表、ポテンヒットと四球で桜田がランナーをためたところで、継投に出る。桜田の投球に変調があるようには見えなかったが、相手に傾きだした試合の流れを敏感に感じたのかもしれない。
その後も無得点のまま試合は進行。得点が入らないだけでなく、チャンスの気配も薄くなっていく。特に広陵・高尾の投球は圧巻。球威、スピードとも十分な速球を前に、青森山田打線がまともに前に飛ばせなくなってくる。大会No.1右腕が、相手打線を完全に制圧している感があった。7回まで相手を無安打に抑え、大記録の予感も漂い始める。
一方、青森山田・関も角度のある速球を武器に粘投。ランナーこそ出しながらも、6回、7回と決定打を許さない。珠玉の投手戦がどこまで続くのか、、、そんな思いで見ていたが、8回から完全に流れが切り替わった。
8回表、広陵は先頭の3番土居が巧みな流し打ちで出塁。4番只石が四球でつなぐと、犠打と内野ゴロで2アウトながら2,3塁になる。ここで打席には今大会当たっている7番白髪。インローの速球を流し打った打球は土居の打球と同じような軌道でレフトに弾む。レフトのファンブルも絡んで2者が生還。広陵が大きな先制点を得た。
8回裏、マウンドにはここまで無安打投球の高尾。兜森監督は代打・蛯名を送る。流れを変えたい代打でなおかつ無安打の重圧もはじき返したいピンチヒッターでもある。そんな蛯名が初球のスライダーに狙いを定めて振り切ると、打球は左中間に弾む2塁打に。この初ヒットで球場に雰囲気も変わってくる。犠打失敗で1アウトにはなるが、1番佐藤隆、代打・佐藤洸に連続四球。高尾の投球が乱れ始める。
1アウト満塁となり、打席には3番対馬。木製バットを使いこなす好打者が、これも初球のアウトコースのスライダーをとらえると、打球はライト前に弾む同点打に。無安打の状況から一転して試合は振り出しに戻る。これが野球の怖さか。
同点に追いつかれた広陵だが、昨年春夏ともエースを援護しきれなかった打線が、意地を見せる。9回表、1アウトから1番浜本が変化球を素直にセンター返しで出塁。暴投と2番田村の四球でチャンスを広げると、3番土居は先ほどと同じような打撃で今度は変化球をとらえる。打球はどんどん伸びていき、左中間を破るタイムリー2塁打に!さらに、2アウト後、5番世古口も変化球をとらえ、今度はセンターへの2点タイムリーとし、決定的と思われる3点を刻んだ。関の低めの変化球をとらえた、中軸の見事なバッティングだった。
これでさすがに勝負が決まったかと思われた9回裏。しかし、まさかの展開が待っていた。
先ほどのイニングから制球の乱れ始めた高尾が先頭の9番伊藤に四球。7番橋場は三振に打ち取るが、先ほど2塁打の8番蛯名、9番関に連打を浴びる。いずれも高尾のアウトコースのボールを逆方向に打ち返した一打。青森山田打線の狙いが徹底している。満塁となって、打席には巧打の1番佐藤。初球、アウトコースのスライダーをとらえた打球は左中間をあっという間に破っていく。塁上のランナーが喜び勇んで次々にホームへ!起死回生の同点打で、青森山田が試合を振り出しに戻した。
まさかの表情の広陵バッテリー。こうなると、流れは青森山田に。9回の1アウト3塁のピンチは意地でしのいだが、10回表、タイブレークのチャンスで広陵は打順が下位に回っており、得点に至らない。
対照的に、青森山田は中軸から。3番対馬の3塁前に転がした打球は絶妙な当たりのセーフティバントとなり、無死満塁と絶好のチャンスを迎える。ここで打席には主砲・原田。広陵バッテリーとしては内野フライか三振の欲しい場面だったが、原田はアウトコースの速球にうまく対応してみせた。センターはなんとか背走してつかむも、犠飛には十分な当たり。3塁ランナーがホームに帰り、青森山田が劇的なサヨナラ勝利を収めた。
まとめ
青森山田は終盤に2度勝ち越される、苦しい展開だったが、いずれも裏の攻撃で追いつく驚異的な粘りを見せた。特に9回裏の攻撃は鳥肌もの。若いカウントから下位打線が積極的に打ってつなぎ、1番佐藤が初球で仕留める同点タイムリー3塁打を放った。8回、9回と貴重な一打を放った代打・蛯名の働きも素晴らしい。高校野球の歴史に語り継がれてもおかしくないような、奇跡的な同点劇であった。
また、終盤に失点こそしたものの、桜田・関の2枚看板も額面通りの実力を発揮。2人ともストレートに角度があり、相手エースが完ぺきな投球をする中で、一歩も引かない内容のピッチングを見せた。2試合連続のサヨナラ勝ちを収めた東北王者。選抜での東北勢初優勝が現実味を帯びるところまで勝ち上がってきた。
一方、広陵・高尾は昨年の春夏の甲子園に続いて、またも終盤勝負で涙を飲んだ。7回まではストレート主体の投球で無安打ピッチングを展開。これぞ大会No.1右腕と思わせる内容だったが、8回の蛯名の一打から、何か音を立てて崩れていったような感じがした。打線は終盤に2度複数得点で援護してくれただけに、守り切れなかった悔しさが募るだろう。立ち上がりの失点を抑えたことなど、昨年からの成長も随所に見られた名門のエース。捲土重来を期して、再び夏の甲子園を目指す。
青森山田が10回タイブレークで劇的な逆転サヨナラ!エース関は涙/10回裏ノーカット/勝利の瞬間〜応援団挨拶(第96回選抜高校野球) (youtube.com)
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