2019年選手権準々決勝 明石商vs八戸学院光星(12日目第1試合)

2019年

大会12日目第1試合

明石商

1 2 3 4 5 6 7 8 9
3 3 0 0 0 0 0 1 0 7
1 0 2 0 2 1 0 0 0 6

八戸学院光星

 

明石商     杉戸→溝尾→中森

八戸学院光星  下山→横山→山田

前年に引き続いての対戦カードとなった第1試合は、内容も同じように1点を争う白熱した打撃戦に。終盤に暴投で勝ち越し点を挙げた明石商が雪辱を果たして、準決勝進出を決めた。

試合

明石商は2試合連続で1点差ゲームをものにし、試合巧者ぶりが光る戦いぶり。初戦はエース中森(ロッテ)、2戦目は左腕・杉戸が完投し、投手力を含めたディフェンス面の堅さには定評がある。打撃陣は2番水上(楽天)、3番重宮にホームランが飛び出すなど、長打力を秘める一方で、下位にも勝負強い打者が並び、どこからでも小技を仕掛けられる。勝負師・狭間監督のタクトで、この日も接戦を制したいところだ。

一方の八戸学院光星は3試合で26得点と猛打を誇る。1番武岡(ヤクルト)、3番近藤を中心に上位から下位まで穴がなく、特に3番近藤はちょっと抑え方が見えてこないほどの好調ぶりだ。投手陣は左右両方が揃って枚数は豊富だが、基本線は先発投手が踏ん張ってリリーフエースの山田にどうつなぐかというところ。こちらも2,3回戦と接戦を制しており、持ち前の打力で勝負を決めたい。

 

八戸学院光星の先発は大方の予想を裏切って、サードを守っていた下山がマウンドに上がる。開幕戦のグランドスラムに3回戦ではサヨナラ打とこの大会乗っている男に仲井監督もかけたのだろう。しかし、結果的にこの選択が裏目に出ることとなる。1回表、明石商は1アウトから2番水上が四球で出塁。3番重宮はアウトコースのボールに当てただけの打撃だったが、ライト前にポトリと落ち、下山にとっては不運な形でピンチが広がる。

ここで4番安藤はややシュート回転したインコースのストレートをとらえて右中間に落とし、明石商が先制点を手にする。さらに5番宮崎の場面でカウント1-3からエンドランを敢行すると、センター前に運んで1点追加。1,3塁となってからは6番福井がスクイズを決めて3点目とし、明石商がそつのない攻撃で甲子園初登板の投手を攻略する。下山は決して制球を乱した感じはしなかったが、明石商のうまさに付け込まれた。

いきなりビッグイニングを作られた光星だが、単純な打力では明石商の上を行く。明石商のマウンドには2試合連続の先発となった左腕・杉戸。1回裏、2番島袋がセンター前ヒットで出塁すると、光星の打者が杉戸の際どいコースのボールに対してなかなか手を出さない。ストライクゾーンのボールは巧みにカットし、こっれまでの強打とは印象の違ううまい攻略を見せ、3番近藤・4番・6番下山が3四死球を奪い、押し出しで1点を返す。

すぐに味方が1点を返してくれた下山だったが、明石商打線にとっては右スリークオーターからのボールは見えやすい球筋だったか。1アウトから1番来田(オリックス)のヒットと2番水上の死球でランナーをためると、再び4番安藤にシュート回転したストレートを今度は完ぺきにとらえられて右中間に飛び込む3ランとなり、明石商が6-1と大きくリードを広げる。光星にとっては想定の範囲外のビハインドを背負うこととなった。

試合後のインタビューで判明したことだが、狭間監督としてはこの先の戦いも見据えて中森をできる限り終盤まで温存したかったとのこと。想定外の5点のリードを得たことで、ここからリードした点数と中森の投球回数を天秤にかけながら試合を進めていく。

リードを奪われた光星だったが、杉戸のボールに対しては初回から各打者がある程度対応できている様子。3回裏に再び連続四球からチャンスをつかむと、5番大江がストレートを左中間にはじき返して2得点。投球の過半数を占める左サイドからのスライダーに対して、上位に並ぶ左打者がしっかり体を開かずに見極めており、杉戸にとっては苦しい投球内容となり、球数もかさむ。

できるだけ杉戸を引っ張りたい狭間監督だが、5回裏には上位打線が3巡目に入ると完全に攻略される。ここまでの戦いを見て光星打線の怖さを杉戸も知っているだけに、簡単にストライクを取りに行けない。3番近藤、4番の連続四死球で再びランナーをためると、5番大江がスライダーをライトに返して満塁となり、ここで杉戸は降板。キレとコントロールが武器の杉戸だったが、スピード、球威のあるボールではないだけに光星の各打者が捕手寄りのポイントまで呼び込んで攻略した。

ここで明石商は2番手に右腕・溝尾を送る。兵庫県大会の初戦で完封勝利を飾ってから全く登板機会がなかった中でいきなりのマウンドとなったが、策士・狭間監督だけあって秘密兵器として取っておいたのか。しかし、勢いに乗る光星は6番下山が先発6失点の汚名返上とばかりにサード強襲のヒットで2点を返し、点差はあっという間に1点になる。

光星は4回からマウンドに上がった左腕・横山が打たせて取る投球で明石商打線の反撃を断ち切ると、6回裏にも連続四死球を絡めて満塁のチャンスを作り、再び打順は6番下山に回る。ここで下山は落ち着いて四球をもぎ取り、ついに光星が同点に追いつく。狭間監督にとっては想定より早い段階でリードを吐き出してしまっただろう。

こうなると、追いついた光星に流れがいくのは自明の理。7回裏に四球から1アウト2塁とすると、さらに2アウト3塁となって狭間監督はもう限界と判断したか、中森をマウンドに送る。中森は2番島袋を徹底したインコース主体の攻めで封じ込め、得点を与えない。

光星も7回からリリーフの山田をマウンドに送り、両チームが持てるカードを出し切って試合は8回に進む。

8回表、明石商はリリーフで登板してそのまま守備に就いていた溝尾がヒットで出塁すると、1番来田の四球と犠打で1アウト2,3塁のチャンスを得る。ここで3番重宮にスクイズを仕掛けるが、ここは光星バッテリーが読み勝ち。ピンチを脱したかに思われたが、なおも2アウト3塁から山田の投球が痛恨の暴投となり、サードランナーがホームイン。両チームにミスが出た中で、勝ち越し点は明石商に入った。

守り抜きたい明石商だが、光星は8回裏に先頭の3番近藤がレフトへの2塁打で出塁する。近藤は3回戦から6打席連続出塁で、通算は14打数9安打6四死球の出塁率7割5分ともはや無双状態。しかし、この場面も中森は不運な野選がありながらも、140キロ台後半のストレートにスプリット、チェンジアップを巧みに織り交ぜて2三振を奪う。最後は相手の重盗を内野陣が迅速な対応で防ぎ、光星に同点を許さなかった。

絶体絶命のピンチをしのいだ明石商は9回裏にもセカンドにランナーを背負うが、最後は3回戦の途中からノーヒットが続く1番武岡をライトフライに打ち取って試合終了。3試合連続で1点差ゲームをものにした明石商が前年の雪辱を果たし、夏は初めてのベスト4進出を決めた。

まとめ

明石商にとっては序盤に相手先発を攻めつけて奪ったリードを有効に活かし、狭間監督のゲームプラン通りに勝利を収めた。正直、3回以降は完全に光星ペースで試合が進み、3回から6回までの4イニングで実に13人のランナーを背負う押され具合だったが、それでもエースの登板時期をぎりぎりまで我慢して踏ん張った監督の作戦勝ちだった。

序盤に相手投手を主軸としてしっかり打ち込んだ4番安藤の打棒、勝負所で小技を決める勝負強さ、終盤のピンチをきっちり守り抜いたエース中森の投球と全てがかみあっての1点差勝ち。手ごたえばっちりの試合内容で明石商が4強一番乗りを決めた。

 

一方、八戸学院光星にとっては序盤の5点ビハインドがあまりに痛かった。中盤以降は明石商投手陣を攻め立てて同点に追いついたが、ある意味まだ相手指揮官の掌の上で戦わされていた感もあった。中盤にもうあと一本出て、前に出ていれば明石商にとってもゲームプランが崩れていた可能性はあった。また、キーマンの1番武岡に途中から当たりが止まってしまったのも痛かったか。

しかし、昨年は2回戦で平安に大敗し、選抜は初戦で完封負けとここ何大会かは勝ち上がれない戦いが続いていたが、今大会は4試合で32得点たと「強打の光星」の破壊力は存分に見せつけた戦いぶりであった。

[高校野球2019夏準々決勝] 明石商 VS 八戸学院光星 – YouTube

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