常総学院vs関西創価 2001年選抜

2001年

大会No.1右腕を沈めた名将の采配

21世紀最初の選抜となった第73回大会はフレッシュな高校と伝統校が入り乱れ、何か新しい時代の到来を予感させるかのような大会となった。そんな中、準決勝第1試合で顔を合わせたのは、茨城の強豪・常総学院と大阪から初出場の関西創価であった。

常総学院はここ数年、水戸商の後塵を拝してきたが、前年秋は関東大会を見事制覇。4強に茨城勢が3校残る中で(常総学院、藤代、水戸商)、意地を見せた優勝だった。エース村上はスライダーの切れが光る本格派右腕。右サイドの平澤や左腕・村田も切れのある投球が光り、相手をかわすうまさを持つ投手陣だ。打線は中軸の上田や小林の強打に出頭、三浦、大崎、横川(巨人)らのスピードを混ぜた硬軟織り交ぜた木内采配が光る。V候補筆頭の東福岡に立ち向かう一番手として名前が挙がっていた。

しかし、初戦となった2回戦は南部を相手に先発した左腕・村田が捕まってまさかの7点ビハインドを背負う。しかし、打線が相手投手・富田の制球難に付け込んで2イニングで同点に追いつくと、リリーフした村上が11三振を奪う力投。逆に勢いに乗る勝利を手にした。すると、3回戦は金沢の好左腕・中林(阪神)をバント攻撃で攻略。さらに準々決勝では神宮でコールド負けを喫した東福岡を相手に初回、好投手・下野を攻略して一気に3点を挙げる。中盤、相手に追い上げられるも、リリーフした平澤が満塁のピンチをうまくしのぎ、4-2でリベンジを果たした。

強敵を連破した今、常総学院が一躍V候補一番手に名乗りを挙げた。木内監督の采配もここぞという場面で当たっており、いい意味でいやらしいチームに仕上がってきた。ただ、準々決勝で足にライナーを受けた村上の調子が懸念された。

一方、関西創価は大阪から初出場。ここ数年、東海大仰星や上宮太子など大阪からの初出場校は苦戦を強いられていたが、関西創価には絶対的エース野間口(巨人)がいた。140キロ台中盤の速球にスライダー、フォークを織り交ぜる投球で近畿大会は準優勝。決勝では疲れから鳥羽打線に打ち込まれたが、選抜ではV候補を食う存在とみられていた。

そんな中、初戦は強豪・東北と対戦。好左腕・高井(ヤクルト)との左右の大会No.1投手の激突となったが、打線が終盤に高井の制球の乱れに付け込んで8-1と快勝し、まずは順調に初戦をものにした。3回戦は好調・茨城勢の水戸商と対戦。先制を許すも、打線が荒れ球の左腕・田中をうまく見極めて攻略し、6-1とベスト8進出を決めた。準々決勝では四国王者・尽誠学園とがっぷり四つの死闘となったが、最後は延長10回裏に女房役の近藤がサヨナラ犠飛を放ち、苦しい戦いをものにした。

ここまで一人で投げぬくエース野間口と打線がかみ合っての快進撃。しかし、準々決勝で4番金田秀が骨折し、打線の軸を欠いて準決勝に向かうこととなった。

 

延長10回、バスターで決着!

2001年選抜準決勝

関西創価

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1
0 0 0 0 0 0 0 1 0 1✖ 2

常総学院

関西創価  野間口

常総学院  村上

エースが打球を受けた常総と4番を欠く関西創価。ともに不安を抱える中で、やはり焦点は常総の分厚い攻めに野間口がどこまで耐えられるかであった。

 

先制したのは打力で劣ると思われた関西創価。2回表に7番近藤の死球と8番高木のセンター前ヒットでチャンスをつかむと、9番蔵の前がレフトにはじき返して1点を先制する。野間口を援護したい関西創価としては理想的な展開で幕を開ける。

 

援護をもらった野間口は連投の疲れも見せず、コーナーにストレートとスライダーを配して序盤は常総にチャンスすらつかませない。少ない球数で打たせて取る配球で捕手・近藤の好リードが光る。さしもの木内監督もつけ入るすきがなかっただろう。

 

しかし、1点取られたことで力みが抜けたか、常総・村上も立ち直る。得意のスライダーではなく、この日はカーブを使って相手の狙いをかわす投球で関西創価打線を抑え込む。足のケガで力みも取れたか、3回以降は危なげない投球である。5回表には2アウト3塁とピンチを招くも、3番大西の投手ライナーを素早くキャッチし、自らのフィールディングでピンチを脱した。

 

序盤は野間口にうまく抑えられていた常総だが、中盤に入って反撃態勢をとる。5回裏に1アウト2塁のチャンスを作ると、打席には好打者の2年生・横川。同じボールを続けない野間口の配球を見切ってストレートを見事にはじき返し、同点かと思われたが、センター南山の好返球でランナーが刺され、追いつけない。ここはまさに「守」の関西創価と「攻」の常総学院の息詰まる攻防である。そして、徐々に木内監督の読みが野間口を苦しめ始める。

 

終盤になると、試合の流れはますます常総に傾く。関西創価は立ち直った村上の前になかなかランナーも出せない状態となり、追加点の取れる気配がない。村上は足を怪我したとはいえ、複数投手で勝ち上がっているためスタミナには余裕があり、終盤になるほど投球のキレ味を増す。

 

すると、8回裏についに常総が野間口をつかまえる。7番横川、8番三浦と好調の2年生二人がヒットを放ってチャンスメークすると、送って1アウト2,3塁からスクイズを敢行。これは野間口の好フィールディングにはばまれるが、疲れでややコントロールが甘くなったのを逃さず、2番稲石が同点タイムリーを放つ。しかし、続く2塁ランナーの生還をまたもセンター南山の好返球で刺し、逆転までは許さない。このあたりは関西創価も並の初出場校ではないところを見せる。

 

だが、やはり追いついた側と追いつかれた側の差は歴然だった。4番金田秀を欠いた関西創価の打線は好調の曽田を6番から4番に昇格させるもなかなかあたりが出ない。元来、打撃のチームではないだけに軸を失った影響は終盤で大きく響いた。対照的に木内監督は野間口攻略の絵図を虎視眈々と描いていたことだろう。

 

そして、決着は意外な形で訪れる。10回裏、くせ者の6番出頭がセーフティバントで塁に出ると、続く7番横川にはバスターの指示が出る。送ってくると思っていた野間口のスライダーを読み切って叩いた打球は右中間を深々と破り、出頭が一塁から長駆生還し、あっという間にサヨナラ勝ち。最後は常総らしいスピード感あふれる野球で大会No.1右腕を攻略し、選抜では初の決勝進出を果たした。

まとめ

常総学院としてはしてやったりの勝利。好投手・野間口を執拗に攻めつけての勝利は、木内監督の経験値とその采配にこたえられる常総の選手たちの野球脳の高さがなしえたものであった。決勝では仙台育英の好左腕・芳賀を攻略。終盤に追い上げらるも、1点差でしのぎきり、3度目の挑戦で初の全国制覇を成し遂げた。また、2年後の夏にはダルビッシュ(カブス)擁する東北を破って、再び全国制覇を達成。この2001年から2003年はまさに常総学院の黄金期であった。

 

一方、敗れはしたものの関西創価も鮮烈な印象を残した大会となった。野間口は相手の常総学院の強打者が舌を巻くほどの見事なピッチングを披露。やや非力と言われた打線も準々決勝まではしっかりエースを援護した。夏は履正社の強打に野間口が屈したものの、その後も勝負強い野球で大阪府内では強豪の一角として君臨し続けており、再び甲子園に関西創価のuniformが帰ってくる日を楽しみに待とうと思う。

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