大坂桐蔭の前に立ちはだかった好投手列伝 1/3

コラム

平成に入ってからの出場だけで、春夏合わせて全国制覇8回、64勝14敗の勝率8割2分と圧倒的な成績を残す大阪桐蔭。プロ野球選手も多数輩出し、今や最強のチームと言っても過言ではない存在となっている。だからこそ、そんな大阪桐蔭に対して甲子園で勝利を収めた投手は、錚々たる面々が顔を並べている。今回は、その好投手を順にご紹介したい。

大坂桐蔭の前に立ちはだかった好投手列伝 2/3 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

大坂桐蔭の前に立ちはだかった好投手列伝 3/3 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

1991年選抜 準々決勝 松商学園 3-0 大阪桐蔭

松商学園

1 2 3 4 5 6 7 8 9
0 1 1 0 0 0 0 1 0 3
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0

大坂桐蔭

上田佳範(松商学園→日本ハム)

大会No.1投手(1991年選抜) 上田佳範(松商学園) – 世界一の ...

平成3年に初出場を果たした大阪桐蔭。初戦で仙台育英を相手にエース和田が無安打無得点を達成して10-0と完勝すると、2回戦は伝統校・箕島を相手に8回に一挙4得点の猛攻で逆転勝ちを収める。乗りに乗っていた新鋭校の前に立ちはだかったのが、この世代のNo.1右腕と目された松商学園のエース上田であった。

初戦でイチロー(オリックス)がエースの愛工大名電、2戦目で前年夏の覇者・天理を下した右腕は大阪桐蔭打線を相手にほとんどチャンスらしいチャンスを作らせない。伸びのある速球と制球されたカーブを低めに集める投球の前に大阪桐蔭打線はわずか5安打しか放てず。スコアこそ3-0だったが、松商学園の放ったヒット数は13本であり、圧倒的に松商学園が支配した試合だった。

前年秋には松井秀喜(ヤンキース)擁する星稜にも4-1と快勝しており、未来のメジャーリーガー2人を倒していた上田。最後の夏は3回戦で四日市工の左腕・井出元(中日)と延長16回の死闘を演じた影響か、準々決勝で星稜に2-3と前年秋のリベンジを許した。この試合に勝利していたら、次は大阪桐蔭との対戦だっただけに、もう一度その対戦を見たかった高校野球ファンもいたことだろう。

1991選抜  松商学園VS大阪桐蔭 9回裏 – YouTube

【好投手列伝】長野県篇記憶に残る平成の名投手 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

 

2002年夏 1回戦 東邦 5-3 大阪桐蔭

東邦

1 2 3 4 5 6 7 8 9
2 0 0 0 0 0 0 0 3 5
1 0 0 0 0 0 0 0 2 3

大坂桐蔭

長峰健太(東邦)

好投手列伝】愛知県篇記憶に残る平成の名投手 2/3 – 世界一の ...

初出場初優勝を果たした1991年以来なかなか甲子園にたどり着けなかった大阪桐蔭。王者・PL学園をはじめとして数多くの強豪が君臨する大阪大会を勝ち上がるのは並大抵のことではなかった。2001年にはスラッガー中村剛(西武)、エース岩田(阪神)を投打の軸に据えた巨大戦力を擁しながらも、この年、奇跡的な勝ち上がり方をしてきた上宮太子に屈し、出場はならなかった。

しかし、その翌年タレントぞろいだった一つ上の学年を見てきた西岡剛(ロッテ)たちの学年が11年ぶりの出場を果たす。準決勝では前年夏に敗れた上宮太子の左腕・田村を打ち崩してサヨナラ勝ち。決して前評判の高くなかったチームが久々の代表切符を勝ち取った。

久々の大会で引いた初戦の相手は愛知の名門・東邦であった。前年の選抜を経験したエース長峰を中心にしぶとい野球で愛知大会を勝ち上がり、決勝では前年秋の東海王者・中京大中京を相手に4-2と競り勝ってきていた。

試合は初回から両チームが得点を奪い合う展開になったが、2回以降長峰は大阪桐蔭打線を分断することに成功。4番西岡の前後の打者をきっちり封じることで打線を「線」にしなかった。最終回に一打同点の場面まで追い込まれたが、最後は1番渡辺のライトへの飛球を味方野手が好捕してゲームセット。1回戦屈指の好カードを制し、名門校の意地を見せた。

2002【西岡剛】東邦vs大阪桐蔭 – YouTube

【好投手列伝】愛知県篇記憶に残る平成の名投手 2/3 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

 

2004年選抜 2回戦 東北 3-2 大阪桐蔭

大坂桐蔭

1 2 3 4 5 6 7 8 9
1 0 0 0 0 1 0 0 0 2
0 1 1 0 0 0 0 1 × 3

東北

ダルビッシュ有(東北→日本ハム)

21世紀に入ってPL学園の勢いに陰りが見えてきた中で、有力選手が入学してくるようになった大阪桐蔭。2004年世代は秋の近畿大会を大阪3位から制すと、神宮大会では準決勝で鵡川に36-5と記録的な大差で勝利し、全国の舞台で久々に存在感を示した。2年生4番の平田(中日)を中心とした強力打線と岩田・菊川・佐川ら力のある投手を複数そろえた陣容は壮観だった。

それまでの数年間不調だった大阪勢の復権を目指す大会だったが、広陵・土浦湖北・東邦・済美・東北・熊本工と各地区大会の優勝校・準優勝校が集まる死のブロックに入ってしまう。大阪桐蔭の初戦の相手も東京王者の二松学舎大付であったが、大阪桐蔭は投打で相手を圧倒。エース岩田から菊川・山地とつないで相手打線を完封すれば、打線も4番平田の2ランなどで5点を奪い、点差以上の差を感じさせる内容で勝利を収めた。

しかし、2回戦で立ちはだかったのは優勝候補筆頭の東北。家弓・大沼・横田・加藤政と前年夏の準優勝を経験した野手が多く残り、エース・ダルビッシュ(パドレス)、サイド右腕・真壁、左腕・采尾で形成された投手陣は難攻不落の様相を呈していた。1回戦ではダルビッシュが熊本工打線を相手に無安打無得点の偉業を達成。順調なスタートを切った。

2回戦ながら事実上の決勝戦のような雰囲気で開戦した試合は、初回にいきなり3番中村桂のホームランで大阪桐蔭が先制。東北が4番横田のホームランなどで逆転に成功すれば、大阪桐蔭も6回に3番中村桂のこの日2本目のホームランで追いつく。一進一退の攻防となったが、両チームの勝敗を分けたのは2番手投手の投球であった。東北は真壁が中村のヒット1本に抑えたのに対して、大阪桐蔭は菊川が8回に3番大沼に決勝打を浴び、東北が勝ち越し。3-2で東北が競り合いを制した。

ダルビッシュは6回を2失点と試合を作ったが、大阪桐蔭も3番中村桂が2ホームランを含む計4安打で気を吐いた。2回戦で敗れたものの、強力打線の圧力を見せつけ、大阪勢復活の足掛かりを作る大会となった。

激戦ブロック 2004年選抜 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

【好投手列伝】宮城県篇記憶に残る平成の名投手 2/4 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

東北vs大阪桐蔭 2004年選抜 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

済美vs東北 2004年選抜 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

ダルビッシュ有 2004年甲子園ノーヒットノーラン 勝利インタビューあり 東北高校 対 熊本工業 2-0 春選抜高校野球 – YouTube

 

2005年夏 準決勝 駒大苫小牧 6-5 大阪桐蔭

駒大苫小牧

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
0 5 0 0 0 0 0 0 0 1 6
0 0 0 0 0 0 3 2 0 0 5

大坂桐蔭

田中将大(駒大苫小牧→楽天)

2005年夏、大阪桐蔭は4番平田(中日)、エース辻内(巨人)、スーパー1年生の中田(巨人)を中心に3年ぶりの甲子園出場を達成。大阪府大会準々決勝では前年夏に苦汁をなめたPL学園と対戦し、平田がPLの2年生エース前田(ツインズ)から逆転2ランを放って雪辱を果たした。個々の能力としては2004年世代の方が上だったようにも感じるが、勝負所でエースと4番を中心に崩れない強さがこの年のチームにはあった。

甲子園本番では初戦で春日部共栄を相手に大苦戦するが、このシーソーゲームを1年生中田の活躍によって9-7でものにすると、その後は快調に勝利を積み重ねる。2回戦ではエース辻内が19奪三振の快投を演じれば、準々決勝では4番平田が3ホームランの離れ業で前年選抜で敗れた東北に逆転勝ち。投打の主役がきっちり仕事をし、久々の大阪勢の優勝まであと2勝に迫っていた。

その前に立ちはだかったのが、前年夏の王者・駒大苫小牧だった。記録的な猛打で初優勝を飾った前年から1番林と五十嵐、辻がスタメンで残ったチームだったが、どちらかと言えばこの代は松橋・吉岡の右腕2人に捕手から転向した2年生田中(ヤンキース)を加えた3人の投手陣が安定したチームであった。

各大会で安定して結果は残すものの、神宮では羽黒の片山マウリシオに4安打で3点しか奪えず3-4で惜敗、選抜では神戸国際大付の左腕・大西(ソフトバンク)に1安打で完封負けと打力不足に苦しむ結果が続いた。また、1つ上の先輩が成し遂げた全国制覇という結果も大きなプレッシャーとしてのしかかっていた。

しかし、主将・林を中心に「最高の夏にする」という合言葉のもと、チームは奮起。前年ほどの破壊力はなくとも、相手投手が崩れた一瞬のスキを逃さない集中力と好走塁で一気に畳みかけるスタイルで試合のものにし、準々決勝では鳴門工を相手に1-6から驚異の逆転勝ち。また、田中将大が決め球のスライダーを中心に驚異的な成長を遂げ、相乗効果で投手陣は大会屈指の陣容になりつつあった。

下馬評では大阪桐蔭優位と思われた試合は2回に辻内が乱れたスキを逃さず、駒大苫小牧が一気に5点を奪う。立ち直る間も与えない怒涛の攻撃の前に、さしもの西谷監督も舌を巻いた。先発した田中もスライダーを武器に大阪桐蔭打線を翻弄。特に4番平田に全く仕事をさせず、先発の役目をしっかり果たした。

終盤に大阪桐蔭打線もさすがの破壊力を見せて追いついてきたが、そこから前に出させなかったのも駒苫の底力か。延長10回に3番辻が決勝打を放つと、3人の好投手をフルに使いきって延長で6-5と辛勝。最後はフルスイングが持ち味の平田をハーフスイングの三振に打ち取り、優勝へ向けて最大の関門を超えた。逆に大阪桐蔭は今大会から3大会連続で優勝校に屈することとなる。

【好投手列伝】北海道篇記憶に残る平成の名投手 3/4 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

駒大苫小牧vs東洋大姫路 2006年夏 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

 

2006年夏 2回戦 早稲田実 11-2 大阪桐蔭

早稲田実

1 2 3 4 5 6 7 8 9
1 0 4 0 0 1 0 3 2 11
0 0 2 0 0 0 0 0 0 2

大坂桐蔭

斎藤佑樹(早稲田実→日本ハム)

平田(中日)、辻内(巨人)という投打の軸が抜けた大阪桐蔭。新チームは投打にスーパースター級の力を持つ中田翔(巨人)を中心としたチーム編成を考えていたが、中田の肘の故障によって方針転換を余儀なくされた。

しかし、中田を中心とした才能あふれる2年生の一つ上で狭間の世代として苦しんだ3年生たちが主将・小山を中心に奮起。2年生がスタメンの大半を占めるチームを献身的に支えた。右腕・松原と左腕・石田の2人の投手を軸に戦うスタイルを確立すると、打者に専念した中田も大阪大会で4試合連続ホームランと復活を遂げる。前年秋の近畿王者・履正社や好左腕・植松(ロッテ)を擁する金光大阪など好敵手に競り勝ち、上り調子で本大会を迎えた。

その甲子園抽選ではなんと初戦で選抜優勝の横浜を引き当てる。抽選会場にどよめきを起こした好カードは、ともすれば大阪桐蔭が大敗する可能性も十分に秘めていた。しかし、試合が始まると横浜が大阪桐蔭を(というより中田翔を)意識しすぎたのか、攻守にミスを連発。特に攻撃のミスが目立って再三のチャンスを棒に振ると、終盤に大阪桐蔭打線が爆発して、終わってみれば11-6で桐蔭の圧勝に終わる。この勝利で2006年大会の優勝争いは一気に混とんとしてきた。

その大阪桐蔭と2回戦でぶつかったのが早稲田実。好投手・斎藤佑樹を擁し、実に10年ぶりの夏出場であった。名門校としてしられる早稲田実だが、荒木大輔が5季連続出場を果たした1982年から2004年までの24年間で、実は選抜1回、夏1回しか出場を果たしていない。

東東京時代は東の横綱・帝京とぶつかり、西東京に移ったと思えば日大三の黄金時代と被った不運もあった。しかし、夏の暑さが年々増すなかで、高校野球においてパワーと体力の重要度が上がってきていたのは事実であり、早稲田実の自主性を重んずる野球が、スパルタ式の野球に対して置いてきぼりを食ってしまった可能性はある。

そんな流れを打ち破ったのがエース斎藤佑樹であった。2年生時に日大三打線にコールド負けを食らった悔しさをばねに成長。全体練習後も鍛錬を重ねるストイックさに加えて、3塁手・小柳との連係プレーで3塁ランナーを刺すなど、早実らしさも失っていないと感じさせる野球で、秋の東京大会優勝、選抜8強と結果を残し続けた。最後の夏は西東京大会で日大三との歴史的な死闘を制して春夏連続出場を達成。逞しさを増した早実が10年の時を経て夏の甲子園に帰ってきた。

1回戦で鶴崎工に力の差を見せつけて勝ち上がった早稲田実。大阪桐蔭との真っ向勝負は3年生中心の早稲田実が投打に圧倒する。のちに桐蔭ナイン自身が横浜に勝って少し浮ついた部分があったと言っており、この年のチーム力はもともと早稲田実の方が上だったことを考えると、大差がついても何ら不思議ではなかった。4番中田を内角を意識させて3三振に切って取った斎藤の投球と、2桁得点をたたき出した打線がかみ合い、11-2と圧勝で早稲田実が3回戦進出を決めた。

その後、早稲田実は決勝で駒大苫小牧との引き分け再試合を制して、88回目の夏で初優勝を達成。早実ナインは、決勝戦を見ると1回戦とは別人のような成長を遂げており、スマートさにたくましさが加わった見事な優勝であった。一方、中田翔はこの敗戦の悔しさをばねに大きく成長。翌年には当時の高校生ほ通算ホームラン記録に塗り替え、ドラフト一位でのプロ入りを果たした。

【好投手列伝】東京都篇記憶に残る平成の名投手 4/5 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

横浜vs大阪桐蔭 2006年夏 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

早稲田実vs大阪桐蔭 2006年夏 – 世界一の甲子園ブログ (kosien.jp)

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