日大三vsPL学園 2004年夏

2004年

初戦で実現した東西V候補の激突!

ダルビッシュ有(カブス)を擁する東北や涌井が引っ張る横浜、7季連続出場中の明徳義塾など強豪が数多く顔をそろえた2004年の夏の選手権大会。そんな中で、初戦屈指の好カードとして注目されたのが日大三とPL学園という、東西の強力打線を擁する優勝候補の激突であった。

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日大三は2年連続の甲子園出場。前年は初戦で平安に大差で敗れたが、その時の出場メンバーが多数残り、強打のチームを作り上げて帰ってきた。1番松島は先頭打者ながらパンチ力があり、4番佐々木は高校通算39ホームランを記録するスラッガーだ。江原、中山、千田、後藤とスタメンに2年生が多いが、上位から下位までむらなく打つ打線であり、打力では出場校中でもトップクラスであった。

一方、投手陣はスライダーの切れが光るサイドハンドの浅香と昨年甲子園のマウンドを経験した左腕・小田がマウンドを守り、西東京大会でもほとんど痛打を浴びることはなかった。特に浅香のスライダーはキレ味抜群。チューブトレーニングで指先を鍛えた成果により、必殺のウイニングショットを手にした。守備面も主将で捕手の秦を中心に堅守。投攻守に充実した戦力で3年ぶり2度目の全国制覇を狙っていた。

 

一方、PL学園はこの夏最も劇的な勝ち上がりで夏の代表をつかんでいた。大阪大会の準決勝では大商大堺を相手にエース中村圭がつかまって8点のビハインドを追った。しかし、5番吉原の2本の2ランなどでじりじりと追い上げると、終盤8回にイニング12点の猛攻で奇跡の逆転勝利を挙げた。

決勝では2年生の4番平田(中日)をはじめとして強打者が並び、投手陣も層が厚い大阪桐蔭と対戦。全国的に見えて屈指の戦力を有するライバルを相手に、この日も終盤8回に4番中倉の同点打で追いつくと、エース中村圭の力投で4-4と延長15回引き分けに持ち込む。迎えた再試合は1年生右腕の前田(ツインズ)を打線が序盤から強力援護。13-7と打撃戦を制し、2年連続の夏切符をつかんだ。

投手陣は技巧派エース中村圭とストレートに伸びのある1年生の前田の2枚看板。ともに完投能力があり、継投も自在だ。打線は1番松島から6番藤井まで皆一発の可能性を秘めた強打者が並ぶ。特に5番吉原は大阪大会で計5ホームランを放ち、つぼにはまった時の長打力には定評がある。左打者が4番中倉だけなのがやや気がかりだが、こちらも打力は出場校で上位に入る力を持っていた。

白熱の打撃戦は東の雄に軍配!

2004年夏2回戦

日大三

PL学園

 

日大三    浅香

PL学園    前田―中村

ともに打線には力があるだけに両チームの投手がいかに踏ん張れるかがカギを握るのは明白であった。

PL学園は1年生の前田を先発マウンドに送る。立ち上がり、持ち味の縦に大きく割れるカーブを武器に日大三打線にヒットこそ許すものの得点を与えない。すると、PL学園は2回裏に四球のランナーを2塁において、6番藤井がレフト線に落とす先制のタイムリー2塁打を放ち、1点を先制する。

先制点を許した日大三・浅香だったが、アウトコースのスライダーとインサイドのストレートで強気の投球を披露。PL学園の右打者を翻弄する。どちらかと言えばPLの前田の方が日大三打線につかまりそうな雰囲気だったが、序盤3回はなんとか0点でしのぐ。

しかし、打者一巡して日大三の各打者も徐々に前田の球筋に慣れ始める。4回表に下位打線からチャンスをつかむと、8番秦のスクイズでまずは同点。続く強打の1番松島が前田のアウトコースのストレートをはじき返すと、打球は右中間を真っ二つに破るタイムリー3塁打となって日大三が一気に試合をひっくり返した。

毎回スコアリングポジションにランナーを進める日大三に対して、PLは浅香のキレのある投球の前に5回までヒットはわずか1本。完全に日大三のペースにはまった中でなんとか反撃したいPLは6回裏、2アウトから3番神戸がライトオーバーの3塁打で出塁すると、4番中倉はスライダーを三遊間にうまく流すタイムリーを放って1点を返す。頼りの中軸がきっちり仕事を果たした。

これで流れをつかんだかに見えたPLだったが、6回から救援したエース中村圭のボールが走らない。7回表、アウトコースへのスライダーを4番佐々木に拾うような形で打たれた打球はそのまま左中間スタンドへ飛び込むホームランとなり、すぐに1点を追加される。大阪大会の疲れが残っているのか、ボールにキレのない中村圭に対して、7回表にさらに1点、8回にも1点と日大三が2001年夏に見せたあの豪打をほうふつとさせる打撃で得点を重ねる。

8回裏を迎えて4点差。通常のチームならあきらめるところだが、これまで何度も窮地を乗り越えてきたPL学園というチームは「諦め」の2文字を知らない。2アウトから2番山田のヒットでランナーを出すと、3番神戸は「下向いてるやつを元気にしたい」という思いを込めて、浅香のスライダーを振りぬく。打球はセンターバックスクリーンに飛び込む2ランとなり、点差は2点に。PLの粘り腰に球場のムードは2回戦のそれではなく、まるで決勝戦のような雰囲気となる。

しかし、日大三も打たれたまま黙ってはいない。1アウトから9番浅香が2塁打で出ると、1番松島がこの日6安打目となるタイムリーを放って1点を追加。さらに、2アウト後に4番佐々木にもタイムリーが出て再び点差を4点に広げる。2年生が多いチームだが、やはり大事なところでは松島、佐々木と3年生が大きな仕事をやってのけた。

さしものPLもここまでかと思われたが、逆転を信じるナインは闘志を失っていなかった。この回、先頭の6番藤井が浅香のインサイドのボールを思い切り引っ張ると打球はレフトポールをまくホームランとなり、1点を返す。ヒットは日大三の半分以下、点差もまだ3点あるが、そんなことは忘れてしまうような歓声が球場にこだまする。

さらに9番後路の内野安打などで1アウト1,2塁とチャンスを作り、上位打線に回す。しかし、最後は1番松島、2番山田が浅香のスライダーをとらえきれずに凡退してゲームセット。強豪同士の激しい打ち合いを制し、日大三が優勝した2001年以来3年ぶりの甲子園1勝を手にした。

まとめ

日大三は18安打8得点と猛打復活をアピール。何より内外角を丹念に突いた浅香の投球が光った。一発のあるPLの各打者に対して、恐れることなくインサイドを突いたことでスライダーの威力がより増したことは間違いない。その後、3回戦で優勝した駒大苫小牧打線に打ち負けたが、この試合でも岩田・鈴木の好左腕2人を苦しめて6得点。猛打・日大三が健在であることを証明した大会となった。

一方、PL学園にとってはやはり大阪大会の疲れが影を落としていたことは否めなかった。前田、中村圭ともに本来の球威ではなく、万全の状態で戦えればあるいはもう少し違った結果になったかもしれなかった。だが、終盤にホームラン2発で追いすがった攻撃は、日大三に恐れを抱かせるには十分なものがあり、負けてなお強しの印象を与えた一戦であった。

2004 86回大会 2回戦 日大三 vs PL学園 平成16年 – YouTube

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